今回は,NHKラジオの番組の中から「ニュースで学ぶ現代英語」を取り上げ,その使い方についてみていきたいと思います。
番組名から分かるように,内容としては英語のニュースを聴くことがメインとなりますが,英文以外にしっかりした和訳が利用でき,おまけに丁寧な解説までもが付いてくるため,リスニング対策だけでなくリーディング対策にもなるところが魅力です。
NHKの語学講座であるにもかかわらずテキストが存在せず,必要情報はすべてウェブサイトまたはスマホアプリから得られてしまうところは特筆すべきで,質の高い教材を誰でも無料で利用することができます。
1回の放送時間が15分ということで量的にも充実しているため,工夫することでTOEIC対策として用いることも十分に可能です。
もくじ
ニュースで学ぶ現代英語とは
突然ですが,みなさんはNHK WORLD-JAPANという英語番組をご存じでしょうか。
正確で公平なニュースと良質なコンテンツを届ける公共放送機関であるNHKの国際放送局になりますが,そこに含まれるNEWSLINEというニュース動画を主な題材として,最新の時事英語を学べるラジオ番組が「ニュースで学ぶ現代英語」なのです。
以前の記事でCNNやBBCのような海外ニュースが聴けるサイトを紹介しましたが,それと比べるとNHKのニュースは使われる語彙が易しめで,文が長くならないように調整されていて取り組みやすいため,日常的に利用している人が,私の周りにも結構な数,存在しています。
ところで,本ラジオ番組は2022年4月から新しく開始されたわけですが,その前身として「ニュースで学ぶ英語術」という似たコンセプトの番組がありました。
私も当時聴いていましたが,その番組は放送時間が5分だったこともあって,やや物足りなさを覚えるものでした。
しかし,上述のリニューアルによって3倍の長さに拡大されたことで,聴くニュースの量こそ変わらなかったものの,解説部分が増えてレッスン内容がより充実した印象です。
番組スタッフも一新され,現在は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サム氏が講師・総合監修となり,アメリカはミネソタ州出身の翻訳家であるトム・ケイン氏らがパートナーを務めています↓
出演者とキャスト
講師・総合監修:伊藤サム
パートナー:トム・ケイン,クリスティ・ウェスト
講師(解説):大島希巴江,大門小百合,高橋敏之,前嶋和弘
MC:トラウデン直美
伊藤氏はイギリスのBBCに時事コメンテーターとして出演していたこともあって英語を話すことに長けていますが,23年までは米山明日香氏との2人体制でした。
それが2024年になると,講師が1人になった代わりに3人の解説員が加わりました。
ニューフェイスの各々は専門分野が異なっているため,得意分野の番組に登場してくる形になります。
2025年度は先に示した4人体制です。
本放送は平日の午前9時30分から9時45分がメインの時間帯となりますが,午後の11時45分~12時や20時45分~21時に再放送があり,日曜日の午後10時~11時15分の時間帯には5本分まとめて行われる他,放送から約1週間は聞き逃し配信が残ります。
以上はラジオ第2の話ですが,NHK-FMにおいても再放送が午前0時30分~0時45分(火~土)に行われているので,都合の良い時間に利用しましょう。
1週間以上経つと,過去の放送はアーカイブへと移り,こちらからは文書の形で読んで学ぶことが可能です。

アクセスはPCからでもスマホからでも可能なので,使いやすい方を選択してください。
なお,学習に使えるサイトは2種類あり,違いは以下のようになっています(両者ともWeb版以外にアプリ版もあり,後者の名前は「NHKゴガク」となります)↓
リアルタイムで聴く場合は前者一択ですが,いずれにしても,専用アプリをダウンロードするのが,使いやすさと音質の両面でおすすめです。
具体的な違いについてもう少し説明を加えると,らじる★らじるの方では,英語音声がすべて流れる前に,ニュースの要約となるリード部分が和訳も交えて紹介されたり,どのようなポイントを聞き取ればよいかといった説明があったりと,日本語と英語が入り混じった放送内容になります↓
講師が英文の後に日本語訳を読み上げてくれますが,そのときの訳し方は,英語を早く読んだり聞いたりする際に大変役立つもので,英語の語順のまま後戻りすることなく,まとまりごとに前からどんどん訳し上げていくスラッシュリーディング的な逐語訳になるところが特徴です↓
リスニング力をアップさせるためにも,この訳し方は身に付けておいて然るべきでしょう(イメージを頭に浮かべるだけにして日本語に訳さないことも多いですが)。
一方,後者からは「過去のエピソード」部分から原稿(英文と逐語訳)と和文(自然な日本語訳),そして覚えておくべき重要なポイントを確認することができます↓
なお,NHKゴガクの方は以下のような見た目で,例文をクリックするだけで簡単に音声を聴くことが可能です↓
らじる★らじるとの連携も取れていますが,先述したように,アーカイブに移動された放送内容は音を聞くことができません。
なお,多くの方は本番組を語学目的で使うと思われますが,ニュースをただ聞き流して終わりにせず,英文と和文をしっかりと確認することが重要です。
逐語訳のところからは解説も読むことができる他,学習ポイントには,番組中のToday’s Takeawaysのコーナーで取り上げた内容が含まれます。
といっても,まだ本番組を聴いたことがない方にとってはちんぷんかんぷんな内容だと思いますので,詳しい使い方について,次章でみていくことにしましょう!
ニュースで学ぶ現代英語の内容
ニュースで学ぶ現代英語で扱う素材の難易度ですが,CEFRで言うところの「B2」となります(2024年度まではB2~C1)。
これはTOEICスコアでいうところの785点以上に相当するレベルということで,数ある英語講座の中でも最高峰と言ってしまっても過言ではないでしょう(現行のもので1番難しいのはラジオビジネス英語です)。
扱う内容が現代英語であるため,生きた英語に触れる目的で使うにはピッタリで,語彙も難しい表現が多数登場してきます。
事実,番組内でも「英語の力を実用レベルに伸ばしていく総合的な講座」と述べられていました。
NHK WORLD-JAPANを基にしているとあって,さすがにリアルタイムとまではいきませんが,大体3~4週間前に放送された内容が登場してくるという新鮮さです。
ニュースで学ぶ現代英語には紙のテキストが存在していないと先述しましたが,製本するには時間がかかるわけで,新しい内容を取り上げるためにあえてテキスト化していないと考えることもできるでしょう。
ニュース自体の長さは1分程度ですが,適当に抜き出した10レッスンに登場する単語数を数えてみたところ「135・136・132・135・119・119・109・127・135・151語」となっていて,平均すると約130語でした。

このくらいの量のニュースが週に4つ,毎回新しい内容で放送されてきます。

基本的な番組の流れは以下の通りです↓
- ニュース全体を聞く(約1分)
- 訳と解説(約7分)
- ニュースを再度聞く(約1分)
- 豆知識または議論(約5分)
概要についての説明が終わると早速ニュースを聴くことになりますが(1),続けて逐語訳で1文ごとにもれなく解説してもらえるため(2),再度聞いた際(3)にわからない部分がなくなっていることに驚きます。
なお,上の4についてですが,番組を担当する顔ぶれが,例えば月~火と水~木で異なり,それぞれの講師の強みとなる背景知識を生かした解説が魅力です。
毎回ある豆知識(Takeaways)では,難しいポイントや単語や文法におけるネイティブ視点の解説があり,現代英語を学ぶ上で非常に役立つ内容ですし,MCが加わる回では,3人がわいわいとニューステーマについて議論を交わし,異文化理解ひいては自文化に対しての理解も深めることができます。
ニュースで扱うテーマは社会的な内容からスポーツ,さらにはエンタメや科学的なトピックまで多岐にわたっていて,自分の興味を引くものが見つからない状況に陥ることはそうそう考えられません↓
放送内容の例
- アイルランド TikTokに制裁金(2025年5月19日放送分)
- ネット利用 低年齢化と長時間利用進む(2025年5月20日放送分)
- CIA 中国高官に機密提供呼びかけ(2025年5月21日放送分)
- コンビニ 外国人観光客向けに英語表記(2025年5月22日放送分)
- 今週のスピーキング練習(2025年5月23日放送分)
回によっては英語ネイティブではない話者による英語も登場してきますが,グローバル化が進む社会ではむしろそうした英語を耳にする機会が増えており,むしろ聴き取り練習を行う重要性はより高まっています。
それでは次章で,本番組をTOEIC学習に役立てる使い方について考えてみましょう!
ニュースで学ぶ現代英語を用いたTOEIC勉強法
日英合わせ読みによる速読練習を行う
ニュースで学ぶ現代英語の勉強法として,まずは日本語と英語の合わせ読みが考えられます。
これにより,話の内容を見失うことなく読めるようになるため,英文を読む速度アップに繋がるというわけです。
これは主にTOEIC800点が目標の方におすすめできる方法として,以下の記事で詳しく紹介しました↓
本番組を使って行う場合,まずは和文のところで,英文の意味を確認するところから始めましょう(画像はPC用の公式サイトのものを使っていますが,スマホ用のNHKゴガクでも同様の使い方が可能です)↓
最初に日本語で文章を読んでおくことで,頭の中にイメージが浮かびやすい状態にしておきます。
続けて,英文を読んでいきますが,このとき分からない表現があれば逐語訳のところにある解説を確認してください↓
英語を学ぶ際は,出てくる英文の意味が十分に理解できる教材を使うことがポイントなので,これほどの解説内容であれば十分です。
本番組を視聴する学習者のレベルであれば,1分間に200語以上のスピードで読むことが目安となるため,約30~40秒ですべてを読むことを目標に練習します。
ライティング力をアップさせる
続いて2つ目の勉強法ですが,TOEICで900点以上目指す方は,本番組を使ってライティング力もアップさせましょう!
やり方ですが,初めて出会った表現を含む英文を2~3文ほどピックアップしてください。
このとき,学習ポイントの対象となっている英文も含めるようにすると良いでしょう↓
ニュース自体の放送時間は1分弱ですが,細部まで確認しようと思えばこのようにずっと深くまで学習することができ,ピックアップした英文を5回ほど音読しながらノートに書き写すことで,1文あたり10分ほどの時間を余計に費やすことになります。
ですが,こうした努力が後で大きな差を生むことに繋がってくるわけです。
このときのやり方については以下の記事も参考にしてください↓
サイトトランスレーションを練習する
これまでに紹介したものと比べるとやや目標スコアは落ちますが,TOEICで600点くらいを目指す場合,意味の区切りごとに訳して読み下していくトレーニング(サイトトランスレーション)が有効です。
もちろん,今回の場合はプロの通訳者が行っているわけで,実際は私たちが行うものよりずっと高いことをやっていることにはなりますが,らじる★らじるを用いてプロの訳し方を研究しましょう!
例えば,
A judge in the U.S. state of Minnesota has delivered the final word in the George Floyd murder case.
という文に対して,番組内では,
アメリカのミネソタ州の判事が/判決を下したのは/ジョージフロイドさん殺人事件です。
と,3つのまとまりに分けて読み下していることがわかりました。
こういった塊を意識できるようになると,実際の英文の息継ぎが上記まとまりごとに行われていることにも気づけるはずです。
加えて,前から訳す際のちょっとしたコツも掴めるかもしれません。
例えば上の英文で,「~のは…でです」といった言い回しは,早速使っていける表現ではないでしょうか。
スピーキング練習に集中する
2025年度から開始されたばかりなので,今後どうなるかはわかりませんが,金曜日のレッスンのみを視聴して,スピーキング練習を行うだけでもTOEIC対策ができます。
Speaking Testの対策になる以外に,英文法が話題になることも多いので,L&RのPart5の間接的な対策になるでしょうし,英語を聴くことになりますから,リスニング練習にもなるはずです。
金曜日だけということで,番組を1週間分すべて視聴するだけの時間が取れないときであっても,15分だけであれば何とかなるでしょうし,MCの方を交えて英語で和気あいあいと話す時間は,視聴者に語学の楽しさを気づかせてくれ,モチベーションのアップに繋がります。
まとめ
以上,ニュースで学ぶ現代英語の概要と,TOEICのリーディングスコアを大きくアップさせるための勉強方法を中心にまとめてきました。
ここまでに述べてはいませんが,TOEICのリスニングスコアをアップさせたい方が,繰り返し用いる練習素材として本番組を選ぶこともおすすめできます。
ニュースが読まれるスピードが速いと感じた場合は,らじる★らじるのアプリのプレイヤー速度を0.75倍に設定して聞くようにし,ディクテーションやシャドーイングの練習素材として使ってみてください。
しかし,このような使い方ができるようになったのも,古い音源もアーカイブとして長く残してもらえるようになったからで,年々,ますます有用な教材になりつつあります。
しかも,これが無料で利用できるとは,一体どうしたことでしょう。
最後になりましたが,このレベルの音源を使ってTOEICの勉強をしようという方であれば,もはやリスニングパートのスコアは満点に近いように思われます。
その意味では,本番組はリスニング以外の能力強化の素材として用いる方が,TOEICのスコアアップに繋がりやすいでしょう。
もちろん,英語のニュース番組として純粋に楽しむことができますし,本番組の構成や解説内容は視聴者の知的好奇心を大いに満たしてくれるものなので,毎日のTOEIC学習の息抜きに使ってみるのも良い方法です。
オンライン学習をするにあたっては,利用できるものには積極的に手を出してみる姿勢が重要になってきますので,是非,ニュースで学ぶ現代英語を選択肢の1つとしてください。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。