今回は,TOEIC S&Wテストの対策書である「頂上制覇TOEICテスト スピーキング/ライティング究極の技術」をレビューします。
本書は2013年に刊行された教材であり,現在のS&Wテストとは一部の制限時間や出題形式が異なります。
ただし,後ほど詳しく述べるように,本書で学べる発話・記述の型やアウトプットの考え方は,現行テストでも十分に活用できます。
学習者の現在の実力に合わせて目標設定を調整すれば,初めてS&Wを受験する方から,高スコアを狙う上級者まで幅広く使える1冊です。
本書の制作にあたり,4人の著者は1年半もの間,公開テストを毎回のように受験し続けて傾向を分析しました。
それぞれの得意分野を生かして作成された解説と解答例について,中身を詳しく見ていきましょう。
頂上制覇TOEICスピーキング/ライティング究極の技術の特徴

基本情報
- 書名:頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術
- 著者:ロバート・ヒルキ,上原雅子,横川綾子,トニー・クック
- 出版社:研究社
- 発売時期:2013年3月
- ページ数:376ページ(本冊+別冊解答)
- 付属品:音声ディスク2枚,別冊解答
- 定価:2,970円(税込)
付属ディスクの収録時間は1枚目が37分24秒,2枚目が40分23秒です。
トラック数の上限の関係で2枚に分割されていますが,通常の音声プレイヤーで問題なく再生できます。
著者のロバート・ヒルキ氏はTOEIC指導の第一人者として知られ,共著者の上原雅子氏,横川綾子氏,トニー・クック氏もS&W指導や関連書籍の執筆で実績を持つ講師陣です。
研究社の「頂上制覇」シリーズには,S&W攻略を扱った本書のほか,L&Rテスト対策の書籍も複数刊行されています。
私は本書のほかに,リーディングのPart7対策ができる以下の書籍も購入して学習に役立てました↓
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L&R向けの同シリーズは900点以上を目指す上級者向けの内容が中心ですが,S&Wを扱う本書は,初心者(スピーキング・ライティングともに120点が目標)から高得点(両セクションともに180点が目標)を目指す層まで幅広く対応している点が特徴です。
本書の主な構成は,以下の4つのコンテンツに分かれています。
- S&Wテストの概要説明
- Speaking Test(スピーキング対策:約150ページ)
- Writing Test(ライティング対策:約70ページ)
- 模擬試験(2回分収録)
S&W教材で模擬試験2回分を収録している本は多くないため,演習量を確保しやすい点は大きな魅力です。
以下のような公式問題集とどちらを購入すべきか迷うケースがありますが,日本語による設問別の解説やアドバイスの量を重視するなら,本書の方が使いやすい場面があります↓
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本編のボリュームは非常に厚く,やり切るまでには一定の集中力が必要ですが,消化した後に得られる表現の引き出しや戦略の知識量は十分です。
模擬試験と本編の練習問題の解答例は別冊として使いやすく一冊にまとまっているため,丸付けや暗唱の練習を行う際にもスムーズに手元で確認できます↓

現行テストとの違いを踏まえた「前書き・概要部分」の使い方

本書の巻頭には,S&Wテストの基本的な仕組みについてのガイダンスが掲載されています。
ただし,本書が刊行された2013年以降に,TOEIC Speaking Testの出題形式や試験中のルールにはいくつか変更がありました。
たとえば,現在のTOEIC S&W公開テストは,Speaking Testが全11問・約20分,Writing Testが全8問・約60分で実施されます。
また,現在はTOEIC Speaking Testのみを単体で受験することも可能です。
さらに,現在のS&W公開テストでは,試験中にメモを取ることができます。
メモ用紙と筆記用具は試験会場で用意され,試験終了後に回収されます。
そのため,本書の巻頭にある受験ルールや問題構成の説明は,現行の公式情報と照らし合わせながら読むのがおすすめです。
特にスピーキングのUnit5(解決策を提案する問題)は,現行のSpeaking Testでは独立した問題タイプとしては出題されていません。
一方で,音読,写真描写,応答問題,提示された情報に基づく応答問題,意見を述べる問題,Eメール作成,意見記述などの基本的なアウトプット力は,現行テストでもそのまま必要です。
実際の試験用インターフェースや最新の操作フローについては,公式サイトのサンプル問題を確認したうえで,本書を表現の型作りに使うとよいでしょう↓
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徹底されたステップで学ぶ「本編ユニット」の構成

本編の具体的な学習プロセスを確認していきましょう。
スピーキングテストは音読問題から始まり,写真描写,応答問題へと展開します。
これらは本書において「ユニット」という単元で区切られており,スピーキングテストに6つ,ライティングテストに3つのユニットが用意されています。上の画像は音読問題を扱うUnit1の紙面です。
なお,現行のスピーキングテストは問題の統合により全部で5つの問題タイプになっているため,本書のUnit5(解決策を提案する問題)の解説は必要に応じて省略しても問題ありません。
各ユニットはさらに細分化され,基本的には以下の8つの項目に沿って段階的に実力を高めていく設計です。
- 問題形式の説明
- 採点・評価基準
- 解答時のコツ
- サンプル問題と解答例
- ポイント解説
- 実践トレーニング
- レベル別アドバイス
- 練習問題
紙面の都合上すべてのユニットを記述することは難しいため,ここではスピーキングの代表としてUnit1(音読問題),ライティングの代表としてUnit8(Eメール作成問題)の具体的な中身をピックアップして解説します。
1.問題形式の説明

まず,各パートの問題形式について詳細な説明が行われます。
単なるルールの記述にとどまらず,著者の受験データに基づく具体的なアドバイスが付け加えられている点が特徴です。
たとえばUnit1では,「ゆっくり読んでも制限時間は十分に足りるため,聞き手に情報を正確に伝える意識を持つこと」の重要性が語られます。
また,「最高評価であるスコア(スケール)3を獲得することは簡単ではない」という事実が,具体的データ(イントネーションとアクセントの項目でスコア3を取れる受験者は全体の13.4%しかいないなど)とともに提示されるため説得力があります。
2.採点・評価基準

次に,どのように採点が行われるかの基準が明示されます。
これは公式資料からの抜粋がベースになっているため,内容自体にそれほど真新しさはありません。
前述の通り,最新の改訂ルールと異なる数値が含まれている部分については,現在の基準に頭の中で置き換えて読み進めるとスムーズです。
3.解答時のコツ

準備時間の効果的な使い方や,本番での操作上の注意点など,知っているだけでスコアのロスを防げる実践的なテクニックがまとめられています。
- Unit1(音読):現在発話している箇所よりも少し先の英文に目線を走らせる技術や,イントネーションを大げさなくらい明確に表現するコツ。
- Unit8(Eメール):最初の呼びかけ文や,論理展開をサポートする繋ぎのフレーズ(First, Second, Finally),締めの挨拶,送信者名を先に入力してしまうタイピング手順。解答時間が余った際の見直しでは,致命的なエラーを除き大きな修正は控えるという時間配分の注意点。
こうした事前の戦略が頭に入っていると,いざ問題と対峙した際にも自由英作文特有の迷いが減り,話すべき・書くべき内容の骨組みを素早く決定できるようになります。
4.サンプル問題と解答例

サンプル問題に対して,スピーキングセクションでは実際の音声解答例が付属しています。
さらにUnit1の解説では,どこでイントネーションを上げ下げすべきか,発音のアクセントのポイントはどこかといった細部までビジュアル化されており丁寧な作りです。
ここで学ぶ発音の基礎はすべてのスピーキングタスクの土台となるため,全体のスコア向上に貢献します。
5.ポイント解説
ポイント解説のセクションでは,自宅で実践すべき具体的なトレーニング方法を習得できます。
Unit1では「自分の発話の弱点を正確に把握するステップ」や「自分の声を録音してチェックする手順」など,独学に欠かせない練習法が提示されます。
Unit8では,返信メールの汎用的なテンプレートやフレーズ集が豊富に掲載されており,そのまま実戦的な武器として流用可能です↓

さらに,ライティングの最難所である意見記述問題(Unit9のエッセイ)の解説では,約20ページにわたって論理的なパラグラフ・ライティングの構成手順が深掘りされています↓

英語におけるエッセイの普遍的なルールをあらかじめ枠組みとして頭に入れておくだけで,本番のタイピングのスムーズさは格段に違ってきます。
6.実践トレーニング
ここでは,サンプル問題の類題を複数解きながら,先ほどのポイント解説で示された具体的な練習手順を実際に体感していきます。
チェックリストを用いた自己診断や,丁寧な解説が用意されているため,着実にアプローチを体得できます。
Unit1においては,英語特有のリズムや意味のまとまり(センス・グループ)ごとの区切り方,破裂音や連結音(リンキング)の仕組みまで詳細に解説されていました。
これらはスピーキングのみならず,リスニング力の底上げにも役立つ重要な知識です。
Unit8のEメール作成では,出題パターンが少しずつ異なる3つの課題を消化し,どのような質問に対しても応用が利く返信力を養います↓

最後には仕上げのタスクが用意されており,本番を想定した実践的な配置になっています。
7.レベル別アドバイス
各ユニットには,目標スコアに応じた日頃のトレーニング方針が個別にまとめられています。
採点スケール別の解説では「Medium」「High」の2通りの目線が示されており,さらに全体の目標スコア別(120点・150点・180点)の3つのステージに応じた具体的なアドバイスが記述されています↓

このレベル別のナビゲーションがあるおかげで,学習を始めた初期の段階から実力が伸びていくプロセスに応じて,その都度最適な勉強法へアップデートしながら長く使い続けることが可能です。
8.練習問題
各ユニットの最後は,完全に本番と同形式の「練習問題」をこなして締めくくりとなります。
こちらの解答例や詳細な訳文は別冊に収録されているため,手元で対比しながら確認を進めてください。
ページを行き来する手順には最初のうちは少し慣れが必要ですが,構成を把握すれば迷うことなくスムーズに復習を回せるようになります。
実戦力を判定する「2回分の模擬試験」
前述したように,本書の巻末には公式問題集と同等ボリュームである2回分の模擬試験が収録されています。
さらに,本編ユニット内にも練習問題が多数用意されています。
そのため,単に解説を読むだけでなく,実際に話す・書く練習量も確保しやすい構成です。
PCの画面上でタイピングや発話を行う本番の環境とは異なり,紙面でのシミュレーションにはなりますが,これは市販のあらゆる書籍教材に共通する仕様です。
実際の公開テスト会場では周りの受験者の発話音声が一斉に響くため,初めて受験する方はその独特の雰囲気に圧倒されることがあります。
そうしたプレッシャーに負けないためにも,本書の模試を通じて「自分の型」を無意識に出せるレベルまで習得しておくことが有効な対策となります。
まとめ
以上,頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術のレビューでした。
各設問の攻略手順から詳細な評価ポイント,そして豊富な練習問題と2回分の模試にいたるまで,1冊の総合対策書として完成度の高い参考書です。
本書の高品質な解答例を何度も音読・暗唱して自分のテンプレートとしてストックしていくアプローチは,本番で限られた時間内に発話や英文を組み立てるための土台になります。
特にスピーキングのUnit3(応答問題)などでは,大量の質問が用意されており,これらに一つひとつ答えていくことで,自分なりの解答パターンを確立できます。
本番までに時間の猶予がある方は,まず本書を丁寧に進めることで自分のアウトプットの弱点を正確に把握し,日々の隙間時間の英語学習をより目的意識の明確なものへと変えることが可能です。
公式教材とどちらを優先すべきか迷う場合,最新形式への対応を重視するなら公式教材,設問別の考え方や日本語での戦略的な解説を重視するなら本書,という使い分けが自然です。
TOEICテストにおけるスコアアップの過程は,そのまま実際のビジネスシーンで求められる「論理的に話す・書く」ための実戦的な英語力の底上げに直結します。
本書で表現の型をストックしておけば,本番で限られた時間内に話す・書くための土台を作りやすくなります↓
