今回はTOEIC S&Wテストの完全な対策ができる「頂上制覇スピーキング/ライティング究極の技術」についてレビューしていきたいと思います。
10年近く前の本になりますが,この本で学べる内容は現行のテストにも十分に通じるもので,4人の著者らは1年半もの間,S&Wテストを毎回のように受け続け,各々が得意分野を生かして解説・解答を作成したのが本書の特徴ですが,学習者の実力に合わせて目標地点を変えることで初心者から高スコア狙いの方まで幅広く使うことができます。
S&Wの対策本を探している方は,是非,本レビューを参考にしてください。
目次
スピーキング/ライティング究極の技術とは
基本データ
書名:頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術
著者:ロバート・ヒルキ,上原雅子,横川綾子,トニークック
出版:研究社
初版:2013年4月
ページ数:277ページ(本体)+96ページ(別冊解答)
付属品:CD2枚
付属CDの収録時間ですが,1枚目が37分24秒,2枚目が40分23秒となっており,トラック数が99を超えてしまうタイミングで単に分割されています(普通の音楽プレイヤーで再生できます)。
著者のロバート・ヒルキ氏はTOEICトレーナーとしては大御所ですし,その他の御三方もTOEICのスコアは満点かつ関連書籍も多数と,実績的には十分です。
この究極の技術(テクニックと読む)シリーズは,S&Wについてまとめた本書を皮切りに,「究極のゼミ(Part 2&1・3&4・5&6・7)」の4冊と3回分の模試を収録した「究極の模試600問+」を合わせた計6冊がこれまでに刊行されました。
私もPart7を実際に購入して学んでいます↓
難易度についてですが,L&Rのものでは900点以上を目指すといった具合に,上級者向けの内容が中心となっていましたが,S&Wを扱う本書においては,初心者(各々で120点目標)から高得点(180点目標)を目指す上級者まで幅広く使える1冊です。
本書の構成を知るために目次をみてみましょう↓
- S&Wについて
- Speaking Test
- Writing Test
- 模擬試験2回分
主なものは以下の4つとなっています。
赤字で示しましたが,S&W界で貴重とされる模擬試験が2回分収録されているのは,公式から出ている参考書と同じ分量であり魅力的です↓
どちらを買うかで迷っている場合,日本語での解説が多い分,本書にアドバンテージがあります。
目次に戻りますが,本編となるSpeaking TestとWriting Testは,前者が150ページ,後者が70ページ程度とかなり多めです。
逆に考えると,やり切るのは大変だということになりますが,成し遂げた暁にはかなりの情報量になるでしょう。
ちなみに,模擬試験と本編の練習問題の解答は別冊にまとめられているので,丸つけや暗唱を行う際には使いやすいと思います↓
それでは次章から,詳しい内容についてレビューしていきましょう!
究極の技術の前書き部分について
本書の最初にはS&Wテストの概要があります。
とはいえ,本書が書かれたときから問題は数回の改訂があったため,「スピーキングとライティングのどちらか一方だけを受験することはできない」であるとか「メモを取ることができない」などの旧情報が載っていること,特にスピーキングテストに関して,問題数や準備時間が現行のものと異なっていることに注意しましょう。
ちなみに,S&Wにおいては,最新の改訂版に対応しない対策本がほとんどなので,本書で対策は可能です。
なお,試験の流れについては,公式サイトの過去問を1回解くようにすれば自然と把握できます。
詳しい内容については以下のページを確認するようにしてください↓
ところで,音声トラックの最初にロバート・ヒルキ氏による挨拶めいたものが収録されていますが,これは外国人の著作でよくみられるものです。
究極の技術の本編内容
それでは本編のレビューに移りましょう!
スピーキングテストは音読問題から始まり,写真描写問題,応答問題と続いていきますが,このような試験内容はそれぞれ「ユニット」と呼ばれ,スピーキングテストでは6つ,ライティングテストでは3つのユニットに分けられています(上記画像はUnit1のもの)。
なお,2022年の7月時点でのスピーキングテストは全部で5つのユニットに減っているため,Unit5の内容は省略して構いません。
各ユニットはさらに細かい「項目」からなり,以下の8つからなるのが基本です↓
- 問題形式の説明
- 採点・評価基準
- 解答時のコツ
- サンプル問題と解答例
- ポイント解説
- 実践トレーニング
- レベル別アドバイス
- 練習問題
これら項目について,これから1つ1つ詳しくみていくことにしますが,全ユニットを紹介するわけにもいかないので,スピーキングテストの代表例としてUnit1(音読問題),ライティングの例としてはUnit8(Eメール作成問題)を中心にみていくことにします。
問題形式の説明
まずは問題形式についての詳しい説明がなされるわけですが,どんな問題を解くのかについてはもちろん,著者の体験談に基づく詳細な説明が付け加わっている場合がほとんどです。
例えばUnit1では,
- ゆっくり読んでも時間は十分あるので,相手に情報を伝えようという気持ちで読む
- なるべく高得点を上げたいところですが,スケール3をとるのは簡単ではない
などがそうですが,これらが具体的データ(例えばイントネーションとアクセントでスケール3を取れる受験者は全体の13.4%しかいないなど)と共に述べられるので大変説得力があります。
採点・評価基準
採点・評価基準についてですが,これはIIBCの公式HPにも載っている資料からの抜粋なので,それほど真新しさはありません。
加えて,先述の通り,情報が異なる部分があるので,正しい情報に直しておきましょう。
解答時のコツ
続けて解答時のコツに移りますが,準備時間にチェックしておくべきことや解く際の注意点など,知っておくだけでだいぶ点数が変わってきそうな事柄がまとめられていました↓
- 読んでいる部分より先を見る,イントネーションを多少大げさに表現する(Unit1)
- Eメールの作成では最初の呼びかけ,提示のフレーズ(First, Second, Finally),締めの挨拶,送信者の名前を先にタイプする。解答時間が余れば見直しをするが,この時点では大きな修正を控える(Unit8)
こういった知識は多ければ多いほど,スコアアップに貢献してくれるように思われます。
知っておくべきことを知っておくと,意外と自由度は低く,話したり書いたりする内容も定まってきやすいと感じることになるでしょう。
サンプル問題と解答例
サンプル問題と解答例についてですが,スピーキングでは音声による解答例が収録されています。
加えて,Unit1の解答例ではイントネーションや発音のポイントまで載っており,大変に詳しい印象を受けました。
ここで学ぶ内容は,スピーキングセクションすべてで評価の対象になるため,スコアアップに大きく役立つものです。
ポイント解説
「ポイント解説」では,どのような勉強法を採用すればよいのか学ぶことができます。
例えばUnit1では,「自分の弱点を知る」と「音声を録音する」という2つの具体的な練習方法が挙げられており,Unit8では返信メールのテンプレートやフレーズ集が役立つでしょう↓
解答例を真似するだけでもスコアは上がります。
極めつけは「意見を記述するエッセイ形式の問題(Unit9)」のもので,なんと約20ページにもわたって,パラグラフの構成についての説明がこれでもかといった具合になされていて驚きました↓
いわゆる,英語でエッセイを書くときのルールになりますが,枠組みだけでも知っておくと書きやすさは断然違ってくるものです。
実践トレーニング
実践トレーニングでは先の「サンプル問題と解答例」で出てきたものの類題を数問解くことになりますが,その際,上の「ポイント解説」で指摘された練習方法を具体的に実践していくことになります。
場合によってはチェックリストがあったり,これまたすごい量の解説があったりするのでみなさん驚かれるかもしれません。
例えばUnit1では,英語のリズムやアクセント,イントネーションや意味のまとまりごとに読む練習,さらには発音練習や破裂音,連結音の説明までもが確認できました。
こういった内容は,スピーキングのあらゆる問題で評価対象になるだけでなく,リスニング力のアップにも貢献するものなので,大きくスコアに影響してきます。
個人的にはカタカナ英語の正しい発音が載っているところが気に入りました。
Unit8の方もシンプルに3題解きますが,若干問われているパターンが異なっていたりするので,どんな質問があっても対応できる力を身に付けましょう↓
最後に仕上げの問題もあるのですが,ここでは若干の誘導的な指示があります。
レベル別アドバイス
目標レベルごとに,「日ごろどのような練習を積めばよいのか」についてのアドバイスが別々にまとめられています。
例えば,採点スケール別のところでは「Medium・High」向けの2通り,目標点別では「120点・150点・180点」目標の方に向けて3つある感じです↓
これにより,最初点数が低いときに使い始めても,レベルアップしていくにしたがって,別の勉強法を無理なく実践できることになるわけです。
練習問題
最後に練習問題を数題こなして,ユニットの学習は基本終了となります(この後さらに「付録」という項目があるユニットもありますが)。
こちらは完全に本番と同じ形式で解いていくので,模試の問題と内容的には同じです。
ちなみに,ここでの解答例や訳は別冊の解答に載っているので,そちらを参照するようにしてください。
対応ページを探すのにやや手間取りますが,順番通りやっていくのであればそこまで混乱しませんし,探し方にも徐々に慣れてきます。
模擬試験
先述の通り,模擬試験には,公式が出しているS&Wの対策本らと同様に2回分が収録されています。
本編でかなり練習を積んでからの模擬試験ですので,実質,模試を4回くらい解いたのと同じくらいの練習量が本書1冊で確保できるということになり,ここまでくればいよいよゴールは近いです!
あいにくパソコンとヘッドセットで入力する本番とは形式的に異なっていますが,それはどの問題集で学んでも同じでしょう。
もちろん,高額な料金を支払いさえすれば,より本番に近い環境で練習できるかもしれませんが,その場合においても,周りの人の声が聞こえるような環境(初めて受ける人はビックリすると思います)や,試験独特の緊張感というのは再現のしようがありません。
それならば,何度もS&Wの模試を受ける方が良いのではないでしょうか。
本番では本書を通して学んだ教えを信じて,ただ頑張るだけです!
まとめ
以上,頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術のレビューとなります。
さまざまな情報がしっかりと載っているので,これ1冊があれば他の参考書を使わずとも十分なS&W対策ができてしまうことがわかっていただけたのえはないでしょうか。
私は最終的に,本書の解答例をひたすら暗記する勉強法を採用しましたが十分な対策となり,本番の答案で使えるたくさんのアイディアを得ることができました。
それに加えて,自分なりの意見も交えた解答を予め準備しておけば大丈夫です。
スピーキングのUnit3では,ものすごい数の質問があって大変でしたが,自分なりの定番表現はそういう練習を通してこそ身に付きます。
時間がある方は,まずはこの本で学び,どのような学習が足りてないのか知ることさえできれば,日ごろのスキマ時間を有効に使えることになり,それは「数ヶ月」という単位でみれば大きな差となって表れてくるものです。
公式問題集と本書のどちらか1冊しか買えない場合であっても,本書を優先的にやってみることをおすすめします。
とにかく高い完成度を誇る本書ですから,興味がある方は是非買ってみてください↓
技術偏重やなんだと批判されることもあるTOEICテストですが,学習して高いスコアが取れるようになった際には,ビジネスシーンで使える英語力が確実に高まったと感じるはずです。
悪魔のささやきに惑わされず,S&Wの学習をある種の好機と捉え,前向きな気持ちで頑張っていきましょう!
最後までお読みいただき,ありがとうございました。