TOEICとは「Test of English for International Communication(国際コミュニケーション英語能力テスト)」の略語で,英語を母語としない人を対象とした,オフィスや日常生活における英語でのコミュニケーション能力を測るためのテストです。
ビジネスの世界で注目されがちですが,日常的な英会話がどのくらいできるのかを知るためにも利用できることを忘れないでおきましょう。
もちろん,ビジネス界や教育機関からの信頼度が高い,英語の実力測定テストとなっています。
なお,世界規模でみると160ヶ国で数百万人が受験しており,日本だけでも200万人以上が利用しました(2021年度)。
今回は,そんなTOEICテストの種類や実施日程,料金についてまとめていきましょう!
TOEICの種類について
TOEICテストは種類別に細かく分けると,全部で5つあります↓
- TOEIC Listening & Reading Test(L&Rテスト)
- TOEIC Speaking & Writing Tests(S&Wテスト)
- TOEIC Speaking Test
- TOEIC Bridge Listening & Reading Tests
- TOEIC Bridge Speaking & Writing Tests
ちなみに,4と5に挙げたTOEIC Bridge Testsですが,これは英語の初学者向けのもので,1や2のテストの前段階として受けたり,学生の実力判定で行われたりしていますが,英検やTEAPと比べるとまだまだ受験者数は少ないです(2021年度は年間14万人程度が利用)。
また,3のTOEIC Speaking Testは2の前半部分と同一のものであることを考慮すると,実質1と2がメインだと考えてしまって構いません。
TOEIC L&Rテスト
TOEIC L&Rテストは,Listening(聴く)とReading(読む)能力を測定するものです。
とはいえ,L&Rのスコアが高い人はS&Wの得点も高くなる傾向にあるわけで,実質これだけでも英語4技能を測る目安になりうるというのが,S&Wが登場するまでの認識でした。
今でも,基本的に企業や大学で評価されるのはこのテストであり,「TOEIC600点」だとか「990点満点」などと言うときは,L&Rテストのスコアのことを指しています。
本テストを受験する目的ですが,キャリアアップや海外赴任する際の実力証明に加え,就活でのアピールや大学でのクラス分け,卒業要件や単位認定などに利用するためという回答が多いです↓
-
-
日本人のTOEIC平均スコアと目標点のまとめ
TOEIC L&Rテスト(長いので,以降は「TOEIC」とだけ書きます)ですが,形式が新しく変わるたびに,決まって難しくなります。 運営曰く,「小手先の対策で対応できないようにする」ことが目的になって ...
続きを見る
もちろん,純粋に英語力を測定するために受験するような方もいます。
続けてそのテスト形式についてですが,リスニングが最初の45分間で100問あり,続けてリーディングが75分間で100問出題され,2時間で200問を解くという過酷な試験です↓
-
-
TOEICの時間配分や解く順番をどう考えるべきか
TOEICでスコアに影響を与えるのは,純粋な英語力だけではありません。 各パートの解き方のコツを知っていたり,毎日,各パートの問題を数題解くようにするだけでも結果は大きく変わってきます。 もちろん,今 ...
続きを見る
解答はすべてマークシートに記入し,記述式の問題はありません。
なお,スコアは10点から990点までの5点刻みで採点されますが,1問=5点などと決められているわけではなく,実際,数問間違えてしまっても990点満点が取れてしまうことについては,意外と知らない方も多いのではないでしょうか↓
-
-
TOEICでは何問ミスまでOK?目安は
TOEICは,英語学習に終わりがないという理由から,完璧をイメージさせる1000点ではなく,990点満点として計算されます。 ですが,そのせいでしょうか。 200個もある問題全てに正解しなくても,99 ...
続きを見る
テストでは,勘であってもすべてにマークするように指示されますが,たとえ何も記入しなくても0点とはなりません。
ちなみに,最高得点が1000点になっていないのは「英語学習に終わり(満点;パーフェクト)がないから」という,開発国であるアメリカらしい理由から来ています。
数年ごとにテストの内容は見直され,さすがにパート数が変わってしまうほどの大きな変更は見られないものの,最近だと2016年に新形式へと変わり,話者の国籍が多様化して訛りのある英語の登場頻度が増え,問題の数や内容は微妙に変化し,旧形式よりも明らかに難しくなりました。
これにより,実力以上のスコアが出づらくなっています。
世の中には,「これだけやればバッチリ!」などといった怪しげな対策がはびこっており,残念ながらそれらは一定の成果を上げているわけですが,TOEICの形式が変わってから日が経つにつれ,徐々に平均点が上がってくることからもそれは裏付けられるでしょう。
とはいえ,できるだけそういった付け焼刃的対策が通じなくなるよう,開発者側も工夫を凝らしているというわけです。
なお,TOEICのスコアに有効期限はありませんが,英語を長く使わなくなってしまえば高いスコアを維持することはできません。
ゆえに,実力証明としてTOEICスコアを求める企業などは,比較的最新のスコアのみを有効としているところも多いです(もっとも,一度取れたスコアにまで戻すことはそこまで大変なことではありませんし,潜在能力の高さを示すことは古いスコアであっても十分に可能でしょう)。
TOEIC S&Wテスト
次にS&Wテストについてですが,こちらで測定される技能としては,名前からも分かるように,スピーキング能力とライティング能力というアウトプット型能力が中心となります。
先述の通り,L&Rテストの結果だけからも,その人のアウトプット型能力の高さについて多くを知ることができるのですが,それでも,それ専用の訓練をしておかないと,実際の場面で英語が出てこないことは多々あるわけで,そのためにも,L&Rの実力に見合うだけのS&Wスコアを取っておきましょう!
実際に試験はビジネスシーンにおける円滑なコミュニケーション能力を調べる目的で行われますが,1枚の答案を採点するのに複数の採点官が関わることが特徴的です。
スピーキングが20分で11問,ライティング分野は60分で8問を解く,計80分ほどのテストとなっていますが,TOEIC Speaking Testのみを受ける場合だと,前者のみで試験が終了となります。
試験会場ではパソコンとヘッドセットを使用して受験するところもユニークでしょう(なお,写真のように,しゃべりながらキーボードを打ち込むような作業はありません)↓
このことが意味するのは「試験ではコンピュータを相手にする」ということであり,スピーキングでは自分の声が録音されますし,ライティングではキーボードをタイプして答えを入力することになります。
その後,受験者の解答はアメリカにある本社へと送られ,平均して10人もの採点官に評価されることになるわけですが,1枚の答案を1問ごとに別の採点官が採点し,その際,受験生の名前や性別,さらにはそれまでの答案の出来映えといった,採点判断に影響を与えうる要因は極力排除されるという徹底ぶりです。
採点官の方も採点日には試験を受けさせられ,正常な判断ができるかどうかをチェックされます。
試験は一斉に開始にならず,試験部屋に入ると他の受験者の話す英語が聞こえてきたりと,初めて受験する方は面食らうでしょう↓
-
-
TOEICのS&Wテストの前日と当日の様子
今回は,TOEIC S&Wテストの前日における準備から当日の様子まで,実際の体験談をもとに注意点を述べていきたいと思います。 L&Rテストと比べると,会場や人数の点で小規模な受験になるという違いがあり ...
続きを見る
SpeakingもWritingも0点から200点のスコアで採点されますが,L&Rと異なりS&Wのスコアは10点刻みです。
L&Rテストの方だと,100点アップすると実力アップしたと考えてよいなどと言われますが,S&Wはその5分の1の20点アップすればレベルアップできたと見なしてよいでしょう(私の経験では,大きな問題を1つ「結構できた or まったくできなかった」かで,そのくらいの差が出ました)。
なお,なんとも手間がかかりそうなS&Wテストなだけに,検定料は高めとなっています(後述)。
TOEIC Bridgeテスト
先ほどマイナーなテストなどと言ってしまいましたが,TOEIC Bridgeテストも通常のTOEICと同様,L&RとS&Wがあり,ビジネス要素を排して日常シーンのみを扱っているところと,初級者から中級者までを対象としている点の2つが特徴的です。
問題数や試験時間は通常の約半分と比較的楽に受けられ,L&Rはリスニングが25分で50問,リーディングは35分で50問を解くことになります。
とはいえ,S&Wのテスト内容は通常のものとあまり変わらず,スピーキングが15分で8問,ライティングは37分で9問です。
問題形式も通常のものと似ているので,将来的にTOEICを受けるのであれば,Bridgeの勉強していて損はありません。
また,スコアですが,4技能すべてで,1点刻みの15~50点で採点されます。
ビジネスパーソンというよりも,どちらかと言えば,学生生活を送っている中高生や大学生が受けるようなテストだという認識を持っておきましょう。
IPテスト
これまでに説明してきたものは「(一般)公開テスト」でありましたが,実は「IPテスト(Institutional Program Test)」と呼ばれるものが別に存在します。
これはいわゆる「団体特別受験制度を利用したTOEICテスト」のことで,受験者側からすると,通常よりも安い価格で受験できたり,自分の所属する団体の会場で受験できたり,申し込みがギリギリになっても大丈夫だったり,結果をより早く知ることができたりなどのメリットが得られるのが特徴です。
ただし,実際に出てくる問題が使いまわしであったり,最近ですと,自宅でWebカメラ越しに受けられたりと,通常のものとは違いがあります(滅多にありませんが,不正が行わたというニュースを聞くときは,決まってIPテストです)。
そのため,公式認定証が発行されず,履歴書や願書においてもIPテストのスコアを用いることができないことが多くなっており,有効期限の話と同様,成績証明を行う必要がある方は注意してください。
これ以外に,「公開テスト団体一括受験申込」という制度もありますが,一般で申し込んだ場合とそこまで大きく変わらないので省略します。
なお,2021度の受験者数をみるとL&Rテストが212万人,S&Wテストが3.5万人程度となっていて,後者においては徐々に受験者数は増えており,2013年と比べると1.5倍以上になったものの未だ少ない状況です(最近はコロナ禍で全体的にやや減少傾向にあります)。
一方で,TOEIC Bridgeテストでは9割以上がIPテストの利用,つまり学校などの団体で申し込んでいることになり,受験者数は2011年をピークに減少傾向にあります。
TOEICテストの日程について
新型コロナウイルスによる影響で,これまでとは実施の形態が大きく変わりました。
もっとも,別段特殊な対応が求められるわけではなく,ピーク時ほどの混乱は見受けられません。
TOEIC L&Rテスト
コロナ前は2月と8月を除く年10回の実施で,暑いときと寒いとき以外に行われていたL&Rテストですが,最近は1回あたりの収容人数が少なくなった関係で,1日2回(午前と午後)かつ毎月の実施となりました。
2022年8月21日に300回を迎えたL&Rテストですが,2023年度の日程は以下のように予定されています↓
2023年4月23日 | 2023年10月1日 |
2023年5月21日 | 2023年10月29日 |
2023年6月10日 | 2023年11月19日 |
2023年6月25日 | 2023年12月10日 |
2023年7月23日 | 2024年1月28日 |
2023年8月20日 | 2024年2月25日 |
2023年9月10日 | 2024年3月17日 |
これまではすべてが日曜日でしたが,2023年の1月23日に初めて土曜日の実施がアナウンスされました(赤字部分)。
受験機会が増えるのは良いことで,本年は全14回となっています。
なお,住んでいる地域によっては実施されない月があるので注意してください。
以下は過去の例ですが,水戸や日立では2月や4月にテストが行われていないことがわかります↓
ついでに言うと,水戸と日立は統合されて「水戸・県北」になるなどの変更も起こっています(ただし,実施回数はやや増加傾向にあります)。
また,いきなり申し込んですぐ受験するというわけにはいかず,インターネットで1~2ヶ月ほど前に申し込みを済ませておかないといけません。
かつては定員制かつ抽選制だったのですが,第300回以降は,申し込んだ人全員が受験できるようになりました。
TOEIC S&Wテスト
TOEIC S&Wテストも,毎月どこかの日曜日に行われています(一部の受験地は隔月の場合あり)。
ただし受験地は少なくなり,北海道,宮城,東京,神奈川,千葉,埼玉,愛知,京都,大阪,兵庫,広島,福岡のみです。
時間は午前か午後を選べるため,回数としては年に24回実施されている計算になります。
2022年8月分からは申込開始日が2週間早まり,追加料金を払えば追加申込も可能になるため,L&Rと比べると申し込みやすいです。
2023年度の日程は以下の通りとなっています↓
2023年4月16日 | 2023年10月8日 |
2023年5月21日 | 2023年11月5日 |
2023年6月11日 | 2023年12月3日 |
2023年7月9日 | 2024年1月14日 |
2023年8月6日 | 2024年2月18日 |
2023年9月3日 | 2024年3月24日 |
Speaking Testだけを受ける場合も同一日程です。
TOEIC Bridgeテスト
TOEIC Bridgeは基本学校で受けることが多いと言いましたが,個人で受けることもできます。
Bridge L&Rテストは年に5回(5・8・10・11・2月),全国22都市(札幌,宮城,埼玉,千葉,東京,神奈川,愛知,京都,大阪,兵庫,岡山,広島,福岡,岩手,水戸・県北,群馬,新潟,石川,静岡,愛媛,熊本,沖縄)での開催です。
一方,Bridge S&Wテストは年4回(ただし,午前と午後の2つから選べる),全国12都市(東京,大阪,北海道,宮城,神奈川,千葉,埼玉,愛知,京都,兵庫,広島,福岡)での開催です。
2023年度の日程は以下のようになります↓
L&R | S&W |
2023年5月21日 | 2023年5月21日 |
2023年8月6日 | 2023年8月6日 |
2023年10月1日 | 2023年10月8日 |
2023年11月19日 | |
2024年2月25日 | 2024年2月18日 |
赤字部分は2023年7月に追加実施が決定されましたが,L&RとS&Wの両者が同じ日に行われることもあれば,そうでない日もあるので注意してください。
TOEICテストの料金について
TOEIC L&Rテスト
TOEICの料金は全体的に高いため,そこまで気軽に受けられるものではないのですが,試験官の手配や会場を抑えるのに前もってお金がかかるので仕方がありません。
受験料は7810円ですが,再受験する際には「リピート受験割引制度」を受けることができ,2023年度からはルールが変更され「半年後から3ヶ月間に行われる公開テスト」を7150円で申し込むことができます(それまでは1年後から3ヶ月間でした)。
例えば4月に受験した方は,10月~1月の1回が割引対象月です。
試験が突然中止になった以外は返金されません。
実際の申し込みの様子については,以下の記事を参照してください↓
-
-
TOEIC L&Rの申し込み方法について
TOEICは,英語4技能のうち「聞く」と「読む」能力を評価する「Listening & Reading Test(L&R)」と,最近注目が高まりつつある「書く」と「話す」能力を測るための「Sp ...
続きを見る
TOEIC S&Wテスト
料金は10450円となり,採点に手間がかかっている分,高めの料金設定になります。
なお,Speakingテストのみ受験する場合は6930円です。
S&Wについては,この他,余計に手数料を支払うことでキャンセルや締め切り後の追加申し込み,さらには試験日時や会場の変更が可能ですが,より詳しい内容は別記事にしてありますので,興味がある方はお読みください↓
-
-
S&Wの申し込み方法!会員登録から受験料の支払いまで
TOEIC Speaking & Writing Tests(S&W)ですが,受験するにあたってかなりの覚悟が要求されるため,十分な準備をしていない状態では,そう簡単に挑む気にはなれません。 ...
続きを見る
TOEIC Bridgeテスト
Bridgeテストの料金ですが,L&Rが4950円,S&Wが9350円です。
こちらもS&Wにおいては手数料を支払うことで,追加申し込みや試験日時や会場の変更,キャンセルなどを行うことが可能となっています。
まとめ
以上,TOEICテストについて,日程と料金を中心にまとめてきました。
L&RだけでなくS&Wも受験することで,英語4技能の能力を総合的に評価してもらうことができます。
依然として「読む」と「聴く」を中心としたL&Rの受験者数の方が多いですが,今後社会人になる方であれば「書く」と「話す」ためのS&Wにも目を向けていく必要があるでしょう。
L&Rのスコアが良くても,果たして自分は英語が話せるのだろうかと思っているような方は,是非S&Wを受けて,ある程度の自信を得るようにしてください。
とはいえ,実施されている会場の数が少ないなど,受検地によって差があることも確かです。
これは是非とも改善してほしい課題となります。
ところで,ずいぶん前からかもしれませんが,英語力でその人の能力までもが評価されてしまう時代となってしまいました。
実際,自分の研究室に大手企業の推薦の話が来た際も,より英語ができる人が採用されましたし,大学受験においても英語の試験が免除されたり,そもそも英語ができないと,一流大学に受かることが非常に難しくなった時代です。
日本の社会自体は,英語ができなくても不自由なく暮らせるにもかかわらず,なぜか英語ができるのが当たり前のように考えられているわけで,そんな世の中の仕組みに疑問を抱くことも多々ありますが,社会のルールがそのようになってしまっている以上,英語(特にTOEIC)は頑張らざるを得ません。
ただし,受験とは異なり一発勝負ではなく何回も受けられるテストなわけですから,日ごろから準備して,TOEICのスコアアップを目指すようにしましょう!
良い点数を取っておくと,思わぬ仕事が舞い降りてくる可能性も高まります。
当サイトの記事がみなさまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。