周りを見渡してみると,受験勉強を通して難しい英文を読めるようになったはずの大学生であっても,「TOEICで点数が取れない!」などと嘆いていることが多いのですが,それは一体どうしてでしょうか。
その原因の1つとして,TOEICならではの単語が登場してくることや独特の試験形式に慣れていないことが考えられ,前者についてはTOEIC初心者が単語を勉強する方法で述べました。
しかし「速読ができないこと」もこれに負けじと劣らず,大きな原因のように思われます。
単語勉強と比べると,より上級者に向けての課題になってしまいますが,これはリーディングパートのスコアが上がらない原因になっているだけでなく,リスニングパートのスコアにも影響しているところが厄介です。
そこで今回は「TOEICのリーディングスコアを上げるための勉強法」について考えていくことにしましょう!
目次
TOEICのリーディングは難しい
TOEICのリーディングが難しく感じられる理由として,読む英文の量が膨大であることを訴える方は多いように思われます。
そもそも,ビジネスにおける英語の運用能力を測定するためのテストがTOEICなわけですから,山積みになった書類を前にして,1つ1つの内容を大まかに把握していくために必要な読解スピードと理解力が試験本番で問われることは必然です。
ところで,TOEICではリスニング(L)とリーディング(R)の配点は同じ495点満点であるものの,ほとんどの方のスコアでは,Rのスコアの方が低くなっているのではないでしょうか。
参考までにスコア900点を達成する王道パターンについて考えてみると,「L480 R420」といった具合に偏ってしまうことが普通であり,「L450 R450」などと均等にはなっていないものです。
社会人の前に立ちはだかる1つの壁である600点というスコアの内訳でも,「L350 R250」となるか,極端な場合だと「L400 R200」に近い得点パターンになったりもします。
それほどまでに,リーディングで高いスコアを取るのは難しいわけです。
もちろん,このことを逆手にとって,リスニング能力を大きく伸ばすようにしては目標スコアを達成する戦略も考えられるのですが,それでもやはり限界はあります↓
興味深いことに,リーディングの勉強をすることでリスニングのスコアまでもが上がることが多いのですが,これはそもそも,読めるスピード以上で英語を聞き取ることができないことが原因だからです。
同様の理由で,読めるようになることでライティングが得意になることもありますが,次章では,そんなリーディングで必要とされる能力についてまとめていきましょう!
リーディングを得意にするための手順
TOEICのリーディングパートで高スコアをたたき出すためには,3つの力が必要になります。
それはずばり,以下の能力です↓
- 正確に読める「精読」の力
- 語順通りに読める「区切り読み」の力
- 素早く読める「速読」の力
この中で誰もが欲する力は,何と言っても3に挙げた速読能力でしょう。
ですが,残念なことに,この能力は他の2つよりも上位置にあるため,いきなりは手に入りません。
ただ目を早く動かして文字を眺めるだけでは速読と言わないわけですから,英文を正確に読むことができるようになってようやく意味のまとまりごとに区切って読むことができ,結果として速く読むことができるようになっていきます。
ゆえに,1つずつステップアップして身に付けていくことが重要で,これはつまり,上の3つの能力のうち,数字が若いものから順番に身に付けていく必要があるという意味です。
焦る気持ちがあってもそれはできるだけ抑えるようにして,1に挙げた精読能力から高めていきましょう!
ただし,テスト当日までずっと精読の練習だけしていてもスコアが伸びないところも忘れてはならず,ある程度できるようになった段階で,次の能力獲得へと移っていく必要もあります。
このときのタイミングについては,次章にまとめている目安スコアを参考にしてください。
精読できるようになるには
まずは現時点での精読力について知るために,模試(予想問題集)のリーディングパートを「時間を測らずに」やってみてください。
時間に制限がないということは,つまり速く読む必要がないわけで,現時点の自分での最高得点がどのくらいであるのかを把握することができるわけですが,このときに辞書を引くなどの調べる行為は禁止です(自分の実力以上の結果が出てしまうので)。
続いて,この時のスコアをいったん忘れ,自分がリーディングパートで何点くらい取るべきかについて考えてみましょう。
以下に,目標スコアとリーディングスコアの目安についてまとめておきました↓
目標スコア | リーディングの目安 |
800点 | 360点 |
700点 | 320点 |
600点 | 280点 |
500点 | 240点 |
なお,右列にある目安はこれまでの学習環境によって大きく前後することもあるものの,リーディングが目標スコアの半分以上の点数になることは滅多にありません。
リーディングで満点に近いスコアが取れるに越したことはないですが,勉強できる時間は限られています。
もし仮に今から試験本番までに200時間勉強できたとしても,TOEICのスコアアップと必要な勉強時間についてで述べたように期待値は100点程度になるため,リーディングに限れば40点アップくらいが限界でしょう。
さて,ここでわかった目安の点数と先ほどいったん保留にしておいた現状の最高得点の差を埋めていくことが今後の目標となります。
例えば,現時点での実力が330点で目安となるスコアが360点(届いていない状態)であれば,そもそものリーディング力が足らないので精読のトレーニングから始めなければなりません。
具体的な方法としては,中学や高校の英語からやり直すことが考えられます。
最近はスタディサプリのようなオンライン教育が利用できますので,大学生や社会人の方でも中高の英語の授業を学び直すことが可能です。
中学~高校初級レベルの英文読解と文法の授業を受けて英語の実力を底上げしてから,再び模試を時間無制限で解いてみてください。
ちなみに,リーディングパートが240点に達するあたりまでは,精読のトレーニングだけでも結構なリーディング対策になります。
なお,最初の模試において出てきた結果が目安となる点数を超えていた場合には,精読のトレーニングをする必要はありません。
より上位の,速く読めるようになるための練習へと移りましょう!
とはいえ,いきなり「1分間に250語のペースで読めるようになりましょう!」とか「頭の中に絵を描くように!」といったレベルを求めてしまうようでは,あまりにもハードルが高く設定されていると言わざるをえません。
当サイトでは,1つクッション的なものをはさむようにし,読んだ英文を忘れにくく,そして多少速く読めるようになる区切り読みの練習をおすすめしています。
区切り読みができるようになるには
本章で紹介する「区切り読み(スラッシュリーディングとも言います)」ができるようになると,文章の理解度と読む速度が上がります。
前章で紹介した精読能力が高まることで,意味がわかる単語同士が正しく繋がり,文構造に基づいてしっかりと意味が取れるようになっているはずです。
しかしそれでも英文を行ったり来たりして訳してしまえば時間がかかるものですし,文章を読み終えたときに「一体何の話だったっけ?」と内容を忘れてしまうこともあります。
そうならないためにも,英文を意味の区切りごとに斜線(スラッシュ)を入れ,頭から訳していく「区切り読み」を採用するのがおすすめです。
実際のTOEICでは書き込みができませんが,区切り読みを練習する段階においては,斜線をどんどん引いて練習してしまって構いません。
まずはスラッシュを入れずに読む
とはいえ,まず最初はスラッシュは入れずに行うところから始め,ストップウォッチを片手に英文を指でなぞるように読んでいきます。
一定の速度を維持できるのが理想ですが,具体例は速く読み,難しいところはゆっくり読むような緩急をつけても構いません。
もっとも,TOEICの文章ではさほど緩急を付けずに読むことが普通ですし,リスニングパートでも音声を読み上げる人たちはほぼ一定のスピードで話していますから,基本的には,一度決めた速度は最後まで変えないようにします。
こうして読み終えたら,1分で何語を読めたかを計算してみてください。
その後,内容が把握できているか確認してみて,間違っているようであれば,指でなぞるスピードを最初のものより控えめに行うようにします。
これを毎日,違う文章相手に行っていると徐々に読む速度が上がってくることに気が付くはずです。
教材の例としては,読解特急2スピード強化編のようなTOEICの他,読解速度の計算ができる参考書が売られている他,ビジネス寄りではなくなりますが,洋書を用いた勉強法のところで紹介したラダーシリーズも目標スコアに合わせて選ぶことができて読みやすいように思います。
次にスラッシュを入れた状態で読む
ちなみに,ここまではスラッシュを引かずに行う練習でしたが,大体1分に200語近くを読めるようになったら,スラッシュを入れた状態にして読んでいきましょう。
ある英文を意味ごとに区切るようにしますが,例えば,
I'm meeting/ with my business partner/ at 3pm /on the 3rd floor of my office.(「私は会う予定/取引先と/3時に/オフィスの3階で」)
というふうになったとします。
慣れていないと,この日本語は片言で分かりづらいように感じますが,あえてこれを,そのままの順で意味を理解できるように練習するところがポイントです。
精読の段階では,これを「私は取引先の方と3時にオフィスの3階で会う予定です」などと日本語に訳すわけですが,あえてその手順を挟まないことで高速化,そしてさらには重要情報である「3階,3時,会う」の3つを強く認識でき,結果として記憶に残りやすくなります。
実際の練習方法ですが,先の指でなぞる練習を今度はフレーズ単位で行うようにしましょう。
先ほどは1字ごとに読み進めていましたが,今度は区切った単語ごとに把握していくところが大きな違いです。
指はスラッシュごとにジャンプするように動くことになります。
やり方についてはTOEIC学習に役立つおすすめテクニックでも紹介しているので,併せて参考にしてみてください。
速読できるようになるには
これまでに紹介した2つの能力を身に付けると,リーディングパートのスコア的には300点ちょっとまで取れるようになると思います。
しかし,それ以上にスコアを上げたい方も少なくないでしょう。
そこで必要となるのが,真の意味で「速読」できる能力です。
前章のように,斜線で区切ることで速く読めるようになっても,長文では話の展開についていけないこともあるでしょう。
リーディングのさらなる高速化を図るためにも,英語を読む際は日本語すら介さないように注意する必要があります。
このとき,頭の中に場面を浮かべてイメージで残すことが大切で,日本語には訳しません。
先ほどの英文の例で言うと,「ビルの3階でお昼に会っているイメージ」を浮かべるだけにとどめるわけです。
この他,パラグラフリーディングということで,各段落の最初の文を重要視すること,またパラグラフの原則として1つの段落に言いたいことは1つという2つも意識しながら読むことで内容理解が確実になります。
最初のうちは各パラグラフを読むごとに,どのような内容だったかメモしておくようにしましょう。
なお,1分間に250語以上の速さで読めるようになるための勉強法としては,英字新聞と日本語の新聞2つを用意し,先に日本語で読んでイメージを浮かべられるようになってから英字新聞を読むという「合わせ読み」も知られています。
こちらは,実際に教材を用意するのが面倒ですが,英字新聞でTOEIC900点超え!ライティング力を強化しようの内容を参考に「日本語訳が利用できる英語学習者向けの英字新聞」を使うようにしてください。
英字新聞で初めて出会った表現を含む文をいくつか選び,その日本語訳を読む方法で勉強すれば950点も夢ではありません。
その場合,日本語で内容を理解してから,選んだ英文を音読しながら5回ほど書き出すトレーニングを欠かさずに行いましょう。
まとめ
ここまで,TOEICのリーディングスコアを上げるのに役立つ勉強法を中心に紹介してきました。
具体的には,まず自分の現時点における実力と目標までの差を把握し,その上で精読練習から始めて,区切り読み,そして速読の練習と段階を踏んだトレーニングが必要でした。
特にTOEICのパート7は時間との戦いになりがちで,最初のうちは時間内に終えることも難しいように思われます。
ですが,今回紹介したオンライン教育を始め,英字新聞やICTを活用しながら,焦らずじっくりと取り組んでいくことで,少しずつ早く読めるようになるはずです。
ぜひともリーディングを頑張って,目標のTOEICスコアを手に入れましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。