今回は,公式から出ている「TOEIC Speaking & Writingワークブック(旧:公式テストの解説と練習問題)」についてレビューしていきます。
一番の魅力は,ETSが作成した予想問題を全部で5回分も解けてしまうところで,問題演習を通じて高スコア取得に必要な知識を身に付けていきたい方にはぴったりの教材です。
もちろん,ただ答えが羅列してあるだけではありません。
単語のまとめコーナーや和訳の紹介があることに加えて,どのような手順で解いていけば高得点が取れるのかという戦略についても詳しい記述があります。
S&W関連で公式が出している参考書には,本書の他にもう1冊が出ていますが,そちらとの違いについてもまとめてみることにしましょう。
もくじ
TOEIC Speaking & Writingのワークブックの特徴
基本情報
名称:公式TOEIC Speaking & Writingワークブック
定価:3080円
著者:ETS
出版:IIBC
初版:2021年12月
寸法:27×21.4cm
ページ:300ページ
音声:公式アプリでダウンロード可
ISBN-13: 978-4906033652
S&W対策用としてはこれまでに,公式が作成した教材が2種類ほど出ており,本ワークブックが理想の答案の作り方を提示しているのに対して,ガイドブックの方は実際の受験者の答案を使ってどのように採点がされるかという基準について理解できる一冊となっています。
後者について詳しくは,以下のレビューをご覧ください↓
本書はS&Wテストの準備段階に用いるのに最適という位置づけですので,どちらか1冊を買うのであればこちらのワークブックの方がおすすめです。
公式ガイドの方には悪い評価の回答例も含まれているので,ある程度の知識があって,採点基準について詳しく知りたい方向けのように感じます。
さて,本書が最初の1冊目にふさわしい理由は以下の4点です↓
- 値段に見合うだけの豊富な問題量を誇る
- 解答までの過程を詳しく説明している
- 最高評価の解答例をもとにした解説付き
- さまざまな表現を使った例文がある
とはいえ,これだけではよくわからないと思いますので,次章から1つずつ説明を加えていくことにします。

問題量が豊富である
S&Wワークブックの特徴は何と言っても,合計すると公開テスト5回分に相当する豊富な練習問題です。
L&Rの公式問題集や先のガイドブックが,2回分の量しか収録していないにもかかわらず本書とほぼ同じ値段であることを考えると,お得な価格設定であると言えるのではないでしょうか。
ところで,上の画像は本書の目次になりますが,Unit3にあたる実践テストが2回分しかないことに気づかれたかもしれません。
実際は,以下のように計算することでテスト5回分になるわけです↓
- Unit1のトライアルテスト
- Unit2の練習1
- Unit2の練習2
- Unit3の実践テスト1
- Unit3の実践テスト2
量にばかり目がいきますが,編集の仕方にも工夫が見られます。
ただ単に5つの問題セットが並んでいるだけではないということです。
例えば,Unit1には「トライアルテスト」という名前が付けられていて,現時点(初期段階)における実力を確認するのに役立ちます。
L&Rと異なり,基本的にTOEICのS&Wに絶対的な答えはなく,自分で完璧な採点を行うことはできないのですが,手ごたえがあったりなかったりすることは確かなので,自分の答えをボイスメモやWordに記録しつつ,早速解いてみましょう!
ちなみに,Speaking Testの音声は準備時間や解答時間を含めての収録となっているものの,本書が発売された2021年12月以降にも時間配分が変更されたので,実際の試験に合わせてやるようにしてください↓
続けて,Unit2の解説に移りますが,Unit1の問題の解答例を見ながら詳しい解き方について学べるのと同時に,類題を2つ(練習1と2)解くことができます。
つまり,これまでの模試2回分というのは,一気にぶっ通しでやるものではなく,S&Wの問題形式の理解を深めるために行うものです。
学校の教科書にある例題のようなものだと考えましょう。
とはいえ,内容は本番で出題されてもおかしくないレベルなので,易しいものではありません。
そして,いよいよ最後のUnit3で,これまでの理解をもとに,本番通りの環境で時間を測って2回分の模試を解くことになります。
とはいえ,Unit1の時と同様,本番の形式とは時間配分に違いがあることに注意が必要です。
以下に,ワークブックを学んでいく流れをまとめます↓
ところで,S&Wで高スコアを取るためのおすすめの勉強法は何ですかと尋ねられて,
公式問題集を何度も解き直すことです。
と答えることに異論はないでしょう。
本書に収録されているテストは5回分相当ですが,各テストに何度も取り組むことで,より自分の答案がブラッシュアップされ,より高い得点を取れる解答が作れるようになっていきます。
あえて,前回と答え方を変えるようにすれば,2回やり直すと10回分のテストをやったのと同じくらいの効果がありますし,1回やって回答例を見たからと言って,2回目に楽ができるかと言われるとそのようなことはありません。
せめてものアドバンテージとしては,Question8-10で質問される内容があらかじめわかっていることくらいでしょう。
その他,制限時間内にどれだけ話せるかに挑戦してもよいですし,
- 時間を無制限として納得のいく答案を書いてみる
- 制限時間よりも短い時間にしてやってみる
といった工夫も考えられ,特に後者は「加圧トレーニング」と呼ばれるテクニックであり,これを行うことで実際のテストがより簡単に感じられる効果があります。
1回目で結構できたように感じる方は,復習する際,このように負荷を高くするようにしてください。
話す内容や書く内容を前回と異なるようにするだけでも難易度を高めることができます。
全部受動態の文にしてみたり,できるだけ無生物を主語にして話してみるなど,工夫できる余地はたくさんあるはずです。
解答のプロセスが便利
S&Wワークブックの2つ目の特徴ですが,解答のプロセスが明示されていることが挙げられます。
このプロセスについては,Unit2で初めて学ぶことになるのですが,例えばSpeaking TestのQ3の例では3つの解答手順が提示されているので,本番までにしっかり頭に入れておきましょう。
上記画像を見ると「Directionsの内容を把握する→準備時間をうまく使う→解答する」という手順が提示されています。
問題の指示内容を把握できなければ大幅な減点につながってしまうことは明らかですが,本書では左ページ下段にDirectionsの全訳があることはもちろん,右ページの上段でも再度繰り返して解説されるので,難なく理解できるでしょう↓
予備校で習うような攻略法についても書かれているので,この本を使って学ぶのとそうでないのとでは,本番のスコアが大きく異なってくるはずです。
本番の問題を実際に作成しているETSのスタッフが手掛けたという事実が,このことに大きく寄与しています。
特に,準備時間に何をすればよいのか,そしてどういう思考プロセスが有効であるかについての解説内容には大きな説得力がありました↓
もっとも,準備時間や解答時間,問題番号などに違いがあるので,そこはあらかじめ訂正しておく必要があると思われます。
以下は,スピーキングテストのQ3を回答する際のプロセスについての記述です↓
ここでは,どのような心掛けでもって答案を作成すればよいかについて理解することができますが,こうしたプロセスをみていると,採点者によってスコアに差がでないよう厳密に採点基準が設定されていることがわかります。
受験者の解答を唯一見ることができる組織がETSであるわけですから,これ以上ない良質なデータに基づいて,正しい解決策を教えてくれるわけです。
この事実が,本書に唯一無二の優位性を与えてくれています。
ちなみに,上で書かれている「物語を考える」などといった回答案は他の参考書ではほとんど目にしない考え方でした。

満点の解答例について学べる
TOEIC S&Wワークブックで,満点となる完璧な解答例と採点スケール(いわゆる採点基準)も学びましょう!
問題ごとに,どのような基準で採点されるのか,そしてどのように点数が付けられるのかがまとめられているので,今後はそれを意識して答案を書くことができるようになるわけです↓
抽象から具体といった英文作成時のイロハや,写真のどのような特徴を捉えればよいか以外に,スムーズで聞き取りやすい話し方はどのようなものであるかなど,音声を利用して学べることで,得られる知識量はかなりのものになります↓
ちなみに,Writingテストの方でも,例えば6~7問目のEメールを書く問題では,「宛名→書き出し・導入→本文→結び」という流れについて学び,それぞれにどのような内容にすればよいかがわかるため,同じ形式に基づいて本番で書くだけでも,かなりの進歩となるでしょう。
私自身,本書に書かれていた文を本番のテストでそのまま使って助けられた経験があります。
1問でもそういったラッキーなことが起こると,得点が10点伸びることも十分にあり得るので,真剣に取り組みましょう!
多くの表現を学べる
ところで,この公式ワークで勉強していると,ところどころに「その他の表現例」というページが出てくることに気づきます↓
前章で紹介した満点の解答例だけでなく,こういった表現までもどんどん自分のものにしていけば,話せる英語の幅が広がり,しゃべりやすくなると同時に書けるようになるでしょう。
スピーキングテストの解答例がライティングテスト対策として役立ったり,その逆もあったりするのが通常です。
加えて,本書で学べる知識は,TOEICだけでなく実社会においても役立つテクニックなので,英語が得意になりたい人は嬉しく思うでしょう↓
実際,S&Wのテストは受けないけれど,アウトプット力を高めたいがために,本書のような書籍を使って学ぶ方は一定数存在しています。
まとめ
以上,公式TOEIC Speaking & Writingワークブックの4つの特徴でした。
メインとなるUnit2を中心に,本書に書かれた細かな説明にも注意を払い,真面目にS&W対策に取り組むことで,1冊やるだけでもかなりのスコアに到達できるように感じました。
ちなみに,全問やってみて,問題自体の難易度は類書とさほど変わらないように思いましたが,解答例のレベルは高かったです。
これまでに習ったことのない表現も出てくるので,ある程度の文法力が必要になる他,頑張って覚えようという気持ちの強さも必要になります。
ここで改めて当記事の要点をまとめ直すと,本書は以下の4つの点でおすすめです↓
- ボリューミーでお得感のある値段設定
- 最も信頼性のおける公式による解答手順の説明
- 理想の解答例から学べる確かな攻略戦略
- 表現例から使える表現に磨きをかけられる
また,詳しくは紹介しませんでしたが,Unit2で学んだ後は,以下のような実践テストを2つ使って,本番と同じ解答時間で最初から最後まで通しで解くことができます↓
TOEICのS&Wは,L&R以上に短期間で出題形式が変わることがあり,特にスピーキングテストの時間配分では本番との違いが顕著ですが,本書で学んだがために本番で大きな失敗に繋がってしまうことは考えにくく,そもそも2015年の旧版の時点で,内容的に完成された教材でした。
模試の5回分を一通りやって満足せず,本書の内容が自分のものになるまで,何度も繰り返し学習してみてください↓
最後までお読みいただきありがとうございました。