昔は洋書(原書)を手に入れようと思ったら,それを専門に取り扱う書店(紀伊国屋・丸善など)に出かける必要がありましたが,今やアプリやインターネットを使えば洋書も簡単に読める時代になりました。
しかもそれは書物に限らず,音声であったり映像であったりと,様々な形態での利用も可能になってしまうことは驚きでしょう。
もっとも,こういった素材を手に入れてしまえさえすれば,その後は従来から実践されてきた勉強法をそのまま用いることができるわけで,古き良きものも残っていることになります。
とはいえ,これまでに注目を集めてきた勉強法の中には全く逆のことを言っているものもあり,一体何が正しい方法なのかわからなくなってしまうこともあるので,その理論の提唱者にはあくまでその方法が有効であっただけにすぎないことにはくれぐれもご注意ください。
結局のところ,試して結果を見てみることでしか,自分にとって適した勉強法を見つける術はないのです。
本記事では,これまでに評判となった勉強法のうち「洋書で学ぶ際に有効だと思われるもの」についてまとめるとともに,現在利用できるオンラインサービスを紹介してみようと思います。
洋書を使ったTOEIC勉強法について
ここではTOEICに対して効果が発揮される勉強法について考えますが,それはずばり,洋書の精読と多読を通してリーディング力を伸ばすことでスコアアップを実現することに他なりません。
基本方針
まずは基本となる考え方についてですが,洋書を教材として用いるためには,そもそもある程度の英語力を備えていなければ歯が立たないということを知っておきましょう。
文構造も満足に把握できず,ページを開くたびにわからない単語が毎回10個も20個も出てくるようでは,最初の数ページだけを必死に読んで単語を調べたあたりで嫌気がさし,すぐに読むのを止めてしまうのがオチです。
そうならないよう,心配な方はまずは英字新聞を読む練習から始めてみましょう(後述)。
そしてある程度の実力が付いてきてから,いよいよ洋書を読み始めるべきであり,その際にも決めた1冊を徹底的に読むことをおすすめします。
ゆっくり読んで時間をかけて構いません。
その1冊をすみずみまで精読し,どのページを開いてもわからないところがないようになるくらいまで,何回も読み直すことがベストです。
回数としては数十回読むことになるかもしれませんし,英語が得意となった人であれば好きな1冊を100回以上読みこんだ人もいることを忘れないようにしましょう。
これはいわば読解テクニックでいうところの「精読」にあたる読み方になりますが,こういった経験を踏むことで洋書の読み方がだんだんわかってきます。
そのようにして2冊目,3冊目と精読していくと洋書に慣れが生じてくるので,それ以降は冊数をどんどん増やす読み方に変えていきます。
このような「精読→多読」の流れが洋書を教材として用いるための基本方針です。
とはいえ,多読をすればわからない単語や文章はどうしても出てくるものなので,それならばと,初めから精読する段階を飛ばしてひたすらに多くの洋書を読み進める方法論も中にはあります。
いずれにせよ,多読というのは,未知の単語に出会った途端にわからなくなってしまうような方が採用すべき勉強法であって,TOEICの読解においても大意を把握する良い練習になるでしょう。
選ぶ本について
それではどのような洋書を選ぶべきなのかということについて考えますが,自分の好きな本や読みたい本があればそれで始めるべきで,例えばハリーポッターが好きな方であれば,それを原書で読むことが一番です。
こちらはシリーズも多く出ているので,多読する場合にも使いやすいと言えるでしょう。
過去のニュースでTOEIC980点を取得した小学生が取り上げられましたが,彼女の愛読書の中にも入っていました。
洋書を読むことが趣味になっている人の共通点でもありますが,多読するにあたっては,先を読みたいと感じることがとにかく重要です。
なお,その他候補としては,名著を教材にするのが良いと思います。
とはいえ,あまりに古い書物であると,今はもう使われない文体や馴染みのない舞台背景で問題が生じることもあるので,TOEICの教材として考えた場合,作品が書かれた年代については気にしておきたいところです。
おすすめとして,「サマセット・モーム」は文体が読みやすく,「アーネスト・ヘミングウェイ」の作品は英語の音に興味を持つきっかけになったと語る方も多いのではないでしょうか。
他に有名な著者をいくつか列挙してみると,アメリカ文学ではジョン・スタインベック,テネシー・ウィリアムズ,スコット・フィッツジェラルド,トルーマン・カポーティなどが,そして英文学ではオスカー・ワイルド,ヴァージニア・ウルフ,チャールズ・ディケンズなどの名前が浮かびます。
音楽もそうですが,名作と評されるものには何度も読み返すことに耐えうるだけの魅力があるのは事実です。
優れた書物というのは内容であったり,または声に出して読んだ時の音の感じが素晴らしかったりするものなので無駄になることはありませんが,最初に言った通り,いくら他人が素晴らしいと評しても,実際に自分がそのように感じなければ,その洋書を教材として使う意味はありませんので,くれぐれもご注意ください。
なお一つの案としては,短編集をあえて選ぶことで,より飽きにくくする工夫ができます。
「アルジャーノンに花束を(ダニエル・キース著)」のような短編小説を英語で読んだという方は多いです。
洋書と一緒に使いたい教材
日本語に翻訳されたもの
洋書は当然ながら英語のみで書かれているわけですから,途中意味がわからなくなるところも出てくるでしょう。
そういった場合に備えて,日本語版が出ている洋書を利用するのがおすすめです。
先に挙げたような人気作であれば,名のある翻訳者の和訳が利用できます。
もちろん先に日本語で読んで気に入ったものの中で,原書が英語で書かれたものがあればそれを利用することも大いに結構です。
とはいえ,日本語版と洋書を見比べながら自分の英語力をチェックしていくような,いわゆる大学受験での英文和訳のような勉強法を行ってはいけません。
あくまで洋書だけで内容理解ができるようになるべきでありますし,簡単に和訳に頼る癖がついてしまうと,英語長文において単語の意味を推測したり大意を掴むことができなくなってしまいます。
オーディオブック
こちらは洋書を音読してくれるサービスで,今ではオンラインでの利用ができるので便利です。
CDを購入する必要がないので値段としても安価になる傾向にあります。
発音のチェックにも使えるのでTOEICのリスニングに役立ちますし,何より,ネイティブが感情豊かに読み上げてくれるわけですから,英語の音の魅力に気づかせてくれること間違いなしです。
なお,同じようなものにDVDや動画のような映像素材がありますが,こちらはより情報量が多くなるので,洋書を読む前後に挟むことで,舞台背景の理解やあらすじの把握に大いに役立つでしょう。
今ではなお,日本語版もそうですが,洋書の前にこういった補助的な教材を用いてあらかじめ知識を付けておくことに何ら問題はありません。
それどころか,逆に洋書を読む際の気づきにもなるので,プラスに働くことの方が多いでしょう。
身近なもので考えてみると,例えばアニメを観てからマンガを読んでも楽しめますよね。
それと同じことです。
とはいえ,先の日本語に翻訳されたものと同様に,オーディオブックもあくまで内容理解の補助にすぎないことはお忘れなく。
英字新聞
洋書を使った勉強法の前段階として,英字新聞を読むことを勧めました。
原文を読み,自分であれこれ考えるのが勉強である以上,わからない箇所が出るたびに辞書を引いたり日本語訳に頼るようでは,洋書を用いて勉強するメリットはないでしょう。
その場合は,英字新聞の方が読みやすいでしょうし,それでもダメそうであれば,さらに中学や高校の英語を復習し始めることをおすすめします。
新聞に載っている知らない単語を調べていくだけでかなりの英語力がつきますし,TOEIC学習に対応した英字新聞も出ているくらいです。
洋書にまつわるオンラインサービス
それでは,洋書や副教材を簡単に利用できるオンラインサービスについて,ここでまとめておきましょう。
グーテンベルグ計画
1971年にサービスが開始となったグーテンベルグ計画では,シェイクスピアの諸作品から始まり,アメリカ人にとって常識となっている古典文学や不思議の国のアリスやイソップ物語のような馴染みある物語まで,幅広い読みものが利用できます。
e-bookは6万冊以上が収録されており,無料での利用が可能です。
参考
Audible
AudibleはAmazonが提供するオーディオブックで,音質の良さや利用できる書籍の数に定評があります。
さすがに洋書を音だけで聴くとなると,難度が高まるだけでなく目的としても異なってしまいますが,日本語のものであれば耳だけで聞いても本で読んだのと同じくらい理解できるでしょう。
もちろん洋書で持っているものであれば音読用として使うことができます。
Audiobook
Audiobookはオトバンクの提供するオーディオブックです。
利用料金は上のAudibleの半額程度ですので,より手を出しやすい価格帯だと思います。
どちらも無料で体験できるので,両者同時に契約して使い勝手を比較しながら,気に入った方を残すのがよいでしょう。
Hulu
Huluは動画配信サービスです。
洋書が映画になったものを観ることで,活字で読んだ場合に内容が入って来やすくなります。
英語で観たときに「英語字幕」が利用できるのがポイントで,意外とこのようなサービスは数が多くありません。
「洋書と洋画をどういった順で利用するのか」,「洋画を観て洋書を読んでも効果があるのか」などの些末な議論には関わらないようにして,自分のしたいこと,好きなことを優先して利用するようにしてください。
The Japan Times alpha
英字新聞で有名なものにThe Japan Timesがありますが,これはTOEIC学習用に発刊されたバージョンとなります。
英語記事の単語でTOEICに出そうなものは日本語の語注が付けられていますし,公開テスト対策に使えるパート別対策のような実践的なコンテンツが利用可能です。
多くの分野のニュース以外にも,映画などのエンタメ情報や海外文化について学ぶコンテンツなど,総合的な知識向上にも役立つよう工夫されています。
まとめ
以上,洋書を用いた勉強法とオンラインサービスについてのおすすめをいくつか紹介してきました。
今回の記事のポイントを再確認すると,洋書を読む上での理想は精読も多読もできることで,もし基礎力に不安がある場合は中学英語や英字新聞などから始めてください。
また,アプリやネットからebookやオーディオブックなどのサービスで簡単に利用でき,翻訳版に加えて音声版まで簡単に探せてしまうのが,現代のICT技術に支えられた社会だということでした。
これほどまでに便利になった割に効果が捗らないのは,今回紹介した勉強法やサービスの存在そのものを知らない方が多いからかもしれません。
もちろん,自分の気持ちに嘘をついてまで利用しろとは言いませんが,もし趣味の一つに加えられるようであれば,大きく英語力が向上する可能性を秘めています。
私は音楽が好きなので,作曲法について書かれた英語の教科書を読むのが最近の過ごし方です。
TOEICで大きなスコアアップを目指している方も,少し違う角度から根本的な英語力を伸ばす勉強法を採用してみてはいかがでしょうか。