TOEIC L&Rテスト(以下TOEIC)ですが,「新形式」と呼ばれるようになってから,だいぶ難しくなりました。
新形式が導入されたのは2016年の5月29日(第210回公開テスト)からですが,それ以前のものとは比べ物にならないほどの難しさです。
とはいえ,それから5年以上が経ち,多くの参考書や公式問題集が発売されるにつれ,受験者のデータもだいぶ落ち着いてきました。
そこで今回は,最近の日本における「大学生や社会人のTOEIC平均スコア」についてみていきたいと思います。
そしてその点数を元に,世界の国々と比べた場合の日本人の英語力の立ち位置であったり,目標となるスコアをどのくらいに設定すべきかについて考えてみることにしましょう。
これからTOEIC受験を考えている方は,是非参考にしてください!
日本人の平均TOEICスコア
2021年4月~2022年3月(午前の部)における,日本人のTOEICスコアの平均点を調べてみると,
- リスニング=328点~338点
- リーディング=276点~287点
の中にすべてが収まっており,総合スコアは605点~624点の幅となります。
そして,上記計測期間における全12回の平均スコアは「614点」です。
約2年前(2019年3月~2020年1月)に計測した平均点が588点だったので,ここ数年で30点近く平均点を上げたことになります。
もっとも,TOEICは990点満点のテストですから,このスコアが高いか低いかの判断については別の指標が必要です。
なお,日本においてよく用いられる英語力の判断基準としては「実用英語技能検定(英検)」が古くから知られており,「英検2級」が高校卒業レベルとされています。
これをTOEICスコアに換算すると一体何点に相当するのでしょうか。
それを知るためには,以下の表が役立ちます↓
これは英語資格・検定試験の結果をCEFRという国際指標と比較するための表になりますが,左から3列目にある「英検」と一番右の列にある「TOEIC L&R」を比べてみましょう。
すると,英検2級はTOEIC550点以上に匹敵する結果となり,先ほど述べた日本人のTOEIC平均スコアはこれよりも上になっていることがわかりますね。
意外かもしれませんが,我が国における英語教育は,実は一定の成果を上げているわけです。
最近だと,スマホアプリを中心とした優れた教材が多く世に出るようになったことに加え,社会全体における英語機運の高まりも影響しているように思われます。
教育改革の影響も大きく,私は塾で指導することもあるのですが,高校3年生がギリギリまで受験勉強を頑張って一気に成績を伸ばしているのを見ると,そう感じずにはいられません。
それではここで,ご自身の英語力を予測するため,簡単なテストをしてみましょう!
以下の単語のうち,どのくらいの数の意味がわかるか確認してみてください↓
上のページに載っている200語のうち意味が分かるものが半数以上あれば,TOEIC500点のレベルがあると見なすことができます。
みなさんの結果はいかがだったでしょうか。
ここで話を元に戻しますが,日本人のTOEIC平均スコアが約600点という数字は一方で,大学生活などを通して英語力が伸びていない学生が多いことも示しています。
というのも,TOEIC受験者の約8割が21歳以上であり,その多くは大学を卒業している人に当たるからです。
実際,社会人と学生で50点近く平均点が異なるという話も聞くので,当サイトでは以下のように見なしています↓
スタディTOEICの考える平均スコア
- 学生であれば590点
- 社会人ならば640点
これからの英語教育では4技能をバランスよく伸ばすことが重視されるため,中学から高校で培った「英語の読み書きできる能力」に磨きをかけると同時に,大学生や社会人時代において「英語を聴いたり話す能力」までをも高めていくことが期待されています。
さすがに英検1級(大学上級程度でTOEIC945点相当)を目標にしろとは言わないまでも,「英検準1級(大学中級程度はTOEIC785点相当)に匹敵する英語力は目指して欲しい」というのが日本政府の本音でしょう。
また,今後はTOEICのS&Wにも注目すべきです。
いずれにせよ,高校3年生が自身の英語力のピークとならぬよう,折角学んだ受験英語を実用的な英語力へと変えていきましょう!
目標にしたいTOEICスコア
Educational Testing Service(TOEICの開発元)は,頻繁に世界のTOEIC受験者の調査結果を公表していますが,2020年の結果によると,多くの方の受験目的は,
- 英語学習のため
- 就職活動のため
- 卒業に必要なため
である場合が大半(8割程度)を占めていることがわかっています。

さて,上に挙げた3つの目的ですが,卒業しなければ就職もできませんので最後の2つはまとめて考えると,「勉強目的か就活目的か」の観点から論じていくのが良さそうです。
TOEICで高スコアを取得した先にどのような幸せが待ち受けているかについて,以下で別々にみていくことにしましょう!
英語学習が目的の場合
英語学習とTOEICスコアの関係ですが,TOEICは合格か不合格かを決めるテストではなく,客観的に自分の英語力を測るための指標として使えるテストです(最近は英検であっても,合否とは別に「スコア」が表示されるようになりました)。
そのため,普段英語を学習している方が定期的に健康診断を受けるような感じで用いることができます。
純粋に自分の英語力が上がれば嬉しいものですし,上がった分だけ,英語を使ってできることの選択肢も広がったことになるわけです。
以下はTOEIC受験者にとってはおなじみの表で,コミュニケーション能力とTOEICスコアを比較したものですが,日本人の平均スコアはこの比較表によればCレベルで,「通常会話はOKでも,話が複雑になると意思疎通が困難なレベル」とされます↓
それに対して,レベルBではどのようなことが書かれているのでしょうか。
「業務上は大きな支障がなく,意思疎通を妨げることもない」などと,だいぶ良い評価がなされています。
海外ドラマのセリフが少し聴き取れるようになったり,海外旅行の際の異文化コミュニケーションをより楽しめるようになるのもBレベルからです。
といったわけで,英語を勉強しようと思ったら,まずは日本人の平均点を目指し,その次に730点を目標に設定したいものです。
とはいえ,英語学習目的でTOEICを受ける人というのは,誰からも頼まれていないのに過酷なテストを自ら進んで受けに行っているわけで,普段から努力していて学習意欲に満ちている人がほとんどでしょう。
なので,860点のレベルA,さらには900点を超えて990点満点ホルダーと,行き着く先まで挑み続けることになるのは容易に想像できます。
上のいずれのスコアであっても,最終目標に十分足るものではありますが,面白いところとして,TOEICには「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」という表彰制度が存在し,該当者になると以下のような立派なセットがもらえます↓
なお,表彰基準としては同年度にL&Rで800点(L375/R425)に加え,S&Wで330点(S160/W170)を取ることが必要です。
L&Rに限って言うと,「リーディングで425点」というのが大きな壁となっており,そのくらい取れる人というのはリスニングパートで満点近い得点のはずなので,実際にはトータル900点くらい取らなければ実現できませんが,是非,こちらも目標の1つにしてみてください。
ところで,学生の場合は実感が持てないかもしれませんが,社会に出ると,テストで本気を出す機会というのがめっきり少なくなります。
学生時代,定期テストや模試は忌み嫌う存在だったように思いますが,なくなってみると自ずと欲するようになるわけですから,人間とは不思議なものです。
就職活動が目的の場合
上ではやる気に満ちた方の場合についてみてきましたが,大半の受験者は基本的にはそうではありません。
実際,先の調査によると受験者の半数以上が「そうでない人」,つまり「就職や単位取得または昇進のために仕方なくTOEICを受験しなくてはいけない人」であることが判明しています。
例えば大学生がTOEICで良い点を取ると,単位や卒業要件として認定してもらえるわけで,2018年の成蹊大学の例ですと「590点で2単位,730点で4単位,860点で6単位」が取得できました。
単位認定のための最低点数が当時の日本人の平均点に近かったので,最近の結果が加味されているのでしょう。
また,早稲田大学ともなるともう少し条件は厳しくなり,2020年の例ですと「卒業要件に690点または880点以上が必要」でした↓
ただし,早稲田大学の英語の入試問題を解ける受験生であれば,高3の時点でTOEIC690点くらい取れる実力には十分達していたはずです(早稲田大学の偏差値は最低でも62.5ですから,これは全受験生の上位10%くらいにあたります)。
つまり,上に示した卒業要件は「大学に入ってからサボって学力を落とすな」という大学側からのメッセージとも考えられるでしょう。
平均に注目することで「偏差値50=TOEIC600点」と見なすことができますが,偏差値62.5の大学出身である事実を社会に認められるためには,TOEIC690点が必要だということです。
もちろん,就活(さらにはその後の社会人生活)においても,TOEICスコアが高ければ高い方が得をするという事実を忘れてはなりません。
今やグローバルな時代ですから,就活時に「英語が得意です」とアピールするのは当然です。
自分が大学院時代に所属していた研究室にも一流企業からの誘いが来ましたが,「この研究室の新卒希望の方で,かつ英語力のある人を」というのが相手方の決まり文句でした。
ここで具体的な数値を挙げますと,英語活用実態調査2019年における新入社員に期待する平均スコアは535点でした↓
とはいえ,これは部署や企業によってさまざまで,2022年度の採用において資生堂のグローバル業務の管理職では730点以上,楽天グループでは800点以上が基準となっていたことを考えると,これから就職活動する方であれば690点以上を目安に頑張りましょう!
「英語が苦手で,TOEIC500点すらとんでもない!」という方も多いでしょうが,昇進・昇格の際にTOEICスコアを参考にしている企業の数は年々増加傾向にあり,入社してからも英語学習からは逃れられないのが現実です↓
- 係長や主任=515点(400点~700点)
- 課長=530点(400点~700点)
- 部長=565点(400点~800点)
- 役員=600点(470点~860点)
カッコに示したのはバラつきとなりますが,TOEICスコアが高いに越したことはないでしょう。
もちろん,業務がこなせることが第一で,そこに+αの英語力ということに疑いはありませんが,海外出張の基準に使われるスコアが平均で620点である他,駐在員レベルともなれば10年前には650点だったものが,今では730点程度に上がっているとも聞きます。
まとめ
以上,日本人の平均TOEICスコアを色々なものと比較して,目標となる点数を目的別にいくつか提示してきました。
今回の記事のポイントについて整理すると,
- 2021年度のTOEIC平均スコアは614点
- 語学目的であれば730点・860点・900点・990点
- 就職目的であればまずは偏差値50=590点を目指す
- アピールには690点以上,できれば730点は欲しい
- これからはTOEIC S&Wも重要
となります。
TOEICスコアは,英語勉強から遠ざかると一気に落ちてしまうので,少しずつでも長く続けていくことが大切で,何より効率的です。
忙しい毎日であっても,通勤通学のすき間時間に数分でも学習を積み重ねていれば,TOEICスコアは徐々に上がっていき,長い将来にわたって自分の評価は高まり,最終的には生涯年収まで左右しかねないといっても過言ではありません。
先ほどの調査では,報奨金として900点取ると20万円,990点取ると100万円がもらえる会社や,資格手当が出る会社もありましたが,自身の成長を楽しむか,そうでないならTOEICの勉強はもはや業務の1つだと割り切って考えましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。