今回は，TOEICを受験する方の最も多くが購入するであろう「公式TOEIC Listening & Reading問題集」についてレビューしてみたいと思います。
TOEICの難易度や本番の流れを把握するためには模試を解くのが一番ですが，選ぶ際は作成元の信頼度を考慮すべきです。
「これで稼げます！」的なハウツー本ほど不確かではなくても，完成度の低い参考書が販売されていることが実際にあります。
もっとも，それらは映画などと同じで重版やシリーズ化に決して至りませんが，誰しも，完成度の低いものを1冊でも購入してがっかりしたくはないでしょう。
なお，最近はデジタル教材が流行っていますが，紙の冊子の方が優れているところもあり，模試はその代表例です。
めくったりマークしたりする作業なしにTOEIC対策は成り立ちません。
さて，今回のレビューでは公式TOEIC問題集の収録内容に加えて，選ぶ際の注意点についても記述しています。
もちろん，私だけの意見では説得力に欠けるかと思いますので，まずは各巻の評判について，大手ECサイトのレビューを分析するところから始めましょう！
もくじ
TOEICの公式問題集の評判
本書に帯が付いていれば，そこに同じようなことが書かれていると思いますが，TOEIC対策を行う上で最も効果的とされる方法の1つは本番そっくりに作られた模擬試験（模試）を解くことです。
彼を知り己を知れば百戦あやうからず。
とは孫子の言葉ですが，本番の難易度と自分の実力の両方をこの1冊から窺い知ることができます。
TOEICのことを最も良く理解しているのは神講師でも有名YouTuberでもありませんから，特別な理由がない限りは公式のものを第一に検討しましょう。
これはブランド物のバッグを買うことに似ているように思いますが，TOEICについてあまりよく知らない方は，他社のものも含めた模試が他とどのように違うのか見分けられませんし，ましてや今の自分がどのような内容の模試を欲しているのかは到底わからないはずです。
とはいえ，TOEICで860点以上を毎回取れる方が模試を買うというのであれば，捻った問題が多く収録されていて時間が不足しがちになる「難しめ」の模試を購入するのがベストですし，逆に，英語のブランクがあって500点くらいが目標の初心者には「やや易」の難易度の模試が適しています。
都合が良いことに，公式問題集は複数冊が売られていて，巻ごとに難易度が異なっていることが知られているため，実力によって解くべき巻を変えて対応しましょう！
もっとも，1冊しか買わないとか自分の実力がわからないのであれば，最近発売されたものを購入するのが無難で，2冊目以降だったり保有スコアを元に決めてみたりする際に，一般的な評判を参考にすれば良いわけです。
それでは，以下で各巻の評判を確認してみましょう↓
各巻の発売日とAmazonでの評価
- 2016年10月発売。271件で星4.2の評価。リスニングとリーディングともに易。
- 2017年2月発売。262件で星4.4の評価。レベルは易。変な難問が少なく気持ち良く解ける。
- 2017年12月発売。354件で星4.4の評価。難易度としては2巻との変化をさほど感じず。
- 2018年10月発売。452件で星4.3の評価。リスニングセクションのPart2が易でそれ以外がやや易。
- 2019年6月発売。659件で星4.5の評価。Part2に難問あり。リスニングは易でリーディングはやや易。Vol.5からPart5以降の音声も収録されるようになった。
- 2020年2月発売。871件で星4.4の評価。新しいナレーターが加わり，難易度は標準。
- 2020年12月発売。1175件で星4.5の評価。やや易だが，コロナ禍でTOEICの問題集が売れた時期だけに評価数が多い。
- 2021年10月発売。1067件で星4.5の評価。標準レベル。英国女性の読み手対策として，上級者の間で注目された。
- 2022年10月発売。604件で星4.5の評価。難易度は標準。ただしTEST2だけを見た場合，歴代で最も高い難易度だった。
- 2023年10月発売。380件で星4.5の評価。難易度はやや難。最近の話題や捻りのある出題も散見される。
- 2024年7月発売。226件で星4.3評価。難易度はやや難。解説量が増え，色分けによって見やすくなった。これ以降，CDが付属しなくなる。
- 2025年10月発売。38件で星4.3評価。難易度はやや難。Part4の問題の評価が高い。
易や標準というのは，現在の本番と比べた際の評価になりますが，本番の難易度は「難」ですので，どの公式問題集で学んでみたところで，本番の方が簡単だと感じられることはありません。
高得点を取得したい場合は，別の参考書に頼る必要があります↓
2021年からは，TOEICの日（10月19日）に合わせて年に1回公式問題集が発売されるのがお決まりです（2024年のみ例外です）。
上のように並べてみると，公式問題集の難易度は発売の回を重ねるごとに高くなる傾向にありますが，この背景には，新形式になってから時間が経つほどに各種予備校や教材の対策内容がより洗練されてくることが知られています。
相対評価であるTOEICにおいて受験者のレベルが毎年上がっていることは嬉しいことのようで，実施元からすれば悩みの種でもあり，しかもそれが素の英語力というよりも慣れの部分に起因しているわけですから，難しくせざるを得ないわけです。
加えて，有効期限がないTOEICなだけに，昔頑張って取ったスコアが後輩たちにすぐ否定される事態は誰もが望まないでしょう。
とはいえ，今でも初期に発売されたものの評価が増え続けているので，Vol.1～3の人気がないわけではありません。
公式問題集の難易度が年々難しくなっていることは確かですが，かといって新刊になるたびに劇的に難易度が上昇することはないです。
ただし，途中でスピーカーが変更になったり，問題の意図が多少変わったりはしているので，1冊目と最新刊を比べてしまえば明らかな差を感じますが，900点以上を狙うのでなければ，トレンドの難問に触れておくことは必須ではありません（やってもやらなくても本番では正解できません）。
それよりも，本番が一番難しいと感じる受験生が大半のため，購入した公式問題集を何回か繰り返したときのスラスラ感を本番でも味わえることはないと覚えておくことのほうが重要です。
もちろん，これらの事実を認識した上で，模試を隅々まで学び倒しては音読するなどし，限界まで理解を深めておくことが有意義な時間の使い方であることに疑いはありません。
公式TOEIC問題集の構成
ここでは，公式問題集のVol.3を例に，本書の構成についてみていきましょう！
最初にTOEICの概要（問題形式など）についての説明があり，使い方に対する簡単な指示が2ページほど続きます。
その後，いきなり本番が始まることはなく，本番の約7分の1サイズほどに簡略化されたサンプル問題（全28問）を解きながら，実際の問題がどのようなものであるかを簡単に体験することが可能です。
ゲームのチュートリアルのようなものと言えばわかりやすいでしょうか。
サンプル問題では実際の試験で流れるDirections（問題指示）の全訳が載っていて，あらかじめ熟読しておくと本番では別のことに時間を割けるようになるのでおすすめです。
公開テストでは同じDirectionsが流れ，その間に写真や問題を確認したりするのが王道ですが，どのような問題を解くことになるかを予め知っておくだけでも，本番で無用な混乱をせずに済みますし，頭も休められます。
サンプル問題には指示だけでなく問題も用意されており，以下の画像はPart1のものになりますが，左がDirectionsで右が問題です↓
なお，サンプル問題の量をパート別にまとめてみると，
- Part1が1問
- Part2が2問
- Part3が6問
- Part4が3問
- Part5が2問
- Part6が4問
- Part7が10問
となっていました。
一つ一つに全訳と解説があるので，特にもやもやするところはありません。
サンプル問題の後には実際の模試が2回分用意されていて，若干異なるところはあるものの，解答用紙や問題冊子の厚みやサイズは本番と同様です↓
こうした恩恵は電子書籍を使っていては受けられません。
解答と解説は別冊となっていて，使用頻度を考慮すると，実質別冊が本体と見なせるでしょう。
何度やり直しても学びのある，役立つ知識の宝庫です↓
水をはじきそうな表紙をめくると，本文とその訳，解説に加えて，単語や表現のまとめがついているパートもありました↓
正解に至るまでの手順も解説されているため，
こういう考え方で正解に至るものなのか！
といった思考過程までを学べます。
これは，TOEICの上級者になっていくほど（時間の使い方についてまで気にできる余裕が生まれるほど）重宝するでしょう。
換算スコアもありますが，レンジ幅は広く出てきてしまうのが難点です↓
とはいえ，多くの方はレンジ中央のスコアから10点以内の差に収まるはずで，上の例で説明すると405～565点の中央値は485点ですので，現時点の実力は475～495点くらいの間だと判断するようにしてください。
さすがに，そのまま足し合わせるだけでは幅がありすぎです。
その他，TOEICでは何問ミスまでOK？目安はの記事で述べたように，TOEICでは1問5点などと計算しないことに注意しましょう。
公式問題集のおすすめポイント
ここでは具体的に，公式問題集を使う際のおすすめポイントをいくつか書き出してみます。
問題の難易度が妥当
問題集によっては問題自体が難解すぎて必要以上に時間がかかってしまったりその逆もあったりしますが，公式問題集の難易度は，実際のTOEICテストを作成しているチームが作っているだけあって「極めて妥当」です。
先に紹介した計算方法で算出してみると，実際の自分の得点に近い予想スコアが算出されてくるので，次の対策や方針が立てやすくなります。
例えば，結果が450点であれば500点を目標とする対策本を購入するのが良いでしょう。
TOEICでは100点以内を目標にするのが普通です。
とはいえ，実際の問題は最新の公式問題集よりも難しく感じるもので，問題の難易度だけでなく，本番独特の雰囲気も影響してきます。
自宅と本番の環境間には大きな差があり，TOEICテストの当日には決まって，
難しくて全然できなかった…
という落胆の声を随所で耳にしながら帰路につくものです。
この傾向は，中上級者になるほど見られるようになり，ある意味，逃れられない試練とも言えます。
ですが，スコアは相対的なものとして修正されて算出されてくるので，本番の難易度自体は影響ないと思っておく方が健全（自分が焦って自滅してしまうことが多い）ですし，自分の実力がわからない方にとっては本書以外に良い選択肢は見つからないでしょう。
収録されている音声が秀逸
他社の模試を使ってみると，収録されている音声が話されるスピードや声質，はたまた訛りの有り無しなどの点で実際のテストと大きく異なることに気付かされます。
その点，公式の模試には公開テストで実際に採用されているスピーカーが登場してきますし，音声ダウンロードにも対応済みです。
Vol.5以降はリーディングセクションにも音声が付いたので，復習する際に利用できます。
実際の本番では，
あ，この声，聞き覚えがある！
などと話し手に妙な親近感を覚えることがあり，良い意味でリラックスできるでしょうし，初めて耳にしたときよりも聴き取りやすくなっているはずです。
余談ですが，競技かるたの世界では読み手の声の癖を読み取って普通の人が聞こえない音まで聞けるようになるそうで，人間の耳には凄い機能が備わっています。
電車で寝ている時に周りの音が聞こえなくなったり，耳をそばだてれば特定範囲の音だけに集中するような離れ業も可能です。
特に，リスニングの点数は伸びやすいとされているので，公式問題集の音源を使ったPart1～4対策はスコアアップに大きく貢献してくれることでしょう。
別冊の存在
前章の最後で登場した別冊の存在が，この公式問題集の「魂」とも呼べる部分です。
実際これだけを持ち歩いて学ぶことも多くなるでしょうし，別冊だけ何度も繰り返して使うだけでも1ヶ月くらいは優に過ぎてしまいます。
公式問題集の使い方に長けた上級者ともなれば，公式問題集を1冊仕上げるのに半年かけることもあるくらいです。
確かに，シャドーイングにディクテーション，さらにはリプロダクションまでやろうものならそれくらいの時間がかかります。
とはいえ，公式問題集以外にも良い参考書はたくさんありますので，単語帳や苦手パートの対策の方が有効になる場合があることはお忘れなく（当サイトで紹介しているアプリ教材は便利なので，是非使ってみてください）。
英語力をすぐにガッと上げることはできませんが，TOEICへの対応力は即座に上げることができます。
簡単なところだと，先に述べた問題の指示だったり解き方への思考プロセスだったりに精通しておくことが知られていますが，知識の有無で大きくスコアが変わるものから完璧にしていきましょう！
文章を何度も読んでいればTOEIC特有のビジネス的なボキャブラリーは少しずつ増えますし，海外の方と仕事をする際にも当然役立ってくれるはずです。
公式以外の模試を選ぶ際の注意点
以上の内容を踏まえた上で，公式以外の模試を購入する際の注意点について考えてみましょう！
今のご時世，TOEIC用の模試は書店でいくつも目にしますが，2016年5月以降の新形式に対応していないもの，問題内容が著者に都合がよいように作られているもの，リスニングの収録内容が単一の話し手によるものや訛りがないものも中には存在します。
もちろん，それらも特定の目的があって作られていたり，別の使い方をする上では有益だったりするのですが，これから初めてTOEICを受ける初心者の方にはあまり役に立ちません。
そもそも，どんなに評判だとされるものを本屋さんで開いてみたところで，その収録内容が実際の公開テストに役立つかどうかの判断はできないでしょう。
すでにみてきたように，同じTOEICの公式が出している模試においてすら，難易度が簡単すぎるものや難しいものが混在しているわけです。
みんなが使っているようだから，これにしておくか…
などと人気ランキングを頼りに決断するのも，無難なようで安直な行動だったりします。
というのも，その根拠となっているところが大衆心理に依っているからで，中に何が書かれているかではなく「人気No.1」と書かれているかどうかを基準に選んでしまっていることが少なくないからです。
よくよく周りを見渡せば，複数の書籍の帯に「人気No.1」と書かれていておかしいことに気付けるはずですが，実力に不相応な上級者向けの参考書を手にする方が多いことは，Amazonランキング上位の顔ぶれをみれば明らかでしょう。
その点，この公式TOEIC L＆R問題集は正当な評価を受けていて，あらゆる参考書を含めた1冊目に本書を選ぶことは，まったく自然でおすすめできます。
まとめ
以上，公式TOEIC Listening & Reading問題集の評判と特徴，そしてその内容と選び方を中心にみてきました。
難易度的に実際のものに近いものをご所望でしたら最新刊を，普通に解きたければVol.6以降を，初心者であれば中古で一番安いものを選ぶでも構いませんが，別冊を念入りに読み込むことは必ず行うようにしてください。
解いて丸を付けて簡単に解説を流し読んだら終わりとするのは，大変に勿体ないことです。
解くだけでも2時間かかりますが，世に出ている誰かの（主にTOEIC満点取得者の）到底真似できないやり方を見聞きするよりも，実際に自力で模試を解いた上で「今の自分の実力で，どのように得点していくのが良いか」について考える方が，よっぽど有効なTOEIC対策になると私は信じています。
もちろん，自分だけでは気づけない攻略法も役には立つので，この公式問題集と単語帳を揃えて，余裕があるようならば苦手パートの攻略法を他の教材を使って学んでいくことをしてください。
例えば，スタディサプリENGLISHを使うと，単語帳に加えて攻略法も動画でパパッと学べて手順を省くこともできます。
無料体験中に各パートの動画解説だけでも観ておくだけでも問題の見え方が変わってきてだいぶ解きやすくなるでしょう。
試験まで2週間を切っていても何らかの対策ができるので，なんとも便利な時代になりました↓
ある程度TOEICの知識がある方であれば，予想されたスコアを元にちょっと上くらいのレベルの参考書を選ぶと上手くいくことが多いように感じます。
各自，目標スコアを目指して頑張ってください！
最後までお読みいただきありがとうございました。
