今回は,TOEIC S&Wテストの完全な対策ができる「頂上制覇TOEICテスト スピーキング/ライティング究極の技術」についてレビューしていこうと思います。
10年以上前に出た本となり,その間にS&Wテストの制限時間が短くなったり無くなったりした問題はあるものの,ここで学べる内容は現行のテストでも十分に通じるもので,学習者の実力に合わせて目標を変えることによって,初心者から高スコア狙いの方まで幅広く使うことが可能です。
本書を出版するにあたり,4人の著者らは,1年半もの間,S&Wテストを毎回のように受け続け,各々が得意分野を生かして解説・解答を作成しています。
S&Wを長きにわたって対策していこうと考えている方は,是非,当レビューを参考にしてください。
もくじ
頂上制覇TOEICスピーキング/ライティング究極の技術の特徴
基本データ
書名:頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術
著者:ロバート・ヒルキ,上原雅子,横川綾子,トニー・クック
出版:研究社
初版:2013年3月
ページ数:277ページ(本体)+96ページ(別冊解答)
付属品:CD2枚
付属CDの収録時間ですが,1枚目が37分24秒,2枚目が40分23秒となっており,トラック数が99を超えてしまうタイミングでもって単に分割されていて,普通の音楽プレイヤーで再生することができます。
著者のロバート・ヒルキ氏はTOEICトレーナーとしては大御所ですし,その他の御三方もTOEICのスコアは満点かつ関連書籍も多数と,実績は十分です。
この究極の技術(テクニックと読みます)シリーズは,S&W攻略についてまとめた本書を皮切りに,「究極のゼミ(Part 2&1・3&4・5&6・7)」の4冊と3回分の模試を収録した「究極の模試600問+」を合わせた計6冊がこれまでに刊行されています。
私は本書の他,Part7対策ができるものを購入して学びました↓
難易度ですが,L&R用のものでは900点以上を目指すような,上級者向けの内容が中心となっていますが,S&Wを扱う本書は,初心者(SとWのどちらも120点が目標)から高得点(両者ともに180点が目標)を目指す上級者まで幅広く使える1冊です。
本書の構成を知るために目次をみてみると,主な内容は以下の4つとなっています↓
- S&Wについて
- Speaking Test
- Writing Test
- 模擬試験2回分
赤字で示しましたが,S&W関連の書籍において貴重とされる模擬試験が2回分収録されているところは,公式から出ているものと同じ分量で魅力的です↓
むしろ,公式の物とどちらを買うかで迷っている場合,日本語での解説が多い分,本書にアドバンテージがあります。
目次の内容に戻りますが,本編となるSpeaking TestとWriting Testは,前者が150ページ,後者が70ページ程度とかなり多めです。
逆に考えると,その分,やり切るのが大変だということになりますが,成し遂げた暁にはかなりの知識が得られるでしょう。
ちなみに,模擬試験と本編の練習問題の解答は別冊にまとめられているので,丸つけや暗唱を行う際に使いやすいです↓
それでは次章から,詳しい内容をみていきましょう!
頂上制覇TOEICスピーキング/ライティング究極の技術の前書き部分
本書の前書きのところにはS&Wテストの概要があります。
とはいえ,本書が書かれた2013年以降,テスト内容に変更が数回あったため,「スピーキングとライティングのどちらか一方のみを受験することはできない」だとか「メモを取ることができない」などの情報は現行のテストには当てはまりません。
特に,スピーキングテストに関して,問題数や準備時間が現行のものと異なっていることに注意するようにしましょう。
ちなみに,S&Wにおいては,最新の改訂版に対応しない対策本であっても,実力さえ高めてしまえば,問題形式のせいで得点できないことはほとんどありません。
なので,冒頭で述べたように,本書を使った対策は今でも有効です。
実際,試験の流れについては,公式サイトの過去問を1回解くだけでもかなりの程度把握できます。
現行の試験形式については,以下の記事を確認するようにしてください↓
ところで,音声トラックの最初に著者であるロバート・ヒルキ氏による挨拶めいたものが収録されているのですが,これは外国人の著書でよくみられるものです。
頂上制覇TOEICスピーキング/ライティング究極の技術の本編
それでは本編のレビューに移りましょう!
スピーキングテストは音読問題から始まり,写真描写問題,応答問題と続きますが,これらは本書においてそれぞれ「ユニット」と呼ばれ,スピーキングテストでは6つ,ライティングテストでは3つのユニットに分けられています(上記画像はUnit1のものです)。
なお,現在のスピーキングテストは全部で5つのユニットしかないので,本書のUnit5の内容は省略しても構いません(ただし,解いても多くの学びを得られます)。
各ユニットはさらに細かい「項目」からなり,以下の8つからなるのが基本です↓
- 問題形式の説明
- 採点・評価基準
- 解答時のコツ
- サンプル問題と解答例
- ポイント解説
- 実践トレーニング
- レベル別アドバイス
- 練習問題
これら項目について,これから1つ1つ解説していきますが,さすがに全ユニットを紹介するのは大変なので,スピーキングテストの代表例としてUnit1(音読問題)を,ライティングテストの例としてはUnit8(Eメール作成問題)を中心にみていくことにします。
問題形式の説明
まずは,問題形式についての詳しい説明がなされることになりますが,どのような問題を解くかについてはもちろん,著者の体験談に基づく詳細な解説が付け加えられていることがほとんどです。
例えば,Unit1では,
- ゆっくり読んでも時間は十分あるので,相手に情報を伝えようという気持ちで読む
- なるべく高得点を上げたいところですが,スケール3をとるのは簡単ではない
ことがそれに該当しますが,これらが具体的データ(イントネーションとアクセントでスケール3を取れる受験者は全体の13.4%しかいないなど)と共に述べられるので,大変に説得力があります。
採点・評価基準
次に採点・評価基準についてですが,これはIIBCの公式HPにも載っている資料からの抜粋なので,それほど真新しさはありません。
加えて,先述の通り,情報が現在のものと異なる箇所があるので,正しい情報に訂正しておきましょう。
解答時のコツ
続けて解答時のコツに移りますが,準備時間にチェックしておくべきことや解く際の注意点など,知っておくだけで点数が上がりそうな事柄が多くまとめられていました↓
- 読んでいる部分より先を見る,イントネーションを多少大げさに表現する(Unit1)
- Eメールの作成では最初の呼びかけ,提示のフレーズ(First, Second, Finally),締めの挨拶,送信者の名前を先にタイプする。解答時間が余れば見直しをするが,この時点では大きな修正を控える(Unit8)
こういった知識は多ければ多いほど,スコアアップに貢献してくれるように思います。
こうした情報が入った状態で問題を見返してみると,意外と自由度が低く,話したり書いたりする内容が決まりやすいように感じられるはずです。
サンプル問題と解答例
サンプル問題と解答例ですが,スピーキングでは音声による解答例が収録されています。
加えて,Unit1の解答例ではイントネーションや発音のポイントまでが載っており,大変に詳しい印象を受けました。
ここで学ぶ内容は,スピーキングセクションのすべてで評価対象とされているので,スコアアップに大きく貢献してくれるでしょう。
ポイント解説
ポイント解説では,どのような勉強法を採用すればよいのかを学ぶことができます。
例えば,Unit1では「自分の弱点を知る」と「音声を録音する」という2つの具体的な練習方法が挙げられており,Unit8では返信メールのテンプレートやフレーズ集が役立つでしょう↓
解答例を真似するだけでもスコアは上がります。
極めつけは「意見を記述するエッセイ形式の問題(Unit9)」のもので,なんと約20ページにもわたってパラグラフの構成を説明していて驚きました↓
英語でエッセイを書くときのルールになりますが,枠組みだけでも知っておくと書きやすさが段違いです。
実践トレーニング
実践トレーニングでは,先の「サンプル問題と解答例」で出てきたものの類題を複数解くことになりますが,その際,上の「ポイント解説」で指摘された練習方法を具体的に実践していくことになります。
場合によってはチェックリストがあったり,これまたすごい量の解説があったりするので,みなさん驚かれるかもしれません。
Unit1では,英語のリズムやアクセント,イントネーションや意味のまとまりごとに読む練習,さらには発音練習や破裂音,連結音の解説までもが確認できました。
こういった内容は,スピーキングのあらゆる問題で評価対象になるだけでなく,リスニング力のアップにも貢献するものなので,大きくスコアに影響してきます。
個人的には,カタカナ英語の正しい発音が載っているところが気に入りました。
Unit8の方ではシンプルに3題解きますが,若干問われているパターンが異なっていたりするので,どんな質問があっても対応できる力を身に付けましょう↓
最後に仕上げの問題がありますが,このとき若干の誘導的な指示が確認できました。
レベル別アドバイス
本書では,目標点ごとに「日ごろどのような練習を積めばよいのか」についてのアドバイスがまとめられています。
例えば,採点スケール別のところでは「Medium・High」向けの2通りが,目標点別においては「120点・150点・180点」を目標とする方に向けて3通り用意されているわけです↓
これにより,点数が低いときに使い始めても,レベルアップをしていくに従って,別の勉強法を実践でき,長く使うことができるわけです。
練習問題
最後に練習問題を数題こなして,ユニットの学習が終了となります(この後,さらに「付録」という項目があるユニットもあります)。
こちらは完全に本番と同じ形式で解いていくことになり,模試の問題と内容が同じです。
ちなみに,ここでの解答例や訳は別冊の解答に載っているので,そちらを参照するようにしてください。
対応するページを探すのにやや手間取りましたが,順番通りやっていくのであればそこまで混乱しないですし,探し方には徐々に慣れてくるものです。
模擬試験
先述の通り,模擬試験には,公式が出しているS&Wの対策本と同様の2回分が収録されています。
本編でかなり練習を積んでからの模擬試験ですので,実質,模試を4回くらい解いたのと同じくらいの練習量が本書1冊で確保できることになり,ここまでくればいよいよゴールが近いです!
あいにく,パソコンとヘッドセットで入力する本番とは形式が異なっていますが,それはどの問題集で学んでいても同じでしょう。
もちろん,高額な料金を支払いさえすれば,より本番に近い環境で練習できるかもしれませんが,その場合においても,周りの人の声が聞こえるような環境(初めて受ける人はビックリすると思います)や,試験独特の緊張感は再現のしようがありません。
同じお金を支払うのであれば,何度もS&Wの模試を受ける方が良い結果に繋がりやすいでしょう。
本番では本書を通して学んだ教えを信じて,ただ頑張るだけです!
まとめ
以上が,頂上制覇TOEICテストスピーキング/ライティング究極の技術のレビューとなります。
さまざまな情報がしっかりと載っているので,本書があれば他の参考書を使わずとも十分なS&W対策ができてしまうことがわかっていただけたのではないでしょうか。
私は最終的に,本書の解答例をひたすら暗記する勉強法を採用しましたが,十分な対策となり,本番で使えるたくさんのアイディアを得ることができました。
それに加えて,自分なりの意見も交えた解答を準備しておくと万全です。
スピーキングのUnit3のところではものすごい数の質問があったので大変でしたが,自分の中でのお決まり表現(勝ちパターン)はそうした練習を通してこそ身に付きます。
本番まで時間が残っている方は,まずはこの本で学び,どのような学習が足りてないのかを知ることで,日ごろのスキマ時間を有効に使えることになり,それは「数ヶ月」という単位でみると大きな差となって表れてくるものです。
公式問題集と本書のどちらか1冊しか買えない場合には,本書の方を優先的にやってみることをおすすめします。
とにかく高い完成度を誇る本書だけに,興味がある方は是非買ってみてください↓
技術偏重やなんだと批判されることもあるTOEICテストですが,学習して高いスコアが取れるようになった暁には,ビジネスシーンで使える英語力が確実に高まったように感じるはずです。
悪魔のささやきに惑わされず,S&Wの学習をある種の好機と捉え,前向きな気持ちで頑張っていきましょう!
最後までお読みいただき,ありがとうございました。