今回は,初めてTOEIC S&Wの対策をする方におすすめの「TOEIC S&Wテスト総合対策(旧スピーキング/ライティング総合対策)」という参考書についてレビューしようと思います。
本書の魅力を際立たせているものを私なりに考えてみると,それは「コンパクトな網羅性」と言えるでしょう。
薄めの1冊ではありますが,S&Wテストに関する多くの情報が上手くまとめられている印象を受けます。
飽きっぽい私でも途中で挫折せずに読み進めることができ,何回か読み直して表現を別に覚えることで,薄さのわりに多くの学びが得られたように感じました。
それでは早速,詳しい中身についてみていくことにしましょう!
もくじ
TOEIC S&Wテスト総合対策の概要
- 名称:TOEIC S&Wテスト総合対策(旧スピーキング/ライティング総合対策)
- 著者:浅場眞紀子,トニー・クック
- 出版:旺文社
- 値段:2310円
- 初版:2022年9月(旧版は2016年5月)
- ISBN:978-4010949993
- ページ:224ページ
- 音声:ダウンロードが可能
TOEICのL&Rと比べるとS&Wは受験者が少ないですが,英語4技能に注目が集まることで,より身近なものになってきているのは確かです。
なお,試験の形式がここ数年で何回か変わっているものの,問題が減ったり制限時間が変わったりする程度の変更が大半なので,これまでに出ている旧版でも特に問題なく対策ができます。
ちなみに,本書の元になっているのは2016年に出た本ですが,こちらも例外ではなく本の構成にほとんど変わりはありません。
そのため,今回のレビューでは旧版の内容を引き継いでおり,主な変更点は以下の2点です↓
改訂版での変更点
2022年6月の試験内容に変更(写真描写問題が1問追加,解決策を提案する問題が消滅)
Q11のところにノートテイキングのコラムを追加
最近のテスト形式については,TOEIC S&Wの解き方は?問題内容や時間配分などの記事で確認してください。
一般的に,S&Wテストの参考書はすでに高い完成度を誇っているので,今更何かを新しく追加することはほとんどないと思っておきましょう。
実際,スピーキングやライティングの基本知識は,S&W専用の参考書を使わなくてもかなりの量を学べてしまいます。
さて,このTOEIC S&Wテスト総合対策ですが,1冊でS&Wの総合的な対策ができるところが魅力です。
読み終えるとテストについての理解が深まることはもちろん,今後の対策をどうすべきかといった見通しが立つので,本書の帯に書かれている「はじめの1冊」というキャッチコピーはまさにぴったりの言葉のように思います。
著者のお二方ともL&RとS&Wの両方で満点のスコアを取っていますし,普段は企業での研修や専門学校の講師を勤め,公開テストを定期的に受験して問題を分析しているプロフェッショナルの方です。
ちなみに,浅場眞紀子さんは,私が以前利用していたスタディサプリのパーソナルコーチプランの監修者(コーチのコーチ的な立場の方)でもあります↓
スタサプのおかげでL&Rは満足のいく点数が取れ,今度はS&Wの方にも挑戦したいと思った私にとって,関係者の本で再び学べるのは嬉しいものでした。
レビューがてら本書以外にも複数冊を使って学びましたが,結果的に,S&Wでも330点という目標を突破できています↓
広いように思われたTOEIC業界ですが,優秀な人というのは数が限られていて,そういった方のもとに教材作成の依頼が自然と集まってくるのでしょう。
また,もう一人のトニー・クック氏の著作としては,同じくS&W対策として使える頂上制覇S&W究極の技術が知られています。
こちらも名著ですので,是非本書と比較検討してみてください。
なお,本書の音声ですが,MP3形式で旺文社のサイトからダウンロードすることが可能で,浅場氏によるミニ講義も受講できました↓
この他,「英語の友」というアプリからも聞くことが可能です。
TOEIC S&Wテスト総合対策の使い方
続けて,TOEIC S&Wテスト総合対策の使い方について説明します。
まずは目次を見てみましょう(旧版の画像なので,ページ数と問題番号の一部が異なることに注意してください)↓
本編に入る前に,「本書の使い方」を始め「セルフチェック」や「さまざまな学習法」の説明があります。
そこまで紙面を多く割いているわけではないのですが,セルフチェックは学習者が自分の現状を把握することで目的意識がはっきりとするもので,これは著者がTOEICの研修において実際に行っているものなのでしょう↓
やってみると,現在の自分が最も行うべき対策が簡単にわかります。
著者は評価を行うことが好きなようで,一番最後にあるまとめ部分でもセルフチェックが登場してくることになるのですが,そちらでは,項目を1つ1つをチェックしていくことで,本番に臨むにあたって万全の状態を作り上げられるものになっていました↓
TOEICに限らず,あらゆるスピーキングやライティング問題を解く際,横にこの表を置いてその都度チェックするようにすれば,出題者の意図をふまえた良解答を自然と導き出せるでしょう。
本編の内容に移りますが,以下の3つに分かれます↓
- S&Wの設問別攻略法
- 模擬テスト
- 発信力強化トレーニング
「設問別攻略法」においては,スピーキングテストとライティングテストの解き方を一から別々に学んでいくことになりますが,1題ごとに区切って手取り足取り教えてもらえるので,S&Wの初心者であっても問題なく進めていけるはずです。
とはいえ,基礎学力は必要で,TOEICで600点くらい取れるようになってから本書を使うことをおすすめします。
そして,攻略法のところで学んだ知識は,続く「模擬テスト」の部分で試すことができ,残念ながら1回分しかありませんが,やり遂げた暁には,S&Wについて中々に多くのことを理解できたように感じられるはずです。
おまけとして「発信力強化トレーニング」という章が設けられており,5日間かけて,さらなるスコアアップを可能にする練習ができます。
ここまでの内容をまとめると,以下の2つを実践できるのが本書の魅力です↓
- テストの攻略法を知り,模擬テストで形式に慣れる
- 残りの時間で復習と実力アップに役立つトレーニングを行う
なお,具体的な学習プランが最初のところで提示されていて,テスト本番までの残り期間によって2つから選ぶことができます。
1つは残り1週間前のパターンで,もう1つは1ヶ月前のパターンです↓
模擬テストはどちらのパターンであっても必ずやることになりますが,攻略法や発信力のトレーニングにかける時間がそれぞれ異なっています。
残り時間がまさに上のどちらかであれば,完全にこれに従ってやってみてください。
ちなみに,本書の全部の内容を最初から最後までやるのに15~20時間かかるので,1ヶ月かけて学ぶ場合は2周目に入る時間も取れます。
TOEIC S&Wテスト総合対策のレビュー
設問別攻略法
S&Wの設問別攻略法ですが,紙面的にはスピーキングテストが94ページ,ライティングでは56ページ程度が割かれていました。
ここではスピーキングテストの写真描写問題を例にみていくことにしますが,まずはこのように例題が示され,どのようなシーンで役立つのか,そしてスコアアップに繋がるヒントについて学ぶことができます↓
TOEIC S&Wテストのための勉強ですが,実際のビジネスシーンで役立つスキルが身に付くことは,くれぐれも忘れないようにしましょう。
テスト勉強を通して,実務的な能力が磨かれていきます。
ちなみに,写真が登場する問題は,本番と同様にカラー印刷されていました。
解説部分では,訳や解答例の他,どのような意識をもって本番を迎えればよいのかについて具体的に学習することができます↓
上の説明からは,「情報・動作・様子」の3つの観点に注目して答案を作成するのが良いことがわかりますが,次ページから始まる3つのトレーニングを通して,頭で理解したことを類問で実践してみましょう↓
「奥」とか「中央」といった表現すら,英語では満足に話せなかった私は,ここにある表現を必死に暗記しては本番で用いるようにしたことをよく覚えています。
なお,解く問題ですが,試験形式に沿ったものだけではありません。
制限時間内に,問題部分のどこにどのような内容が書かれていたのか記憶するための問題や,ライティングテストで見直すときのことを想定し,文法的に間違えているところを見つけ出す問題など,基礎的な能力を伸ばすための問題も含まれています。
最後の段階として,本番通りに作られた練習問題を使って仕上げましょう↓
ここまで主にスピーキングテストの内容ばかりを紹介してきましたが,ライティングテスト用の設問別攻略法でも,スモールステップ的に簡単なトレーニングから始めて,最終的には250語程度のエッセイが書けるほどにまでなりました。
模擬テスト
本書の注意書きにもありましたが,スピーキングは声に出して解答し,録音しておく必要があります。
自分の声を聴くのは恥ずかしいものですが,そうすることでしか採点できませんので,頑張りましょう。
復習する際にも大いに役立ちます。
ちなみに,問題は途中で止まることなく,約80分間ぶっ通しで解くようにしてください↓
スピーキングテストを解いて疲れた状態でライティングに臨むときの感覚も,模試を使って体験しておくべきです。
もっとも,解答時間が2時間のL&Rと比べてしまえば,80分のS&Wはそこまで苦に感じないでしょう。
解答例には音声があり,以下のような解説まで付いている他,先述の通り,著者によるミニ講義(15分弱)を聴くことができます↓
著者を身近に感じられる工夫を,他書でも行ってほしいものです。
発信力強化トレーニング
試験まで残り日数がある場合は,この発信力強化トレーニングも欠かさず行いましょう!
日ごとにトレーニング内容は大きく異なっており,どれもかなりの充実度です↓
1日目の文法は文型や時制などの基礎的な内容でしたが,ライティングテストで間違えてしまうと確実に減点されてしまいます。
ちなみに,3日目の課題はタイピング速度を上げるための練習でした。
「ただタイピングするだけ?」と侮っていた私ですが,指示通りに意味を考えながらタイピングしていくと英語の勉強にもなることに気づかされました。
まとめ
以上,TOEIC S&Wテスト総合対策のレビューでした。
序章から本編の最後までを1つ1つ解説してきたので,この本1冊でかなりの充実した対策ができることがわかっていただけたのではないでしょうか。
本書で多くの知識を学んだ上で,最初のセルフチェックも利用して,特に弱点だと思える範囲をピンポイントで対策していけば良い結果に繋がること間違いなしです。
模範解答の内容や,質問文をよく聴き取れなかったときのごまかし表現などは,本番で大いに心の支えとなってくれました。
本書に書かれていたように,
社会人はアイディアはあっても抽象的で具体例を入れられずに長文が作れず,逆に学生はアイディアが出せない
ものです。
そういった弱点に対処するためのヒントは本書中に散らばっていますし,本書を使って自分の苦手分野に気付くことができれば,次にまた別の参考書や問題集を購入することができるでしょう。
そのような意味で,S&W対策の最初の一歩は本書から始まるわけですが,テストに関係なく,役立ちそうな英語表現は実生活でも取り入れるようにし,ご自身のビジネス英語(例えばEメールの内容)をより良いものへと変えていってください。
最後までお読みいただきありがとうございました。