今回ですが,アルクの「キクタン」という単語帳をレビューしていきましょう!
大学受験で使った経験がある方もいらっしゃるでしょうし,小学生向けのものや別言語のものまで出ている状態ですが,これから紹介するのはTOEIC用のものです。
なお,この場合のキクタンは目標スコア別に500点・600点・800点用などと分けられており,ここではTOEIC満点を狙える「SCORE990」を例に,特徴や使用感についてまとめてみることにします。
もくじ
キクタンとは
基本情報
名称:キクタンTOEIC L&RテストSCORE990
ISBN:9784757436022
編著:一杉武史
出版:アルク
定価:1760円
対象:英検準1級,TOEIC730点以上の方
目標:TOEIC990点
音声:ダウンロード(2020年3月版以降)
キクタンは受験用(中学英単語,Entry,Basic,Advanced)や英検用(1~3級),さらには英会話用(基礎編,海外旅行編)や英語以外の言語や子ども向けのものの他,「キクジュク」という熟語や各種ワークブックまでが出ていたりもしますが,冒頭で述べたように,今回の内容はTOEIC用限定です。
2009年に発売されたものを2016年に全面改訂したものが現行版となり,公開テストが新形式になったことに合わせて,見出し語,例文,フレーズが刷新された他,本番同様に4ヶ国語での発音(訛りあり)を聞くことができ,収録語数が増えました。
2020年になると,CD-ROMの代わりに音声データをダウンロードできるものに置き換わりましたが,アルク社のboocoというアプリを用いれば,誰でも無料で音声を視聴できます。

また,クイズ形式でアプリ学習をしたい方に向けて,ソースネクスト社からキクタンのソフトが出ています↓
CD-Rの音声データとしては,以下のようなファイルが収録されていました↓
音声は「チャンツ」と「センテンス」の2つの聴き方ができるのが特徴です。
特に前者は,他の単語帳に類をみない唯一無二のものであり,陽気な音楽に合わせて「見出し語→日本語訳→見出し語」のセットが4回(4語分)流れた後,仕上げにそれまでの4つの見出し語が流れます。
この学び方の楽しさは,聴いてみた人しかわからないので,先ほどのboocoで音声だけでも早速聞いてみてください。
この流れで16語分を学ぶのが1日のノルマで,わずか1分30秒ほどで1日分の単語学習が終了してしまうわけです。
バックミュージックにはいくつかのバリエーションがあるこだわりようで,ノリノリで聞いていくだけで見出し語とその意味を耳で学べてしまいます。
一方,センテンスと呼ばれる音源ですが,こちらは普通に例文を音読したもので,日本語訳の音声は収録されていません。
とはいえ,4ヶ国語に対応しているので,4人の話者が代わり代わり読み上げていくところが魅力です。
1つの文を4人が4回読み上げることにはなりませんが,異なる4つの文を,「アメリカ(1文目)→カナダ(2文目)→イギリス(3文目)→オーストラリア(4文目)」というふうに訛りを聞き比べられるので,読んで学ぶだけの単語帳とは違った学習体験をすることができます。
なお,チャンツの方は米英2ヶ国語のみでの収録となりますが,こちらも改訂版が出るまでは米語のみでの収録だったことを考えると大きな改善です。
キクタンの収録語数と学習プラン
キクタンSCORE990の構成ですが,品詞や難易度ごとに9つに分けられたチャプターを70日(10週間)で学べるように工夫されています(SCORE600や800も同じ日数で終わりますし,似た構成になっています)。
チャプターについて詳しく書き出すと,以下のような感じです↓
チャプターと収録内容
Chapter1:超必修レベルの名詞 240語
Chapter2:超必修レベルの動詞 112語
Chapter3:超必修レベルの形容詞 112語
Chapter4:必修レベルの名詞 240語
Chapter5:必修レベルの動詞 112語
Chapter6:必修レベルの形容詞 112語
Chapter7:必修レベルの副詞 48語
Chapter8:動詞句 112語
Chapter9:形容詞句・副詞句 32語
最初の3つのチャプターは「超必修レベル」となっていて,その次の3つが「必修レベル」と,試験で目にする頻度順に配列されています。
そこまで大きくレベルが変わるような感じはしないものの,知っている単語の数は確かに最初の方が多めです。
ちなみに,最後の2つのチャプターでは単語の代わりに熟語を学ぶことになりますが,収録数はそれほど多くなく,使われている単語自体は見慣れたものばかりなので(中にはadeptなども含まれますが),それほど難しくありません。
結局のところ,全部で1120語を学ぶことになり,それを70日でやるわけですから,一日あたりのノルマを計算すると,音源のところで述べたように「毎日16語ずつ学ぶペース」と計算できます。
これは一日の学習量としてはなかなか少ない部類に入るでしょうが,本書では
単語学習が継続できない原因は,1回で覚えきれないほどの量の単語を学ぶからである。
と分析しており,学んだ16語を必ず覚えることが基本姿勢です。
キクタンを用いた具体的な勉強法ですが,全部で3つの学習プラン(モード)が提示されていました↓
- 聞くだけモード(1日2分)
- しっかりモード(1日4分)
- かんぺきモード(1日7分)
最短で2分,最長でも7分しかかからないので,この量なら毎日でも無理なくできそうです。
なお,TOEIC用のその他シリーズにおいては,SCORE500のみ収録語数に違いがありますが,どれも勉強法や特徴は似ています↓
TOEIC用のキクタンと収録語数
SCORE500:448語
SCORE600:1120語
SCORE800:1120語
それぞれのモードの違いについては,次章でレビューすることにしましょう!
キクタンを使った勉強法
こちらがキクタンの基本となるレイアウトとなります。
列の左から,「見出し語→日本語訳→フレーズ→センテンス」の順に並んでいるのですが,1つの見開きだけで8語です。
つまり,もう1ページめくって同じ作業を繰り返せば,それでもう1日分になるので,ノルマをこなすことはそれほど大変なことではありません。
8語ずつ2回に分けて学ぶこともできるので,それこそ通学通勤の行きと帰りでやったり,起きてすぐと寝る前にやってみるようにすれば,生活習慣の中に無理なく組み込めるでしょう。
さて,先ほど3つの学習プランがあると言いましたが,それぞれどのような学習をするのかというと,以下のようなものになります↓
つまり,Check1(見出し語と訳)だけをやるのが一番短く済む「聞くだけモード」にあたり,Check2(フレーズ)もやれば「しっかりモード」に,そしてCheck3(センテンス)までのすべてをやると「かんぺきモード」になるわけです。
Check1~3について,以下で説明を加えましょう!
Check1の進め方
まずは音声のチャンツを聞き流します。
これだけで終えてもいいですが,できれば定義(意味)まで確認するようにしてください↓
TOEICの試験では多義語もよく狙われるので,太字以外の内容まで学ぶのが良さそうです。
ここには,発音記号やよく出るパートの紹介,さらには派生語やイディオムの説明まであります。
これらの単語はまだ「超必修語」にあたり,つまりは1番簡単なレベルとなりますが,990点狙いの単語帳だけに中々に難しく感じられました。
Check2とCheck3の進め方
続けてフレーズや文を通して,1つの単語や熟語について深く学んでいきましょう!
フレーズで学ぶのがCheck2にあたり,文まで読めばCheck3の学習はクリアです↓
このとき,音読を行うのがおすすめで,センテンスにある例文はダウンロードした音声にももちろん収録されています。
その他,赤シートで隠してチェックしてみたり,前日に学習した単語は,ページ下にあるクイックレビューを使って復習できるので便利です↓
上に表示されているのは「必修語」として学ぶ単語の例ですが,先の「超必修語」のものよりもさらに難易度が上がっています。
さらに各チャプターの最後には,総まとめ的に復習できるページがあり,別の角度から理解を深めることが可能です↓
個人的には,Chapter9に収録されていた形容詞句・副詞句の内容がとても役立ちました↓
こういうところまでまとめてくれている単語帳は,意外と市場に見当たらないものです。
私独自の勉強法
以上が,キクタンに書かれている公式の使い方なのですが,試験まで2ヶ月を切っているときなどに悠長に学んでいるわけにはいきません。
それに,本書を1周するだけではやや心細いです。
そこで,1日に10~15分かけて100語を学ぶことにしました。
飽きっぽい性格の私なので,フレーズやセンテンスは使わず,チャンツだけを聴いていきます。
ただし,翌日に聴くのは前日にやった100語とし,ある程度理解できたと思うまでは先に進まないことにしました。
また,ちょうど半分のChapter5に差し掛かったあたりで,1日に20~30分かけて200語を学ぶことにし,単純に進めていく他に,前半部分の2周目も同時進行で行っていきます。
このように進めていくと,2ヶ月で全部を大体4~5周することができるので(チャンツだけですが),だいぶ語彙数が増えたように感じました。
各単語につき,基本的には1つの意味しか覚えられないものの,「良い意味の単語だったな」とか「株式に関する単語だったはず」などと雰囲気で判断できるくらいにはなります。
スピードを優先して学びたい場合は,是非このような工夫をして学んでみてください。
まとめ
以上,アルク社のキクタンについて,TOEIC L&RテストSCORE990を中心にレビューしてきました。
新形式に対応し,音声面に力を入れた単語帳であるだけでなく,3つの学習モードから各自の好みに合わせて学習内容を選べるところは,他に類をみない大きな特徴だったように思います。
音声を使った学習については,チャンツがあるおかげで楽しくそしてスピーディーに学習できましたし,とにかくこのキクタンは全体的にセンスが良かったです。
表紙を取り去った状態でもデザインに抜かりはありませんし,こういった気遣いは本書の色々なところで目にしました(チェックボックスの有無やインデックス,さらにはクイックレビューなど)↓
語彙力というのは英文法と並んで,TOEICのあらゆるパートのスコアに影響するものなので,毎日少しずつでも学習することが大切です。
その際,今回紹介したキクタンを用いれば,苦行になりがちな単語学習を2~7分というちょっとした時間でサッと学ぶことができます。
既に述べたように,キクタンのTOEICシリーズは目標スコア別に複数冊が出ているので,学習者の目標スコアに応じて適切なものを選べば,70日後に確かな成長を感じ取ることができるでしょう。
気になっている方は,是非キクタンで学んでみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました。