TOEICが新形式になってから定評あるリスニング教材がいくつも市場に出てきており,まがいなりにも結構な数やってきました。
そして,そういったものを実際に使ってみてわかったことは,どの教材も基本方針に大差はないということです。
レイアウトや解説の詳しさなどで多少合う合わないの問題はあるでしょうが,TOEICの点数にして半分を占めるリスニングパートの攻略に関しては1冊買えば十分で,あとはその方法論を実際の問題に当てはめて練習あるのみだというのが私のたどり着いた結論になります。
今回の記事ですが,私がこれまでにレビューした教材の内容と実際の体験をもとにリスニングパートの解き方についてまとめたものです。
リーディングパートよりも狙いやすいリスニングパートですから,本記事の内容を参考に,ぜひとも満点を狙っていただけたらと思います。
TOEICのリスニングパートについて
リスニングパートの時間配分については以下の記事にまとめたので,ここではそれ以外の内容について簡単にまとめてみましょう。
100問を45分前後で解きますが,すべての問題は同じ1問としてカウントされ,配点が高い問題などはありません。
構成ですが,パート1は6問,パート2は25問,パート3は39問のパート4が30問で,495点満点で点数は5点刻みです。
なお,採点ですが「1問5点」などといった単純なものではなく,数問間違えても満点が取れたりしますが,基本1つ間違えたら5点減点というくらいの意識で臨んでも構いません。
ただし,全部正解しようと意気込みすぎると,逆にそれが仇となって連続で間違えてしまうことがあるので注意してください。
リスニングパートに関してですが,2019年1月実施の公開テストの総合結果によると,平均スコアは322.7点となっており,受験者の7割弱が240点~405点の範囲に収まっています。
平均スコアについて詳しくは以下の記事を参考にしてください↓↓
なお,リスニングスコアを得点ごとに3つに大別した場合,長所と短所は以下のようになるようですが,私本人にその自覚はありません↓↓
みなさんはいかがでしょう。
さて,リスニングパートの問題形式について1つだけ言及すると,英語の発音が米国だけでなく,英国やカナダ,そしてオーストラリアの話者によって行われるので,訛りのある英語が多くの受験者を苦しめることを忘れてはいけません。
教材によっては米国の話者のみが話しているものがあるので,その場合,後者の英語が全然聞き取れないと焦ってしまうでしょう。
ある意味,リスニング攻略法のゼロ段階としては,国ごとの英語訛りに慣れることを挙げておきたいと思います。
前置きはこれくらいにして,いよいよパートごとの解き方のコツをみていきましょう!
なお,それぞれの解き方の後にカッコ書きした名前は,その攻略法について詳細を述べている教材の著者名となります。
本記事の最後に参考文献をまとめていますので,興味を持った攻略法はそちらの教材で確認するようにしてください。
パート1の解き方
基本情報
1枚の写真について4つの短い説明文が1度だけ放送されます。写真を最も適切に描写しているものを選びましょう。説明文は印刷されておらず,全6問と最小を誇るパートで,ある意味導入部として疲れずに取り組めます。加えて,選択肢は明確に発音され聞き取りやすいのが特徴です。
パート1の解き方ですが,以下のようなコツが知られています↓↓
先に写真を見て,目立つものをチェックしておく(中村紳・中村澄)
人の動作や身に付けているもの,物の位置などをあらかじめチェックしておき,答えを予想しておくのがポイントです。
人数は何人か,そして周辺にあるものはどうなっているのかなど細部にも目を配ります。
目立たないものが正解になるパターン(関)
目立つものであっても,その影についての描写や,人ではない地味な家具について記述したものなどが正解になることがあります。
こちらの攻略法は,あえて何が問われるのかを予想しないという,一つ前に紹介した方法とは真逆の考えです。
よく出る単語を覚える(関・中村澄)
パート1でよく出てくる単語のうち,意味が難しいと思われるものには「prop(支える),stack(積み重ねる),side by side(並んで),lawn(芝生)」のようなものがあります。
これらの単語で意味がわからないものが多く見受けられるようであれば,パート1を解きながら自分で単語のリストを作成するとよいでしょう。
状態動詞と進行形の聞き取りが大切(全員)
"have been+過去分詞"と"be being+過去分詞"の形は特によく出ますし,意識していればきちんと聞き取れます。
受け身の進行形について忘れていた方はしっかり文法も学んでください。
抽象的な語句に慣れる(関)
果物や乗り物の名前(例:リンゴや車)はそれぞれproduce(農作物)やvehicle(乗り物)と言い換えられますが,このように具体的な名称が抽象的な言葉に言い換えられ,それが正解になることがあります。
放送された英文にcoffeeが出てきた場合,選択肢にcopyのような似た音があるとそれが不正解になることが多いのとは逆ですね。
位置関係を示す表現に注意(全員)
この攻略法は,動詞だけでなく,前置詞の意味も重要だということを示しています。
すぐに頭にイメージを浮かべられる状態にしておきましょう!
正解と思える選択肢に鉛筆を止めながら聴く(中村紳)
解答用紙の選択肢を1つずつ確認していく際,これだと思った選択肢が見つかったところで鉛筆を止めておくようにし,全部を聞き終わった時点で鉛筆が止まっているマークを塗りつぶすテクニックです。
これをしないと最悪,どの選択肢が正解だったか忘れてしまいますし,もし最後に今鉛筆を置いているものよりも確からしい答えが登場した際であっても消しゴムを使わずに済みます。
ミスを引きずらない(関)
聞き取りやすく,問題数が少ないからと言って,パート1が簡単かというとそんなことはありません。
「高スコア取得者でも1~2問は間違える」ということを知っておくだけで,パート2以降にそのミスを引きずらずに進めるでしょう。
パート2の解き方
基本情報
流れる質問に対して適切な答えを3つの選択肢から選びます。質問も返答も英語で読まれますが,問題用紙には指示文以外は一切印刷されていないので注意。パート1から打って変わって,いきなり本格的なリスニングがスタートするので面食らってしまう受験者も多いようです。とはいえ,リスニングパートで唯一の3択問題となっており,質問も発言も短く,対策してすぐにできるようになるのがこのパートだとされています。実力差がスコアに表れてくることも多いことも確かですが,25問すべてに集中を切らさず聴くようにしましょう!
パート2でも前章と同じように解き方のコツをみていきます。
ミスを引きずらない(関・中村紳)
連続してよくわからず焦ってしまうと,パート1以上に減点に繋がってしまうのがこのパートの怖いところです。
3つの選択肢を聞き終わったのにもかかわらず,どれも答えと思えないときが往々にしてあります。
そんなときは長考しても正解できませんので,適当にマークしましょう!
逆にAが明らかに正解だとわかったら,残り2つの選択肢はややリラックスして聴くようにしてメリハリをつけるのもコツだと言います。
慣用表現に慣れる(全員)
"Could you ask me a favor?"を聞いて,すぐに「お願いがあるのですが」とわかることが大事です。
Could you~?といった「依頼」に対する答え方(SureやI'd love toなど)に加え,問題演習で出会った頻出の英単語の理解も深めておきましょう。
予想外の答えに対応できるようにする(全員)
「どっちが好きですか?」と尋ねられた際,「どっちも嫌い」という答えは予想外ではないでしょうか。
他にも「相手先にメールを送った?」という質問に対して,「今から送るところさ」といった返答を選ぶのは難しいものです。
さらにWhy~で始まる疑問文に対して,普通の文で答えたもの(例えば「電車がまだ来ていないのはなぜか」という問いに対し,「雨の日はよく遅れます」と答えたもの)など,日本語で聞いても迷うような返答もあるため,なるべく多くの問題演習にあたって,想像力の幅を広げておきましょう。
ちなみにこのような問題は「そらしの問題」だとか「距離感がある応答」などと呼ばれています。
純粋に音の聞き取り能力を高める(全員)
似た音を聞き分けたり,WH系の疑問文の出だしの音をしっかり聞き取るためにも,純粋にリスニング力を高めておく必要があるのは当然ではあるものの見落としがちです。
WH系の疑問詞で始まる問いかけがパート2の半数近くを占めているというデータもあります(中村紳)。
そもそも「自分が発音できない音は聞き取れない」という原則がありますので,音声変化やスピーキングについても学べるリスニング教材がおすすめです。
否定疑問文や付加疑問文に精通しておく(全員)
意味をすぐに取れないと,その意味を考えているうちに質問が流れて混乱してしまいます。
パート3の解き方
基本情報
会話が1度だけ放送され,そのあと設問が続きます。この会話自体は印刷されていません。問題用紙に書かれた設問と4つの選択肢を読んで,適切な答えを選びましょう。全部で13題39問からなります。
設問は先読みする(全員)
どの参考書にも必ず書いてあるのがこの「先読み」のテクニックです。
図表問題含め,すべての問題において行ないましょう。
しかし,先読みする範囲を質問文だけにとどめるか,それとも選択肢まで全部読むかについては著者によって意見が異なります。
なお,3つ目の設問の音声が流れたときにはすでに次の設問の先読みに入っておくリズムが大切で,それを崩さないことが肝要です。
定番シチュエーションを知る(全員)
シチュエーション別にどのような展開になるのか知っておくことで,本番でも大体話の流れが読めることがあります。
スケジュールや申し込みの変更を始め,会社や社員同氏のまたはお店とお客のやり取りなどが例として挙げられることが多いでしょう。
いったん慣れてしまうと,設問で狙われる位置,例えば電話の留守番メッセージであれば目的が最初に述べられることなどがわかってくるものです。
これは図表問題にも当てはまり,細かい情報よりも文章の流れに重きがあるパート3では大変有効な解き方とされます。
主語に注目する(中村澄)
ヒントとなる文を言っているのが男か女かは,設問の主語(The manかThe womanのどちらで設問が始まるのか)と一致していることが多いので,性別と主語に気を向けるのも解き方のコツです。
なお,この方法は会話に参加する人数が3人であっても適用可能なので,絶対ではありませんが試す価値はあります。
会話の順と答えの順は一致する(中村澄)
会話の最初の部分に1問目の答えが,真ん中部分に2問目の,そして最後に3問目の答えが出てくることが往々にしてあるので,このことを知っておくことで,たとえ音声の最初を聞きそびれてしまったときであっても,「2問目と3問目だけは正解しようと」と気持ちをリセットすることができます。
難しい問題は捨てる(関)
3人の会話や意図問題(implyが出てくる質問)は解くのに時間がかかる上,悩みぬいた上に出した答えが不正解の場合も多く,高得点を目指す方であってもとりあえずでマークして,他の設問に集中する方が良い結果に繋がる場合があります(なお,先の図表問題を含めてこちらも新形式問題です)。
解答用紙には印だけ付けておく(中村澄)
先読みと聞き取りに集中するため,マークシートの色塗りはせず,線を引っ張るか点を打つ程度にとどめておくことで,問題に集中できる時間を生み出すテクニックです。
実際に塗りつぶす時間としては,パート3の最後の設問が読まれている時間などを利用しましょう。
当初はバカバカしいと一笑に付して実践していませんでしたが,実際に模擬試験で試すと結果が良かったので本番でも使わせていただきました。
パート4の解き方
基本情報
アナウンスや電話のメッセージなどの説明文が1回だけ放送され,設問がそれに続きます。説明文は印刷されておらず,問題用紙の設問と4つの選択肢を読んでは,その中から適切なものを選びましょう。出題は全30問です。
先読みと本文に集中する(全員)
パート4の根幹となる解き方はパート3と同じです。
定番の展開を持ったストーリーや留守電などは必ず出るとまで言われているので,ただ問題を解くだけでもスコアアップしてくるところにはこういった理由があります。
短期記憶に残す努力をする(関)
これを行うためには,当事者意識と状況を絵にして直すという2つの方法が有効です。
自分が当事者である気持ちを持つことで短期記憶に残りやすくなります。
英文を聞いている最中は理解できたのに,設問を解く段階になって覚えていないことを避けるため,記憶にとどめやすくする工夫として,会話の状況を絵のように描き出してイメージして記憶に残すのも良い方法とされます。
いずれにせよ,放送内容を忘れにくくする工夫については自分なりに対策を考えておきたいものです。
設問の種類に注意(中村澄)
1問目の設問に対して,2問目と3問目の設問はヒントの回数が少ないことが多いため,キーワードに注意して聞きましょう。
また,答えの出てくる順番もパート3と同様に,順番通り出てくることが多いです。
その他のコツ
リスニングパート全体に関わる解き方のコツとしては,純粋にリスニング力を高める必要があります。
パート2でも同じことを言いましたが,そもそも音が聞き取れなければ,多くの解き方のコツを役立てることができません。
そういった意味で,以下の方法は最もです↓↓
問題を解き直す(関)
答えがあっていても,自信がなかった問題は10回以上解き直すように心がけましょう。
わかりきった内容であっても何回か聞くことで,音を聞いたときにイメージが浮かぶまでの時間が短縮されたり,単語の意味がより明確になる効果があります。
加えて,以下で紹介したテクニックを駆使して復習することで,より効果は高まるはずです↓↓
パート4を得意にするためには,リーディングパートにある「パート7」を練習材料に復習すると相乗効果があります。
というのも,パート4は英文音声の一文が長く,話の展開が一貫しているため,速読関連のスキルが直接出来に影響してくるからです。
英文の語順通りに前から訳しては,イメージを描くようにする作業も共通しています。
そもそも,質問文を早読みする際,速読力がないと時間的になかなか厳しくなるでしょう。
まとめと参考文献
以上,TOEICのリスニングパートの解き方について,市販教材に載っている知見や実際に試験を受けた経験を踏まえながらまとめてきました。
数多くのコツについてみてきましたが,これらの方法を全部完璧にして身に付けてほしいわけではありません。
もちろん多くをものにするに越したことはありませんが,模擬試験を利用して実践してみては,自分に合った方法を取り入れることから始めてください。
一般的にはリーディングよりもリスニングの方が点数を伸ばしやすいので,「高スコア取得のためにはリスニングパートで満点を取得する」というのがある意味常識となっていたりもします。
是非今回の解き方のコツを参考に,土台となるリスニング力を伸ばしていただけたら嬉しいです。
なお,2016年にTOEICの問題が新形式に変更されてから,問題の構成が変わったのはもちろん,従来のTOEICよりも難しい問題が増えてきています。
そのため,最新の出題傾向を踏まえた教材で勉強するようにしてください。
次章の参考文献の他,当サイトでおすすめしているアプリなどを使って勉強することをおすすめします!
本記事において参考にした文献は以下の通りです。
実際の使い勝手については,リンク先のレビュー記事をお読みください。
サンプル問題は公式問題集のものを参照しました↓↓
新形式問題に対応した公式問題集は複数冊が発売になっていますが,私がレビューした3はリスニングスコアが300点前後の方におすすめです。
関先生の著書には世界一わかりやすいシリーズがありますが,スタディサプリのパーフェクト講義でも同じ内容がそれも動画付きで学べます↓↓
論理的でわかりやすく,そもそも英語が聞き取れない学習者を読者として想定しているところが親切です。
TOEIC講師歴20年の経験から,あまり他に類をみない切り口で解説しているのが以下の1冊↓↓
特にパート2の解説が秀逸でした。
質と量にこだわり,公式問題集よりも本番に近い難易度で,模擬試験5回分のセットが用意されているのが精選模試の良いところです↓↓
リスニングの模試だけ解くことができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。