昔は洋書(原書)を手に入れようと思ったら,紀伊國屋書店や丸善といった大型書店に出向く必要がありました。
しかし現在は,電子書籍ストアやオーディオブックサービスを使えば,スマートフォン1つで洋書の本文やネイティブの朗読音声に触れられます。
便利な環境が整った一方で,洋書を英語学習に生かすための基本は昔から大きく変わっていません。
大切なのは,いきなり難しい原書に挑むことではなく,自分のレベルに合った1冊を選び,精読と多読を組み合わせながら読み進めることです。
当記事では,20年にわたる学習指導の経験をもとに,「洋書をTOEIC対策に落とし込むための具体的なステップ」と,洋書学習を続けやすくする副教材・音声サービスについて紹介します。
洋書を使ったTOEICの勉強法

洋書がTOEIC対策にも役立つ理由は,「精読」と「多読」を繰り返すことで,長文を英語の語順のまま理解するリーディング力が鍛えられるからです。
基本方針(精読から多読へ)
洋書を教材として用いる際,大前提として知っておくべきことがあります。
それは,ある程度の基礎的な英語力がなければ,洋書学習は挫折しやすいということです。
文の構造が把握できず,1ページ開くたびに未知の単語が何十個も出てくる状態では,単語を調べる作業だけで疲弊してしまい,読書本来の楽しさを味わう前に,本を閉じてしまいやすくなります。
基礎が身についた後,いよいよ洋書を読み始める際の最適なアプローチは,まず「これ」と決めた1冊を徹底的に読み込むことです。
時間をかけて構いません。
その1冊を隅々まで精読し,どこを開いても意味が瞬時に取れるレベルになるまで何度も読み返します。
英語上級者の中には,お気に入りの1冊を100回以上読み込んだという方も珍しくありません。
この「精読」の経験を積むことで,英語特有の論理展開やリズムが身体に染み込みます。
2冊,3冊と精読をこなし,洋書への抵抗感が薄れてきた段階で,今度は読む「量」を増やすスタイルへとシフトします。
この「精読→多読」の流れこそが,洋書学習の王道です。
多読の段階に入ると,どうしても未知の単語に遭遇します。
しかし,ここでいちいち辞書を引かず,前後の文脈から大意を推測して読み進める訓練は,TOEICのPart 7で求められる速読力や文脈把握力にもつながります。
挫折しない洋書の選び方(ラダーシリーズの活用)
では,具体的にどのような洋書を選ぶべきでしょうか。
一番の理想は,自分が本当に好きな本や,続きが気になって仕方がない本を選ぶことです。
ハリーポッターの熱狂的なファンであれば,それを原書で読むのが最高のアプローチになります。
とはいえ,「いきなり一般向けの洋書を読むのはハードルが高い」と感じる方も多いはずです。
そこでおすすめしたいのが,IBCパブリッシングなどが発行している学習者向けの「ラダーシリーズ」です。
ラダーシリーズは,使用する英単語のレベルを段階的に制限して書かれているのが最大の特徴です。
公式サイトでは,Level 1からLevel 5までの語彙数やTOEICスコアの目安も確認できます↓
はしご(ラダー)を一段ずつ登るように,自分の現在の語彙力に合ったレベルの本を選ぶことができるため,辞書を引かずに多読を楽しむことができます。
古典文学から偉人の伝記まで幅広い名作が揃っているため,興味に合う1冊を見つけやすいのも魅力です。
長編を読む集中力が続かない場合は,短編集を選ぶのも賢い工夫です。
洋書の鑑賞法(効果的な3ステップ)

ここでは,オー・ヘンリー(O. Henry)の名作短編「賢者の贈り物(The Gift of the Magi)」を例に,具体的な読み方の手順を解説します。
オー・ヘンリーは1910年に亡くなっており,著作権が消滅しているため,現在ではWeb上で簡単に原文を読むことができます↓
学習効果を最大化するためのサイクルは「洋書(原文)→ 翻訳版 → 洋書(原文)」の順です↓

1. まずは洋書(原文)のまま読む
最初は辞書を使わず,原文のまま目を通します。
学習者向けに書き直された簡易版(ピアソンリーダーズなど)を読む手もありますが,原文が持つ豊かな表現力とは大きな差があることを知っておいてください。
例えば,主人公デラが登場するシーンを比べると,簡易版では以下のように事実だけが淡々と書かれています↓
簡易版のスタイルをもとにした例文
Della is in her apartment. It is Christmas Eve. She counts her money on the table. She has one dollar and eighty-seven cents. It is not enough to buy a gift for Jim.
一方,原文の描写は以下の通りです↓
Della finished her cry and attended to her cheeks with the powder rag. She stood by the window and looked out dully at a grey cat walking a grey fence in a grey backyard. Tomorrow would be Christmas Day, and she had only $1.87 with which to buy Jim a present. She had been saving every penny she could for months, with this result. Twenty dollars a week doesn’t go far. Expenses had been greater than she had calculated. They always are. Only $1.87 to buy a present for Jim. Her Jim.(原文より引用)
簡易版と比べると語数が4倍近く多いだけでなく,関係代名詞や過去完了進行形,口語的な言い回し,情景描写などが含まれており,英文から受け取れるニュアンスも豊かになります。
初見ですべてを理解できなくても焦る必要はありません。
全体の大まかな雰囲気を掴むことが最初の目的です。
2. 日本語の翻訳版を読む
次に,日本語に翻訳されたものを読み,内容の答え合わせを行います↓
編集部訳
デラは泣きやみ,パウダーパフで頬を整えた。窓際に立ち,灰色の裏庭で灰色のフェンスの上を歩く灰色の猫を,ぼんやりと眺めた。明日はクリスマスだというのに,ジムへのプレゼントに使えるお金は一ドル八十七セントしかなかった。何ヶ月もかけて一ペニーずつ貯めてきた,その結果がこれだ。週二十ドルの稼ぎでは,どうしても足りない。出費は見込みをいつも上回る。いつだってそうだった。ジムへのプレゼントに,たったの一ドル八十七セント。彼女のジム。
日本語訳で内容を確認することで,ストーリーの細部や登場人物の感情を深く理解することができます。
3. 再度,洋書(原文)を読む
翻訳版で内容をしっかり理解した直後に,もう一度原文を読み返します。
ストーリーが頭に入っている状態だと,驚くほど英文がスムーズに頭に入ってくる感覚を味わえるはずです。
1回目では分からなかった単語も,文脈から自然と意味が推測できるようになります。
余裕があれば,情景を思い浮かべながら声に出して音読するとさらに効果的です。
洋書と一緒に使いたい副教材と音声サービス

洋書での学習効率を飛躍的に高めるために,オーディオブック(音声)や英字新聞の併用を強くおすすめします。
英語学習に特化したオーディオブックサービス
ネイティブのナレーターが読み上げるオーディオブックを併用すると,洋書の内容を目と耳の両方から確認できます。
国内で利用しやすい代表的なサービスとして,「Audible」と「audiobook.jp」があります↓
| サービス名 | 月額料金(税込) | 再生速度の調整 | 英語学習での強み |
|---|---|---|---|
| Audible(Amazon) | プレミアムプラン月額1,500円 | 0.5〜3.5倍速 | 圧倒的な洋書の作品数。アルクのTOEIC対策本も豊富。 |
| audiobook.jp | 年割プラン:月額換算833円。月額プラン(1,330円)あり | 0.5〜4.0倍速 | レベル別のラダーシリーズが聴き放題でコスパが高い。 |
Amazonが提供する「Audible」は,洋書のオーディオブックを探しやすいサービスです。
聴き放題を利用する場合はプレミアムプランが必要で,洋書の朗読に加えてアルク社のTOEIC対策本も聴き放題の対象になっており,総合的な英語力アップに役立ちます↓
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AudibleでTOEIC対策!洋書の多聴でリスニング力を鍛える方法
洋書を使った英語学習やTOEICの長文対策において,リスニング力の強化は欠かせません。 Amazonが提供する「Audible(オーディブル)」は,すき間時間を英語のインプットに変えやすいサービスです ...
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一方の「audiobook.jp」は,日本語書籍の音声サービスとして知られていますが,ラダーシリーズの音声教材も扱っています。
洋書を読むだけでなく,耳からも同じ内容に触れたい方向きです↓
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audiobook.jpでTOEIC対策!聴き放題で多聴・精聴する勉強法
TOEICのリスニング対策や英語の多聴において,オーディオブックの活用は取り入れやすい方法です。 日本発の配信サービスである「audiobook.jp(オーディオブックジェーピー)」は,月額料金を抑え ...
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どちらのサービスも無料体験期間が用意されているので,実際の操作性や好みの声のナレーターがいるかを確認してみると良いでしょう。
英字新聞(The Japan Times Alpha)
洋書を読む前段階のトレーニングとして,学習者向けの英字新聞を利用するのも堅実なアプローチです。
中でも「The Japan Times Alpha」は,英語学習者向けに作られた英字新聞です。
ニュース英語に触れながら語彙を増やせるため,洋書に入る前の橋渡し教材として使いやすいでしょう↓
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The Japan Times AlphaでTOEIC対策!難易度・勉強法・The Japan Newsとの違い
日本を代表する英字新聞の1つである「The Japan Times」は,1897年創刊の長い歴史を持つ英字メディアです。 そのジャパンタイムズが発行している英語学習者向けの週刊紙が,今回紹介する「Th ...
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無料教材(Kindle・青空文庫)
コストを抑えて読書量を増やしたい場合は,Kindleの無料タイトルや青空文庫の活用も有効です。
Kindleでは無料で読める洋書が見つかることがあり,青空文庫には著作権の保護期間が満了した作品や翻訳作品が収録されています。
特に青空文庫は,ステップ2の「翻訳版を読む」工程を無料で補う手段として使いやすいでしょう。
まとめ
当記事では,洋書を使ったTOEIC対策として,精読から多読への移行,ラダーシリーズを使った挫折しない本の選び方,原文→翻訳版→原文の3ステップ学習法,そしてオーディオブックや英字新聞との組み合わせ方を紹介しました。
基礎力に不安がある方はラダーシリーズからスタートし,翻訳版やオーディオブックを補助輪として活用しながら,少しずつ原文に慣れていくのがおすすめです。
私は作編曲の理論書を英語で読むのが好きです↓

TOEICのスコアアップという実用的な目標に,自分が好きな本を読む楽しさが重なったとき,英語力はブレイクスルーを起こします。
ぜひ,興味を惹く1冊を手に取って,新しい英語学習の扉を開いてみてください。
