水泳でバタ足ができない人にクロールを教えるのが難しいように,中学生に高校で習う内容を教えてもいきなりは理解できないでしょう。
幼少期に私たちが「3匹の子ぶた」から学んだ教訓は,土台からしっかりと積み上げていくことの大切さでしたが,TOEICの勉強にもそれは当てはまり,自分の実力以上の勉強法を採用してしまえば,せっかく時間をかけても効果が薄いのです。
そこで今回は,「目標スコア別のおすすめ勉強法」について学んでいきましょう!
これからTOEICの勉強を始めるという初心者はもちろん,普段勉強しているけれど,いまいち成績が伸びないとお悩みの中上級レベルの方まで,是非とも参考にしていただけたらと思います!
TOEICの勉強法と目標スコアの関係
TOEICでは目標スコアごとに効果の高い勉強法が異なることが知られています。
細かい内容に入る前に,スコア別にどのようなトレーニングを行えばよいのかまとめてみましょう!
分け方については諸説ありますが,私が最もわかりやすいと感じるのは100点刻みで考えるものです↓
目標スコア別トレーニング
- 目標300点なら「単語学習」
- 目標400点なら「例文暗記」
- 目標500点なら「シャドーイング」
- 目標600点なら「ディクテーション」
- 目標700点なら「スピーキング」
- 目標800点なら「リーディング」
- 目標900点なら「ライティング」
例えば目標スコアが500点であれば,「リスニング能力を上げるのに特化したシャドーイングというトレーニングをメインに据えることが重要」ということになります。
もちろん,厳密にこの表に従えというわけではありませんが,集中すべき内容が1つ決まることで,教材や参考書を選ぶ際に迷うことがなくなり,そのぶん時間もお金も節約できるのは確かです。
ちなみにですが,現在の保有スコアから100点以上離れたトレーニングをいきなり選ぶことのないようにしてください。
たとえ最終的な目標は700点であっても今500点ちょっとの実力しかない人は,スピーキングの勉強から始めようとしないということです。
この場合,1つ上の目標スコアを突破するために必要なことをマスターしてから,つまり600点突破のための「ディクテーション」から始め,模試などで600点を超えたことを確認してから初めて700点の対策をするように心がけてください。
実際問題,日本人のTOEIC平均スコアの記事に書いたように,全受験者の半数以上は600点を取ることができないのが現状です。
それにもかかわらず,書店で800点や900点目標の参考書がランキング上位を占めている理由は,それだけ多くの人が背伸びをしてしまっていることを表しています。
なお,TOEICのスコアアップと必要な勉強時間で書いたように,100点アップさせるのに最低でも200時間の勉強時間が必要です。
毎日どのくらい勉強できるのか,そして本番までの残り時間も考慮して,焦らず着実にスコアアップをしていきましょう!
それでは次章から,目標スコア別に具体的な勉強法についてみていくことにします。
目標300点なら単語学習

というのが200点台のスコアを持つ方の特徴になります。
300点を突破するためには,中学で習う基礎英単語を学び直すことが最もおすすめの勉強法ですが,単語数にして1000語ちょっとはあるので時間がなかなかにかかりますし,それ以上に注意すべきは「意味だけわかるようになってもダメ」だということです。
ここで試しにbatteryの発音を聞いてみてください。
どうでしたか。
カタカナだけ見ると簡単そうなのに,この音から「電池」が浮かんだでしょうか(カタカナ読みすると「バッテリー」ですが,意味は「電池」で覚える方が役立ちます)。
こういった英語ならではの音にも対応するため,絵本や中学教科書を使って音読の練習をしましょう!
このとき,和訳や文法,そして語句の解説まで載っている教材が良いです↓
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目標400点なら例文暗記

というのが300点台のスコア保持者の特徴で,勘の良い方であればそういった単語をつなげて,未知の単語も推測できるでしょう。
例えば,albatrossという単語の近くにeat fishやwingのような単語を見つけられれば,海鳥の一種であることがわかるかもしれません。
ですが,文法がしっかりしていないがために「何が何をどうしたのか」まではわかりません。
そのため,TOEICで400点以上を目標とする方は,中学レベルの英文法からやり直す必要があります。
重要例文をまとめた教材を使って,中学や高校の文法をしっかりと理解することが可能です。
このとき,ただ解説を理解して問題を解くだけでは不十分で,例文をすべて暗記できるよう,学んだ表現を声に出しながら書き写したり,日本語訳を見て英文に変換して声に出すトレーニングを自主的に行うようにしてください↓
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目標500点ならシャドーイング

ここから次のレベルまではリスニングを主軸にして学んでいくことになりますが,500点を目標とする方は,本格的なリスニング勉強を行う前に「音法」について学んでおいてください。
いわゆるナチュラルな英語では,横の音同士が化学変化のようなものを起こすために,1語ごとに区切って発音したときとは異なる音として聞こえる場合があります。
例えばask himが読みあげられる際,「アスクヒム」ではなく「アスキン」といった感じに聞こえるはずです。
なお,このことについて網羅的に学ぶにはスタディサプリの基礎リスニングを使うのが一番で,英語ネイティブのサマー先生が日本語で音法を1から詳しく解説してくれます↓
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音法を手持ちの音源を用いて確認する場合は,「語学プレイヤー」のような再生スピードを調節できるアプリを利用するのがおすすめです。
特に初回は負荷を目いっぱい下げてしまって構わないので,ゆっくり目のスピードでシャドーイングを行うようにしてください。
慣れてきたら徐々にスピードを上げ,音源の内容が印刷された英文を用意して,読みあげられた速度のまま英文を目や指で追うトレーニングを行い,声に出すシャドーイングに挑戦しましょう↓
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目標600点ならディクテーション

TOEICにおいて600点を取ることは,国内において大きな目標となります。
というのも,日本人の平均スコアが500点台のため,多くの企業が社員に求める点数も600点に近い数字になってくるからです。
そこで,英語の音に対する瞬発力を高める必要があるわけですが,その際はディクテーションが有効な勉強法となります。
ここでは洋楽を教材に用いることで,頭が英語のスピードについていけないという処理速度の改善に努めましょう↓
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なお,最近流行りのスマホを使ったアプリ学習でも,基本的なトレーニングにディクテーションを採用しているところは多いです↓
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リスニングに限らず,リーディングセクションの問題を解く際にもスピードが課題となってきます。
600点が目標の方であれば,TOEIC本番で時間内にすべての英文に目を通すことは無理でしょう(スコアが700点を超えていても解き終わらなかった人はいます)。
そのため,問題によっては捨てる問題を作ったり,細かい内容は飛ばすといった工夫も必要になりますが,読むスピードは「1分間に100語」を読むことを目標にし,スラッシュ・リーディングを行う際は極力日本語を介さず,頭にイメージを浮かべながら読むようにしてください。
なお,「ディクテーション」や「スラッシュ・リーディング」といった用語にあまり馴染みがない方は,TOEIC学習に役立つおすすめテクニックでまとめています。
目標700点ならスピーキング
「リスニングのスコアをアップさせるためにスピーキング練習を行う」と聞くと意外に思われるかもしれませんが,自分で話せる英語の数が増えてくると,その分聴き取れる英語も増えてくることが知られています。
特に700点を目標とする方は,本腰を入れてスピーキングに取り組むようにしましょう↓
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このときにシャドーイングも行いますが,ゆっくり目のスピードのみで練習し,印刷された英文もみながらでよかった目標500点のものと比べ,700点ともなれば,何も見ずに普通のスピードに対応できるようトレーニングする必要があります。
スタディサプリのビジネス英語コースであれば,瞬間発話プラクティスというトレーニングによって指定された場面における即答能力を養成することができますし,場合によってはオンライン英会話も取り入れてみるのも良い気分転換になるでしょう。
一方のリーディングですが,読む速度の目標は600点のときよりやや高めの「1分間に150語」とします。
この速さの目安として,英文とその和訳を用意し,それぞれを読む速度をストップウォッチで測ったときに,かかった時間が日本語で読んだときの1.5~2倍に収まっていればOKです。
目標800点ならリーディング

このレベルの方がTOEICで800点を取るための勉強法ですが,例によってリスニングから説明していきます。
前章で紹介したスピーキング練習を継続するのが基本ですが,先の展開を予測しながら読めるようになるよう,論理的に話すことを意識しましょう。
通訳者の実践するトレーニングになりますが,比較的ゆっくり読まれた音源を聴きながらメモを取り,聴き終わった後に,そのメモを見ながら内容を英語でスピーキングする,「ノートテイキング&リプロダクション」を取り入れた勉強法がおすすめです。
リーディングに関しては,日本語を介さず頭にイメージを浮かべて読む方法がおすすめで,それには同じ記事の日本語新聞と英字新聞を用意し,あらかじめ日本語でイメージを作ってから,英字新聞を早読みしてみてください。
なお,リーディングができる速度とリスニングできる速度は密接に関係しています↓
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準備が大変だと思われる方は,The Japan Times Alphaや綿密にカリキュラムが組まれたアルクのTOEIC教材を使ってもよいでしょう。
目標900点ならライティング

というのが800点台の人の特徴で,英語の達人になるための登竜門とも言えるのがTOEIC900点です。
リスニングの勉強法としてはスピーキング中心にして,聞かれた内容に瞬間的に答える練習を積みましょう。
そのためには,洋画と英語字幕を用意し,観て聴き取れなかった部分を字幕で確認するとともに,気に入ったシーン(数分程度)を抜き出して,特定の役を演じるロールプレイを行うのが有効な勉強法です↓
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一方,リーディングでは内容が絵のように浮かぶものの,長文では細かく誤解しているところもあります。
展開を予想しながら読むことでスピードを250語/分以上に上げるとともに,先の英字新聞の内容をライティングするトレーニングを行いましょう。
初めて出会った表現を含む数文を選ぶため,まずは英字新聞を速読します。
続けて,日本語でその記事を読んで内容を理解しましょう。
その後,選んだ数文を声に出しながら5回以上書き写すようにしてください。
TOEICで800点以上取るための勉強法には様々なトレーニングが考えられるため,「色々試しているうちに,気が付いたら900点を超えていた」という方も多いように思います。
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まとめ
以上,TOEICの目標スコア別の勉強法についてまとめてきました。
100点刻みで紹介してきましたが,これは別に奇をてらった分け方ではなく,通信教育大手のアルクなどでも同じようなコース設定がされているのでご安心ください。
また,これまでに触れてこなかったこととして,実際のテストではリスニングセクションとリーディングセクションで同じような点数になることは稀で,リスニングのスコアの方が高めに出る傾向にあります。
とはいえその差が100点以上になることは通常ありえませんので,例えば600点を実現した際には「L330/R270」などの得点パターンになるはずです。
逆に,もし現在「L410/R230」のようなスコアをお持ちの方が700点を目指すのでしたら,「リスニングは800点のための勉強法を,そしてリーディングは600点のための勉強法を採用する」といった具合に工夫してください。
またTOEICでは,同じ100点アップを目指す場合でも,目標スコアが高くなってくるほど難しくなります。
これは英検でも同じですよね。
3級から準2級突破にかかる勉強量より,2級から準1級を突破する方が圧倒的に時間がかかります。
つまり,500点を600点に上げるよりも600点を700点にする方が難しいですし,800点を900点にするのはもっと難しいということです。
確実に成果を出すためには,TOEICの達人に付きっ切りで教えてもらうのがやはりおすすめで,実際私はパーソナルコーチプランを利用することで,900点近くまでスコアを伸ばすことができました↓
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お金にものを言わせてスコアアップを果たすのは,ちょっとずるいと言われるかもしれませんが,自分より英語ができる人とTOEICを通して知り合えた経験は,自分の人生観をも変えてくれたように思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
TOEICでみなさんが目標スコアを取れるよう,陰ながら応援しています!