TOEICに限らず英語のあらゆる学習において,リスニング力はリーディング力と並んで他の技能よりも優先して伸ばしたい能力です。
TOEICにおいてはパート1~4でその実力が直に試されることになるわけですが,たとえS&Wを受験する予定の方であっても,あえてリスニングやリーディングの対策を行うことが高スコア取得の近道になることがあります。
この理由として考えられるのは,上記2技能に注力することで英語の実力自体が底上げされたからです。
本記事では「TOEICにおけるリスニング対策」について,どのような学び方が具体的に考えられるのかについてみていくことにしましょう!
目次
TOEICのスコアアップとリスニング能力の因果関係
TOEICスコアにして400~500点を保有している方の場合,リスニングの能力がスコアに大きく影響してきます。
このレベルにいる学習者の特徴ですが,聞いた英文に使われているいくつかの単語の意味が浮かんでくることはあっても,一文を完璧な状態で聞き取ることまではできないため,聞こえた単語だけを頼りに答えるしかない状態です。
例えば,以下の英文においては赤色で示した部分が聞き取りづらい箇所になるでしょう↓
Why don't you join us for dinner after the conference?
実際に私が受験した際にTOEICのパート2で出題された問題ですが,上の質問に対する選択肢は,
- He joined the company last month.
- Where are you going?
- Yes, last year.
のようになっていました。
リスニング能力が足りないと「join us」は1語として聞こえてしまうでしょうし,もし選択肢のAにjoinが登場していなければ,enjoyやjoyと聞き間違えてしまう可能性もあります。
他のdinnerやconferenceは聞き取れたと仮定すると,上の問題の場合,
(ワイドニュ)(ジョイナス)dinner after conference?
といった状態から正しい答えを選ばなければならないわけで,正解であるBの選択肢を選ぶのは中々に難しいのではないでしょうか。
英語がこのように正確に聞き取れない要因として,音が繋がったり落ちたりするナチュラルスピードの英語特有の現象が起こっていることが挙げられます。
つまりこれらをしっかりと聞き取れるようになることがスコアアップのための近道になるわけなのですが,そのためには以下の2つを意識して勉強していくことが大切です↓
- 音のルール(音法)を知る
- シャドーイングを行う
さて,これらを意識した勉強法とはどのようなものになるのでしょうか。
次章から1つずつ解説していきましょう!
英語の音法とその学び方
英語の音の変化には様々なルールがありますが,例えばスタディサプリの基礎講座においては上記画像で示したように「つながる音(連結)・落ちる音(脱落)・変わる音(同化)・短くなる音(短縮)・弱くなる音(弱形)・柔らかくなる音(変形)」を学ぶことができます。
スタディサプリのように音法を体系的に教えてくれる教材は過去にあまりなかったのですが,最近はリスニングについての意識も高まり共通テストでもリスニングの配点が英語の総得点の半分を占める時代です。
YouTubeでも音法を扱った動画がいくつか存在しているので,気に入ったものがあればそちらで学んでみるのも良いでしょう。
なお,音法について知ることはTOEIC500点を取るための必要条件ではありませんが,知識として持っておくことで初めて意識が音に向かうので早い段階で学んでおくに越したことはないわけです。
これは野に咲く植物や飛び回る蝶について,自分の知識が増えれば増えるほど不思議と目につくようになることに似ていますが,人の好き嫌いにおいて,好きな人や嫌いな人の名前は覚えていても同じ教室にいたはずの「普通の」クラスメイトの名前が出てこないことも意識と関係しているとされます。
英語の場合は,音法をただ学んだだけではあと一歩足りません。
知識だけではなく,自分でもお手本と同じように発音できて初めて身に付いたことになるわけです。
そのためには,次章で紹介するシャドーイングのトレーニングを欠かさず行うようにしましょう!
リスニング力を高めるシャドーイングのやり方
英語の音に慣れるための勉強法として,最も役立つものの代表例がシャドーイングです。
すでにTOEICの学習テクニックの記事でも触れていますが,ここでは2つのやり方に分けて紹介してみたいと思います。
アイ・シャドーイング
1つ目の方法は「アイ・シャドーイング」と呼ばれるものです。
これは,比較的ゆっくり読まれる英文を耳で聴きながら目(アイ)を使って追っていくシャドーイングとなり,スクリプト(原稿)と音源を用意する必要があることに注意してください。
アイ・シャドーイングを行うことで,英文が「実際に」どのように読まれるかを深く理解することが可能です。
実際に声を出すことはないため,周りの環境に関係なく練習することができるのは強みでしょう。
もしも手元にある音源のスピードが速いように感じられたら,再生速度を遅くできるNHKの語学プレーヤーのようなアプリを使い,最初はゆっくりめのスピードで聞くところから始めて,慣れてきたら通常の速度に戻して聞いてみてください。
なお,英語を聞いている時の目の動かし方と内容を理解するスピードについてはしっかりと記憶しておきましょう。
これはつまり,英文を読むときにも聞くときと同じくらいの速さで読むようにするべきだということです。
英語を読むときに前に戻って読んでいた方は,英語の語順通りに読むことができていません。
リスニングをきっかけにリーディング能力のアップについても考えてみましょう。
実際,自分のリーディング能力の速度がリスニングにおける理解力を決めているのです。
シャドーイング
アイ・シャドーイングの発展形にあたるのが通常の「シャドーイング」です。
つまりアイ・シャドーイングよりも難しいことをするわけで,目は使わずに耳のみで英文を追っかけながら声を出して読むようにしますが,このとき単語ごとに区切って読むのではなく,前章で述べた音法を意識しながら取り組むようにします。
最初はうまくいかないでしょうが,音源と自分の声のずれが感じられなくなるまで何度も声に出して読むようにしてください。
TOEIC500点を取得できる実力に達した人は,この後でディクテーションも行ってみましょう。
ディクテーションは聞こえた英文を一字一句正確に書き取るための練習法で,音源を一時停止しても構わないので,限界だと思うところまで書き取ってみてください。
当サイトでは洋楽を使ったディクテーション方法を紹介しています。
どうしてもわからないところは「こういう英語が来るんじゃないか」と推測しながら聴くと,不思議にその音が聞こえてくるもので,同時に文法力も鍛えられるというのが魅力です。
それではシャドーイングの教材についてはどのように選べばよいのでしょうか。
当サイトのおすすめはTOEIC模試のパート4を使うことです。
実際に解くことになる問題ですからお手本とすることに異議はないでしょうし,1分間に150語以上の英語を話すのがネイティブレベルだとされており,パート4の話者の場合だと毎分170語ほどの速度で話していると言われます。
もちろん,話されている英語は正しい英語であるため,本腰を入れて取り組むのにピッタリです。
とはいえ,ずっとTOEICの音源ばかりで学ぶというのも単調で疲れてきてしまうと思います。
そんなときには次章で紹介する方法を試してみてください。
リスニング力をさらに伸ばす方法
TOEICに限りませんが,リスニングのトレーニングを行う際は集中して聴ける時間を作るようにしましょう!
普段は通勤中にリスニングをするで構いませんが,腰を落ち着けて学習することも大切です。
そのときは聞いていて楽しいと感じられる教材を使うことをおすすめします。
楽しい教材の例としては洋楽を聴く他,自分の興味のある分野を扱った動画や海外のスポーツNEWSを観戦してみるのがおすすめです。
その他,海外のニュース番組だとややレベルが高くなってしまいますが,1日に同じ内容のニュースが何回か繰り返されることになるので,わざわざ録画して見直さなくても違う時間帯にニュースを見ればOKですし,すでに自分に専門知識があるようなジャンルの番組だと展開を予想しながら観ることもできるため,負荷を低くした状態となってより楽しめます。
もちろん1日中見続ける必要はありませんが,楽しいと感じるもので学んでいると学習時間は自ずと長くなっているものです。
併せて英語漬けの1日を送る方法の記事も参考にしてみてください。
シャドーイングを本格的に行いたい場合であれば,海外の映画を教材として使うことの他,第3者に自分のやった録音結果を添削してもらうこともできます。
最近ではRIZAPに代表されるコーチングサービスの1つに,学習者のシャドーイングを録音し,SNSなどを介してデータとして送るだけで簡単に評価をしてもらえる「シャドテン」のようなサービスも登場してきているので,どこまででも深い学習が可能です。
まとめ
以上,TOEICのスコアアップに役立つリスニング対策についてみてきました。
TOEICの500点を目標とする方にピッタリな内容でしたが,海外のニュース番組や映画を使えば800点以上を目標とする方にも通じる内容です。
今回の記事の要点を整理してみると,
- リスニングはスピーキングやライティング力にも影響する
- 音法を理解した上でシャドーイングを行う練習法が有効
- シャドーイング教材にはTOEICのパート4を用いるのが無難
- 楽しめる教材を選ぶのもおすすめ
となります。
TOEICのスコアアップを狙うためには,リスニングパートの攻略法について理解して,実際の形式に沿った問題を解くことも必要ですが,そのような「うわべのテクニック」だけでなく,実力を高める勉強も必要です。
そしてわざわざそういった特訓を行うと決めたのであれば,しっかりとその努力が報われるように正しい勉強法で学んでいってほしいと思います。
先に紹介したスタディサプリのようなオンライン教材も利用できる時代ですので,自分に合う教材を1つ見つけては徹底的にやりこんでみてください。
同じ100時間を勉強するにも,それを1年間かけて長々とやるよりも3ヶ月などの短期間で集中して学ぶ方が効果的とされています。
一夜漬けまでとはいきませんが,学生時代の試験前の過ごし方を思い出し,公開テストまでの残りの間,ややオーバーペース気味で頑張ってみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました。