今回は,Z会のTOEIC対策本「TOEIC L&R TEST 900点攻略完全パッケージ」をレビューします。
本書は,700〜800点台から900点台を目指す方に向けた上級者向け教材です。
全パートを広く基礎から確認する本ではなく,900点を突破するうえで差がつきやすい問題を中心に扱っている点に特徴があります。
そのため,600点台を目標にしている段階では,まず基礎語彙・文法・公式問題集などを優先した方がよいです。
一方で,すでに700点台後半から800点台に到達していて,「普通の問題集では簡単な問題が多くなってきた」と感じる方にとっては,かなり効率よく弱点をあぶり出せる1冊です。
TOEIC L&R TEST900点攻略完全パッケージの進め方

基本情報
- 書名:TOEIC L&R TEST 900点攻略完全パッケージ
- 編集:Z会編集部
- 出版社:Z会
- 発売時期:2017年5月
- 定価:2,420円(税込)
- 対象レベル:700〜800点台から900点台を目指す方
- 収録内容:攻略法講義,トレーニング問題,発展問題,フルサイズ模試200問
- ページ数:336ページ
- 音声:CD-ROM付属,特設サイトからMP3音声・補助教材をダウンロード可能
本書は,以下の明確な4つのステップに沿って学習をビルドアップしていく構造を採っています。
- パートごとの「攻略法」で難問のアプローチを学ぶ
- 変則的な「トレーニング」を使って脳に負荷をかける
- 「発展問題」を解いて解法パターンを完成させる
- 本番仕様の「模擬試験」で実力を総仕上げする
Z会の教材らしく,攻略法を読んで終わるのではなく,すぐにトレーニングと発展問題で確認できるため,知識を実戦に移しやすい構成です。
ステップ4の模擬試験は,本番形式のフルサイズ模試(200問)が1回分収録されています。
一般的なスコア換算表は付随していませんが,900点突破のために各セクションで何問正解すべきかという具体的な「目標正答数の目安」が明記されており,上級者の指標として非常に役立ちます。
公式な換算表ではなく参考値として扱うとよい理由については以下の記事を参考にしてください↓
-
-
TOEICでは何問ミスまでOK?目安は
TOEIC(ここではL&Rテストのことを指します)は「英語学習に終わりがない」という理由から,完璧をイメージさせる1000点ではなく,990点を満点として計算されます。 しかし,そのせいなのでしょうか ...
続きを見る
市販の模試教材は数多く存在しますが,本書の本質的な価値はステップ1〜3のメインコンテンツにあります。
それぞれのパートがどのような中身になっているのか,詳細を順番に確認していきましょう。
モニター正解率50%以下の難問を狙い撃つ「攻略法」

上の画像は本書の目次ですが,「Unit」と表記されているセクションが攻略法を学ぶ単元にあたります。
Part1で1つ,Part2で3つ,Part3で2つ,Part4で2つ,Part5で5つ,Part6で1つ,Part7で3つの計17個の攻略法が網羅されています。
これらのUnitがどのように選定されたのかというと,本書の制作段階において事前に大規模なモニター試験を実施し,上級者の間でも正解率が50%以下に落ち込んだ難問だけを厳選してピックアップしています。
紙面には各選択肢のリアルな選ばれた比率(選択比率データ)が掲載されており,中には正解の選択肢を選んだ割合がわずか24.1%という,手強い引っ掛け問題も確認できます↓

多くの受験生が誤答を選んでしまうプロセスが可視化されているため,「なぜ自分が間違えるのか」のメカニズムを客観的に納得しながら対策を進めることができます。
高地トレーニングで脳の処理速度を上げる「トレーニング問題」
各Unitは,およそ30分前後の集中で1つのサイクルが終わる合理的な分量に区切られています。
解説を読み込んだのち,すぐに変則形式の「トレーニング問題」へと移行します。
TOEICで900点以上のハイスコアを目指すための専門書では,本番の形式をあえて崩して負荷を高める手法がよく使われます。
本書のトレーニングメニューもまさにその高地トレーニングの思想を反映した設計です。
たとえばPart1のトレーニングでは,1枚の写真に対して8パターンもの音声描写が連続して流れ,その1つずつに対してスピーディーに○×で正誤を判定していきます↓

また,本来であれば3択形式であるはずのPart2も,流れる応答に対して即座に○×で答えていく高密度なノック形式にアレンジされています↓

他のパートに関しては本番に準じた形式ですが,無駄な標準問題を徹底的に削ぎ落とし,短時間で難問のコア表現にだけピンポイントで触れられるよう工夫されています。
スコアが高くなるほど1点の重みが増し,学習の時間対効果は低下しがちです。
しかし,この完全パッケージで難問に触れることで,高難度の引っ掛けパターンに対する脳の反応速度が向上し,本番で余裕を持ちやすくなります。
上級者も容赦なく削られる「発展問題」の壁
各パートの締めくくりに配置されている「発展問題」の難易度は非常にハイレベルです。
TOEICの保有スコアが800点を超えてくると,市販の問題集ではほとんどの設問に正解できるようになります。
特にリスニングはリーディングに比べてスコアが出やすいため,解きっぱなしの作業になりがちです。
しかし,本書の発展問題は,上級者でも失点しやすい「残り1割の難問」を高密度で集めています。
体感的な正答率は7割付近まで落とし込まれるため,出来の悪さに一時的に悔しい思いをすることも少なくありません。
ですが,そのぶん1問の間違いから学べる語彙や語法は多いです。
発展問題だけでも計73問あり,トレーニング問題と合わせるとかなりの演習量になります↓
発展問題のパート別問題数
- Part 1:4問
- Part 2:10問
- Part 3:12問
- Part 4:12問
- Part 5:10問
- Part 6:8問
- Part 7:17問
本番のバランスを正確にシミュレーションできる「模擬試験」
模試として有名なTOEIC公式問題集は2回分,本書は1回分のフルサイズ模試を収録しています。
本書の主役はあくまで攻略法・トレーニング・発展問題ですが,最後に200問通しで確認できる点は便利です。
1回分のフルサイズ模試を丸ごと内包しつつ,前半に高品質なクオリティの難問特化トレーニングが完備されていることを考えると,コストパフォーマンスの面でも非常に優秀なパッケージです。
本書に収録されている模擬試験は,前半のメインパートとは異なり,本番形式に近いバランスで構成されています。
そのため,現在の自分が200問を通してどこまで対応できるかを確認する実戦練習として使えます。
前述の通り換算スコア表の代わりに「900点突破のための目標正答数」のシートがついており,各パートで死守すべき正解数が一目で分かります↓

スコア換算表こそありませんが,900点突破に必要な正答数の目安を確認できるため,「何点相当か」よりも「どのパートであと何問拾うべきか」を意識しやすい作りです。
専用のマークシートが付属しているほか,音声も「本番通りのノンストップ再生」と「復習用の小分けトラック」の2種類が用意されており,解いたあとの精読・精聴プロセスを見据えた丁寧な設計が施されています。
別冊解説では正解へのロジカルな導線はもちろん,ナレーターの母語国籍や重要ボキャブラリーが綺麗にまとめられており,非常に復習がスムーズに進みます↓

収録されている語彙のレベルは非常に高いため,日常のビジネス英文で見落としがちなハイレベル単語を効率よく補完することができます。
まとめ:難問特化パッケージの弱点の補い方
以上,Z会のTOEIC900点攻略完全パッケージのレビューをお届けしました。
高スコアを狙い撃ちにする専門書らしく,本書に収録された問題は発展的な内容ばかりです。
公式WEBサイトから「1.2倍速などの高速版音声」をダウンロードしてさらに負荷を高められるなど,至れり尽くせりの仕様に仕上がっています。
通常の問題集で学習していると,すでに知っているイージーな標準問題を数多く解くことになり,上級者にとっては時間のロスが生まれがちです。
その点,本書を使えばすべての学習時間を「自分の伸び代である弱点補強」だけに集中させることができます↓
ただし,本書は難問へのアプローチを学ぶには優れていますが,900点突破を安定させるための演習量としては,これ1冊だけではやや物足りない面もあります。
本書で「上級者が落としやすい問題の見極め方」を学んだら,公式問題集や他社模試で本番形式の演習量を補うとよいでしょう。
公式教材であれば,800点以上を目指す方向けの「公式TOEIC L&R問題集 800+」も選択肢になります↓
-
-
公式TOEIC L&R 800 plusをレビュー!800点突破に使える難問攻略本
今回は,TOEIC公式教材の中でも難問対策に特化した「公式TOEIC Listening & Reading 800 plus」をレビューします。 本書は,すでに一定の基礎力を備えた中・上級者 ...
続きを見る
また,オンライン教材の「スタディサプリENGLISH」を併用する方法もあります。
本書で難問への視点を学び,スタディサプリの実戦問題集やディクテーション,シャドーイングで演習量を増やすと,インプットした攻略法を実際の問題処理に落とし込みやすくなるはずです。
本書を「900点台に必要な難問対策」,公式問題集やアプリ教材を「本番形式の演習量確保」として使い分けると,学習の役割がはっきりします。
