今回はZ会から2020年3月に出版された「実践ビジネス英会話 コミュニケーションを広げる12フレーム」という参考書の内容と学び方を中心にレビューしていきましょう!
同じZ会のビジネス英語シリーズとしては,初中級用の「英会話Quick Response」からステップアップできる内容となっていて,レベルとしては中級(TOEIC470~730点)に設定されています(この2冊の違いについては後の方で比較しています)。
「フレーム」と呼ばれる型を身に付けることで,ビジネスでの会話の幅を広げるのが本書の目的ですが,一体どのようなトレーニングで学び,どういった能力が身に付くのでしょうか。
実践ビジネス英会話とは
「Z会のビジネス英語シリーズ」としては比較的新しい「実践ビジネス英会話」ですが,サブタイトルに「コミュニケーションを広げる12フレーム」と書いてあるように,お決まりの返答をする段階から離れ,より会話力をアップさせていきたい方に向けた内容となっています。
これまでに以下の2冊を使い,ビジネスに役立つ英文法やEメールを書くための技術について多くを学んできた方もいらっしゃるでしょうが,これらはあくまで参照型の参考書であったため,より迅速な対応が求められる会話でのシーンに役立つ1冊が待ち望まれていました↓↓
ところで,一般的に多くのシチュエーションが考えられそうな英会話ですが,あくまで「ビジネスの現場」に限ってみると,会話の展開的にはそこまで多くのバリエーションとはならないはずです。
本書では「フレーム」と呼ばれるものの中に,ビジネス会話で起こり得る展開をまとめることに成功しています。
数にして12個です↓↓
章ごとに書いてある内容がそれにあたりますが,「依頼する」から始まり,「指示する」や「意見を述べる」といったフレームが見つけられるかと思います。
逆に「ビジネスでこのフレームに追加できそうなものを挙げてください」と言われると,なかなかありそうで思いつきません。
その分,網羅している感が伝わってくるのではないでしょうか。
そして本書のタイトルが「実践」で始まるわけですから,音声を用いた「実際に話すトレーニング」を通じてシミュレーションを済ませておくことで,いつかのときに備えるというのが本書の目指すところです。
具体的な学習の流れですが,以下の通りとなります↓↓
- フレームの概要を読んで学ぶ
- クイックレスポンスで例文を身に付ける
- ロールプレイでシミュレーションを行う
上の2と3は,まさにTOEICに役立つテクニックを利用したトレーニングですね。
1についてはここで早速みてしまいましょう。
最初のフレームは以下となります↓↓
フレーム①「依頼する」
前置き→依頼→応答→感謝
実際はいくつかのバリエーションが想定されるので,決まった1つの結果とはなりませんが,相手に配慮した入り部分から,丁寧さを変えた依頼の方法や,相手に「うん」と言わせる説得術などを学びます。
そして応答はうまくいった場合とそうでなかった両方の場合に対して,答えを用意しておくことになり,感謝を伝えて会話は終了です。
このような内容をまず頭に入れることが,まず最初にやるべきこととなります↓↓
さて,このフレームの会話を乗り切るためにまずは表現を身に付ける必要があるでしょう。
そこで行うのが「クイックレスポンス」を使ったトレーニングです。
クイックレスポンスのやり方
ページにして7ページもある例文は,3種類の音声と共に学んでいきます。
その数,例文にしてなんと50。
音声は以下のような違いがあります↓↓
- 日→英:例文が日本語で読み上げられてから,英語が読み上げられます。例文を目で追いながら音声に合わせて音読しましょう。
- QR:クイックレスポンス用の音源。日本語→長めのポーズ→英語の順に流れるので,ポーズの間に英語にして発声します。もしうまくできない場合は,上の日→英の音声で練習してから戻ってくるようにしましょう。最後に流れる英語は確認用として使います。
- 英;日本語が不要な場合に使う音声です。
メインとなるのはQRになりますが,日本語を聞いてすぐに英語にするためには,それ以外の音声を使って例文を暗唱できるレベルにまで練習しておかなければなりません。
そこまで文構造が難しいものはありませんが,例えば「前置き」のところでは「spare+人+もの」の構文があったり,「依頼表現」では「help+人+動詞の原形」や「mind -ing」といった語法も登場します。
丸暗記では応用が利きませんから,これらを説明なしで理解できるくらいの文法力は必要です。
Tipsという名前の解説コーナーはありますが,そこで語られる内容はあくまで言葉の持つニュアンスについての解説だったりします↓↓
音声自体は1つにつき1~3分ほどです。
クイックレスポンスは音声さえ聴けるのであればテキスト不要でできるトレーニングですので,通勤時に流しっぱなしにすれば,練習場所に困りません。
ロールプレイのやり方
基本的な例文がすぐに言える状態になったら,いよいよ実際の場面を想定した状況で「ロールプレイ」のトレーニングを行います。
まずはシーンを確認しますが,ここでは上司が部下に急ぎの仕事を依頼している状況です。
上司になったつもりでロールプレイをします。
上司のセリフだけ日本語になっており,Bのセリフは英語になっているページを使いましょう。
ロールプレイの音声は3種類ありますが,何を使えばよいかわかりますね↓↓
- A and B:2人の会話が流れるので,合わせて音読しましょう。
- A only:Aの発言のみが流れるという意味です。Bの発言部分がポーズになっているので,Bになりきって発音します。
- B only:上の逆で,Aの役になりきって話すための音声です。
そうです,3つ目の「B only」を使います。
音声を聞くとすぐにわかるのは,ナレーターの方々が本当に感情豊かに演じ切っていることです。
こちらも負けず劣らず心をこめて,相手への配慮や依頼したい気持ちを伝えましょう。
B onlyの内容が自然にできるようになったら,次はロールをチェンジして同じシーンをやり直します。
A onlyの音声を使って,今度はBになりきって依頼される側の役を演じましょう。
このとき残念ながら,Aのときに使ったような,日本語と英語の入り混じったテキストは用意されていません。
私は,解答例のページの英語と日本語を使って行うようにしています。
ロールプレイはシーンを変えて3つの例が収録されているので,演じるパートは計6人。
章の最後にはレビューでポイントを確認したり,ビジネス英語講座講師の実体験に基づくコラムが参考になります↓↓
英会話Quick Responseとの違い
今回紹介する「実践ビジネス英会話(JB)」と以前レビューした「英会話Quick Response(QR)」はどちらもビジネス英会話のための参考書です。
実際に行うクイックレスポンスとロールプレイですが,実は後者の本のレビュー時にも同じトレーニングを紹介しました↓↓
上の記事を読んでいただくとわかりますが,今回とまったく同じ内容で学習しています。
とはいえ,違うところも存在し,まず基本的な例文数ですが,JSが約600あるのに対してQRは456文。
シーンの数も36(JS)と15(QR)となっていて,こちらも実践ビジネス英会話の方が多いです。
目標的にみれば,QRは普通に1つのシーンごとに会話例を聞いて学ぶだけですが,JSでは会話内容がより複雑化し,会話の組み立てに必要なフレームを学ぶという,やや高級な目標があるところが大きく異なります。
上の記事でも書いたように,「簡単なことでもその場で即座に言いたかったり,何か一言添えたい」という方にQRは向いており,「挨拶や定型表現以上のコミュニケーションを目指すなら本書」と使い分けるべきでしょう。
とはいえ値段的にはどちらも同じくらいですし,ページ数にもほぼ違いはないので,本書の情報量の多さは魅力的に映るかもしれません。
もちろん「両方ともやる」という選択肢も十分考えられ,その場合は同じ方法論で学んでいけるので,QRをやってクイックレスポンスとロールプレイのトレーニングに魅力を感じた方は是非,この実践ビジネス英会話にも挑戦していただけたらと思います。
まとめ
以上,「実践ビジネス英会話 コミュニケーションを広げる12フレーム」のコンセプトとトレーニング方法についてレビューしてきましたがいかがだったでしょうか。
12のフレームは一見複雑そうなビジネスシーンをうまくまとめてきており,中級レベルの読者を想定した深みのある英語表現と,会話の骨組み自体を学べる良書だったように思います。
ロールプレイのシーンは3つ用意され,意識をフレームに向けることで,より応用の利きやすい実践的な英会話を身に付けることができるのでしょう。
トレーニング内容的にみればまったく同等であった「英会話Quick Response」ともうまく棲み分けできており,そちらを使って英語で返答できる楽しさに気が付いたら,本書に続けて進み,さらに高次元のコミュニケーションを味わってみてください↓↓
最後までお読みいただきありがとうございました。