今回は,TOEIC満点を取るための極意が詰まった「BEYOND990超上級問題+プロの極意」という本のレビューをしてみたいと思います。
本書は2010年に出版された内容を2015年に新装版として販売したもので,最近の形式に対応した問題集ではありませんが,大変厳しい状況下で正解にたどり着くことを念頭に置いたトレーニング内容になっているので,形式に関係なく実力を高めることが可能です。

ところで,過去のTOEICで990点満点を取れていた人というのは,新形式に変わったばかりのテストにおいても満点を取れることがほとんどです。
本書内の表現を借りて言えば,「TOEICで1200点や1500点を取れる実力が付けば,990点までしか測れないTOEICでは満点しかありえない」ことになります。
本番よりも負荷を高めた本書独自の高地トレーニングで,公開テストが簡単に思えてしまうほどの実力を身に付けてください。
もくじ
BEYOND990超上級問題+プロの極意の特徴
- 書名:TOEICテストBEYOND990超上級問題+プロの極意
- 著者:ヒロ前田,TEX加藤,ロス・タロック
- 定価:2420円
- 出版社:アルク
- 発売:2015年10月
- 対象レベル:800点以上
- 目標:990点
- 音声:CD-ROM or booco
TOEICの目標スコアが600点や700点程度であれば,よくある解き方のコツを学ぶだけでもかなりのスコアアップに繋がりますが,満点狙いともなると,王道を行く勉強法を積み重ねていくしかありません。
そのため,インパクトや気軽さがウリの問題集業界において満点狙いの本は少なくなっているわけです(ただし,900点に関しては,背伸びをして狙う人が多く見られるので,種類は比較的豊富です)。
しかし,本書ではあえてその王道について詳しく書かれている点がユニークであり,満点取得のための戦略と正しい考え方を学ぶことができます。
簡単に実践ができて正答率が上がる魔法のような技は出てきませんし,収録されている問題は手ごたえが十分にあるものが故意に選ばれているため,最初から最後まで骨のある問題のオンパレードです。
ですが,それしか他に方法がないわけですから覚悟を決めてやるしかありませんし,BEYOND990を読破して身に付けた実力は,王道ゆえに廃れにくく,TOEICの形式が今後変わろうとも決して自分を裏切らない,ある意味,一生ものの能力です。
周りにTOEIC満点を連発している方がいらっしゃる場合は是非確認していただきたいのですが,新形式に変わったばかりのテストであっても変わらずに満点を取れていたのではないでしょうか。
必死の努力を経て最高峰の境地にまで達すると,そこから見える景色は,形式に関係なく明確なものとなります。
以下が本書の目次ですが,パートごとに必要な知識を確認した後,「練習問題・トレーニング・実践問題」という3種類の問題を解いていく構成です↓
これらのうち,「トレーニング」はTOEIC本番のものと異なる形式になっていて,難易度が特に高くなっています。
詳しくは次章でみていきますが,著者曰く,
TOEICで1200点取れる難易度に設定しています。
とのことです。
つまり,本書を使って学んでいると通常のTOEICが簡単に思えてくる状態にまでレベルアップすることができ,安定して990点を取れる実力が付くことになります。
たとえるならば,強豪校の運動部が地方大会で優勝することではなく,全国制覇を掲げて練習するのと似た効果があるわけです。
確かに,受験勉強の世界においても,MARCHに合格したければ早慶を,早慶に受かりたければ東大を目標にして頑張ると良い結果を生むことが広く知られています。
話をBEYOND990の説明に戻しますが,著者らはみなTOEIC満点の取得者なので,ちょっとしたコラムや使い方のヒントは説得力があり,自らの学習法について反省できる内容のものも見受けられました。
ダメ押しとして,本書の巻末にはミニ模試が収録されています。
本番の4分の1の問題数なので30分で終わるものですが,本書で学んだことの総まとめとして活用することが可能です。
それでは次章で,パートごとの内容をレビューしていきましょう!
BEYOND990の内容をレビュー
Part1
Part1に限りませんが,本書におけるリスニング音源はイギリスとオーストラリア出身の話者によるものが多くなっています。
普通の問題集で勉強していると,リスニングで耳にするのはアメリカやカナダ訛りの英語が多いわけで,これはBEYOND990の特徴の1つです。
なお,本書では満点取得者であっても本番で間違えてしまう可能性がある問題(抽象的な表現を使った選択肢など)のみを扱い,実際のテストではわずか2~3問しか出題されないタイプの問題に注力することができます。
以下は練習問題の解答・解説ですが,あらゆる問題に全訳や間違いの根拠が示され,非常に丁寧な作りだと思いました↓
続けて,先ほど述べた「トレーニング」に移りますが,こちらは通常4つであるはずの選択肢が6つに増えており,その中から適切な問題を「すべて選ぶ」という変わった形式(高地トレーニング)になっています↓
変な話,すべての選択肢が正解になる可能性もあるわけですから,音源の最初から最後まで集中力を切らすことなく,完璧に内容を理解していなければ正解できません。
仕上げとなる実践問題では,1つ前の練習問題と同じ形式(本番と同じ形式)になりますが,上のトレーニングをやり遂げてから取り組むことになるので,練習問題を解いたときよりもずっと理解できている感じがして,一段上のレベルに達した感覚に浸ることができるでしょう↓
私は,be propped up(立てかけられる)という表現について,本書を通して完璧に理解することができ,このときの達成感はモチベーションのアップに繋がるものでした。
Part2
続けて,BEYOND990に収録されているPart2のレビューに移りますが,こちらは全問正解を狙うべきパートと言われています。
ここに登場するものは,WH問題(Whoや Whereなど)で始まらない問題ばかりで,かつその質問に間接的に答えているものが正解になることが多いです。
レイアウトとしてはPart1と同じで詳しい解説があるものの,トレーニングにおいては通常3つであるはずの選択肢が4問に増えており,さらには答えが1つとは限らない形式になっています↓
ちなみに,付属の音声データには,通しでちゃんとした会話を聴けるものが収録されているので,ストーリーに注意して聴くことで,予想しにくい展開の会話に慣れることができるでしょう。
Part2は現行のものと形式の違いを感じることがないため,気にせず練習することが可能です。
Part3
Part3や4の攻略においては,そもそものリスニング力強化が必須です。
しかし,それは各々が時間をかけて毎日やっていただいて,本書ではそれ以外の「速読力・集中力・記憶力」についてのトレーニングを行うことが中心となります。
すばやく質問文を読み,リスニングした内容と照らし合わせて即座に正誤判断を行いましょう。
設問から正解の流れる位置を予測する練習や,難易度が高いとされる設問パターンを持つ問題が多かったです。
解答・解説では,全訳があることはもちろん,意識を向けるべきポイントも書かれていて,これを知っているのとそうでないのとではテスト本番での落ち着き度合いが全く異なるでしょう↓
なお,トレーニングでは,通常よりも設問間の空白時間が短く4秒になっていました。
これはつまり,満足に先読みができないということを意味し,正答率が落ちるのが必然のように思われますが,本書のスピードで速読できるようになっておけば,本番の8秒という間隔を余裕だと感じられるはずです↓
トレーニングは1種類とは限らず,扱うテーマや問題形式が異なるものも登場してきました。
ちなみに,BEYOND990において用意されているPart3のトレーニングでは設問が1つ増えている(1つの会話に対して4つの問題がある)ので,先読みした質問をより長時間記憶し,集中力も問われることになります。
CD-ROMにはネイティブが高速で読み上げた音源が収録されているので,この速さに慣れてから普通の速さのものを聞くと,自身のリスニング力の明らかな変化に気づくでしょう。
ノーマルスピードの音源を機械的に早くしたものではなく,実際に早いスピードで話してもらった音声をそのまま録音しているので,高速ながらもナチュラルな印象です。
本書は復習についてもよく考えられていて,大変親切な作りになっているように感じました。
Part4
Part3以上に集中力と記憶力が物を言うPart4ですが,本書では同義語や言い換え表現が鍵となる問題や,選択肢が長いものになっている問題などを扱います。
予測の仕方についても,練習問題を通してしっかり学びましょう!
なお,こちらのトレーニングでも設問間のポーズ時間が半分に減らされているものや,設問が4問に増えている素材を使って各種能力を鍛えていくことになります。
詳しい手順については本書に以下のような記述がありましたが,まずは普通のスピードで内容を完全に理解してから,高速版を用いましょう↓
スピード・リスニング
- 何も見ずに通常スピードの音声で内容を確認
- 聴き取れないところは英文を確認する
- 何も見ずに高速音声を聞いて内容を理解する
- 不明部分は高速音声を聞きながら英文を確認する
- 発音が原因の場合はオーバーラッピングする
- 何も見ずに理解できるようになるまで繰り返し聞く
移動中に学習する際や実力に余裕がなくても,高速音声を使って学習する姿勢が大切です。
Part5
TOEIC満点を取るためには,リーディングセクションはほぼノーミスにしなければなりません(990点を取るのに必要な正答数のデータが載っていましたが,これは現行のものでも有効かどうかはわかりません)。
著者曰く,
各人の背景知識によってミスする傾向も様々なので,特に難しいと思われるものをタイプ別に選びました。
とのことです。
このように解答解説のページに問題文が再掲されているところが取り組みやすかったです↓
トレーニングには2006年以前の形式のものを採用しており,より深く文法を理解していないと解けません↓
今のTOEICを受けている方にはなじみがない形式でしょうが,昔はこれに近い問題が実際に出題されていました(さすがに,記述することまでは求められませんでしたが)。
Part6
Part6で難しいとされる問題は,何と言っても「文脈理解が問われる出題」です。
加えて,広範囲を読まないと正解できない問題が含まれていた他,「1つの文書は2分以内に解くように」との指示までありました。
確かに,時間がなかったから解けなかったというミスもTOEICでは想定されるので,解くスピードについてはたえず意識しておかなければなりません。
負荷を高めたトレーニングにおいては,空所が6ヶ所もあり,集中力がより問われる仕様です↓
CD-ROMにはPart6の文章を読み上げたものが3種類収録されています。
「スリーステップ・リスニング」と呼ばれていましたが,返り読み(後ろから前に戻って読み直すこと)をせず,英語を英語の語順のまま理解していくトレーニングをするという意味です↓
スリーステップ・リスニング
- ポーズありの音源で,意味のまとまりごとに2秒間のポーズが入った音声が流れるので,意味のまとまりごとに理解し,次に流れる英文構造を予測しながら読み進める
- ポーズ無しの通常音声を聞くが,不明部分は英文で確認する
- 高速の音源を聴きながらテキストを目で追い,自分がそのスピードで読んで理解できるのか確認する
このように,やや変わり種の勉強方法が実践できるところも本書のユニークなところだと思います。

Part7
TOEICのPart7では,情報処理能力と推測する力の2つが求められます。
そこで,一定の時間内により多くの情報を処理できるように練習しましょう。
問題ごとに,制限時間と,音声の収録されているCD-ROMのトラックなどが表示されていました↓
解答・解説には,正解の根拠と問題のタイプが書かれているので,論理的な考え方を身に付けたり,弱点分析の際に役立てたりすることが可能です。
トレーニングともなると,ただでさえ短い制限時間はさらに短くなり,音声トラックを再生しながら取り組むことで,読み終わりの時間や解答終了時間をビープ音で教えてくれます↓

ミニ模試
本書の最後にはミニサイズの模試が収録されています。
問題数としては51問を計28分で取り組みましょう。
サイズ的には本番の4分の1なので,あくまでおまけです。
解答・解説もメインページと同様に詳しいものが収録されていましたが,解き終わった際の総スコアに対して,何らかの評価(例えば,990点の取得可能性など)が行われていないところは残念でした。
もっとも,満点を取って当然だというスタンスなのでしょう。
確かに,全体の難易度は高めでした。
まとめ
以上,BEYOND990のレビューでした。

今回まとめてきた本書の特徴について書き出してみると,以下のようになります↓
- TOEIC満点のための王道となる勉強法を紹介
- リスニングでは英や豪のナレーターが頻繁に登場
- 解説や解答は丁寧
- 問題は900点以上の人が間違いやすいものがほとんど
- 復習用の音声も多数収録(高速版やポーズ入りのもの)
- トレーニングは形式を大きく変えて難易度が高い
- ミニ模試で総復習が可能
TOEICの参考書として定番の公式問題集は,スコアが800点以上の人が使うとほとんどが正解となってしまい,時間をかけた割に得られる知識が少ないです。
なので,900点の実力がある方が990点を狙うのに必要な超難問のみを扱っている本書だけに,独特の価値があると言えるでしょう。
出版されたのは最近ではありませんが,本書で養成できる力は応用が利くものですし,学んだ方法論を今後の学習に生かすこともできるはずです。
発売から時間が経っている分,中古で安く購入することもできます。
なお,似たコンセプトのもので最近に出版されたものだと,以下の本が検討対象になるでしょう↓
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました。