今回は,NHKの「ラジオビジネス英語」を取り上げ,何が学べるかについてまとめていきたいと思います。
2021年の4月から新しく始まった講座ですが,2025年に無事4年目を迎えました。
週に5日の放送があり,1回の放送時間は15分と十分です。
講師は柴田真一氏で,レベルはCEFRで言うところのB2~C1相当となっています(当初はB1からでした)。
ここでは概要について述べるところから始めて,本講座を通して学べる「英会話・メール・教養」についてみていくことにしましょう!
もくじ
ラジオビジネス英語とは
NHKのラジオ講座において,2021年3月はひとつの大きな節目となりました。
特に,杉田敏氏による長寿番組であった「実践ビジネス英語」が終了してしまったのは大きな衝撃でした。
というのも,これまで20年以上の歴史があり,レベルは最高峰に位置する大変ハイレベルかつ洗練されていて,私自身,学生時代からよく聴いていた講座だったからです。
なお,この背景には,学習指導要領と連動した「NHK英語グランドデザイン」という試みがあったことが知られています。

しかし,実践ビジネス英語の代わりに登場したのが,今回紹介する「ラジオビジネス英語」だったわけで,初回は2021年3月29日に開始されました。
本講座を担当するのは,2015年から「入門ビジネス英語」を担当していた柴田真一氏(パートナーはJenny Silver氏)です。
銀行員として,20年のヨーロッパ駐在経験がある柴田氏ですから,ビジネス英語を教えるにふさわしい取材力や素養があることは明らかでしょう。

ただし,ボリューム的に半分となってしまったことは残念で,10~3月に放送される内容は4~9月の再放送となっていることに注意してください(半年コースです)。
大学生であれば,就職前の4年生の後期に学んでおくだけで十分かもしれませんが,年間を通して学び続けたい方は,各自が別に工夫する必要があります。

教材の構成ですが,曜日を3つに分けることで,ビジネス英会話と英文メールの書き方,そしてビジネスに必要な教養を学べるものになっています。
次章から1つずつ,詳しくみていきましょう!
毎年,テキストのデザインや構成(曜日やレイアウト)に若干の変更はありますが,肝心な内容には変更が見られないため,画像は2021年度のものを使い続けることにします。
ビジネス英会話を習得できる
月曜日から水曜日までは「ビジネス英会話」について学ぶ回です。
1年で3つのビジネスシーン(大テーマ)を扱い,すぐに使える実用的なフレーズを学ぶことができます。
月ごとには小テーマが設定され,2021年度のものは以下の通りでした↓
ビジネス英語のテーマ例
4月:海外拠点との会議をアレンジする
5月:マーケティング担当者を採用する
6月:アメリカで土地購入の商談をする
7月:人事異動の打診を受ける
8月:プレゼンテーションの準備をする
9月:ジャカルタでプレゼンテーションをする
実際の進め方ですが,まずはタイトルを読んで,レッスンの目的を理解しましょう↓
タイトルはもちろん,Listening Pointにも目を通しておきます。

もっとも,どちらも番組内で講師の先生が読み上げてくれますし,答え合わせもスキットを聞いた直後に行われます。
ビジネス表現やシャドーイングに挑戦した後,Words and Phrasesでは単語や熟語について学びましょう!

pie chart,elaborate,mortageといった基本的なものから,demeanor,trajectory,be plagued with~のような難しいものまで登場してくるので,語彙力の少ない人ほど多くの学びが得られるはずです。
Silver氏の発音に続き,自分でも真似して発音しますが,後で単語帳に入力する方はここでチェックしておきます。
Business Phrase of the Dayは私のお気に入りですが,実生活で応用が利きやすい表現を詳しく学ぶことができます↓
上の回では,worth -ingというフレーズを題材に,「~する価値のある」という意味のworthy ofやvalueといった単語を使った例文が登場していました。
Alternative Expressionsでは,上で学んだ内容に関連した別表現を学びます。
そして,Upgrade your Communication Skillsにおいて,コミュニケーションを取るのに必要なスキルを身に付ける練習を行ったら終了です。
自分の意見を通すために,相手の意見を受け止めながら主張を展開する。
今回学んだ「アサーティブな主張をする」という方針は,日本語で会話するときにも役立てられるもののように感じました。
英文メールの書き方を学べる
木曜日のみになりますが,世界を相手にするビジネスで必要な「英文メールの書き方」についても学ぶことができます。
日本語をそのまま訳しても上手くいかない場面が多いので,英語ならではの表現を身に付けていきましょう。
例えば,以下は毎号掲載されている表記についての但し書きですが,これだけでも多くの方の役に立つ内容です↓
実際の学び方ですが,メールでのやり取りを題材とするので,自分からだけでなく,相手からの返信もあります。
内容は,月~水に学んだものと多少リンクしているのが特徴です。
まずは,Point to Checkに書かれた重要ポイントを理解してください↓
1通目のメールを読み終えたら,次に進みましょう。
教養あるネイティブスピーカーが書き上げた英文メールだけに,大変英語らしい内容です↓
Your Turnのコーナーでは,実際に日本語を英語に変える練習ができます。
30秒程度ですが,実際に書いてみてください。
ちゃんとしたメールが書けたように思っても,まだまだ上があることを思い知らされるはずですが,昨今はSNSで短文を書くことに慣れてしまっているため,相手への思いやりが疎かになってしまっていることが原因なのかもしれません。
最後にStep3として,2通目に対する返信を確認し,仕上げとしてPractical Exercisesで関連表現を練習して終了です。
覚えておきたいフレーズだったり(放送されない,テキストオリジナルのコンテンツです),ビジネスでよく目にするカタカナ語(ターンオーバー,ラフ,スケール,アプリシエイトなど)の使い方だったりを学ぶことができました。
ビジネスに必要な教養も学習可能
金曜日は,著名人による「インタビュー」を聞きますが,1人に対して2つのインタビューが掲載されます。
これまでの内容と比べてなかなか高度になっているように感じますが,まずはToday's Listening Pointsを確認しましょう。
聞くポイントを絞り込むことで,無目的でダラダラと聞いた場合と比べて,せめて質問の内容くらいは聞き取ろうと集中することができます↓
この時点では,まだ答えがわからなくても構いません。
インタビューを1度聞き終えたら,Words and Phrasesを確認しますが,このときSilver氏の解説が入ることがあります。
その後,再度インタビューを聞きますが,ここで質問に対する答えを用意しておく必要があり,Answers to Listening Pointsのコーナーで実際に英語で答えなければなりません。
ポイントが押さえられたことを確認した後は,Enhance Your Vocabularyで表現の幅を広げたり,インタビューの中からピックアップされたセリフを学んだりできます。
総仕上げではないですが,月~木に学んだ内容を高いレベルで行うのが金曜日のインタビューだと見なせるでしょう。
その他の学びについて
上記内容について,毎日ラジオで聴くことを習慣づけることが中心で間違いありませんが,ビジネス英語講座の巻末には,「連載」と称して,有用なコンテンツがまだあることを忘れてはいけません。
名前や担当は年度で変わることがありますが,狙いは変わらず,
- TOEIC対策
- リスニング素材
- ライティング課題
となります。
TOEIC対策
TOEICのスコアアップのために,単語や文法,読解について学べるドリルが付いています↓
2025年度はPart5の難問を扱う文法的な内容なので,高レベルの文法力を身に付けられる他,サブ効果として,読解力やライティング力のアップにも繋がります。
これまでに本コーナーを担当してきたのは,早川幸治氏やメディアビーコン氏で,彼らが書いたTOEIC対策本にお世話になった方も少なくないでしょう。
リスニング素材
年度によって名前は様々ですが,長めの英文と朗読音声の他,複数の問題を有するクイズを解けるコーナーも設けられています↓
2025年度は,
- Between the Lines
- Heartfelt Reflections and Expressions
の2つでした。
音声があるものにはQRコードが付いていて,スマホで読み取ることでリスニングができ,クイズがあるものには解説と全訳があります。
なお,音声のダウンロードは約1年後まで有効となっていました。
英作文課題
「The Writer's Workshop」では,日本語の課題文を訳して応募することができ,表彰制度もある大掛かりなものです。
腕に自信のある方が全国から多く参戦してくることから大変高レベルな争いとなり,結果が出るまで3ヶ月近くかかってしまうことは残念ですが,取り組んだからこそ得られる学びもたくさんあるので,ぜひ挑戦してみてください。
また,提出をしない場合であっても,3ヶ月前の答案の最優秀答案が掲載されているので,そちらとその解説を通して,英作文に対する多くの学びが可能です。
以下は,解説の一部ですが,レベルの高さが感じ取れるように思います↓
実際は,このレベルの解説が5ページ程度にわたって続くことになるので,圧巻の情報量です。
まとめ
NHKラジオ第2放送
月~金:9時15分~30分(本放送),12時40分~55分,16時30分~45分(当日の再放送)
土:10時30分~11時45分(5回分の再放送)
以上,ラジオビジネス英語の概要と,習得できる内容についての紹介でした。
同じラジオ講座として,ニュースで学ぶ現代英語も紹介していますが,私はリアルタイムで聴く場合は,これらが連続で受講できる昼か夜のタイミングを選ぶことが多いです↓
なお,放送された週の次の月曜日になると,前週の内容がすべて公開となるため,1週間遅れで聴くのであれば,「NHKゴガク」というアプリを使うことで,時間を選ばずに聴くことができます↓
今では当たり前になっていますが,このサービスが登場したことによって,テープで録音するしかなかった頃よりもだいぶ使い勝手が向上したわけです。
とはいえ,本番組は半年コースなだけに,空いた期間は以前のラジオ講座の復習をしてみたり,新しいラジオ番組を聴いてみたりしてください。
例えば,ポケット語学を使えば,過去のNHKラジオ講座をアーカイブ形式で一気に通しで聞くことができます。
今は昔と比べて様々な選択肢が用意されているので,色々試しているうちに,自分に合う勉強法が見つかるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。