あらゆる学習に当てはまりますが,とある2人が同じだけ努力した際,より効果が出るトレーニング方法を採用した人の方が,費やした時間をそのまま学力上昇に繋げられ,学習期間が長くなるほどにその差が大きくなって表れてくるものです。
このとき,地頭の良し悪しは関係ありません。
単にやり方を知っているかどうかだけで差がついてしまうわけですから,「情報弱者」などと呼ばれないように,計画を立てる前の段階から入念な下調べが必要です。
当然,TOEIC対策においても「効果的なトレーニング方法」がいくつか存在し,努力に相応する実力が付くことが知られています。
ただ問題を解いては,なんとなく解説を読んで満足してしまう人が大半である中で,時間を割いた分の見返りをしっかり手にしたい方は,上記方法に関して,当記事を読んであらかじめ理解しておくようにしましょう!
得た知識が今後の勉強の幅を広げてくれます。
なお,これまでに試したことのないトレーニング方法が,停滞していたTOEICスコアを急激に上昇させることも十分に考えられ,有名な「シャドーイング」一つ取ってみても,意識する箇所が変わるだけで得られる効果は変わってくるものです。
以下の目次も適宜参照してください。
もくじ
音読

英文を実際に声に出して読む「音読」は語学の基本です。
英文の詳しい解説を読んだ後,理解した内容が頭に定着するよう,文章の構造や意味を考えながら声に出して読んでいきますが,感情を込めて誰かに読み聞かせるような気持ちで行うと上達が早いとされます。
このとき,回数を増やすほどに効果は高まり,ものにした英語がスムーズに口をついて出てくるように感じられるはずです。
とはいえ,ただ早口で,内容を考えずに棒読みしてしまうようだと効果は薄くなってしまうわけで,意味が分かった教材を題材に練習しなければなりません。
読む英文の意味があやふやで,どうしてそのような日本語訳になるのかわからないものを題材に選んでしまうと,音読の効果は激減してしまいます。
そのため,学習教材としては,最低でも英文以外に日本語訳までが載っている教材を選ぶようにしてください。
例えば,以下はスタディサプリの(旧)日常英会話コースにあるトレーニングの1つですが,英文とその音源,さらには和訳と解説が付いていることがわかります↓

まともな教材は,このようにちゃんと基本を押さえた構成になっていて,見る人が見ればすぐにわかるわけです。
ところで,英文を見ながら音声を聞き,聞き終わるのを待たずして,即座にそれを真似して音読していく方法は「オーバーラッピング」と呼ばれ,音声変化を起こしている箇所がより聞き取りやすくなる効果があります。
ちなみに,声が出せない環境であっても本トレーニングを諦める必要はありません。
「ボソボソ声」や「口パク」であっても効果があることが知られているので,学習した教材の仕上げとして,積極的に音読を行っていきましょう!
リピーティング

「リピーティング」とは,英文をある程度の長さ聞くごとに,流れた音声をそのまま声に出して繰り返すトレーニングです。
このとき,お手本となる読み方を耳で聴ける音源を用意しましょう。
先に紹介した「音読」の一種と見なされることもありますが,お手本を文単位で聴き,そのイントネーションや発音,間の取り方を真似するところが異なります。
なお,最初のうちは印刷された英文を見ながら反復することで,負荷を下げて練習することも可能です。
何回かやって慣れてきたら,以降は英文を見ずに行ってみてください。
リピーティングの良いところは,英文を見ずに流暢に話せるようになったり,文構造または単語の深い理解に繋がったりするところです。
なお,一度にリピーティングする量は徐々に長くしていくようにします。
最初はフレーズ単位から始めて,節,そして一文,最終的にはパラグラフ単位で実行していきますが,特に最後のものは後述するノートテーキングの内容も参考にしてください。
実際,TOEICのスピーキング試験では,Pronunciation Level(発音の正確さ)とIntonation and Stress Level(抑揚や強勢の付け方)が独立した採点項目になっているので,それらのスコアを上げたい方は是非実践しましょう。
普段練習していることが実際に評価されてスコアとして表れてくると聞けば,俄然やる気が出るはずです。
ちなみにですが,そもそも自分が発音できない音は聴き取れないので,発音の仕方もしっかりと学ぶようにしてください↓
音声変化のルールに関しては,スタディサプリの基礎リスニングで学ぶこともできます。
なお,リピーティングはシャドーイングと並んで,実践するのが難しいとされるトレーニング方法です。
英語力がまだ低くてできそうにない場合には,より簡単なトレーニング方法を積み重ねてからやり直してみることを勧めます。
シャドーイング

音読の最も進化した形が,この「シャドーイング」です。
これは,英語の音源を聴きながら,ほぼ同時にその英語を同じように発音しながら影(シャドー)のようにずっと付いていくトレーニング方法を指します。
具体的な手順ですが,
- 印刷された英文を用意し,英語を流しながら目と指で追っていく
- 今度は口で読み上げることも加える(口でも追う)
- 英文を見ずに音源に合わせて発音する(真の意味でのシャドーイング)
という3つの段階を踏んで,徐々にステップアップしていくのが一般的です。
1つ目の手順では,ネイティブと同じ速度で英語を話す(英文を読む)感覚が掴めますし,2つ目の手順は英文を見ながら音読できるので,初心者には難しいであろうシャドーイングの負荷を下げることができます。
もちろん,この場合も意味がわかっている教材を使い,繰り返し練習することが大切です。
ただシャドーイングするだけで,個々の単語の発音を強化できたりイントネーションについて学んだりできます。
さらに自分のシャドーイング内容を録音することまで行えば,文法・冠詞・単複・時制・文構造に対する意識が高まり,文頭からそのままの語順で前に戻らずに理解していけるようにまで成長できるでしょう。
この方法は,リスニングだけでなくスピーキングの能力アップにも有効です。
なお,シャドーイングが上手くできないときは,前章のリピーティングのトレーニングを行ってから,再度シャドーイング練習に戻ってきてください。
両者は補完しあう関係なので,どちらか一方ができないともう片方も上手くいかないものです。
リード&ルックアップ

「リード&ルックアップ」は名前通り,まず読んで(read),次に空を見上げて(look up)発話するトレーニングのことで,具体的な手順は,
- 和訳を読んでから英文を見ながら音読する
- 和訳を見ながら英文を思い出して音読する
といった単純なものです。
1についての補足をすると,和訳と英文のどちらも同時に確認できるようにしておくべきか,先に読んだ和訳を隠した状態で英文だけを読むべきかは,教材の種類によって異なることが知られています(英文を見ながら音読することは両者ともに変わりません)。
また,2では和訳のみを見ながら,1で覚えた英文を発話するところがポイントです↓

上の問題において,英文はどこにも見えていませんが,実はこの前段階として,英文が表示された状態で発話する練習をすでに済ませており,上の状態でスラスラ言えないようであれば,再び1の手順に戻ってやり直します。
クイックレスポンス

「クイックレスポンス」とは,和訳の音声(日本語)を聞いた瞬間にそれを英語にして言うもので,瞬発力を鍛えるためのトレーニングです。
瞬間英作文の会話版とも言えますが,英語のスピーキング能力を測るテストでは,間髪入れずに返答できることも評価の対象とされていて,言いたいことを即座に英語で言えることは,英会話において重要視されていることが伝わってきます。
音源付きの教材でクイックレスポンスを行う手順としては,以下が一般的です↓
- 日本語を聞き,同じ意味になる英文を聞いて音読する
- 日本語を聞き,今度は何も見ずに英文を暗唱する
- できなければ1の手順から繰り返す
もしも上記内容を,音源なしの文のみでやる場合には,「聞く」の部分を「読む」に変えてやってみてください。
手順1を省略し,代わりに前章の「リード&ルックアップ」を行うことも考えられますが,手順2を練習するためには日本語を読み上げてくれる人を探すか,日本語とそれに続けて英語を収録した音源を用意しなければいけません。
つまり,このトレーニングを実践するためには準備が一番大変となるわけですが,それ専用の教材も手に入るので,興味のある方は以下のようなものを使ってください↓
ロールプレイ

会話における登場人物の役を演じるトレーニング方法が「ロールプレイ」です。
このとき,1人で全員分の役のセリフを読むのはロールプレイではありません。
登場人物の誰かになり切って,実際に会話のキャッチボールをしている気分に浸ることが重要で,会話のリズムに慣れたり,即座に応答できるコミュニケーション能力が身に付いたりするわけです↓

それ専用の教材はあまり目にしませんが,個別に人物の会話を再生できるような教材を見つけた際には,ロールプレイを行ってみてください。
洋画を教材にしたようなものだとやりやすいように思います。
TOEICのスピーキングテストでも即座に英語で返答をさせられる問題が多く出てくるので,予めこのようなトレーニングを積んでおくことで,会場で混乱せずに済むでしょう。
ディクテーション

「ディクテーション」は,聞こえた英文を書き取るトレーニングのことを指します。
実際にやってみるとわかりますが,内容がわかっている英文であっても,文字で書こうとすると意外と書けないものです。
ディクテーションを行うことで,これまで気にも留めていなかった細かいところ,例えば,冠詞の有無や時制などにもより意識が向くようになります。
「これ以上は無理だ!」というところまで,何度も音源を聴き直すようにしましょう。
なお,どうしても音が聞き取れない音に出会ってしまった際は,文法知識を用いて,読まれる英語を予測するようにします。
スタディサプリのCMで「聞こえないんじゃない,言ってないんだ」という名ゼリフがありましたが,「ここではこのような英語を話しているはず!」といった具合に,推測した音が言われるのを待ち構えながらリスニングすることで,聴き取りづらい音が聞こえてくることもあるでしょう。
いずれにせよ,リスニング力,正しい綴りが書ける能力,そして文法力のアップが,ディクテーションを行う目的です。
書き上げたら英文を見ながら丸付けをしますが,スマホやキーボードを使って入力し,自動で採点までしてくれる教材であれば簡単に実践できます↓

このとき,聴き取れなかった原因を自分なりに分析して,苦手な音がどのようなものだったのかをメモしておくようにしましょう(trが「チュ」のように聴こえて何かわからなかった,'llと'dなどの短縮形が聴き取りづらかったなど)。
そして,ここで終えるのではなく,その後,音源に合わせて音読する作業を行うまでするのがおすすめの勉強法です。
この作業を行ってから,最後に何も見ないで音源を聞いてみてください。
これまで聞こえてこなかった音が不思議と聞こえてくるようになり,自分の成長を実感できるでしょう。
この経験をすることで,「また明日も頑張ろう!」という活力が生まれて,学習を継続しやすくなります。
スラッシュリーディング

「スラッシュリーディング」は読解力を高めるためのトレーニング方法です。
意味のかたまりごとに英文にスラッシュ(斜線)を入れ,区切りごとにそのままの語順で理解していくことになりますが,英語圏では大量の文章を読む必要がある職種の人(例えば弁護士)がよく行っています。
どこで区切るかの目安としては,最初はなるべく細かく(5語くらいのかたまりごとに)スラッシュを入れていくのが良いでしょう。
ここでの切り方のコツですが,
- 長い主語の後
- コンマやコロンの後
- 接続詞や関係詞の前
- 句や節,不定詞,分詞などの前
を候補にします↓

一度に理解できる量(まとまりごとにイメージが浮かんで短期記憶ができる量)であれば,好きな長さでスラッシュを入れて構いません。
もちろん,スラッシュの間隔が長くなる方が読むスピードは速くなります。
スラッシュというのは英語長文の構造分析をするときに用いることも多いですが,戻り読みをせずになるべく前から,そして意味のかたまりごとに訳出していくところがコツです。
上の例の最初の文を使って説明すると,「メープル買い物街の委員たち・年1回のフェスを計画中・11月5日」という3つのまとまりで理解します。
これをただ繋げて読んでみると,日本語としてはやや不自然に感じますが,意味は十分にわかるでしょう。
むしろ,これでもまだ日本語に頼ってしまっている感があるくらいです。
そこで,進化系として和訳すら省いてしまうことが考えられ,これでようやく英語を英語のままの語順で理解できるようになります。
同じ文でこれを実践してみる場合,「街のお偉いさん・計画する様子・11月5日という数字」を文字ではなくイメージのみで記憶するわけです。
結果的に,ずっと速く読むことができるでしょう。
なお,まとまりごとに音読してみるトレーニングも効果的です。
その際は,ストップウォッチを片手に読めた単語数を測るようにし,1分間あたりに150~200語を目標に頑張りましょう!
ちなみに,スラッシュリーディングはTOEICのリスニングセクションにある長文(Part4)対策にも有用とされます。
戻り読みをせず,英文の頭から,ある程度のまとまりごとに意味を取っていく読解方法に精通すると,発せられたその瞬間から音が消えてしまうリスニングにおいても,聴こえたままの順番で英文の意味を理解できるようになるのです。
ノートテーキング

英文の要点のみをメモして,どんな話だったのかを思い出す際に役立つトレーニングが「ノートテーキング」です。
通訳を職業にしている方もこれに似た方法を使っているのですが,すべての英文を書き取っている時間がない人は,単語や記号を駆使しています。
Powerpointなどを使ってプレゼンテーションする際も,メモを見ながら伝えたいことを漏らさずに話すように工夫することがありますが,これに似たものとお考えください。
論理展開に気を付けてメモを取っていきましょう↓

例えば「from=FR,with=w/,Of course=ofc」などの略号を使ったり,地図記号や顔文字を使ってみたり,はたまた「< >=トピック,∵=理由,!=強調」などの工夫が考えられます。
そして,このメモを使って元の英文を再構築しますが,これが先の述べた「リテンション」というトレーニングに繋がってくるわけです(「リプロダクション」と呼ばれることもあります)。
この際は,自分の声を録音するようにしてください。
それを聞きながら,論理展開に注意して話せているか,メッセージの内容を理解しながら話せているか,そして表情豊かに生き生きと伝えられているかどうかを評価します。
実際は,過去形や単複の違いにも注意したいので,上で示したノート例にはさらに工夫を加えたいところです。
試行錯誤を繰り返して,各自なりのノートテーキング方法を身に付けましょう!
スイッチノート

単語を覚える際,「スイッチノート」を用いたトレーニングが役立ちます。
作り方ですが,ノートや単語帳を別に用意する必要はありません。
紙にただスペルと意味を書き留めるだけで完成してしまうので,コピー用紙や普段使っているノートを使うだけで済みますが,書き方を工夫してください。
以下がスイッチノートを使って作成した単語帳になりますが,心がけた点は何だと思いますか↓

正解は,単語と意味を縦に揃えて書くようにしたことです。
縦に文字が揃っていることで,下敷きなどで一列分を丸々隠しながら,簡単な単語テストとして使うこともできるでしょう。
普段の学習においても,このように工夫をするだけで勉強効率を高められるので,スイッチノートをありとあらゆる学習に役立ててみてください。
Wordなどのソフトを使って作成する際には,「レイアウト」から「段組みを4行」などと設定することで簡単に作ることができます。
3回チャレンジ法

こちらはアルクが出版している教材でよく目にするトレーニング方法になりますが,本番まで3週間以上残っている状態ならば「3回チャレンジ法」に挑戦しましょう!
フルサイズの模試を異なる取り組み方をして計3回解くことで,現時点での実力や弱点を把握できるとともに,自身の成長を後日に実感することもできます。
手順は以下の通りです↓
- 予想問題200問を2時間かけて普通に解く(答え合わせをしない)
- 数日後,制限時間を設けずに同じ200問を解く
- 復習を念入りに行う(3週間かけて行うのが目安)
- 数日後,同じセットを,今度は本番と同条件で取り組む
1では,自分には今何ができて何ができないのかを明確にすることを目的とします。
答え合わせはしないと書きましたが,どうしてもしたい方は正解の記号をチェックするだけに留め,解説部分は絶対に読まないでください。
というのも,数日おいて,手順の2を行うことになるからです。
この目的は,自分の英語力がフルに発揮された場合に何点取れるのかを知ることなので,時間制限を設けず,勘で答えることのないようにしましょう。
ちなみに,リスニングセクションでは何度も音源を聴き直してOKですが,辞書の使用は禁止です(自分の実力ではなくなってしまうため)。
模試を受ける回数は3回ですが,「復習」も重要な手順としてそれに加わります。
2の手順が終了した後,答え合わせだけでなく解説まで読み込むようにしますが,わからなかった語句の意味を辞書で調べたり,本記事で紹介しているトレーニングを駆使したりしてください。
すべての英文の意味が理解でき,間違いの選択肢の根拠まで説明できるようになるまでに3週間ほどの時間をかけるのが目安です。
手順4では,いよいよ本番と同じコンディションでTOEICの予想問題(これまでと同じもの)を解きます。
一度解説まで完璧に読んでいるので簡単にできるかと思いきや,復習した内容を忘れ始める時期(数日後)に行ったり,時間制限があったりする関係で,想像以上に点が取れなくて落ち込むことになるかもしれません。
ですが,このときに間違えてしまった問題こそが完全に自分の弱点なので,その部分を念入りに復習することで,確実なレベルアップが可能です。
3回チャレンジ法が採用されているアルクの通信教材には,以下のようなものがあります↓
まとめ

以上,TOEICの攻略に役立つトレーニング方法をいくつか紹介してきましたが,いかがだったでしょうか。
今回記載したものを箇条書きにすると,
- 音読
- リピーティング
- シャドーイング
- リード&ルックアップ
- クイックレスポンス
- ロールプレイ
- ディクテーション
- スラッシュリーディング
- ノートテーキング
- スイッチノート
- 3回チャレンジ法
のようになりますが,どれもTOEICの学習にとどまらず,根本の英語力自体も底上げしてくれるトレーニングばかりなので,真面目に取り組んだ後の成長を楽しみに頑張りましょう。
「全てを行ってください!」と言うつもりはみじんもありませんが,興味を引くトレーニングがあれば,それを採用した教材を使ってみることで,より楽しく学習できる可能性が高まります。
英語学習は辛いものですが,ラクができるところはラクをして,集中すべきところは全力で頑張っていきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。