今回は,初めてTOEIC S&Wの対策をする方におすすめの「スピーキング/ライティング総合対策」という参考書についてレビューしようと思います。
本書の魅力を際立たせているものを私なりに考えてみましたが,それは「コンパクトな網羅性」となるでしょうか。
薄めの1冊ではありますが,S&Wテストに関する多くの情報が上手くまとめられている印象を受けます。
飽きっぽい私も途中で挫折せずに読み進められ,しかし何回か読み直して表現を別に覚えたりするとかなりの実力アップができたように感じました。
それでは早速,詳しい中身についてみていくことにしましょう!
目次
スピーキング/ライティング総合対策の概要
- 名称:TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策
- 著者:浅場眞紀子,トニー・クック
- 出版:旺文社
- 値段:2310円
- 初版:2016年5月
- ISBN:978-4-010944-47-9
- ページ:235ページ
- 音声:ダウンロード可能
相変わらずL&Rと比べるとS&Wは受験者が少ないですが,英語4技能に注目が集まることで,より身近なものになったのは確かです。
なお,最新の内容に完璧に対応したような参考書もあまり手に入らないのですが,これまでに出ている参考書は良書であることが多く,新しいものが入りこむ余地が少ないとも言えるでしょう(実際,スピーキングやライティングの基本知識については,S&W専用の参考書を使わなくても学べてしまいます)。
そして,本書もこれらの例にもれず,1冊でS&Wの総合的な対策ができるところが魅力です。
読み終えるとテストについての理解が深まることはもちろん,今後の対策をどうすべきかといった見通しが開けるため,本書の帯に書かれていた「はじめの1冊!」というキャッチコピーはまさにぴったりの言葉だと思います。
著者のお二方ともL&RとS&Wの両方で満点のスコアを取っていますし,普段は企業での研修や専門学校の講師を勤め,公開テストを定期的に受験して問題を分析しているプロフェッショナルの方です。
ちなみに,浅場眞紀子さんは,私が以前利用していたスタディサプリのパーソナルコーチプランの監修者(コーチのコーチ的な立場の方)でもあります↓
おかげさまでL&Rは満足のいく点数が取れるようになり,より上を目指してS&Wの方にも挑戦したいと思ったので,関係者の本で再び学べるのは嬉しいものです。
広いように思われたTOEIC業界ですが,優秀な人というのは数が限られていて,そういった方のもとに教材作成の依頼が自然と集まってくるのでしょうね。
また,もう一人のトニー・クック氏の著作としては,同じくS&W対策として使える頂上制覇S&W究極の技術が知られています。
こちらも名著ですので,是非本書と比較検討してみてください。
なお,本書の音声ですが,MP3形式で別サイトからダウンロードすることが可能で,浅場氏によるミニ講義も受講できました↓
スピーキング/ライティング総合対策の使い方
続けて,スピーキング/ライティング総合対策の使い方について説明します。
まずは目次を見てみましょう↓
ここで1つ注目したいのは,本編に入る前に,「本書の使い方」を始め「セルフチェック」や「さまざまな学習法」の説明があります。
そこまで紙面を多く割いているわけではないのですが,セルフチェックは学習者が自分の現状をしっかり知ることで,目的意識がはっきりするもので,これは著者がTOEICの研修において実際に行っているものなのでしょう↓
やってみると,現在の自分が最も行うべき対策が簡単にわかります。
著者は評価を行うことが好きなようで,一番最後にあるまとめ部分でもセルフチェックが登場してくることになるのですが,そちらでは,項目を1つ1つをチェックしていくことで,本番に臨むにあたって万全の状態を作り上げられるものとなっていました↓
他のスピーキング/ライティングテストを解く際にも,横にこの表を置いてチェックするようにすれば,出題の意図を押さえた良解答が自然と書けてしまうようになる優れものです。
ただし,最近の改訂を反映したものではないので,テスト形式(特にスピーキングの形式)については,TOEIC S&Wの解き方は?問題内容や時間配分などの記事で確認しておいてください。
さて,肝心の本編の内容に移りますが,以下の3つに分かれます↓
- S&Wの設問別攻略法
- 模擬テスト
- 発信力強化トレーニング
「設問別攻略法」においては,スピーキングテストとライティングテストの解き方を1から別々に学んでいくことになるのですが,1題ごとに区切って手取り足取り教えてもらえる学習スタイルなので,S&Wの初心者であっても問題なく進めていけるはずです。
とはいえ,基礎学力は必要で,TOEICで600点くらい取れるようになってから本書を使うことをおすすめします。
そして,攻略法のところで学んだ知識は,続く「模擬テスト」の部分で試すことになり,残念ながら1回分しかないのですが,やり遂げた暁には,S&Wについてなかなかに多くのことを理解できたと実感できるはずです。
おまけとして「発信力強化トレーニング」という項目が控えており,そこから5日間かけて,さらなるスコアアップを可能にするための練習ができます。
- テストの攻略法を知り,模擬テストで形式に慣れる
- 残りの時間で復習と実力アップに役立つトレーニングを行う
上の2つを実践できるのが本書の魅力です。
なお,具体的な学習プランも最初のところで提示されていて,テスト本番までの残り期間によって2つから選ぶことができます。
1つは残り1週間前のパターンで,もう1つは1ヶ月前のパターンです↓
模擬テストはどちらのパターンであっても必ずやることになりますが,攻略法や発信力のトレーニングにかける時間がそれぞれ異なっています。
残り時間がまさに上のどちらかであれば,完全にこれに従ってやってみてください。
ちなみに,本書の全部の内容を最初から最後までやるのに15~20時間かかるので,1ヶ月かけて学ぶ場合は2周目に入る時間も取れます。
スピーキング/ライティング総合対策のレビュー
設問別攻略法
S&Wの設問別攻略法ですが,紙面的にはスピーキングテストが110ページ,ライティングでは55ページが割かれていました。
ここではスピーキングテストの写真描写問題を例にみていくことにしますが,まずはこのように例題が示され,どのようなシーンで役立つのか,そしてスコアアップに繋がるヒントについて学びます↓
S&Wのために勉強することにはなりますが,実際のビジネスシーンで役立つスキルが身に付く恩恵が受けられることについては,くれぐれも忘れないようにしましょう。
実用的な能力が磨かれるテストです。
ちなみに,写真が存在するような問題は,本番と同様にカラー印刷されていました。
解説部分では,訳や解答例の他,どのような意識をもって本番を迎えればよいのかについて具体的に学習することができます↓
上の説明からは,「情報・動作・様子」の3つの観点に注目して答案を作成するのが良いことがわかりましたが,次ページから始まる3つのトレーニングを通して,頭で理解したことを類問で実践してみましょう↓
「奥」とか「中央」といった表現すら英語だと満足に話せなかった私は,必死にここにある表現を覚えては本番で大いに使った記憶があります。
なお,問題としては試験形式に沿った問題をとくだけではありません。
制限時間内に,問題部分のどこにどのような内容が書かれていたのか記憶するための問題や,ライティングテストで見直すときのことを想定し,文法的に間違えているところを見つけ出す問題など,基礎的な力を伸ばす問題も含まれています。
最後の段階として,本番通りに作られた練習問題を使って仕上げましょう↓
ここまで主にスピーキングテストの内容ばかりを紹介してきましたが,ライティングテスト用の設問別攻略法でも,スモールステップ的に簡単なトレーニングから始めて,最終的には250語程度のエッセイが書けるようになるまでに至りました。
模擬テスト
本書の注意書きにもありましたが,スピーキングは声に出して解答し,録音しておく必要があります。
自分の声を聴くのは恥ずかしいものですが,そうすることでしか採点できませんので,頑張りましょう。
復習する際にも大いに役立ちます。
ちなみに,問題は途中で止まることなく,約80分間ぶっ通しで解くようにしてください↓
スピーキングテストを解いて疲れた状態でライティングに臨むことになるときの感覚も,模試を使って体験しておくべきです。
もっとも,2時間のL&Rと比べれば,80分のS&Wはそこまで苦に感じないでしょう。
解答例には音声があり,以下のような解説まで付いている他,先述の通り,著者によるミニ講義(15分弱)を聴くことができます↓
著者を身近に感じられる工夫というのは,他書も見習ってほしいものです。
発信力強化トレーニング
試験まで残り日数がある場合は,この発信力強化トレーニングも欠かさず行うようにしましょう!
日ごとにトレーニング内容は大きく異なっており,どれもかなりの充実度です↓
1日目の文法では文型や時制など,基礎的な内容ではありますが,ライティングテストで間違えてしまうと確実に減点されてしまうところについて学びます。
ちなみに,3日目の課題はタイピング速度を上げる練習でした。
「ただタイピングするだけ?」と侮っていましたが,指示通りに意味を考えながらタイピングしていくと,英語の勉強にもなるので,しっかりやることをおすすめします。
まとめ
以上,TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策のレビューでした。
序章から本編まで1つ1つ中身を解説してきたわけですが,この本1冊でかなりの充実した対策ができることがわかっていただけたのではないでしょうか。
本書でかなりの知識を入れた上で,最後のセルフチェックも利用して,特に弱点だと思える範囲をピンポイントで対策していけば良い結果に繋がること間違いなしです。
私的には,p.98の解決策の文や,質問文をよく聴き取れなかったときのごまかし表現などが心の支えになりました。
本書のp.89に書かれていたように,社会人はアイディアはあっても抽象的で具体例を入れられずに長文が作れず,逆に学生はアイディアが出せないものです。
そういった弱点に対処するためのヒントは本書に散らばっていますし,本書を使ったことで自分の苦手分野に気が付くことができれば,次にまた別の参考書を購入することもできます。
そのような意味で,S&W対策の最初の一歩は本書から始まるわけですが,テストに関係なく,是非,役立ちそうな表現は実生活でも取り入れるようにし,ご自身のビジネス英語(特にEメールの内容)をより良いものに変えていってください。
最後までお読みいただきありがとうございました。