今回は,TOEICの公式チームが制作した,難問の攻略本である「TOEIC L&R 800+」をレビューしていきましょう!
私の中では,中上級者向けのいわゆるヲタク的な書籍は,一部の有名講師の手によって書かれるものだとばかり思っていたので,本書の著者が公式となっていたことに大変驚きました。
とはいえ,最近はTOEIC公式によるYouTube企画や,公式サイトで著名人のインタビュー記事を目にすることも多くなり,なかなか意欲的に活動の輪を広げているようですし,TOEICが新形式に変わってから結構な年月が流れて受験生のレベルも上がってきた中で,こうした内容の本を出すことは自然な流れかもしれません。
ところで,TOEICのスコアについては様々な区切り方が考えられるため,一体どのくらいのスコアを取れば評価されるのかが見えにくくなっています。
そんな中,こうして「800点」という目標スコアを具体的に示してもらえると,受験する側も取り組みやすいように思います。
当記事では,TOEIC L&R 800+の構成についての理解を深めた後,一体どのような問題を解くことになるのかを中心にみていくことにしましょう!
目次
公式TOEIC L&R 800+の魅力
上の写真をみるとわかる通り,本書は結構なボリュームがあります。
値段的には3000円以上もする本なので,いきなり手を出そうにも,ちょっとばかり躊躇してしまうのではないでしょうか。
特に公式問題集も持っていない場合,どちらが良いのか悩むのは至極当然のことです↓
なお,TOEIC L&R 800+の魅力としては,次のようなものが知られています↓
- TOEICの正答率を元に難問を抽出
- パート別に難問を解説
- 難しい語句を収録した単語帳付き
- 模試1回分を収録
この他,音声のCD-ROMが付いてきますが,こちらはダウンロードすることも可能なので,「その分,本体価格を下げてくれよ」と思う方もいるかもしれませんね。
とはいえ,アプリにいちいち登録したり,ダウンロードしたデータをトラックの1からスムーズに再生できない機械音痴な方も周りにいるので,彼女たちからすると「CD-ROMが付いていてありがたい」と感じるようです。
もっとも,上に挙げた4つの魅力だけでも,なかなかに期待できる1冊だと思えるのではないでしょうか。
まず最初に,実際のTOEIC受験者のデータを分析することは,公式でしかなし得ないことです。
もちろん,市販本の中にも,分析したデータに基づいて書かれたものが何冊かありますが,それは著者が勤務する予備校の生徒だけを対象に選んだものだったり,実際はかなり前に行った分析結果で,今現在の傾向とは異なっていたりするかもしれません。
その点,TOEICの公式であれば,適した時期のデータを分析することができますし,しかもその数は膨大です。
たった1日テストを行っただけでも,10万人以上のデータが取れてしまうわけですから。
出版年度も比較的新しく,信頼に足ります。
次に,公式問題集と異なり,攻略本という形を取っているため,前半部分が解説となり,TOEIC試験の全体像を把握しやすいです。
ただ闇雲に,何の戦略も立てずにただ模試を解くだけでよいのは,時間に余裕がある受験生くらいでしょう。
まずは相手についてよく知った上で,解き方の実践の場として模試を使うべきです。
「名選手名監督ならず」とは言いますが,公式が解説した内容が大きく間違っていたり,わかりにくかったりするようなことは通常考えられません。
もちろん「マークシートに鉛筆の先を当てながら問題文を聴くようにする」とか,「線で軽く印を付けておいて最後に一気に塗る」などといった裏技的なものは紹介されませんが,そういった技は王道を行くものではなく,それをするのとしなかったとで,結果に何十点も差が付くことはないでしょう。
とはいえ,「Directionsが流れている間に写真全部に目を通しておく」だったり,「正解と思う選択肢が流れたらすぐにマークする」的な実践的な技については,本書においても言及されています。
まさか公式からこのような俗物が出るとは,今の時代ならではですね。
魅力の3つ目ですが,難語だけを掲載した単語集が付いているところにも注目しておきましょう。
語数こそ220語と少なめですが,スコアが800点以下の受験者にとっては多くが知らない単語ばかりなので,220語全部が学びに変わると考えれば効率的です。
もっとも,内容としては本書で出てくる語句のまとめにすぎないのですが,それでも,音声や例文まで収録されているため,付録の割に大した内容ですし,別冊になっているので簡単に持ち運ぶことができます。
最後に,模試も1回分が収録されており,公式問題集のように2回分の模試を必要としない方にもおすすめです。
以下に本書の基本情報についてまとめておきます↓
名称:公式TOEIC Listening & Reading 800 plus
定価:3300円
発行:一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会
ページ数:373ページ(+別冊47ページ)
音声:CD-ROM,abceed対応
それでは詳しい内容について,次章でみていくことにしましょう!
TOEIC L&R 800+の構成と内容のレビュー
TOEIC L&R 800+は全部で3つのセクションからなっており,最初のSection1で難問の傾向と解き方について理解を深めたあと,実際に問題を解いて練習します(Section2)。
そして仕上げにフルサイズの模試を解いて,予想スコアを算出するといった流れです(Section3)。
ところで,難問の定義については「正答率が10~40%程度のもの」とのことで,セクションごとの難問が含まれる割合については以下の通りとなっています↓
- Section1は11/24(45.8%)
- Section2は100/238(42.0%)
- Section3は27/200(13.5%)
Section3の模試では,TOEIC本番と同じ難易度にするため,難問の割合は通常通りに抑えられてはいるものの,解説部分に関しては半数近くが難問で,本書を通して解くことになる問題数は462問ということで,模試2回分以上です。
このことから,読んで理解するというよりかは,解いて学ぶことの方が多くなります。
Section1
上の写真はパート1の形式と難問の傾向についての解説になりますが,通常の参考書でお馴染みの「イントロダクションをただ訳しただけのページ」が出てくるはずのところが,かなり突っ込まれて具体的な内容になり,かつ難問についての情報が掲載されているところが独特です。
解説でawningやtake a strollといった語句が早速登場してくるあたり,レベルの高さを感じるのではないでしょうか(私はbe proppedの意味を知りませんでした)。
なお,早速問題を解いてみましたが,リスニングはTOEIC本番と同じスピーカーが喋っています。
これもまた,公式ならではの強みでしょう。
リスニングの解説では,和訳や英文の他,話者の国籍が書かれているだけでなく,どうしてその問題の正答率が低いのかまでが事細かく書かれていました。
ちなみに本書では,ある程度のことはわかっている前提で話が進むので,TOEICを受けるのが初めてレベルの方がいきなり学ぶのはおすすめしません。
Section1と2では,難問以外において,和訳はあっても解説はないため,標準レベルの問題すら頻繁に間違えてしまうような受験者(TOEICで700点をはるかに下回る実力者)には不向きだということです。
また,ただでさえ難易度が高くて凹んでしまう中で,以下のような解説を読むことになることも覚悟しておいてください↓
傾向と形式についての解説があった後は,実際に問題を解いていく流れですが,それぞれに割かれているページ数は全体の10分の1程度(34ページ)と少なく,解説は見開きの2ページのみで,難問は1~3問ずつ付いている感じです。
とはいえ,解説部分では,実際に出題された難問を使って学んでいくことになるため,ボキャブラリーは思った以上に増えます。
加えて,そこで得られる情報は,私がこれまで別の教材で見聞きした内容とは異なる内容のものがちらほら見られましたし,TOEICがこれほど形式に基づいて作られていることを実感できたのは,私にとって大きな収穫でした。
Section1をすべて読み終えて思うのは,スピーディーに全パートにおける難問について理解できたということです。
Section2
Section2では数多くの難問を解き,Section1の理解を深めていきましょう!
全168ページは,全体の半分近くを占めています。
下の写真にあるのは,パート2の難問とパート4の難問ですが,王冠の付いている問題が難問です↓
パート1や2,そして5はすべてが難問でした。
それはなぜかと言えば,どれも1問のみで問題が完結するからです。
わかる人にはわかるでしょうが,パート2ではすべてが間接的な応答問題からなっています。
それに対し,大問ごとに複数の問題が用意されるパート3・4・6・7においては,すべてを難問にすることはできないようで,普通レベルの問題も入ってきてしまうようです。
個人的にはパート7の問題数が結構多かったように感じますし,単語も難しいと思いました。
Section2には4つのコラムもあり,そこでは発展的な学習法も学ぶことができます。
「各自自由にやってね」と言われると,与えられることに慣れた学習者からすれば困ってしまうものですが,本書からより多くを学べる余地が残されていることは確かでしょう↓
ただし,本書には明らかな弱点もあり,例えばイラストや色使いが豊富ではないですし,先に言ったように解説内容が難しく求められるレベルが高いため,人によっては飽きてしまったり,投げ出してしまう可能性があります。
また,Section1では時間内に解くコツが紹介されていたものの,Section2では制限時間が設けられていないので,それこそリーディングパートでは本番と同じスピードで解く練習ができません。
時間をかければ解けても,限られた時間の中で最大の得点を取らなければならないのがTOEICです。
Section3に模試が用意されているとはいえ,やはり本番で時間内に解く練習は,この本だけではやりにくいと言えるでしょう。
他の教材の中には,制限時間が示されているものもあります。
Section3
最後,Section3では,2時間かけて200問を解いていきましょう。
マークシートやスコア換算表も付いているので,本番さながらの実践演習が可能です↓
音声データが順番通りに再生されないという方は,PCに空のフォルダーを作ってそこにデータをコピーしてから,それを再生するようにしてください。
これまですべてが難問だったパート1や2ですが,Section3の模試では通常レベルの問題も登場し,本番と同じ難易度で演習できました。
難問かどうかに関係なく,全問に解説が付いてきますが,難問の方が記述量がやや増える傾向にあるようです↓
王冠が付いている187番の方が,普通の問題(186番)よりも解説の量が多いことがわかります。
Part1の解説には写真が同ページに出ていたので復習しやすかったです。
ただし,解答が別冊ではなかったため,長文の和訳を確認するのは大変で,私はスマホで本文の写真を撮るなどしました。
TOEIC L&R 800+でこれまでに学んだ内容に沿った解説になっているので,その確認にも使えます。
単語集
別冊の単語集についてもみておきましょう。
手を広げたくらいのサイズの小冊子ですが,Section1~3に登場した英文から,難易度の高いものを選んで再収録したものです。
例文はTOEICに出題された通りなので,読むだけでも勉強になります↓
220語あるうちの約半分までから,目を惹いたものをいくつか選んでみましたが,意味がすぐに浮かんでこない単語はどのくらいあるでしょうか↓
proprietary, net profit, projected, venue, garment, fall within, charitable, joint statement, conservatory, streamline
こうした単語がTOEIC L&R 800+には登場してきますが,私が前回受けた公開テストではpatioが出てきて,本書で学んでいて良かったと感じた瞬間でした。
本書は公式による問題集で,しかも試験前のしおりや公式アプリ上でも宣伝されるくらいですから,何かしら購入者が有利になる特典があってもおかしくないと感じています。
まとめ
以上,TOEIC L&R 800+の魅力とその内容についてレビューしてきました。
本書は,ある程度TOEICについての基礎知識があり,700点くらいが普通に取れるようになった方が,さらに自分の実力をアップさせるために使うのに向いています。
対策期間としては1ヶ月以上の時間が必要でしょうが,3ヶ月以上の長期間,毎日2時間近くを対策に割けるようであれば,他の教材を複数組み合わせて使うことで,本書以上の内容をカバーすることは十分可能でしょう↓
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ですが,実際のテストで使われている質の高い例文を使って王道を行く攻略法を学ぶことができ,別に公式問題集を買わずとも,これ1冊で単語,パート別対策,模試演習までをこなせてしまうところが本書の大きな魅力です。
ただし,本書で難問とされていない問題をバンバン間違えてしまうようであれば,TOEIC L&R 800+を使うには早すぎるので,自分の実力に合った他の教材で実力を付けることを優先しましょう。
例えば以下はパート6の問題になりますが,試しにこれを解いてみてください↓
この問題の答えを言いますが,最初から順に「DBAC」です。
2問目が難問となりますが,残りの3問については普通レベルの問題ですので,これでミスが1つで済むようならば,是非本書で学んでみてください↓
最後までお読みいただきありがとうございました。