TOEICが新形式になってからすでに6年以上が経ち,その間に出版された定評あるリスニング教材を,まがいなりにも結構な数やってきました。
そして,そういったものを実際に使ってきてわかったことは,どの教材も基本方針に大差はなかったということです。
レイアウトや解説の詳しさなどで多少の相性問題に発展する可能性はあるでしょうが,TOEICスコアの半分を占めるリスニングパートを攻略する目的で書かれた参考書は1冊買えば十分で,あとはその方法論を模試で実践して練習を積むのみというのが,私のたどり着いた結論になります。
今回の記事ですが,私がこれまでにレビューした教材の内容や実際の体験をもとに,リスニングパートの解き方をまとめました。
リーディングパートよりも高得点が狙いやすいパートですから,本記事の内容を参考に,ぜひとも満点を狙っていただけたらと思います。
TOEICのリスニングパートについて
リスニングパート(セクション)の時間配分については以下の記事にまとめたので,当記事ではそれ以外の内容を扱います↓
100問を45分(回によっては46分や47分の場合もあり)で解きますが,すべての問題は同じ1問としてカウントされ,配点が周りよりも高く設定されている問題はありません。
構成ですが,パート1は6問,パート2は25問,パート3は39問,パート4が30問となっていて,495点が満点でスコアは5点刻みです。
ただし,採点は「1問5点」などといった単純なものではなく,数問間違えてしまっても満点を取れることがありますが,基本,1つ間違えたら5点減点くらいの意識で臨んでも構いません。
とはいえ,全問正解しようと意気込みすぎると逆にそれが仇となり,わからない問題があって動揺してしまった結果,連続ミスを誘発してしまう失敗談もよく聞くので注意してください。
リスニングパートに関してですが,2022年4月実施の第293回公開テストの総合結果をみると,平均スコアは331.7点となっており,受験者の7割弱が250.8点~412.6点の範囲に収まっていました。
470点以上取れると上位5%に入りますが,平均スコアについて詳しくは日本人のTOEIC平均スコアと目標点のまとめを参考にしてください。
なお,リスニングスコアをスコアによって3つの層に分けると,375点や275点が1つ目安になりそうですが,それぞれの層の長所と短所は以下のようになります↓
さて,リスニングパートの問題形式について1つだけ言及しておくと,英語の発音は米国の話者によるものだけではなく,英国やカナダ,そしてオーストラリアの話者によって行われることになるため,訛りのある英語が多くの受験者を苦しめることを忘れてはいけません。
使う教材によっては米国の話者のみが話しているものもあるため,その場合,後者の英語が聞き取れずに焦ってしまうでしょう。
ある意味,リスニング攻略法の最初の1歩は,国ごとの英語訛りに慣れることにあると言っても過言ではありません。
例えば,「花瓶」という意味のvaseという簡単な単語であっても,イギリス人の話者が読むと「ヴァーズ」になります。
次章からは,パートごとの解き方のコツをみていきますが,それぞれのコツの後にカッコ書きした数字(1~3)は,その攻略法について触れている教材です。
記事の最後に参考文献としてまとめているので,より深く学びたい方はそちらの教材を確認してみてください。
パート1の解き方
パート1の特徴
1枚の写真について4つの短い説明文が1度だけ放送されます。写真を最も適切に描写しているものを選びましょう。説明文は印刷されておらず,全6問は全パートの中で最も少なく,負担をあまり感じることなく取り組むことができます。難問の存在も新形式からは影を潜め少,選択肢は明確に発音されるため聴き取りやすいでしょう。
TOEICのパート1の解き方ですが,以下のようなコツが知られています↓

人の動作や身に付けているもの,物の位置などをあらかじめチェックしておき,答えを予想しておくのがポイントです。
人数は何人か,そして周辺にあるものはどうなっているのかなど細部にも目を配ります。

目立つものがあっても,その影についての描写や,それと異なる地味な家具についての記述が正解になることもあります。
上の攻略法は,あえて何が問われるのかを予想しないという,一つ前に紹介した方法とは真逆の考え方です。
絶対的なルールを設定するのではなく,柔軟に構えられるとより良い結果になります。

パート1でよく出てくる単語のうち,意味が難しいと思われるものには「prop(支える)・stack(積み重ねる)・side by side(並んで)・lawn(芝生)」のようなものがあります。
上に示した単語で意味がわからないものがあれば,語彙力が不足していることは明らかです。
単語帳を使うか,パート1の問題を解きながら出会った未知の単語について,独自に単語のリストを作成するようにしてください。
また,発音も一緒に覚えるようにしないと,放送された音を頭の中で単語に変換できません。

"have been+過去分詞"と"be being+過去分詞"の形は特によく出てきますが,動作が完了しているのか進行中なのかを判別できる重要な表現です。
意識して練習していれば,きちんと聞き取れるようになります。
なお,後者の「受け身の進行形」について忘れているような方は,英文法もしっかり学んでください。

果物や乗り物の名前(例:リンゴや車)はそれぞれproduce(農作物)やvehicle(乗り物)と言い換えられるわけですが,このように具体的な名称が抽象的な言葉に言い換えられ,それが正解になることが多々あります。
放送された英文にcoffeeが出てきた場合,選択肢にcopyのような似た音があると,それが不正解であることが多いこととは真逆となるヒントです。

この攻略法は,動詞だけでなく,前置詞の区別も重要だということを示しています。
これはパート3に図が出てきたときにも役立ちますが,beside(のそばに)やacross from(の向かいに)など,すぐに頭にイメージを浮かべられる状態にしておきましょう!

解答用紙の選択肢を1つずつ確認していく際,これだと思った選択肢が見つかったところで鉛筆を止めておくようにし,全部を聞き終わった時点で鉛筆が止まっているマークを塗りつぶすテクニックです。
これをしていないと,最悪,どの選択肢が正解だったか忘れてしまいますし,もし最後に今鉛筆を置いているものよりも確からしい答えが出てきた場合に消しゴムを使わずに済みます。

パート1は聞き取りやすく,問題数が少ないのは確かですが,簡単かと聞かれれば決してそのようなことはありません。
難問はなくとも,「高スコア取得者でも1~2問は間違える」事実を知っておくだけで,以降の問題にそのミスを引きずることなく進めるようになるでしょう。
パート2の解き方
パート2の特徴
流れる質問に対して適切な答えを3つの選択肢から選びます。質問も返答も英語で読まれますが,問題用紙には指示文以外は一切印刷されていないことに注意してください。パート1から打って変わって,いきなり本格的なリスニングがスタートするので面食らってしまう受験者も多いです。とはいえ,リスニングパートで唯一の3択問題となっており,質問も発言も短く,対策すればすぐにできるようになるのがこのパートとも言われます。実力差がスコアに表れやすいパートでもありますが,25問すべてに集中を切らさず聴くようにしましょう!
TOEICのパート2に対しても,前章と同じように解き方のコツをみていきます。

連続してよくわからず焦ってしまうと,パート1以上に減点に繋がってしまうのがパート2の怖いところです。
3つの選択肢を聞き終わった段階で,どの選択肢も答えと思えないときが往々にしてあります。
そんなときは長考しても正解できませんので,適当にマークしましょう!
少なくとも,2つに絞れている時点で,勘で解くより正解できる確率は上がっているのです。
逆に,Aが明らかに正解だとわかったら,残り2つの選択肢はややリラックスして聴くようにすると,メリハリが付いて集中力を保てます。

一例を挙げると,"Could you ask me a favor?"と聞いて,「お願いがあるのですが」とすぐにわかることが大事です。
Could you~?といった「依頼」に対する答え方(SureやI'd love toなど)に加え,問題演習で出会った頻出の英単語の理解も深めておきましょう。

「どっちが好きですか?」と尋ねられた際,「どっちも嫌い」という答えは予想外のものになるのではないでしょうか。
他にも「相手先にメールを送った?」という質問に対して,「今から送るところさ」といった返答を選ぶのは難しいものです。
さらに,Whyで始まる疑問文に対して,普通の文で答えたもの(例えば「電車がまだ来ていないのはなぜか」という問いに対し,「雨の日はよく遅れます」と答えるもの)など,日本語で聞いても迷うような返答もあるため,なるべく多くの問題演習を解いて,多くの返答パターンについて学び,予想できる答えの幅を広げておきましょう。
ちなみに,このような問題は「そらしの問題」だとか「距離感がある応答」などと呼ばれています。

似た音を聞き分けたり,WH系の疑問文の出だしの音をしっかり聞き取るために,純粋にリスニング力を高めておく必要があるのは当然ですが,そういったものほど軽視しがちです。
参考書を読んでいると,WH系の疑問詞で始まる問いかけがパート2の半数近くを占めているというデータに出会うこともあります(3)。
そもそも,「自分が発音できない音は聞き取れない」という原則がありますので,音声変化やスピーキングのトレーニングができるリスニング教材で学ぶのがおすすめです。

こういった英文に出会ってやや考え込んでしまった結果,文章全体の意味を理解できず,質問に答えられずに混乱してしまうことがよくあります。
YesやNoの返答がどんな意味になるのか,付加疑問文の場合は,時制や主語の確認に使うこともできるので,このような形式の問題にも慣れておきましょう。
パート3の解き方
パート3の特徴
会話が1度だけ放送され,そのあと設問が続きます。この会話自体は印刷されていません。問題用紙に書かれた設問と4つの選択肢を読んで,適切な答えを選びましょう。全部で13題,39問からなります。

どの参考書にも必ず書いてあるのがこの「先読み」のテクニックです。
パート3以降は,図表問題含め,すべての問題において行ないましょう。
しかし,先読みする範囲を質問文だけにとどめるか,それとも選択肢まで全部読むかについては,著者によって意見が異なります。
中には,場所や時間を問われるもののみ選択肢も読むような指導をしているところもあるほどです。
ちなみに,3つ目の設問の音声が流れたときにはすでに次の設問の先読みに入っておくリズムが大切で,それを崩さないようにしましょう。
そのためには,模試で練習を積んでおく必要があります。

シチュエーション別にどのような展開になるのか知っておくことで,本番でも話の流れが読めるようになるはずです。
スケジュールや申し込みの変更を始め,会社や社員同士またはお店とお客のやり取りなどは題材として適しています。
いったん慣れてしまうと,設問で狙われる位置,例えば電話の留守番メッセージであれば,目的が冒頭で述べられるなどとわかってくるものです。
これは図表問題にも当てはまり,細かい情報よりも文章の流れに重きがあるパート3では大変有効な解き方とされます。
もっとも,細かい情報を聞き取るべきもの(イベントの日時など)と,全体に散らばるヒントから推測できるもの(話し手の職業など)もあるので,1つの質問内容ばかり気にしてしまって,他の問題のヒントを聞き逃すことのないようにしてください。

ヒントとなる文を言っているのが男性か女性かは,設問の主語(The manかThe womanのどちらで設問が始まるのか)と一致していることが多いので,性別と主語に意識を向けることもコツの1つです。
なお,この方法は会話に参加する人数が3人であってもうまくいくことが多いので,絶対ではないものの試してみる価値はあります。

会話の最初の部分に1問目の答えが,真ん中部分に2問目の,そして最後に3問目の答えが出てくることが往々にしてあるので,このことを知っておくことで,たとえ音声の最初を聞きそびれてしまったときであっても,「2問目と3問目だけは正解しようと」と気持ちをリセットすることができます。
1問目のヒントが後半にも登場し,後から正解にたどり着けることもあるので諦めないでください。

3人による会話や意図問題(implyが出てくる質問)は解くのに時間がかかる上,悩みぬいた上に出した答えが不正解であることも多く,高スコアを目指す方であってもとりあえずでマークして,他の設問に集中する方が良い結果に繋がる場合があります(新形式になって初登場した問題です)。

先読みと聞き取りに集中するため,マークシートの色塗りはせず,線を引くか少し塗る程度にとどめておくことで,問題に集中できる時間を増やせるテクニックです。
実際に塗りつぶす時間としては,パート3の最後の設問が読まれている時間などを利用しましょう。
私は当初,この方法をバカバカしいと一笑に付して実践していませんでしたが,実際に模試で試してみたところ結果が良かったので,今では毎回本番で使っています。
パート4の解き方
パート4の特徴
アナウンスや電話のメッセージなどの説明文が1回だけ放送され,設問がそれに続きます。説明文は印刷されておらず,問題用紙の設問と4つの選択肢を読んでは,その中から適切なものを選びましょう。出題は会話が10個あり,問題数は全30問です。

パート4の根幹となる解き方はパート3のものと同じです。
定番の展開を伴うストーリーや留守電のメッセージは必ず出るとまで言われているので,模試をただ解くだけでもスコアアップできるという意見の裏にはこういった理由があります。

これを行うためには,当事者意識を持つことと状況をイメージに変換するという2つの方法が有効です。
自分が当事者である気持ちを持つことで短期記憶に残りやすくなります。
まさにメッセージを聴く側になりきるということですね。
英文を聞いている最中は理解できたのに,設問を解く段階になって覚えていないという悲しい状況にならぬよう,記憶にとどめやすくする工夫として,会話の状況を絵のように描き出し,イメージとして記憶に残すことも良い方法とされています。
いずれにせよ,放送内容を忘れにくくする工夫については,自分なりに何かしらの対策を考えておきたいものです。

1問目の設問に対して,2問目と3問目の設問はヒントの回数が少ないことが多いため,キーワードに注意して聞く必要があります。
逆に,そうしたヒントは一瞬にしか出てこないので,聞き逃すともう正解できません。
また,答えの出てくる順番もパート3と同様に,順番通りに出てくることが多いです。
その他のコツ
リスニングパート全体に関わる解き方のコツとしては,純粋にリスニング力を高める必要があります。
パート2でも同じことを言いましたが,そもそも音が聞き取れなければ,多くの解き方のコツを役立てることができません。
そういった意味で以下の方法はもっともで,意外と盲点になるものです↓

答えが合っていても,自信がなかった問題は10回以上解き直すように心がけましょう。
わかりきった内容であっても何回か聞くことで,音を聞いたときにイメージが浮かぶまでの時間が短縮されたり,単語の意味がより明確になる効果があります。
加えて,TOEICのリスニング対策では音法とシャドーイングが鍵で紹介したテクニックを駆使して復習すれば,より効果は高まるはずです。
パート4を得意にするためには,リーディングパートであるパート7を練習材料に復習すると相乗効果があると言われます。
というのも,パート4は英文音声の一文が長く,話の展開が一貫しているため,速読関連のスキルが直接出来に影響してくるからです。
英文の語順通りに前から訳してはイメージを描く作業が有効だという点も共通しています。
そもそも,質問文を早読みする際,速読力がないと時間的になかなか厳しくなるでしょう。
まとめと参考文献
以上,TOEICのリスニングパートの解き方について,市販教材に載っている知見や,私が実際に試験を受けた経験を踏まえながらまとめてきました。
数多くのコツについてみてきましたが,これらの方法を全部完璧にして身に付けてほしいわけではありません。
もちろん,多くをものにするに越したことはありませんが,模試を活用して実践してみては,自分に合った方法を取り入れることから始めてください。
一般的にはリーディングよりもリスニングの方が点数を伸ばしやすいので,「高スコア取得のためにはリスニングパートで満点を取得する」というのがある意味,常識となっていたりもします。
是非,今回の解き方のコツを参考に,土台となるリスニング力を伸ばしていただけたら幸いです。
なお,2016年にTOEICの問題が新形式に変更されてから,問題の構成が変わったのはもちろん,それまでのTOEICよりも難しい問題が増えてきています。
そのためにも,最新の出題傾向を踏まえた教材で勉強することは重要です。
当記事で参考にした書籍の他,当サイトでおすすめしているアプリなどを使って勉強することをおすすめします↓
当記事で参考にした参考書
1冊目は関正生先生の著書ですが,スタディサプリのパーフェクト講義でも同じ内容を動画付きで学ぶことが可能です↓
2冊目は,TOEIC講師歴20年の経験から,あまり他に類をみない切り口で解説していて,特にパート2の解説が秀逸でした。
質と量にこだわり,公式問題集よりも本番に近い難易度で,模擬試験5回分のセットが用意されているのが3の精選模試の良いところです。
上で挙げたリスニングのものの他に,リーディング用のものもあります。
実際の使い勝手については,リンク先のレビュー記事をお読みください。
サンプル問題は公式問題集のものを参照しました↓
新形式問題に対応した公式問題集は複数冊が発売になっていますが,私がレビューした3はリスニングスコアが300点前後の方におすすめです。
800点以上を目標にする方は,TOEIC L&R 800+がおすすめで,中上級者向けの攻略法も学べます。
最後までお読みいただきありがとうございました。