TOEICを10日間で分野ごとに攻略していくシリーズは,試験直前期であっても使えてしまうコンパクトさが好評です。
今回レビューするのは「文法編」ですが,他にもいくつか出ています↓↓
本シリーズの特徴である「見やすさ」については相変わらずで,全体的にカラフルかつイラストが豊富な印象です。
TOEICの短期間勉強法には夢やロマンが詰まっていると思いますが,本書ではどのような工夫が施されているのでしょうか。
出るとこ集中10日間!文法編について
まずは今回レビューする本について整理させていただきます。
- 名称:出るとこ集中10日間!TOEICテスト文法編
- 著者:八島晶
- 出版:西東社
- 出版年度:2016年12月
- ページ数:191ページ
- 付属品:なし
- 目標スコア:600点以上
本書のターゲットとなるのはPart5の得点力を上げたい方で,目標スコアとしては600点を目標にしている学習者となります。
出題頻度が高かったり短期間で学習しやすいとされる文法事項が,全部で36個の「攻略のツボ」にまとめられているので,それらを覚えることで同類の問題が解けるようになってはスコアアップにつながるといった仕組みです。
公開テストの日時が差し迫っている方にとっては,たとえ直前の模試でPart5のスコアが著しく低く出てしまっても,今さら全文法範囲をやり直すだけの時間は残されていません。
そこで,本書で学んだ文法だけは正解できるようにし,あとの問題は捨てて他のパート対策に時間を回すという戦略が輝いてくることになります。
スコア600点を目指す方というのは,普通の人が取れる問題をすべて落とさなければ取得できるわけですから,難問にまで手を出す必要はありません。
一般的にPart7のような読解問題は時間をかければ解ける可能性も高まりますが,Part5のような文法問題は,知識がなければどれだけ時間をかけたところで正解にはたどり着けないわけです。
本書を使うことで,ある程度割り切ってPart5に取り組めるようになるので,結果的にリーディングセクション全体のスコアアップにつながると言ってもいいでしょう。
そんな本書の目次は以下の通り↓↓
1日ごとに注目する文法項目が明確で,TOEICで頻出の「品詞問題と動詞問題」を中心に,毎日4個のツボを学んでいきます。
最終日には例のごとく,総合テストもあるようです。
それでは次章で本書の特徴と使い方についてみていくことにしましょう!
出るとこ集中10日間!文法編の特徴
繰り返しになりますが,本シリーズの大きな特徴は何と言っても,10日間という短期間で完結できるところでしょう。
「Part5の正答率を上げよう」と心に決めた時点で,ある程度の向上心が芽生えているわけですから,3日坊主ならぬ10日坊主にはなれるはず。
本書のコンセプトは,最初の9日間を使って36個の攻略法を学び,最後の1日で総仕上げをするというものです。
また,別に直前にだけ使うべきものでもないので,他人より理解するのに時間がかかる人であっても,この程度のボリュームであれば2,3回繰り返しても1ヶ月かかりません。
ちなみに本書1冊でどれだけの問題量を解けるのかについてですが,そもそも本番で解くことになるPart5の設問数をご存知でしょうか。
それはずばり「30問」です。
本書は攻略のツボごとに2問の練習問題が付いていて,最終日に解くことになるのが36問ですから,全部合わせると計108問を解くことになります。
これは予想問題集を3冊やった以上の分量に相当しますし,実際に出やすい問題のみを選んできているわけですから,受けられる恩恵はそれ以上でしょう。
加えて目を惹くカラフルな解説が最初から最後まで続くので,難しい問題も簡単に思えてくるのは相変わらず不思議なところです。
白黒の解説書と比べると不思議とやる気も高まり,簡単に最後までやり遂げられては達成感が味わえるのは,集中10日間シリーズ特有の魅力だと思います。
出るとこ集中10日間!文法編のレビュー
さらに詳しく本書の内容を見ていきましょう!
まずはIntroductionと書かれたページを読んで,この後の解説で使われる前提知識について学びます(画像左)↓↓
ここでは文構造の解説に欠かせない「5文型」について学びました。
関連して,SVOCに組み込んでしまいがちな「副詞や副詞句(前置詞+名詞)」もしっかり区別できるようになりましょう。
前提知識を学んだら,次ページから,いよいよ攻略のツボについて学んでいきます。
例題が1問ありますが,赤文字で何やらSTEP1~3という文字が書いてあるのがわかるでしょうか。
これは問題を解く手順を示しており,すぐ下に目をやると,「解く流れ」という項目において,以下のような手順が紹介されています↓↓
- 選択肢から品詞問題と判断する
- 空所の前後を確認
- 文の要素(SVOC)をチェック
- 選択肢から答えを選ぶ
まず選択肢をみると,directに関連する単語が4つ並んでいるので,品詞の区別が問われていることは明らかです。
なお,この「文法問題はまず選択肢から見る」というテクニックを知らなかった人であれば,Part5の新たな突破口になるかもしれません。
また,問題文にある"from the airport"や"to the conference center"を「前置詞+名詞=副詞句」だと見抜くことはできたでしょうか。
これは先のIntroductionで語られた内容が理解できていればわかります。
そして最後に本文の"Mr. Peterson took a taxi"という文をSVOの第3文型だと分析できれば,答えは文型の構成要素にならないD(副詞)だと決められるわけです。
同じページの最下部には解答以外に和訳も見受けられますし,ページをめくるとより詳しい解説が続いていました↓↓
本書独自のとっつきやすさがそろそろわかってきたのではないでしょうか。
もちろん解説に手抜きはありません。
「-lyが付くと副詞」に加えて,friendlyを筆頭とした6つの「-lyが付く形容詞」まで紹介されていますから,結構細かいところまで説明は及んでいると考えられるでしょう↓↓
- 副詞には基本的に-lyが付き,文の構成要素にはならない
- 性質としては名詞以外を修飾し,文の様々な場所に挿入可能
文頭の文修飾副詞にも話が及んでいたのは驚きでした。
最後に2問の「確認問題」を解いたら,攻略のツボの1つ目が終了です。
ちなみに確認問題の正解と解説は,先ほどの手順を実践しやすいように丁寧に書かれています↓↓
1日あたり学ぶツボの数は4個になるので,これで4分の1のノルマが終わったことになります。
このような感じで9日間を終えたら,10日目は総仕上げとして「直前練習問題」に挑みましょう↓↓
これはDay1~9で学んだ攻略のツボを総復習できる実践問題です。
問題数も36問と,攻略のツボの個数と一致しています。
とはいえ出題の順番はランダムになっていますので,該当するツボはどれだったか思い出し,正しい手順で答えを選べるようになるまで練習しましょう。
上記画像の左ページをよくみると,全部で5回復習できるようになっているのがわかりますが,解きなおす行為の真価は,ただ正答率が上がるだけではなく,解答までのスピードが上がって時間短縮につながるところにあります。
野球の素振りではないですが,繰り返して練習し,類問をしっかりと正解できる「型」のようなものを身に付けましょう!
なお,解説ページは見やすく,誤答に対してもそれが間違いである理由まで書いてあるので親切です↓↓
間違えてしまった問題は,正解の横に「参照すべき攻略のツボ」が記載されているので,復習すべき箇所も明確でした。
まとめ
以上,八島晶氏の「出るとこ集中10日間!TOEICテスト文法編」のレビューでした。
短期間で終えられて達成感を得やすい問題量に加え,カラフルでわかりやすく丁寧な解説が魅力の文法用参考書だったと思います。
特にTOEICのリーディングパートは時間との闘いです。
本書を時間の許す限り何度もやり直しては,「解答スピード」という目には見えにくい真の実力をつけましょう↓↓
いくら実用英語の大切さが叫ばれようとも,日本人が英語を効率的に学習する上で必要なのは「文法力」です。
文法がしっかりしているからこそ,応用の知識を身に付けることができます。
一見文法とは程遠いところに位置するようなリスニングにおいても,文法力がしっかりしてくると早く聴けるようになるのは,文法知識があることで内容を推測しながら聴けるからです。
なお「10日間で学び終えなければならない」という本書のコンセプト上,どうしても説明に文法知識が多く出てきてしまっています(品詞や自・他動詞の区別,さらには接続詞の後の「S+Vの省略」など)。
そのため,高校1年で習う文法範囲の理解が怪しい方が本書を用いた場合だと,解説の理解度に差が出てきてしまうでしょうし,10日間でPart5が見違えるようにできるようになるかというとその可能性は低いように思います。
よって,そういったところに弱点がある方は,本書に入る前に,まずは別の教材で中学文法や高校文法を学ぶようにしてください。
逆にもっと英文法の問題を解きたかったり,TOEIC800点以上を目指すような方であれば,でる1000問の方をおすすめします↓↓