水泳でバタ足ができない人にクロールを教えるのが難しいように,中学生に高校で習う範囲を教えたところでいきなり理解できる人は少ないでしょう。
幼少期に私たちが「3匹の子ぶた」の絵本を通して得た教訓は,土台からしっかりと積み上げていくことの大切さでしたが,TOEICの勉強にもそれは当てはまり,自分の実力以上の勉強法を採用してしまうと,どんなに時間をかけたところで効果は薄いのです。
もちろん,「このスコアを目指すならこの勉強法をすべきだ」という王道は存在しますが,その内容は目標スコアが100点変わるごとに変わります。
なので実際は,今の実力から100点アップを何回か積み重ねて最終目標を達成する形を選びますが,現時点での実力に関係なく,「目標スコア別のおすすめ勉強法」について知っておくことは重要です。
その理由は,学ぶ勉強の幅が広がり,自分の英語力上昇を著しく妨げている原因分析に役立つからですが,これからTOEICの勉強を始める初心者の方から,普段それなりに勉強しているがいまいち成績が伸びないとお悩みの上級レベルの方まで,当記事の内容を是非参考にしてみてください!
もくじ
TOEICの目標スコアと勉強法

TOEICでは目標スコアごとに効果が高いとされる勉強法が異なります。
細かい内容に入る前に,スコア別にどのようなトレーニングを行えばよいのか一覧で確認しておきましょう!
分け方については諸説あり,例えば,レベル別評価を調べるとリスニングは「375点以上・275点以上・それ以下」で分けられ,リーディングは「425点以上・325点以上・225点以上・それ以下」で分けることもできますが,個人的にわかりやすいのは,総スコアを100点刻みで分ける方法です↓
目標スコアと最適なトレーニング
- 目標300点なら「単語学習」
- 目標400点なら「例文暗記」
- 目標500点なら「シャドーイング」
- 目標600点なら「ディクテーション」
- 目標700点なら「スピーキング」
- 目標800点なら「リーディング」
- 目標900点なら「ライティング」
目標スコアが500点であるなら,単語学習や例文暗記をすでにある程度理解した上で,リスニング能力を上げるのに特化した「シャドーイング」をトレーニングの中心に据えると上手くいくという意味になります。
もちろん,「厳密にこの表に従い,特定のトレーニングだけを行え」などと言うつもりは毛頭ありませんが,集中すべき内容が決まることで,教材や参考書を選ぶ際の迷いがなくなり,その分,時間もお金も節約できるわけです。
このとき,現在の保有スコアから100点以上離れたトレーニングをいきなり選ぶことのないようにしてください。
たとえ最終的な目標が700点であっても,今の実力が500点ちょっとしかないのであれば,いきなり「スピーキング」の学習から始めずに,「ディクテーション」のトレーニングから始めるのが重要です。
数ヶ月はその勉強法を中心に学び,模試や本番で600点を取れることを確認できて初めて,700点目標のトレーニングを行うようにしましょう。
ところで,日本人のTOEIC平均スコアの記事に書いたように,TOEICの全受験者の半分以上は650点を取ることができないのが現状です。
それにもかかわらず,書店に行けば800点や900点を目標とする参考書が売上ランキングの上位を占めており,それはつまり,それだけ多くの人が不適切な教材を手に取ってしまっていることを意味します。
「初めてのTOEIC」的なタイトルだと,店員に英語ができない人と思われて恥ずかしいと感じるかもしれませんが,インターネットで購入することもできますし,いつかちゃんと中・上級者向けの参考書を買う日は必ず来ますから,その日を楽しみに,今はみじめな思いに耐えることにしましょう。
その日がいつかについては,TOEICのスコアアップと必要な勉強時間のところで述べていますが,100点アップさせるのに最低でも200時間の勉強が必要です。
毎日どのくらい勉強できるのか,そして本番までの残り時間も考慮して,焦らず着実にスコアアップをしていくことが重要ですが,いよいよ次章から,目標スコア別に具体的な勉強法についてみていくことにしましょう!
目標スコアが300点なら単語学習を
というのが,200点台のスコアの方の特徴になります。
なので,300点を突破するためには中学で習う基礎英単語を学び直すことが最もおすすめの勉強法となりますが,単語数にして1000語以上あるので,なかなかに時間がかかることを覚えておきましょう。
しかし,それ以上に注意すべきは「意味だけわかるようになってもダメ」ということです。
ここで試しにbatteryの発音を聞いてみてください↓
いかがでしたか。
一見簡単そうですが,上の音だけを聞いて「電池」という意味が浮かんできたのかが重要です(カタカナ読みすると「バッテリー」ですが,意味は「電池」で覚えておく方が役立ちます)。
このような,英語ならではの音にも対応できる必要があるため,絵本や中学の教科書を使って音読の練習をしてください。
このとき,和訳や文法,そして語句の解説まで載っている教材を用いるのがおすすめです↓
試験本番までにまだ時間に余裕がある方の場合,「ぜったい音読」のような参考書を使って中学英語を学び直すことができる他,スタディサプリのTOEIC対策コースでも中学レベルの単語を速習することができます。
目標スコアが400点なら例文暗記を
という悩みを持つのが300点台のスコア保持者の特徴ですが,勘の良い方だと,そういった単語から連想して未知の単語の意味を当てることができるかもしれません。
例えば,「albatross」という単語の近くにeat fishやwingのような単語を見つけられれば,それが海鳥の一種であることがわかるでしょう。
ですが,文法までしっかり理解できていないと,何が何をどうしたのかまではわからないわけです。
そのため,TOEICで400点以上を目標とする方は,中学レベルの英文法からやり直す必要があります↓
重要例文がまとめられている教材を使うことで,中学や高校の文法をしっかり理解することが可能です。
このとき,ただ解説を理解して問題を解くだけでは不十分で,例文をすべて暗記できるよう,学んだ表現を声に出しながら書き写したり,日本語訳を見て英文に変換して声に出すトレーニングだったりを別に行ってください。
重要表現が載っている参考書としては「くもんの中学英文法」や「中学自由自在」が有名ですが,スタディサプリの英検3級レベルの教材を使って始めてみるのもおすすめです。
目標スコアが500点ならシャドーイングを
500点~600点を目標とする場合,リスニングを主軸にして学んでいくことが有効ですが,現在400点くらいの実力しかない場合,本格的なリスニング勉強を行う前に「音法」について学んでおくようにしてください。
ナチュラルな英語においては,横の音同士が化学変化のようなものを起こすため,1語ごとに区切って発音したときと異なる音として聞こえることが知られています。
例えば,ask himが読みあげられる際,「アスクヒム」ではなく「アスキン」といった感じに聞こえるわけです↓
なお,このことについて網羅的に学ぶためにはスタディサプリの基礎リスニングを使うのが一番で,英語ネイティブであるサマー先生が,日本語で音法を1から詳しく解説してくれます。
音法を手持ちの音源を用いて確認する場合,語学プレイヤーのような再生スピードを調節できるアプリを利用するのがおすすめです。
もっとも,この機能については他のアプリでも搭載しているものが多いように思われます。
その後の学びですが,特に初回は負荷を目いっぱい下げてしまって構わないので,ゆっくり目のスピードでシャドーイングのトレーニングを行うようにしてください↓
慣れてきたら徐々にスピードを上げ,音源の内容が印刷された英文を用意して,読みあげられた速度のまま英文を目や指で追うトレーニングを行い,声に出すシャドーイングに挑戦しましょう!
目標スコアが600点ならディクテーションを
TOEICにおいて600点を取ることは,日本では大きな意味を持っています。
というのも,日本人の平均スコアが550~650点ほどであるため,多くの企業が社員に求める点数が同様の数値に設定されるからです。
そのためには,英語の音に対する瞬発力を高める必要が出てきますが,それには「ディクテーション」が有効なトレーニングとなります。
実際に行う際には洋楽を教材に用い,頭が英語のスピードについていけないという処理速度の改善に努めましょう↓
なお,最近流行りのスマホを使ったアプリ学習においても,基本的なトレーニング内容にディクテーションを採用しているものは多いです。
実際のTOEICでは,リスニングに限らずリーディングセクションの問題を解く際にもスピードが重要になってきます。
600点が目標の方であれば,TOEICの時間内にすべての英文に目を通すことは無理でしょう(スコアが700点を超えていても解き終えられなかった人は存在します)。
そのため,問題によっては捨て問(勘で解く問題)にしたり,細かい内容は飛ばすといった工夫だったりが必要になりますが,読むスピードは「1分間に100語」を読むことを目標に,スラッシュ・リーディングを行う際は極力日本語を介さず,頭にイメージを浮かべながら読むようにしてください。
なお,「ディクテーション」や「スラッシュ・リーディング」といった用語は,TOEIC学習に役立つトレーニング!10種類以上を駆使しようにまとめています。
目標スコアが700点ならスピーキングを
「リスニングのスコアをアップさせるためにスピーキング練習を行う」と言うと意外に思われるかもしれませんが,自分で話せる英語の数が増えてくると,その分,聴き取れる英語も増えてくることが知られています。
そこで,700点を目標とする方は,本腰を入れてスピーキングに取り組むようにしましょう↓
このときにシャドーイングも行うようにしますが,ゆっくり目のスピードで練習し,印刷された英文も見ながら行えた500点目標のときと異なり,目標を700点とする場合には,何も見ずに普通のスピードに対応できるようなトレーニングを行う必要があります。
スタディサプリのビジネス英語コースであれば,「瞬間発話プラクティス」と呼ばれるトレーニングにより,指定された場面における即答能力を養成することができますし,場合によってはオンライン英会話も取り入れてみても良い気分転換になるでしょう。
一方のリーディングですが,読む速度の目標は600点のときよりもやや高めの「1分間に150語」とします。
この速さの目安として,英文とその和訳を用意して,それぞれを読む速度をストップウォッチで測ったときに,かかった時間が日本語で読んだときの1.5~2倍に収まっていればOKです。
目標スコアが800点ならリーディングを
TOEICで800点を取るための勉強法ですが,例によってリスニング対策から説明していきます。
前章で紹介したスピーキング練習を継続するのが基本ですが,英文の先の展開を予測しながら読む必要があるため,論理的に話すことを意識しましょう。
通訳者が実践している方法になりますが,比較的ゆっくり読まれた音源を聴きながらメモを取り,聴き終わった後にそのメモを見ながら内容を英語でスピーキングする,「ノートテイキング&リプロダクション」を取り入れたトレーニングがおすすめです。
一方,リーディング対策としては日本語を介さず頭にイメージを浮かべて読むためのトレーニングがおすすめで,それには同じ記事の日本語新聞と英字新聞を用意し,あらかじめ日本語でイメージを作ってから,英字新聞を早読みしてみてください(後述しますが,この方法は900点目標にも使えます)↓
準備が大変だと思われる方は,The Japan Times Alphaを使ってみるのが良いですが,最近は「Google翻訳」や生成AIによる翻訳サービスが簡単に利用できるので,ひとまずコピペできる英語のニュース記事の用意さえできればOKです。
リーディングの速度とリスニングできる速度は密接に関係していることが知られていて,相乗効果が期待できます↓
目標スコアが900点ならライティングを
というのが800点台を保有する方の特徴で,英語の達人になるための登竜門とも言えるのがTOEIC900点です。
リスニングの勉強法ではスピーキングを中心にして,聞かれた内容に瞬間的に答える練習を積みましょう。
そのためには,洋画と英語字幕を用意し,観て聴き取れなかった部分を字幕で確認するとともに,気に入ったシーン(数分程度)を抜き出しては,特定の役を演じるロールプレイを行うのが有効な勉強法です↓
一方,リーディングでは内容が絵のように浮かぶものの,長文では細かく誤解しているところもあります。
展開を予想しながら読むことでスピードを250語/分以上に高めるとともに,先の英字新聞の内容をライティングするトレーニングを行いましょう。
具体的な方法としては,初めて出会った表現を含む数文を選ぶため,まずは英字新聞を速読します。
続けて,日本語でその記事を読んで内容を理解したら,選んだ数文を声に出しながら5回以上書き写すようにしてください。
また,何かのテーマに基づいて英作文を行った際には,「DeepL Write」や「Grammarly」などの生成AIを利用するようにすると,文法や内容の評価を自動で行ってくれて便利です。
TOEICで800点以上を取るためのトレーニングには幅広いジャンルのものを用いることができるため,色々と試しているうちに,気が付いたら900点を超えていたと言う方も少なくないでしょう↓
まとめ

以上,TOEICの目標スコア別の勉強法についてまとめてきました。
100点刻みで紹介してきましたが,これは何も私だけが提唱しているものではなく,通信教育大手のアルクなどでも同じようなコース設定がされているのでご安心ください(現在,TOEICの方の通信教育はスタディングの方に引き継がれています)。
また,これまでに触れてこなかったこととして,実際のテストではリスニングセクションとリーディングセクションで似た点数になることは稀で,前者のスコアの方が高めに出る傾向にあることが挙げられます。
とはいえ,その差が100点以上になることは通常あり得ないので,600点を実現した場合だと「L330 R270」のような得点パターンになっているはずです。
逆に,もし現在,「L410 R230」のような偏ったスコアをお持ちの方が700点を目指す場合は,「リスニングは800点のための勉強法,リーディングには600点のための勉強法を採用する」といった具合に工夫してください。
また,TOEICでは同じ100点アップを目指す場合でも,目標スコアが高くなるほど実現がより困難になっていくものです。
つまり,500点を600点に上げるよりも600点を700点にする方が難しく,800点を900点にするのはさらに難しくなります。
これは英検でも同じで,3級から準2級突破にかかる勉強量よりも,2級から準1級を突破する方が圧倒的に多くなるわけです。
なので,社会人が確実に成果を出す必要に迫られた場合などにおいては,TOEICの達人に付きっ切りで教えてもらうのがおすすめで,実際私はパーソナルコーチプランを3ヶ月間利用してみたことで,900点近くまでスコアを伸ばすことができました。
お金にものを言わせてスコアアップを達成するのは,ちょっとズルいと思うかもしれませんが,自分よりも英語ができる人とTOEIC学習を介して知り合えた経験は,自分の人生観も変えてくれる素晴らしいものになりますし,良い教材と相まって学習のしやすさや理解度は抜群です。
是非,当記事の内容を基に,色々と検討を重ねてみてください。
最後になりましたが,TOEICでみなさんが目標スコアを取れるよう,陰ながら応援しています!