今回から数回にわたってZ会のビジネス英語関連の書籍をレビューしていきますが,栄えある1冊目を飾るのは「英会話Quick Response」という参考書です。
レベルとしては初中級と定められており,ページ数も少なめで比較的取り組みやすい本書ですので,まずはこの1冊を完璧にものにしてから色々な本に手を出していくのが良さそうです。
一体どのような方法論で学び,最終的に何ができるようになるのかに注目しながら,中身をみていきましょう!
英会話Quick Responseについて
まずは本書の基本データについて確認します↓
基本データ
書名:英会話Quick Response
ISBN:978-4-86290-268-9
著者:Z会編集部,Adam Ezard
価格:1650円
ページ数:190ページ
音声:MP3,ストリーミング
本書のタイトルは「英会話」となっていますが,友達と一緒にいる時や旅行で使うような日常英会話ではなく,ビジネスで使う英語が中心です。
ちなみに,著者のAdam氏は早稲田高等学院の教諭の方ですが,Z会のTOEIC対策本やAsteriaの教材もいくつか手掛けています。
冒頭でも述べた通り,本書の対象となるのは初中級レベルの学習者なので,中学で習うような英文法のおさらいをしたり,基本例文を暗記して,ダウンロードできる音声に合わせてクイックレスポンスを行うことがメインのトレーニングです。
基本例文の数は全部で456個あり,中には"Are you busy now?"などの比較的簡単な英文も含まれますが,「今,お忙しいですか」という日本語からすぐにこの英文が浮かぶことを目指します。
最後の2割くらいは会話形式になりますが,基本例文を覚えたらそれを応用していくのが次のステップに当たるため,よりレベルの高い教材との橋渡しのような役割を果たしているようです。
オフィスでの役立ち度としては,何か一言付け加えたい時に本書の表現が口をついて出てくるようになるので,本格的な会話をするには十分とは言えませんが,英語を口に出して言ってみる練習は本書で存分にできると思われます。
なお,専用サイトからダウンロードした音声は,日本語→英語の順で音声が流れるので,本を開かずスマホだけを使って,スピーキング練習をすることが可能です。
どのようなものか,一度聞いてみてください↓
言えそうで言えない表現が多かったのではないでしょうか。
私自身,本書を一通り読み終えた後は,もっぱらこの音声データのみを使っており,外出中は音声をスマホで流し,ぼそぼそと英語で言う練習を続けて,日本語を英語にすぐ変えられる速度が早まってきたことが実感できています。
なお,書籍の方には文法事項などの応用的知識であったり,基本例文になっていない例文も収録されていたりするので,読んでおくと基本例文自体の理解度の深さに影響すること間違いなしです。
次章から,書籍の中身について少しみてみることにしましょう!
英会話Quick Response前半の構成
英会話Quick Responseの前半となる(といってもボリューム的には8割に当たる)PART1ですが,約110ページにわたって基本例文を題材としたクイックレスポンスのトレーニングを行っていきます。
単に日本語から英語にする練習を積み重ねてもよいでしょうが,どちらかと言えばそれは英作文の勉強法であり,本書で語られている具体的な勉強手順は以下の通りです↓
- 例文の音声が「日本語→英語」の順に流れるトラックを使い,例文を目で追いながら音声に合わせて音読する
- 「日本語→ポーズ→英語」の順に流れるトラックを流し,ポーズの間に日本語を英語に直したものを音読する
本書の音源は6種類が用意されていて,中には日本語の合いの手が不要だという人のために英語のみの音源も用意されているほどですが,いずれを使うにしても,英語を話すのが苦手ならば,話す機会を増やすしかないわけですので,その基本方針に基づいて,声に出すトレーニングをしっかりと行っていきましょう。
各ユニットごとに文法やシーンのテーマが決まっており,例えばUnit1はbe動詞を使った挨拶でした↓
各ユニットごとに8つの基本例文が載っていて,Unit1から57まであります。
見開きページの下をみると「Point!」というコーナーがあることがわかり,そこで各ユニットで扱う内容の追加説明(文法の基本事項だったり表現の持つニュアンス)が加わるといった構成です。
上記画像ではbe動詞の現在形3種類と過去形が出てきている他,be動詞の意味が「~である」以外のものがあるなど,結構な量の知識を詰め込んだ説明があるので,中学の英文法すら怪しい方が本書で文法を学び直すことはおすすめしません。
あくまで,昔しっかりと中学英文法を学び終えた経験がある方が,忘れた知識を思い出すのに使う程度だと考えておきましょう。
もっとも,例文は中学校の教科書に登場してくるような内容ではなく,ビジネスの場で実践できるものですし,Could youとWould youの違い(p.62)であったり,原因・理由を表すbecauseやasやsinceの使い分けについて(p.119)など,普通にためになるはずです。
基本例文の内容について,もう少し詳しくみてみましょう!
「マーケティング部・営業担当者・弊社・部長・会議室」などの単語が随所で目立つことからもわかるように,完全にビジネスシーンを意識した例文になっていて,頻繁に使うことになること間違いなしです。
また,例文の主語に注目してみると,最初の2つ以外はすべて異なっています。
無生物が主語になっていたり,「こちらが~です。」という例文がHere isで始まるなど,be動詞という簡単そうな文法事項を扱っていても,例文自体はスラッと簡単に出てくるものではありません。
「基本」例文ではあるわけですが,このように教材が工夫されているので,退屈しない構成が英会話Quick Responseの特徴です。
出てきた文法のうち,めぼしいものを挙げてみると以下のようなものになりました↓
一般動詞・WH疑問文・進行形・完了形・未来を表す表現・各種助動詞・to不定詞・動名詞・分詞・比較・受動態・語法・接続詞・関係代名詞・関係副詞・使役動詞・形式主語構文など
このように見てみると完全に中学の英文法のテーマばかりですが,高校で習うような,より高度な英文法を学びたいと言う方に向けて,「ビジネス英語を磨く英文法Smart Reference」という別の本がZ会から出ていますので,興味がある方は以下の記事を参考にしてください↓
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英文法Smart Referenceのレビュー!ビジネスの印象を良くする文法書!
今回はZ会から出版されている「ビジネス英語を磨く英文法Smart Reference」についてレビューしていきたいと思います。 本書はビジネスシーンで英語を話したり書いたりする必要がある方に向けた一冊 ...
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英会話Quick Response後半の構成
英会話Quick Responseの後半(PART2)は,これまでに身に付けた基本例文を応用した会話文を題材に,ロールプレイを行っていきます。
英文は2人の人物が会話のキャッチボールを繰り広げるものですが,PART2用の音源を用いながら,スピーキング重視で練習していきましょう。
1で慣らした後,2が本番です↓
- 男女の会話をどちらも音読する
- 片方の発言のみを流し,ポーズの間に音読する
1は単に音読であり,厳密な意味でのロールプレイが行われているのは手順2の方ですが,感情豊かに当事者意識を持って話すのが上達のコツだとされます。
ちなみに,PART1で学んだ挨拶に関する表現が後半のScene1において早速登場してきており,うまく会話文に溶け込んだ状態で出てくるあたりが流石だと思いました↓
こういった工夫は速読英単語などでもお馴染みのもので,さすがZ会と言える内容だと思います。
後半部分のPoint!(欄外コラム)では,Sceneごとに気を付けたい事柄がピックアップされてきていて,これまた勉強になる内容です。
ページをめくるとCAN-DO PLUSと呼ばれるコーナーが出てきました(ないものもあります)↓
こちらはシーン別に使える英文を追加するためのものであり,類語や類似表現の使い分けであったり(上の例だとmeetとseeの違いが確認できます),課長や経理部長,さらには人事課長から財務部長,法務部など,同じ単語を極力使わないように工夫されてもいるので語彙数を自然と増やすことができるはずです。
CAN-DO-PLUS用の音声も用意があるので,こちらも声に出して読むようにしましょう!
なお,日本語を見てすぐに英語が出てくるようにするためには,PART1以上の努力が必要ですが,その分,言えるようになる英文は以下に示すような,より複雑で情報量が多いものだったりするので,時間をかけるようにし,そして音声データを用いながら学んでいく姿勢が大切です↓
- ご覧の通り,売上・経費とも第一四半期に増加しています。
- 顧客リストは2つのグループに分類できます。1つ目のグループは「既存客」で,2つ目は「見込み客」です。
ただ眺めて(読んで)終わりにするだけでは,本書にある英文は決して身に付きません。
まとめ
以上,Z会から出版されている英会話Quick Responseのレビューでした。
前半ではクイックレスポンス,後半でロールプレイを中心にしたトレーニングが出てきましたが,基本は音読しっぱなしですし,例文や対話文の質が良かったので退屈せずに最後まで取り組むことができました。
全体にわたってクイズ的なものがまったくなかったので,最初は心配でしたが,実際は音声データがクイズ的な出題になっているため,前章の最後でも言ったように,本書で学ぶ際は音声を使った練習を省略することのないようにしてください。
文法に関しては中学の知識でなんとかなりますが,ビジネス用の単語というのは,受験勉強ではお目にかかれないものが本書にはかなり含まれていたように思いますし,後半のCAN-DO PLUSで出てきた内容(相づちの入れ方や質問の仕方など)も知らないことが多かったように感じます。
何より,1冊やり終えると,簡単なビジネス会話ならできてしまいそうに感じて自信が持てるようになったことが思わぬ収穫で,英語を話す際には,拠り所になる基本例文を暗記することが大切なのでしょう。
ページ数的にはあまり分厚くなかったこともあり,比較的容易に1冊やり通すことができたことも達成感を与えてくれるのに役立ちました(ただし,身に付ける練習をするためにはそれなりの時間がかかります)。
本書をやり終えた暁には,同じZ会シリーズの本からEメールの書き方に関する参考書を選び,「話す」に続いて「書く」技術についても学んでみるつもりです↓
いずれにせよ,ビジネス英語の1冊目としては,中学範囲の英文法と話すに特化した本書で学んでみることをおすすめします↓
最後までお読みいただいた方,ありがとうございました。