RIZAPの心髄はボディーメイクにありますが,その対象は何も,腕や胸,腹と言った身体づくりに限りません。
実際,「RIZAP ENGLISH」という英語学習のためのサービスにおいても,その独自性を垣間見ることができます。
今回は,そんなRIZAP社の実践する英会話の独自メソッドを取り上げ,その方法について学んでいくことにしましょう!
RIZAP ENGLISHでは脳を鍛える
RIZAP ENGLISHで鍛えることになる部位は,ずばり脳です。
英語が話せるようになるためには,自分の伝えたい言葉(日本語であっても構いません)を英語に変換する必要があります。
ですが,このときしっかり英語脳が鍛えられていないと,変換するのに時間がかかってしまい,すぐに英語が口を突いて出てくることはありません。
ここで一度,英語を聞いてから発話するまでの,脳が行う処理についてまとめてみましょう↓
英語脳が行う6つの処理
- 音を認識する
- 単語や文法を把握する
- 英語の語順で内容を理解する
- 話す内容を考える
- 文章を作る
- 正確に発話する
最初の3つは主にリスニングに関する処理であり,その先がスピーキングに関するものとなりますが,コミュニケーションは会話のキャッチボールですので,この両者ともにできる状態にしておく必要があります。
なお,このときの助けとなるのは,英語独自の音を聞き取る耳であったり,音声変化のルール,さらには語彙力や文法力に加え,背景について知っておくことだったりするのですが,知識だけあっても,上の処理を普段から練習していないとすぐにはできないことを覚えておきましょう。
加えて,こうした処理のどこか1つに弱点があると,それがボトルネックとなり,脳の処理がそこで止まってしまうことになります。
つまり,英会話で必要なものは,できるだけ高度に維持された総合力と結論付けられるわけですが,各処理ごとに実力のチェックが可能であり,例えば「オンライン会議は間もなく終わります」という平易な日本語を,すぐに英語に直してみてください。
正解は"The online meeting will be over soon."などとなりますが,こうした中学英語がパッと出てこないようであれば,上で言う5つ目の処理がうまくできていないことになります。
同様に,"It is a challenge for managers in America to continue to operate and manage people who have a lot of backgrounds."という英文を耳で聞いたときに何が起こるか考えてみましょう。
処理の2に弱点があれば,意味を考えている間に次の文章を読まれてしまうでしょうし,3に弱点があると,上くらいの長さの文になってしまうと,すべて聞き終えた頃にはすでに最初の内容を思い出せないはずです。
逆に,脳が英語を正しく処理できるようになっていると,
it is a challenge(大変なことです)/for managers in America(アメリカのマネジャーたちにとって)/to continue to operate and manage people(仕事をこなして人を管理するしていくのは)/who have a lot of backgrounds(多くの背景を持つ人を管理するのは)
などと構文を予想しつつ,前からそのままの語順で訳していけますし,究極的には日本語も介さずにできるようにもなります。
英語を話すときにおいても同じことが言え,この順番通りの日本語で英語にしていかないと時間がかかってしまいますし,正しい単語や文法は何だっけなどと考えている間に,周りの会話は先へとどんどん進んでいってしまうのです。
なお,英語学習の本質はコミュニケーションにあるので,しっかり声に出して練習するようにしましょう。
もちろんリスニングも大事なのですが,日本人はどちらかと言えばスピーキングの練習が不足しがちだと聞きます。
このことを普段から意識していれば,たとえ単語を学習する際であっても,英語を発音せずにはいられなくなるでしょう。
それでは次章から,RIZAP ENGLISH流の英会話メソッドについて詳しくみていくことにしますが,名称として「6STEPS,クイックレスポンス,実践スピーキング」の3つのトレーニングがメインとなることを理解しておいてください。
6STEPSについて
まずは6STEPSという方法について説明しますが,以下の6つの段階を踏んでいくトレーニングです↓
トレーニングとその目的
- ディクテーション:聞こえない音や苦手な音を見つける
- スラッシュリーディング:斜線ごとに前から訳すが英文内容の理解も行う
- オーバーラッピング:聞こえない音を音読し聞こえるようにする
- 意味音読:意味を理解できる速度で音読する
- シャドーイング:音や意味を理解し,音声化を同時に行う
- リピーティング:リスニング力に加え,記憶保持の訓練に繋がる
RIZAPでは,これらのうちのいずれかを選択して集中的にやるのではなく,例えば1のディクテーションを通して判明した弱点を,3のオーバーラッピングを用いて対策したり,2で引いたスラッシュをもとに4で音読するなど,トレーニング同士が結びついて相補的に活用されます。
最終的には,高度ながらも効果が高い5と6の2つに行きつくことになるわけですが,そもそもこういった一般的な学習テクニックについてよくわからない方は,すでに書いた以下の記事を参考にしてください↓
-
-
TOEIC学習に役立つおすすめテクニック
あらゆる学習に当てはまることですが,ある2人が同じだけの努力をした場合であっても,より効果が出る勉強法を採用した人の方が,費やした時間がそのまま学力上昇に直結することになり,学習期間が長くなるほどに, ...
続きを見る
なお,実際のRIZAPで行われるトレーニングについては,トレーナーの手が入った質の高いものになるので,1人でやるときは,それに比べると効果は多少落ち,手間は増えてしまいます。
例えばオーバーラッピングのトレーニングは,教室だと以下のような方法で行われるわけです↓
- ディクテーションで聞き取れなかった箇所の音声を用意してもらい,それを真似して音読する
- 音声速度についていけない場合は,音源の再生スピードを落として,徐々にスピードを上げていく
- うまく発音できなかった箇所を,集中的に真似して発話する練習をするが,このとき,リエゾンやリダクションなどの音声変化の知識の解説が行われ,リズム,イントネーション,アクセントのチェックも行われる。
- 苦手だった箇所がスラッと言えるようになったら,英文全体を通しでオーバーラッピングする。
- 録音したものを題材に出来栄えを評価し,オリジナルのスピードで音読できるようになったら終了
一般的にオーバーラッピングは,英文を見ながら音声を聞き,その真似をして声を出すことと説明されますが,それまでに聞こえていなかった音が聞こえる(言える)ようになるためには,足りない知識を補足し,出来を正しく評価できる目が必要になります。
適切な教材の用意であったり,習熟度のチェックや速度設定など,トレーナーの有無は,効率的な学習ができるかどうかに影響するというわけです。
また,上の4に挙げた「意味音読」については,あまり聞きなれない言葉のようにも思うので,ここで別途まとめておきましょう↓
意味音読の方法
- 英文を見ながら,意味の理解できるスピードで音読(意味音読)する
- このとき,読みながら情景をイメージするが,最初はスラッシュごとに意味を考えたり,日本語を介してもよい
- スピードが遅い文があればその原因を探す
- 判明した原因(語彙力や文法力,語順に慣れていないなど)を解決し,意味音読する
- 文のスピードが出るようになったら,全文を通して意味音読する
日本語を介さずに前から理解できるようになることで,リーディングに限らずリスニングにおいても,オリジナルに近い速いスピードで理解できるようになります。
クイックレスポンスのやり方
RIZAP ENGLISHでのクイックレスポンスというトレーニングは,反射的に発話できるようになることが目的です。
メソッドは簡略化され,書籍にもなって発売されているのですが,RIZAPの教室では以下の3つの段階を踏んで行います↓
- 高速変換
- パターンプラクティス
- 疑問・否定変換
とはいえ,先の6STEPSに比べて,これらはほぼ同時に行われることが多く,とにかく量と回数を多くこなしていくことに重点が置かれているのが特徴です。
10~15文ほどを1Unitとしますが,まずは1つの英文を5回音読します。
その後,テキストから目を離し,今度は英文を見ないようにして暗唱するのですが,このとき日本文については見て行っても構いません。
こちらも5回ほどやり,その調子で1Unit分終わった段階で総復習します。
これまでの英文を対象に,その日本語を見ながら英語にしていくわけですが,ここでつまってしまったものはチェックし,再び音読と暗唱を繰り返してください。
この調子でUnit全ての日本語を英文にスラッとできるようになったら,次のUnitへと進みます。
教材としては,アルク社の究極の英会話やビジネス英会話高速変換トレーニングが使われることが多く,中学英語が中心の前者と,ビジネス英語に的を絞った後者と使い分けられているようです。
例えば前者の1Unit分を引用すると,以下のようになります↓
彼らは私の友人です=They are my friends
彼女は私たちのチームの一員です=She is a member of our team
ジュンコは今,ロンドンにいます=Junko is in London now
あれはジェシーの机です=That's Jessy's desk.
弊社の営業時間は9時から6時です=Our office hours are from nine to six
明日は私の会社では休日です=Tomorrow is a holiday at our company
9月の第1月曜日は,アメリカの労働者の日です=The first Monday in September is Labor Day in the United States
(電話で)ABC社の川村正樹と申します=This is Masaki Kawamura of ABC company
この度は申し訳ございません=We're sorry about this mistake
お会いできてうれしいです=I'm happy to see you
どれも中学1年生で習う英語ではありますが,実際にやってみると,こういったものをすぐに言えようになるためには,発話するトレーニングが不可欠だと実感できるはずです。
各種スピーキングテストをみても,間伸びせずに返答できることは評価の対象になっています。
この他のポイントとして,文構造や意味を意識しながら音読することであったり,情景をイメージしながら口に出すなどの意識が必要で,こうしたことについては1人で行うと雑になりがちなことに注意してください。
何も考えずに機械的に行うようでは,口の筋トレで終わってしまい,脳への働きかけがありません。
実践スピーキングのやり方
最後にRIZAP ENGLISHの実践スピーキングですが,これはCamblyなどに代表されるオンライン英会話を利活用して行うトレーニングです。
教室ではトレーナーにトピックを与えられるので,話す内容を考えてはノートにまとめておきましょう。
このときかける時間にしては10~15分です。
次にいよいよオンライン英会話を行うのですが,このとき,相手方に「スピーチを添削して欲しい」という意思を伝えることに注意してください(理由は後述)。
時間にしては,30分の制限時間内にスピーチを3回行います。
そのつど,講師に指摘された間違いを修正をしていきましょう。
オンライン英会話を終えた暁には,次回までの課題を分析するようにし,言いたかったけれども言えなかった文があればすべて日本語で書き出します。
そして,それら日本語を,より簡単な言葉に言い換えて英語にする練習を行い,その日のトレーニングは終了です。
難しいことであっても,より簡単な言い方ができれば,中学英語だけで会話の多くがカバーできることに驚くでしょう。
例えば,「売り上げがうなぎ上りです」が英語で言えなかった場合は,「セールスが増加しています」などと言いかえ,"The sales is rising dramatically."などと言い換えることができます。
こうした発想の転換についての感覚を掴むことも,英会話を実践する観点からみれば非常に重要なことの1つです。
また,意外と知られていませんが,相手講師とフリートークだけになってしまうとアウトプットの時間が少なくなってしまい,変な話,相手が好き勝手話して終わってしまう可能性があること,スピーチはすべて英文にあらかじめ直して臨もうとしないことの2つには注意してください。
最初にスピーチの添削を頼んだのにはこうした意図があったわけです。
また,全部英語で書いた原稿を読み上げるようでは,それはもはや答えの決まった英作文になってしまいますから,ちょっと見て流れを確認するくらいのメモ程度にとどめておきましょう。
まとめ
以上,RIZAP ENGLISHにおける英会話の独自メソッドは,6STEPSとクイックレスポンスと実践スピーキングの全部で3つがあり,それぞれにおいて,目的や手順であったり,意識したいポイントがあることがわかっていただけたのではないでしょうか。
もちろん,教室でトレーナーがついて行う場合と,1人で独学する場合には大きな違いがありますので,後者においては各自が自分の実力や環境に合わせて工夫をする必要があります。
とはいえ,今回の内容で知らなかったことも多かったと思いますので,例えば,オンライン英会話を利用して実践力を高めようと思った場合には,トピックの選定や明確な意思表明であったり,反省タイムを設けたりすることに注意して実践してみてください。
なお,RIZAP ENGLISHでは,わずか1日5時間9,980円で完結するRIZAP ONEというサービスも登場しています。
数十万円の予算はなくても,今回の内容を確認する程度であれば十分に体験できますので,興味がある方は是非挑戦してみてください↓
最後までお付き合いいただいた方,誠にありがとうございました。