RIZAPの心髄はボディーメイク(ダイエットと異なり,気になる部分を引き締めては健康的で美しい身体づくりを目指す)にありますが,その対象は何も腕や胸,腹と言った,目に見える部位だけに限りません。
定期的に数ヶ月間通い続けることで頭の思考回路も変化していき,正しい考え方ができるようになるわけです。
そしてそれは同社が提供する「RIZAP ENGLISH」という英語学習のサービスにおいても当てはまり,その独自性を垣間見ることができます。
今回はそんな「RIZAP社が実践している英会話の独自メソッド」について取り上げることにし,その方法について詳しく学んでいくことにしましょう!
目次
RIZAP ENGLISHは脳を鍛える
RIZAP ENGLISHで鍛えられる部位は,ずばり「脳」です。
ネイティブでない日本人が英語を話すためには,自分の伝えたい言葉(ほんやりとしたイメージが理想ですが日本語でも構いません)を英語に変換する必要があります。
ですが,このときしっかり英語脳が鍛えられていないと変換するのに時間がかかってしまい,すぐに英語が口を突いて出てくることはありません。
コミュニケーションではテンポが大事とされ,実際英語の各種スピーキングテストにおいても流暢さのような項目で採点されるわけですが,そこで口ごもってしまえば途端に減点されてしまいます。
とはいえ,その理由についてはいくつか候補が考えられるわけで,ここで一度,相手の話す英語を聞いてから発話するまでに脳が行う処理をまとめてみましょう↓
英語を話す際の脳処理
- 音を認識する
- 単語や文法を把握する
- 内容を理解する
- 話す内容を考える
- 文章を作る
- 正確に発話する
英語を「話す」とは言いますが,最初の3つは主にリスニングに関する処理であり,その先が純粋にスピーキングではあるのですが,コミュニケーションは相手との会話のキャッチボールですので,聞くと話すの両者ともをできる状態にしておく必要があるわけです。
例えば英語を聞く際に助けとなるのは,英語独自の音を聞き取るための耳の能力であったり音声変化のルールさらには語彙や文法に加えて背景事情を知っておくことだったりするわけですが,ただ知識だけあっても不十分で,普段から聴く練習をしておかないと上手く反応できなかったりします。
加えて,上記処理のうちどこか1つにでも弱点があると,それがボトルネックとなり脳の処理はそこで止まってしまうわけです。
つまり,英会話で必要なものはできるだけ高いレベルに維持された総合力と結論付けられるわけですが,各処理ごとに実力のチェックが可能であることはご存じでしたでしょうか。
脳の処理を細かく分解して理解できていれば,原因の解明は意外と簡単なのです。
試しにここで
「オンライン会議は間もなく終わります」
という日本語を英語に直してみましょう。
正解は
"The online meeting will be over soon."
などとなりますが,中学で習うような英語であってもそれがパッと出てこないようであれば,上で言うところの5番目の処理がうまくできていないことになります。
それでは次に
"It is a challenge for managers in America to continue to operate and manage people who have a lot of backgrounds."
という英文を聞くときに何が起こるか考えてみましょう。
処理の2に弱点があれば,この文の意味を考えている間に次の文を読まれてしまうでしょうし,3に弱点がある場合,このくらいの長さの長文をすべて聞き終えた頃にはすでに最初の内容を思い出せなくなっているはずです。
逆に,脳が英語を正しく処理できる状態だと,上の文は
it is a challenge(大変なことです)/for managers in America(アメリカのマネージャーにとって)/to continue to operate and manage people(仕事をこなして人を管理していくのは)/who have a lot of backgrounds(多くの背景知識を持っている人のことですが)
といった具合に構文を予想しつつ,前からそのままの語順で訳していくことができますし,究極的には日本語も介さずイメージが浮かぶ状態になります(こちらの方が理解速度が速いとされる)。
英語を話すときも同様で,上に示した通りの日本語を英語する感覚でいないと時間がかかってしまうわけで,このとき必要なものが英語脳というわけです。
「正しい単語や文法は何だっけ」などと考えてしまうと,周りの会話は先にどんどん進んでいってしまうでしょう。
ちなみに,日本人はどちらかと言えばスピーキングの練習が不足しがちだと言われています。
もちろんリスニングも大事ですが,このことを普段から意識しておくことで,たとえ単語を学習する際であっても英語を発音せずにはいられなくなるでしょう。
次章以降でRIZAP ENGLISH流の英会話メソッドについて詳しくみていきますが,具体的には「6STEPS,クイックレスポンス,実践スピーキング」という3種のトレーニングがメインになります。
RIZAPの6STEPSについて
まずは6STEPSという方法から説明しますが,名前の通り6つの段階を踏んでいく学習トレーニングです↓
6STEPSの内容と目的
- ディクテーション:聞こえない音や苦手な音を見つける
- スラッシュリーディング:斜線ごとに前から訳すが英文内容も同時に理解する
- オーバーラッピング:現状聞き取れない音を音読し認識できるようにする
- 意味音読:英文の意味を理解できる速度で音読する
- シャドーイング:音や意味を理解しつつ音声化も同時に行う
- リピーティング:リスニング力に加えて記憶保持の訓練に繋がる
RIZAPでは,これらのうちのいずれかを選択して集中的にやることはしません。
例えば,1のディクテーションを通して判明してきた弱点を3のオーバーラッピングを用いることで対策したり,上の2番で引いたスラッシュをもとに4で音読するなど,トレーニング同士を結びつけて相補的に活用していくのが特徴です。
最終的には,高度なトレーニングで効果が高い5・6番の2つに行きつくことになりますが,そもそもこうした一般的な学習テクニックについて聞いたことがない方は,以下の記事を参考にしてください↓
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もちろん,実際のRIZAPで行われるトレーニングはトレーナーの合いの手が入った質の高いものになるので,1人でやるときに比べて効果が高く,間違った方法に陥るリスクや怠け癖から必要な手順を飛ばしてしまうといったリスクを小さくできます。
例えばオーバーラッピングのトレーニングをRIZAP ENGLISHで行う時の様子をみてみましょう↓
- ディクテーションで聞き取れなかった箇所の音声を用意してもらい,それを真似して音読する
- 音声速度についていけない場合は,音源の再生スピードを落として,徐々にスピードを上げていく
- うまく発音できなかった箇所を集中的に真似して発話する練習をするが,このときリエゾンやリダクションなどの音声変化の知識の解説が行われ,リズム,イントネーション,アクセントのチェックも行われる。
- 苦手だった箇所がスラッと言えるようになったら,英文全体を通しでオーバーラッピングする。
- 録音したものを題材に出来栄えを評価し,オリジナルのスピードで音読できるようになったら終了
一般的にオーバーラッピングは「英文を見ながら音声を聞き,その真似をして声を出すこと」と説明されますが,その時点で自分が聞こえていない音が聞こえる(言える)ようになるためには,足りない知識を補足しつつ,自分のトレーニングの出来を正当に評価できる目が必要になります。
それが適切な教材の用意であったり,習熟度のチェックや速度設定がなされたり,トレーナーの存在だったりするわけで,これらがすべて効率的で効果的な語学に影響を及ぼすわけです。
なお,先の6STEP法の4番目に挙げた「意味音読」というのはあまり聞きなれない言葉のようにも思うので,ここで別途まとめておきましょう↓
意味音読の方法
- 英文を見ながら,意味を理解できるスピードで音読(意味音読)する
- このとき情景を想像するが,最初はまとまりごとに意味を考えたり日本語を介してもよい
- スピードが遅くなってしまう英文があればその原因を探す
- 判明した原因(語彙力や文法力,語順に慣れていないなど)を解決し,意味音読を続ける
- 読解スピードが速くなったように感じたら,全文を通して仕上げの意味音読を行う
日本語を介さず,英文を前から理解できるようになることで,リーディングに限らずリスニングにおいても,オリジナルに近い速いスピードで理解できるようになります。
ここまで来ると,多くの方が自身の英語力が1段上がったと感じるはずです。
RIZAP流クイックレスポンスのやり方
RIZAP ENGLISHの代表的なトレーニング2つ目はクイックレスポンスで,こちらは反射的に発話できるようになることが目的です。
相手が発言を終えてから自分が話し出すまでに時間がかかってしまうと,それはコミュニケーションの妨げになったり相手が間髪入れずに会話を続けることになったりと良いことがありません。
しかもこれは英語力が高い人でも陥ってしまうことが知られています。
TOEICのL&Rが900点あるような人でもてんで英会話がダメなときがありますが,まさにこのことが原因です。
そこでクイックレスポンスの出番となるわけですが,RIZAP ENGLISHのメソッドは簡略化されていて,書籍にもなっているので読んでみましたが,以下の3つの手順で行うことになります↓
- 高速変換
- パターンプラクティス
- 疑問・否定変換
とはいえ,これらはほぼ同時に行われることが多く,とにかく量と回数を多くこなしていくことに重点が置かれているのが特徴です。
10~15文ほどを1Unitと見なしますが,まずは1つの英文を5回音読します。
その後テキストから目を離し,今度は英文を見ないようにして暗唱するのですが,このとき和文を見ながら行っても構いません。
こちらも5回ほどやり,以上のような調子で1Unit分終えたらそこで総復習を行います。
ここまでの英文を対象に,その日本語だけを見ながら英語に直していくわけですが,ここでつまってしまったものがあればチェックし,集中的に音読と暗唱を繰り返すようにしてください。
この調子で1つのUnitにある全ての日本語を英文にスラッと変換できるようになったら,次のUnitへと進みます。
実際に使われていた教材としてはアルク社の「究極の英会話」や「ビジネス英会話高速変換トレーニング」を確認していますが,中学英語が中心の前者とビジネス英語に的を絞った後者とで使い分けがなされているようです。
例えば前者の1Unit分を引用してみると,以下のようになります↓
彼らは私の友人です=They are my friends
彼女は私たちのチームの一員です=She is a member of our team
ジュンコは今ロンドンにいます=Junko is in London now
あれはジェシーの机です=That's Jessy's desk
弊社の営業時間は9時から6時です=Our office hours are from nine to six
明日は私の会社では休日です=Tomorrow is a holiday at our company
9月の第1月曜日はアメリカの労働者の日です=The first Monday in September is Labor Day in the United States
(電話で)ABC社の川村正樹と申します=This is Masaki Kawamura of ABC company
この度は申し訳ございません=We're sorry about this mistake
お会いできてうれしいです=I'm happy to see you
どれも中学1年生で習う英文ではありますが,実際にやってみると,こうしたものを即座に言えようになるためには,発話トレーニングが必要不可欠だと実感できるはずです。
繰り返しになりますが,各種スピーキングテストにおいて間伸びせずに返答できることは評価の対象にも当然なっています。
クイックレスポンスを行う際のポイントとしては他に,文構造や意味を意識しながら音読することであったり情景をイメージしながら口に出すなどの意識が必要だったりしますが,こうしたことを1人で行うと雑になりがちです。
何も考えずに機械的に行ってしまうようでは,ただ口の筋トレをしただけとなってしまい,脳への働きかけがありません。
そう考えると,客観的な目と豊富な知識を持ったトレーナーの存在は大きいです。
RIZAP流実践スピーキングのやり方
最後にRIZAP ENGLISHの実践スピーキングについて解説しますが,これはCamblyなどに代表されるオンライン英会話を利活用して行うトレーニングです。
やり方ですが,受講者はトレーナーからトピックを与えられるので,話す内容を考えてはノートにまとめるようにします。
このときかける時間は10~15分です。
そして次にいよいよオンライン英会話を行うことになりますが,このとき,相手方に「スピーチを添削して欲しい」という意思を伝えることに注意してください(理由は後述)。
こちらは時間にして30分の制限時間があり,その間でスピーチを3回行います。
そのつど,講師に指摘された間違いを修正していきましょう。
オンライン英会話を終えると次回までの課題を分析するように促されますが,本番で言いたかったけれど言えなかった文があったと思うので,それらをすべて日本語で書き出すよう指示されます。
仕上げに,書き出したものをより簡単な言葉に言い換えて英語に変換する練習を行い,その日のトレーニングは終了です。
トレーナーの1番の腕の見せ所は最後のところになるわけですが,難しい日本語であってもより簡単な言い方に変換できることに気が付けば,中学英語だけでもかなりの量の会話ができることに受講者は驚くでしょう。
例えば「売り上げがうなぎ上りです」を英語で言えなかった場合,「セールスが増加しています」などと変換することで「The sales is rising dramatically.」などと言うことができます。
こうした発想の転換についての感覚を掴むことも,英会話を実践する観点からみれば非常に重要なことの1つです。
なお,意外と知られていませんが,オンライン英会話において相手講師とフリートークだけになってしまうとアウトプットの時間が少なくなり,変な話,相手が好き勝手話しては終わりになってしまうことが結構あります。
また,言いたいことをすべて原稿にして,スピーチのように話すのも良くありません。
それはもはや答えの決まった英作文に他なりませんので,スピーキングではちょっと見て流れを確認するくらいのメモ程度を用意するに留めておきましょう(誤解してほしくないのですが,多少の準備は必要です)。
あくまで会話のキャッチボールを行っているわけで,相手からどんな質問があるかわからない状況だからこそ実践力が鍛えられます。
先ほど,相手にスピーチの添削を頼むことをおすすめしましたが,そうすることで相手が一方的に話すこともなくなり,自分も意見を言う機会が生まれるので一石二鳥です。
まとめ
以上,RIZAP ENGLISHにおける英会話の独自メソッドについてまとめてきました。
具体的には6STEPSとクイックレスポンスと実践スピーキングの全部で3つがあり,それぞれにおいて明確な手順や意図があり,さらには意識したいポイントがあることがわかっていただけたのではないでしょうか。
独学もできるように書いてきたつもりですが,教室でトレーナーがついて行う場合と比べると結構な違いが生じるのは確かで,やはりそれは受講料分の違いになってくるというのが結論です。
RIZAP ENGLISHには英会話コース以外にTOEIC講座もあります↓
とはいえ,今回の内容で知らなかったことも多かったと思いますので,例えばご自身でオンライン英会話を利用して実践力を高めようと思った際には,トピックの選定や明確な意思表明をしてみたり,受講後に反省タイムを設けたりすることでより効果的な学習時間が過ごせるはずです。
この記事が皆さまのお役に立つことを祈っています。
最後までお付き合いいただき,誠にありがとうございました。