現在,世界で最も多くの国や地域で話されている言語は英語であり,ビジネス言語(商業言語)としてはもちろん,インターネットの登場でその存在はますます重要なものとなりました。
日本での義務教育でも英語は必修となっており,小学校から大学に進学した場合の学習期間は10年以上にも及びますが,英語でコミュニケーションできることで自分が触れられる世界が広がることは確かであり,例えばNatureやScienceを始めとする国際的な論文をすぐに読むことができます。
世界にとって重要な本であれば,原著が何語で書かれていても少なくとも英語には翻訳されるもので,海外に行って何かをするときにも英語が話せるからこそできる経験があるはずです。
今回の記事では,社会人がいざビジネス英語を本格的に学ぼうと考えた際の「正しい」と思われる方法についてまとめてみたいと思います。
もくじ
ビジネス英語を学ぶ目的とは
具体的な勉強法についてみていく前に,ビジネス英語を学ぶ目的について考えてみましょう!
観光目的や受験勉強で使うのであれば話は別ですが,ビジネス目的で学ぶ場合には以下の3つが考えられます↓
- 仕事に必要な専門知識を身に付ける
- 海外の取引先とメールでやりとりをする
- 外国人と自由に話せるようになる
仕事に必要な専門知識というのは,高校までのいわゆる受験英語で学ぶものと異なり,それ専用の勉強をしなければなりません。
普段使わない単語が単語帳に掲載されることはないですし,多くが使わない英語は流行りの生成AIでも誤訳しやすいところです。
野球の実況を翻訳させてみれば,「It’s gone!」を文字通りに訳してしまったり,「ツーシーム」を正確に訳せなかったりすることにすぐに気が付くでしょう。
2つ目ですが,昨今のインターネットの発展に伴い,ますます多くのコミュニケーションが英語を介するようになり,書くことに対する需要が増えてきました。
今回はEメールの書き方を取り上げていますが,英語でHPを作成するときや解説書を書く際にも役立つはずです。
最後の3つ目は「外国人と自由に話せる能力を獲得すること」ですが,これが多くの学習者の最も達成したい目的であり,商業英語と言えばビジネス英会話のことだと思われているゆえんなのかもしれません。
実際に取引先と会うことが重要と考えている日本人にとって,相手と何を話すかは重要でしょう。
次章から,これら1つ1つについて,どのように勉強していくのが良いかまとめていくことにしますが,最後の英会話については長くなってしまうので,章を2つに分けています。
どれから学び始めても構いませんが,それぞれで獲得できる能力が異なるので,並行して全部を勉強していくのがベストだということを念頭に置いて読み進めるようにしてください。
ビジネスの専門知識を英語で身に付ける方法
ビジネス英語で専門知識を身に付ける方法として,専門分野の教科書や自分の関わる業界の雑誌,またはニュースを英語で読むことが挙げられます。
とはいえ,大学受験のときのような複雑な構造を持つ文章を読みこなすことよりも,内容を正確に素早く理解したり,語彙数を増やしたりすることの方が重要です。
なので,文章の要約を行い,良い表現や文に出会った際に下線を引く練習をしてください。
要約の練習については書く練習も兼ねられるので,次章でまとめることにして,ここでは後者に限ってみていきますが,わからない単語に出会ってしまった際はすぐに辞書を引いてしまってOKです。
調べた単語については辞書の方に線を引いておくのがポイントで,もしも同じ単語を2回間違ってしまった場合(線を引こうとしたらすでに線が引いてあった場合)には,ノートに書き写しましょう。
最近はQuizletのようにオンラインの単語帳も無料で利用できます↓
このとき,どこまでを書き写すかという点で意見が分かれていて,和訳は書かずに英単語だけ書くといて手がありますし,時間はかかりますが英文ごと書き写してもOKです。
専門的な用語を扱う単語帳は数が少ないでしょうが,今学んでいる教材に索引があればそれを利用しましょう。
専門書だと,用語を英語で説明する項目が設けられていることもあります。
単語だけであれば,通勤中であっても簡単に復習できるでしょう。
日本語で翻訳版が手に入る場合,英語で書かれたオリジナル版と日本語版の2冊を用意して読み比べることもおすすめです。
英語でEメールを書く能力を高める方法
Eメールを英語で書くわけですから,こちらは4技能で言うところの「ライティング」を高めることができます。
英語を話すよりも書く方がマシだと思うビジネスパーソンは少なくありませんが,一説によるとライティングはスピーキングより難しいと言われており,意志疎通ができればよい後者に対し,書いたものはいつまでも残ってしまうので,視覚的に問題があると,その人の能力まで疑われてしまうものです。
しかも,それは英語だけに留まらず,人としての評価にも関わってくることがあるので,重く受け止めておくに越したことはありません。
そんなEメールの学び方ですが,前章で読んだ教科書なり英字新聞なりの内容を自分なりに要約してレポートめいたものを書くことで,読んだ内容の大意を掴む練習にもなって一石二鳥です。
経済的な内容のものを読んだのであれば,「GNP grew at an annual rate of 3%(GNPが年率3%で成長した)」や「金融緩和により国債の利回りが低下した(Monetary easing led to lower yields on government bonds)」のような文章を書けるようになるでしょう。
Eメールの作成方法を実例を用いながら学べる参考書も各社から何冊も出ています。
どれも2000円程度で購入できるので,ぜひ1冊手に取ってみてはいかがでしょう。
例えばZ会から英文ビジネスEメール実例・表現1200という本が出ています。
ただし,書いたものの添削指導を受けたいとなると高い料金を支払う必要があり,1回受けるのに参考書1冊分くらいの料金がかかるのが相場です。
ビジネス英会話を学ぶ際の準備
英語を学ぶ上で唯一独学できないものが「スピーキング」です。
話し相手が必要なので,スクールに通うかオンライン英会話を利用しなければなりません。
ですが,その前に入念な準備が必要であることを忘れないようにしてください。
始める前になんですが,英会話スクールでの失敗例を紹介すると,「まぁこんなものだろう」と思ってなんとなく入学して通ってみたものの,いつまで経っても上達しないので退塾してしまうことが多いです。
いくつもの学校を比較するわけにもいかないので,実際に通ってみないことにはわからないことではあるものの,準備不足が原因である場合もあります。
例えば,スピーキングでは相手の話す内容をまずは聴き取れなければいけないので,高い「リスニング力」が必要です。
それに,知っている単語数が少なければ,正確に聴き取れたとしても意味がわかりません。
さらには,話された内容を理解するために「リーディング力」も必要になります。
このように,英会話には英語3技能が関わっているわけですから,準備段階として英語の基礎を固めてください。
具体的に言えば,せめて中学英語はマスターしている状態に到達しておく必要があり,できれば英検2級レベルの能力を備えておきたいところです。
とりわけ,英会話においては語彙力が重要で,自分の知っている言葉が少ないと,同じことを繰り返して言うだけになってしまいます。
単語の発音も併せて覚えておく必要があるでしょう。
しかしそこまでやっても,相手が自分と同じ専門性を備えているわけではありませんから,実際のビジネス英語はもう一段上のレベルになります。
読み書きを基本のところからやり直そうと考えただけでも半年から1年がかかりますが,それだけの準備をしておかないと得るものも得られないのが,スピーキング練習の難しいところです。
ビジネス英会話を教わる際の理想の講師像
ここでは,ビジネス英会話を学ぶスクールの選び方について,講師にスポットライト当ててみていきましょう!
一般的に,完璧なサービスを求めるほどに料金は上がっていきますので,どのような講師であるべきかということに対して理想の条件を提示した上で,どこを妥協するかについては各自で考えていただければと思います。
講師が話す英語について
講師はネイティブであることが第一条件です。
その意味で,オランダやデンマーク,ノルウェーの方はNGとなります。
これについては日本語で置き換えて考えてみるとわかりやすく,例えば,日本語を韓国や台湾の人に習いたいとは思わないでしょう。
それに訛りの問題もあり,英語ネイティブであれば,オーストラリア英語はもちろん,アメリカの南部やスコットランド出身の方に特有の訛りや,カナダ人に見られる米語と英語の混ざったもの,さらにはロンドン訛りも区別できるそうです。
訛りがあってもネイティブが教えるのであればまだマシですが,これまた日本人で考えると,東京弁や茨城弁や新潟弁などの違いになるわけで,理想は
- イギリス英語だとロンドンから南部にかけての教養ある人々が話す南部英語(Southern British)
- アメリカ英語なら中西部に見られる方言(Middle Western dialect)
となります。
とはいえ,会話する機会が多いのはアジア圏のビジネスパートナーで,両者とも英語が第二言語となるわけですから,オンライン英会話でフィリピン講師を指名することも有用です。
講師の指導能力について
続いて講師の指導能力についてみていきますが,日本語ができない人で,英語をゆっくり話すつもりのない人が好都合だったりもしますが,日本語に対する理解が深く,日本人の心を掴みつつもあえてナチュラルスピードで英語を話し,やむをえない場合以外は日本語を使わない講師がベストでしょう。
私は大学時代に留学生の世話をしていて,文法的に間違った英語を話したときにすぐさま注意されてムッとしたこともありますが,それは今思えば恥ずべき態度であって,たとえ自分がお客様であっても間違いは指摘されるべきです。
楽しさを優先するあまり,注意することをためらってしまう講師は避けてください。

また,実際のレッスンにおいて,学習者がテキストを読まされているだけでは不十分ですし,たとえフリートークの時間が設けられていたとしても安心はできません。
講師が一方的につまらない話題を喋り続ける状況も結構あるからです。
スピーキングの練習をしに通っていることを忘れないようにしましょう。
もしも集団のクラスに通うのであれば,実力ごとにグレード分けがなされるスクールでなければ信頼できません。
同じレベルの生徒が集まって初めて集団授業は成立します。
もちろん,日本語の使用は禁止です。
まとめ
以上,ビジネス英語の正しい学び方について,専門知識の獲得とEメールを書く技術,そして難しい英会話力については注意すべき事柄について,学び方と講師の選び方の2つの視点でみてきました。
英語力というのは複数の技能の総合力ですが,その中にリーディングとライティングのような表裏一体の関係があったり,アウトプットの前に十分なインプットの経験を積む必要があったりするわけです。
ビジネス英語もその例に漏れませんので,折角のやる気が無駄になってしまわないよう,細心の注意を払って学んでいきましょう!
スクールに通う場合には,実際に月謝を支払って授業を受けて初めて良し悪しがわかるところもありますが,上で述べたことは判断材料の1つになるはずです。
講師側の問題については自分ではどうしようもありませんが,学習者側としては十分な勉強をして準備をしたり,心構えをしっかりさせておくことでレッスンの効果を最大限に引き出すことができるように思います。
なお,スタディサプリENGLISHのビジネス英語コースはいつでもどこでも独学でき,基礎段階からのやり直しだったり,オプションとしてオンライン英会話も選択可能なので,初めの一歩におすすめです↓
ところで,英会話を学ぶにあたっては,内気な方や引っ込み思案な方は上達が遅いことが知られており,「ただひたすらに話す経験を積む以外には英会話ができるようになる方法はない」ことを自分に言い聞かせ続ける必要もあるでしょう。
最悪,ただ単語を並べるだけでも構いませんから,英語が話せないからスクールに通っていることを忘れず,大いに失敗や恥を重ねてください。
これだけ英語教材が周りに溢れている時代になっても,英語力が特に上昇した話を耳にしないのは,勉強法が間違っているからに他なりません。
私自身のことを思い返すと,受験英語でスピーキングは入試に出ないからと見向きもしませんでしたが,この歳になって「ちゃんとやっておけばよかったな」と後悔しています。
最後になりましたが,最近読んだ英語の達人(松本亨)の著書には,「1日当たりリーディングは3時間,リスニングは1時間,ライティングは1時間勉強せよ」と書かれていました。
これだけの努力を達人であっても重ねていることに驚きましたが,それ以外に,スピーキングでは「大切な言葉を聞き取っては,相手の言うことを予測し,同じ意味の内容を色々な主語や動詞で話せることが大切だ」そうです。
これは例えば「Do you think it will rain today?」と尋ねられた時の返答についてで,通常ならば「Yes, I do」などと形式的に答えるはずのところを,「Gee, I don't know. Take an umbrella anyway」や「I am too busy to go out with you today」などと返すのが会話であるという指摘になります。
さらに後者は主語を変えて,「You had better go alone, because I am busy today」や「There are too many things I must do today. Please go out without me」などと言えてしまうわけで,「自由自在に操れることこそが真の会話力だ」と言われると,なるほどその通りと思わざるを得ません。
仕事で忙しい毎日だと思いますが,ぜひとも頑張ってビジネス英語をマスターしましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。