今回は,TOEICの単語帳の中から,例文に定評のある「出る順で学ぶボキャブラリー990」を紹介してみようと思います。
本の帯に目を遣ると,「最小限の時間で最大限の効果を生む990単語&例文」というキャッチフレーズが添えられていた本書ですが,具体的にはどのような工夫が施されているのでしょうか。
音声や勉強用の副教材の存在についても触れながら,早速レビューしていきましょう!
もくじ
出る順で学ぶボキャブラリー990について
基本情報
名称:新TOEIC®TEST 出る順で学ぶボキャブラリー990 ハンディ版
著者:神崎正哉
目標スコア:470~860点
出版:講談社
出版年:2017年
ページ:288ページ
価格:990円
音声:スマホアプリ,PCダウンロード(MP3形式)
最初に断っておきますが,「新TOEIC TEST」という名を冠しているように,本書(ハンディ版)は最新のTOEIC形式に対応したものでなく,2009年に出版されたものを小型軽量化したものです。
もっとも,出版された年から考えると,単語レベルに関しては特に変更する必要はないと判断しての事でしょう。
確かに,TOEICの公式の単語帳も,初心者の方には旧版の方が使いやすかったりします↓
本品は,前作と異なりカラー印刷が無くなってCDが付属しなくなった分,値段が半分程度にまで下がって買いやすくなりました。
ちなみに,音声はPCの他,abceedのアプリからダウンロードすることも可能です。
もっとも,最新のテスト形式に対応しきれていない記述がみられる弱点はあり,例えば「はじめに」のところで,
TOEICの問題に,思考力を凝らしてじっくり考える問題はありません。
などの文面があります。
なお,旧版の発売から15年以上が経過しても出る順で学ぶボキャブラリー990の新品が売られていますが,それはなぜでしょう。
私は,「中学レベルの約1000個の基本語に,本書の見出し語990語とその派生語1500語を合わせた約3500語さえ覚えてしまえば,TOEICの形式に関係なく,単語の意味を知らなかったことが原因で失点することがなくなる」という本書の基本方針が,多くの方に受け入れられているからだと思います。
加えて,余計な装飾(赤シートも含む)や冗長なコラム的な読み物が一切設けられていないところにも一定の需要があるのでしょう。
どうでもいい情報がページ数をかさまししている単語帳は意外に多いわけです(ただし,それが良いという方もいます)。
いずれにせよ,TOEIC初心者の方や単語力に自信のない方にとって,本書に収録されている頻出語の習得は急務でしょう。
これから先,たとえTOEICの形式が何度変わろうとも,本書の単語セットがその価値を落とすことはないわけです。
本書の構成は大変にシンプルで,出題頻度の多い単語から順番に4つのレベル別に並べられたものとなっており,具体的には,
- 470点に向けた210語
- 600点のための330語
- 730点目標の330語
- 860点を超える120語
の計990語が収録されています(先述しましたが,これは見出し語の数のみであり,実際は派生語の1500語も合わせて学ぶことができます)。
本番の公開テストで目にする頻度が高い単語は,上の最初の3つのレベルに集中しているので,最後の120語はさておき,それ以外の870語を優先的に覚えるようにしてください。
次章からは,本書の使い方とレイアウトについてレビューしていきます!
出る順で学ぶボキャブラリー990の使い方
続いて本書の基本的な使い方ですが,以下の通りです↓
- 見出し語の意味を確認する
- 補足情報(派生語や同義語など)を読む
- 例文と意味を確認
- 音声を聞く
- 音読し,例文を暗記する
これは,多くの方が慣れ親しんだと思われる勉強手順だと思われるので,特に混乱することなく使っていくことができます。
唯一気をつけるところは,復習するタイミングでしょう。
これについて解説する際,よく「エビングハウスの忘却曲線」が例に使われますが,これは完全に忘れてしまう前に復習することの重要性を教えてくれるものです。
そこで,本書で学ぶ際も,初めて学んだ日の翌日・1週間後・1ヶ月後と,間隔を空けすぎずに数回復習することが重要であることを覚えておきましょう。
また,
寝る前に復習すると記憶物は頭に残りやすい。
という話を耳にした方もいらっしゃるかもしれません。
本書の著者である神崎氏も,朝と夜の,1日2回の学習を勧めています。
出る順で学ぶボキャブラリー990のレイアウト
本書のレイアウトですが,見開きで使うのではなく1ページごとに完結していて,色の濃淡のみでの単色刷りであるところが,今の時代では新鮮です↓
上は470点を目標とする第1章のレイアウトですが,まず最初に見出し語と意味が書いてあり,下に派生語や同義語,類義語などの補足情報が記載され,さらにその下に例文とその訳が載っています。
この他に音源を利用して,リスニングセクションにも対応できる耳を作っておきましょう↓
こちらの音源は,小気味よいテンポで次々と単語と例文が読み上げられていくので,冗長になることなく発音を確認していくことができる点が魅力です。
ダウンロードは講談社のページからどうぞ。
なお,最後の990語に至るまで,レイアウトに変わりはありません。
参考までに,残り3つのレベルの単語をいくつか紹介してみようと思いますが,TOEIC600点を目標とする単語は以下のような顔ぶれになります↓
上の収録語を書き出してみると,economical,exchange,expert,extension,familiar,host,ride,seekがあり,解説をよく読むと,be familiar withと be familiar toの違いについての記述を確認できました。
どちらもTOEICで頻出のものです。
続けて,730点目標の単語の例をどうぞ↓
こちらの収録語は,architect,besides,complimentary,congratulations,crowded,depend,even though,paperworkとなり,600点レベルのものと比べて,だいぶ難易度が上がってきたことがわかりますが,それでもまだ公開テストでよく目にする単語たちです。
最後に,860点突破のための単語例がこちらになります↓
accumulate,adjacent,assume,boost,confidential,constraint,distinguish,dominateといった難単語が,本書を締めくくりますが,このレベルまで来ると,TOEICで毎回目にするものとは言い難いラインナップです。
もっとも,TOEICはどんどん難しくなっていく傾向にあるので,このくらいの単語までを必須として学んでおくくらいで丁度良いのかもしれません。
みなさんは,これまでに紹介した単語の意味がすべてわかったでしょうか。
なお,この本の中では紹介されていませんでしたが,著者が「復習用のサポートページ」の存在について言及しており,そちらのページにアクセスすることで,例文クイズなどを利用できます↓
こちらはWordなどのソフトで開いて印刷することが可能です。
本書を購入した暁には是非,使ってみましょう!
まとめ
以上,神崎正哉氏による,新TOEIC TEST出る順で学ぶボキャブラリー990のレビューでした。
今回選んだのは「ハンディ版」ということで,持ち運びがしやすい反面,赤シートやCDが存在しないところが使う人を選ぶ可能性があります。
しかし,私が大学受験の予備校に通っていた頃,外語大出身の名物講師が
赤シートを使って単語を暗記するなんて意味のないことだ。
と何度も繰り返し述べていたものです。
この意見が正しいか正しくないかについての判断はみなさんにお任せしますが,英語の達人の意見ということで,一理あることは確かでしょう。
また,本書の音源がダウンロードできる点や,最後に紹介したサポートページが存在することなどを考慮すれば,本書は独学用教材として,抜けのない十分な仕上がりになっていると評価できるはずです。
読者に媚びるような仕様の本が多い令和時代だからこそ,逆に新鮮に映るものが本書だと思います。
ちなみに,私はハンディ版の方が好みです。
気になった方は是非やってみてください↓
最後までお読みいただき,ありがとうございました。