みなさんはTOEICの公式問題集などの模試を,最大限に活用できていらっしゃいますか。
問題を解き終わると解答を見ながら丸を付け,間違えた部分の解説を中心に読んでみては,「なるほど,そうだったのか!」と理解して終わりにしてしまってはいないでしょうか。
大変もったいないことに,このような方法では,TOEIC本番で全く同じ問題が出てこない限り正解することはできません。
というのも,先の解説を読んであなたが理解したものは,その間違えた問題にしか通用しないことがほとんどだからです。
数千円かけて模試を購入し,わざわざ2時間もかけて解いたわけですから,それ相応の見返りを期待するというのがあるべき姿勢でしょう。
ここでは,TOEIC模試の結果を正しく分析し,今後の学習に生かしていくための方法について紹介します。
まずは今回必要になる道具についてまとめ,その後詳しい分析方法についてみていく流れです。
目次
TOEIC模試を分析する際に必要なもの
とあるTOEICの参考書で学んだ攻略法が,自分にはどうも合わなかったという経験が私にはよくあるのですが,勉強の世界でなくても,つい最近並んだ行列のできるラーメン屋さんがいまいちでがっかりしました。
世の中のレビューでも何でもそうですが,他人が気づいた感想はあくまでその人にとってのみ正しい真実であり,ある人に有効な対策であっても自分には逆効果なんてことも平気で起こり得るわけです。
ゆえに,自分にとってTOEICの最高の助けとなる知識というのは,間違えたり苦手だと感じた問題を自らが分析する中で得た体験からしか見出すことはできません。
このことをまずはしっかり押さえておいてください。
さて,本題であるTOEIC模試の分析方法についてですが,準備するものを確認するところから始めましょう。
用意するのは,
- 問題集
- 解答用紙
- 解答・解説
の3つです。
問題集は120分で200問を解くフルサイズの模試を指します。
具体的には公式から出ているTOEIC問題集か,一般の会社から安価で売られている予想模試でも構いません。
現行の形式に準じたものを用意してください。
しっかり時間を測って2時間休みなく行うことで,より分析の精度が高まるので頑張りましょう!
そのときの解答は本番と同様,マークシートに記入して残しておきます。
マークミスもあるかもしれませんし,意外とマークする動作に時間がかかるわけです。
そういったことを知ることも含めてTOEIC模試を解きます。
確かに「今日はパート1だけやってみよう」などと細かく時間を取って解いていくのは,スキマ時間を使えるので楽チンなのですが,それだと以下のような分析ができません↓↓
- どれほど自分は疲れに対して弱いのか
- 集中が切れたときのメンタルがどうなるか
- コンディションがスコアに影響しないか
模試は2時間きっかり休憩を挟まずに行うべきだと言ったのにはそういった理由があります。
そして最後に準備するのが解答解説です。
単語や文章の訳だけでなく,その問題に正解するためのポイントやコツが書かれた解説があるものを使うのがおすすめで,例えばスタディサプリの実戦問題集の解説では,全訳や語句のまとめの他に,青文字による解説が役立ちます↓↓
それでは次章から,解答結果をもとに,模試の分析を始めていきましょう!
TOEICを全体的に分析する際のポイント
各パートについて詳しくみていく前に,まずは大きく分析しますが,このときは「時間配分,単語,文法,決まり文句」などに注目します。
時間の使い方はうまくいったか
TOEICは時間内に最大スコアを取るのが目標です。
時間を無制限にして解けば満点近く取れるとしても,時間に制限を設けて焦らされた状態で8割くらいしか取れなければ,それがその人の実力となります。
特にスコアが低い段階にあるほど,全部を時間内に解き切ることが難しいはずです。
リスニングは放送に合わせて,完全に決まったペースで進んでいくので大きくスコアに影響はしませんが,リーディングパートを解く際は完全に自分で解く順番などを決めることができます。
あらかじめ時間が足りなくなることを知っていれば,得意なパートから始めたり,読解の後ろの問題から逆に解いていくなどの分析もできるはずです。
細かい技として,「マークシートの塗り方」や「迷ったときの割り切り」などのテクニックがありますが,最も大きな問題は解く順番だと思いますので,まずはそこから始めてください。
TOEICの単語に慣れているか
TOEICが測る英語力ですが,ビジネス現場における英語での運用能力を想定しています。
そのため使われる単語はビジネスシーンで使われるものが多いです。
例えばquarterと聞いて「四半期」と訳したり,installmentに対して「分割払いの1回分」などの意味をすぐに答えられるでしょうか。
確かに中高で習った受験英語だけでも600点近く取れることがありますが,中高生でもない限りTOEIC専用の単語帳を使わない道理はありません。
模試を解いていてわからなかった単語に線を引いていき,果たしてどのような意味になっているのか分析してみてください。
それがビジネスで使う意味ばかりであったら,やることは明確です。
しっかりとTOEIC用の単語帳を使いましょう!
苦手な文法分野はないか
最近の英語教育ではひたすらにアウトプットの重要性が強調されがちですが,正確に英文を話したり読んだりする際には,しっかりとした文法力が必要となります。
土台がしっかりしていないと,より高度な内容を理解しようにもうまくいかないでしょう。
「TOEICのスコアアップのために文法を学ぶ」という選択肢は,なにも過去の英語教育の悪しき遺産ではないのです。
中学の英文法の理解が怪しい人が,いきなりパート5の文法対策本を使っても,身の丈に合っていない理由からきっと挫折してしまうでしょう。
目的が今よりずっと高いところにあろうと,千里の道も一歩からです。
簡単なことをやることにはお得な面もあり,基礎的な内容の方が試験で問われることが多く,スコアにもずっと関わってきやすいわけです。
簡単なもので学ぶことこそ,効率的にスコアアップするためにTOEIC初心者だけが実践できる,最高のTOEIC対策ではないでしょうか。
決まり文句で間違えていないか
どうして"Good morning."を「良い朝」と訳さないのか,"May I help you?"を「いらっしゃいませ」と訳すのか。
そんな基本的なところにも決まり文句は使われています。
どちらかと言えばリスニングパートの会話表現に多いかもしれませんが,模試の結果を分析してみて,こういったものに弱点があると判明した暁には,頑張って1つずつ覚えていくしかありません。
とはいえ,ただ闇雲に暗記しようとするのではなく,覚えやすくするためにひと工夫しましょう!
そのときのポイントとしては,
- 簡単な例文で覚えること
- できれば自分で例文を作る
2つを意識することです。
最初はテキストの例文を丸写しにするだけでも構いません。
慣れてきたように感じた際には,自分で作るようにするとさらに記憶に残りやすくなります。
リスニングパートを分析する際のポイント
ここからはTOEICのリスニングとリーディングパートごとに,より具体的な分析ポイントをまとめていきますが,まずは前者からです。
連続して間違えている問題がないか
精神面での弱さがリスニングパートでは重大な間違いを引き起こします。
リーディングですと冷静になってもう一度読み直したり,後で戻ってくることもできますが,リスニングパートは一度音声が流れてしまえば2度と聴くことができません。
リスニングパートである問題を間違えたとしますが,実はそのミスがその1つ前の問題を間違えてしまったことによるものだったらどうでしょう。
TOEICの攻略法について学んでいくと,パート3や4では「早めに次の問題の質問を読んでおく」ことが正答率を高める工夫になります。
そのため,もし1つの問題がわからずに悩んでしまえば,次の問題に対してそのような先読みを行うことができなくなり,連続ミスという大惨事へとつながってしまうのです。
もしくは純粋に前の問題(終わった問題)の答えが気になっていて,今流れている問題文に集中できていません。
もし悩んだ問題があったことを覚えていたら,その問題の正答率を調べてみてください。
悩んだ時点でリスニングは正解できないことがわかるでしょう。
そう分析できれば,迷ったら適当にマークするという行動が取れるようになるかもしれません。
純粋な聴き取り能力に問題がないか
一方で,同じ問題(同じ文章の中の違う質問)で間違えてしまっている場合は,完全に内容が理解できていません。
その場合の原因として,聴き取り能力に問題があることは明らかです。
しかし,リスニングの聞く量が不足している原因以外にも,単語の正しい発音について知らなかったり,英文を前からそのままの語順で理解できないといった様々な原因が考えられるので,もう少し詳しく分析して適切な対策を施す必要があるでしょう。
TOEICでは話者が訛りのある英語で話していたりするので,苦手な人が多いイギリス英語やオーストラリア英語を中心に,何度も聴いては自分で同じように発音できるところまで訓練することが大切です。
ちなみに最近の教材は話者の国籍が示されているものが多いので私も確認してみましたが,間違えた問題については,それらの国の訛り英語である場合がほとんどでした。
苦手なシチュエーションはないか
上に挙げた答案の47~49や68~70問目のミスは,同一の問題文において全滅したものでした。
特にパート3や4で起こる大量失点は,シチュエーションによる苦手があるときにも起こります。
例えば,社内での会話,電話の録音メッセージ,はたまた広告での文章や誰かのスピーチなど,自分が苦手とするジャンルが存在しないか分析しましょう。
ちなみに上の47~49は会社の同僚が出張する話,68~70は販売員と客の会話でした。
このような苦手なシーンが判明したら,
- 同じような状況の英文をたくさん読む
- 苦手なシチュエーションで使われる単語をリストアップする
- 間違えたスキッドを念入りに復習しなおす
ことが有効です。
同じ状況の問題文を数多く聞くことのメリットは,使われる単語や表現が似ていることが多いことで,その後の会話の展開についても予測が付きやすくなるかもしれません。
とはいえ現実的には,そういった場面別に集めた教材が数少ないので,上のように全滅しかけた英文はしっかり精読し,状況が浮かぶようになるまで何度も音読するようにしています。
予想外の答えが正解の問題を間違っていないか
意表を突く答え,例えば"Where~?"で聞かれた疑問文に対し,場所を答えるのではなく"I don't know."などの予想外の返答が答えになっている問題は「ひねりの問題」などと呼ばれ,そういった変わった返答ばかりを集めた教材もあるようです。
具体的な答えが読み上げられた問題文にあるかどうかに注目し,自分がどういうタイプの問題を苦手とするのかについてもしっかり分析しておきましょう!
リーディングパートを分析する際のポイント
最後はリーディングパートの模試結果を分析する際のポイントについてです。
文法の理解はどうか
パート5のほとんどと,パート6でも少し問われることになるのが「文法問題」です。
「後ろが完全な文になっているから,この空欄には接続詞が入る」
「look forward toのtoは前置詞だから,後ろに来るのは(動)名詞」
といった文法知識は,文構造を把握する際にも役立ちます。
文法理解がいまいちでもなんとなく読めてしまうものがリーディングですが,どこかでスコアは伸び悩んでしまうものです。
スコアの伸びが停滞してしまった方は,文法をやり直してみたりスラッシュリーディングで文構造がしっかり把握できているのか確かめてみてはいかがでしょう。
文法が苦手だと思う方は,さらに一歩分析を進めて,文法範囲のどの分野(時制や受動態に始まり,倒置・省略など)に弱点があるのかまで把握したいところですね。
こちらに関しては,読解のための英文法というものが存在し,純粋な文法問題とは違う難しさがあります。
詳しくはTOEIC全体について分析する際に紹介した記事をお読みください。
文脈把握を苦手としていないか
このタイプの問題には,文脈から単語を選んだり,文を1つ丸々選択するような問題もあります。
国語力も関わってきてしまうので私も大変苦手なのですが,必ず文中に根拠はあるので,どういった点に着目して答えを決めていくのかといった,根拠にいたるための導き方(リーズニング)を中心に解説から学ぶようにしましょう!
時間に余裕がある人は現代文の講義を受けるのも良いそうです。
リーディングパートにおける間違いの原因としては,以下のようなものもあります↓↓
- 推量や示唆がされている問題:具体的な回答が文中にあるかどうか
- NOT問題:書いていないものを選べ
- マルチプルパッセージ:複数の文章を参照して答えを導く
これらはTOEIC初心者だとどれも「捨て問」にしていい,上級者向けの問題です。
まとめ
以上,TOEICの模試を分析するにあたっての心構えから始まり,リスニングパートやリーディングパートごとの分析する際のポイントまで詳しくみてきました。
2時間かけて模試を解いて丸付けを済ませてからが本当の勝負です。
自分の間違えの傾向について分析出来たら,早速その対策について考えましょう!
以下の記事は,その際の参考になるかもしれません↓↓
今回分析するにあたって数多くの注目すべき点について解説してきましたが,一番重要そうなところから始めることを心がけてください。
一度で全部を分析することはできませんから。
手っ取り早く改善できそうなところから対策を始めるのが最も効率の良い勉強方法です。
最後に触れたように,面倒なタイプの問題(例えばNot問題やトリプルパッセージ)は捨て問にしてしまうという選択も十分に考えられます。
TOEICはすべての問題が同じ価値(配点)を持っているわけで,990点のスコアが取れる人も400点以下の受験者も同じ問題を解いていることをわすれないことが大切ではないでしょうか。
このように自分自身について分析することで,TOEIC模試を頑張った分の努力に見合う恩恵がしっかり受けられますので,大変ですが頑張っていきましょう!