こんにちは!
突然ですが,みなさんはTOEICの問題集の中に,特定分野を10日間かけて攻略できるシリーズがあることをご存じでしょうか。
今回レビューするのは,その中の第一弾に当たる「文法編」になりますが,短期間で達成感を得られることになるため,勉強することに抵抗がある方の1冊目や不安になりがちな試験直前期にその効果を発揮しやすいです。
その他のラインナップに関しては,以下のレビューを参照してください↓
シリーズに共通する特徴は「見やすさ」で,全体的にカラフルかつイラストが豊富であるというのが私の第一印象でしたが,内容の方はどうでしょうか。
以下では,本書に特有の機能を中心にみていくことにします。
もくじ
出るとこ集中10日間!文法編について

今回レビューする本の概要は以下の通りです↓
基本情報
名称:出るとこ集中10日間!TOEICテスト文法編
著者:八島晶
出版:西東社
出版年月:2016年11月
ISBN-13:978-4791624409
ページ数:192ページ
付属品:なし
目標スコア:600点以上
本書のターゲットとなるのはTOEICのPart5の得点力を上げたい方で,対象者は600点を目指している学習者となります。
著者は45歳を過ぎてから本格的にTOEICの勉強を始めたとのことで,文法を苦手とする初心者の良き理解者であると言えるでしょう。
また,公開テストの日時が差し迫っている方にとっては,たとえ直前の模試でPart5のスコアが著しく低く出てしまっても,今さら文法書を学び直すだけの時間は残されていないわけです。
そこで,本書で学んだ文法だけは完璧に正解できるようになり,それ以外の問題は捨てて,残りのパートを対策するのに時間を回す戦略を採用するのが有効になります。
TOEICでの出題頻度が高かったり短期間で学習しやすかったりする文法事項は,本書で全36個の「攻略のツボ」に整理され,それらを覚えるようにすることで似た問題が解けるようになってスコアアップに繋がるというわけです。
TOEICで600点を目指す方というのは,平均的な難易度の問題だけをすべて落とさないだけで到達可能ですから,文法問題の難問にまで手を出す必要はありません。
加えて,Part7のような読解問題は時間をかければ解ける可能性が高まるというのが一般的に知られていて,Part5のような文法問題は知識がないとどれだけ時間をかけても正解できないのとは対照的です。
本書を使うことで,気持ちを切り替えてPart5に取り組めるようになるため,結果的にリーディングセクション全体のスコアアップに繋がると言っても構わないでしょう。
基本的なところを扱っているので,出版されてから年数が経っても無駄になりにくい知識が中心となっていることも付け加えておきます。
そんな本書の目次は以下の通りです↓

注目する文法項目が1日ごとに明確にされていて,TOEICで頻出の「品詞問題と動詞問題」を中心に,毎日4個のツボを学んでいきます。
最終日には総合テストが用意されていますが,詳しい特徴や使い方については次章以降でみていくことにしましょう!
出るとこ集中10日間!文法編の特徴

繰り返しになりますが,本シリーズの大きな特徴は何と言っても,10日間という短期間で,ある程度まとまった知識を学べるところでしょう。
Part5の正答率を上げよう!
と心に決めた時点で,ある程度の向上心が芽生えているわけですから,3日坊主ならぬ10日坊主くらいにはなれるはずです。
本書のコンセプトは,最初の9日間を使って36個の攻略法を学び,最後の1日で総仕上げをするというものですが,別に10日間にこだわる必要はなく,他人よりも理解するのに時間がかかる人は本書を2~3回繰り返して1ヶ月くらいかけても構いませんし,急ぎで仕上げて10日未満で終えることもできます。
本書1冊でどれだけの問題を解くことになるのかみていく前に,そもそも本番で解くことになるPart5の設問数についてご存知でしょうか。
その数はずばり「30問」です。
本書は攻略のツボと呼ばれるテーマごとに2問の練習問題が付いていて,最終日は36問を解くことになるので,全部合わせると計108問を解くことができます。
これは,予想問題集を3冊やった以上の量に相当しますし,実際にテストに出やすい問題のみを選んでいるわけですから,得られる恩恵はそれ以上でしょう。
加えて,目を惹くカラフルな解説が最初から最後まで続くので,難しい問題も簡単に思えてくるのは興味深いところです。
白黒で印刷された問題集と比べてやる気が高まりやすく,短期間で簡単に最後までやり遂げられては達成感が味わえるところは,集中10日間シリーズに共通の特徴だと思います。
出るとこ集中10日間!文法編の学び方
さらに詳しく本書の内容をみていきましょう!
まずはIntroductionと書かれたページを読み,この後の解説で使われる前提知識を学びます(画像左)↓

ここでは,文構造の解説に欠かせない「5文型」について学ぶことができました。
同時に,SVOCと混同しがちな「副詞や副詞句(前置詞+名詞)」をしっかり区別できるようにもなりましょう。
前提知識を学んだら,次ページから,いよいよ攻略のツボを学んでいきます。
例題が1問ありますが,先の画像をみると,赤文字で「STEP1・STEP2・STEP3」という文字が書いてあるのがわかるでしょう。
これは問題を解く手順を示しており,すぐ下に目をやると,「解く流れ」という項目の中で,以下のような手順が紹介されていました↓
- 選択肢から品詞問題と判断する
 - 空所の前後を確認
 - 文の要素(SVOC)をチェック
 - 選択肢から答えを選ぶ
 
早速,上記画像の右ページにある例題で実践してみましょう!
選択肢をみたところ,directに関連する単語が4つ並んでいるので,品詞の区別が問われていることがわかります。
なお,この「文法問題はまず選択肢から見る」というテクニックを知らなかった人は,Part5の新たな突破口になること間違いなしです。
また,問題文にある「from the airport」や「to the conference center」を「前置詞+名詞=副詞句」と見抜くことができたでしょうか。
先のIntroductionで語られた内容が理解できていれば可能なはずです。
そして最後に,本文の「Mr. Peterson took a taxi」という文をSVOの第3文型だと分析できれば,答えは文型の構成要素にならないD(副詞)だと決められます。
同ページの最下部には解答以外に和訳も見受けられますし,ページをめくった先にはより詳しい解説が続いていました↓

出るとこ10日間シリーズに特有の取っつきやすさが,そろそろわかってきたのではないでしょうか。
もちろん,解説内容に手抜きはありません。
「-lyが付くと副詞になる」ことに加えて,friendlyを筆頭とした6つの「-lyが付く形容詞」までもが紹介されていますから,結構細かいところにまで説明が及んでいます。
ここで学んだことを整理すると,以下の2点です↓
- 副詞には基本的に-lyが付き,文の構成要素にはならない
 - 性質としては名詞以外を修飾し,文の様々な場所に挿入可能
 
文頭の文修飾副詞にも話が及んでいたところには驚きました。
最後に2問の「確認問題」を解いたら,攻略のツボの1つ目が終了です。
ちなみに,確認問題の正解と解説は,先ほどの手順を実践しやすいように丁寧に書かれています↓

1日あたりに学べるツボの数は4個なので,これで4分の1のノルマが終わったことになります。
このような感じで9日間を終えたら,10日目は総仕上げとして「直前練習問題」に挑みましょう↓

Day1~9で学んだ攻略のツボを総復習できる内容です。
実践問題の数は全36問と,攻略のツボの個数と一致しています。
とはいえ,出題順はランダムになっているので,該当するツボはどれだったのか思い出すようにし,正しい手順でもって答えを選べるようになるまで練習しましょう。
上記画像の左ページをよくみてみると,全部で5回復習できるようになっていることがわかりますが,何度も解き直すことの真の価値は,ただ正答率が上がるところではなく,解答のスピードが上がって時間短縮に繋がるところにあります。
野球の素振りではないですが,繰り返して練習し類問をしっかりと正解できる「型」のようなものを身に付けてください。
なお,解説ページは見やすく,誤答に対してもそれが間違いである理由が書いてあって親切でした↓

間違えてしまった問題は,正解の横に「参照すべき攻略のツボ」が記載されているので,どこに戻って復習すればよいかが明らかです。
まとめ
以上,八島晶氏による,出るとこ集中10日間!TOEICテスト文法編のレビューでした。
短期間で終えられて達成感を得やすい問題量で,カラフルでわかりやすく丁寧な解説が魅力の文法用問題集だったように感じます。
TOEICのリーディングセクションは時間との闘いです。
なので,本書を時間の許す限り何度もやり直しては,「解答スピード」という見落とされがちな能力を磨きましょう↓
いくらリスニングやスピーキングのような実用英語の大切さが叫ばれるようになっても,日本人が英語を効率的に学習する上で必要なのは文法力です。
文法知識がしっかりあるからこそ,応用力を身に付けることができます。
一見すると,文法とは程遠いところに位置するリスニングにおいても,文法力がしっかりしてくると早く聴けるようになると言われる由縁は,文法知識があることで内容を推測しながら聴けるからです。
なお,10日間で学び終えなければならないという本書のコンセプト上,解説のところで文法知識が多く登場してくるところが気になる方もいるでしょう(例えば,品詞名や自・他動詞の区別,接続詞の後の「S+Vの省略」などの説明がそうです)。
そのため,高校1年生が習う文法内容が理解できていない方が本書を用いた場合,解説の理解度がそうでない人よりも著しく下がってしまうことは確かですし,そのような状態の方が本書を使って10日間頑張ったところで,Part5が見違えるようにできるようになることはないように思います。
よって,基礎的な文法力に弱点がある方は,本書に入る前に,まずは別の教材で中学内容や簡単な高校内容の英文法を学んでおくようにしてください。
逆に,もっと英文法の問題を解きたい方やTOEIC800点以上を目指すような方にとって本書は物足りないはずなので,でる1000問などの難しめのものをおすすめします。
もちろん,本書を終えてからそちらにチャレンジするのもありです。
頑張って文法力を高めましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。