今回レビューする濵﨑潤之輔氏による「TOEIC L&Rテスト990点攻略」ですが,スコア900点を取っても満足できない方のために,990点満点を取得するためのトレーニングが収録されています。
同じような方針の本に以下の参考書がありますが,こういった本に共通しているのは,普通に問題を解くことはせず,より負荷を高めたトレーニングや意識改革を重要視しているところです↓
それでは,本書でどのような独自トレーニングを行うことができるのでしょうか。
読むのにかかる時間についても測ってみましょう!
もくじ
TOEIC L&Rテスト990点攻略の特徴
基本情報
書籍名:TOEIC L&Rテスト990点攻略 改訂版
著者:濵﨑潤之輔(HUMMER)
定価:2530円
ページ数:216ページ(本冊)+168ページ(別冊)
目標スコア:990点
付属品:CD2枚
990点に近づけるではなく990点を「取る」ためのマインドを授けることが本書の目的ということで,参考書の至る所に「990点獲得のポイントと攻略法」が登場するところが大きな特徴です。
各パートに用意された例題を使って上級者の解き方を確認し,「これがHUMMER式アプローチ!」と書かれた部分を読むことが,最初に行うメニューのおおまかな流れとなります。
ここで指摘されるポイントやその後に続くトレーニング内容(後述)は,一般向けのTOEICの総合対策本(いわゆる600~700点台を目標にするもの)とは一線を画していました。
さらには本番形式の練習問題まで付属しているので,トレーニングを通して練習した内容が本当に身に付いたのかどうかを実際に確認できますし,すべてのパート対策を学び終えた暁には,別冊の模擬テストを用いた総仕上げまでが可能です。
このように,毎日のトレーニングから公開テスト前の最終調整まで広く使うことができる本書ですから,まさにTOEIC満点を目指す人のバイブル的存在と見なせるほどの完成度を誇ります。
目次を見てみましょう↓
使い方の説明やテスト概要を学んだ後で,Part1から7までの要点と攻略法を順番に学んでいくスタイルです。
Part3と4だけは別々の章ではなく一個にまとめられていますが,それ以外のパートは独立した構成になっています。
これはHUMMER氏の他の著書でも同じでした↓
本書の主な使い方についておさらいすると,
- 990点獲得のためのポイントと攻略法を読む
- Trainingで与えられたメニューをこなす
- 本番と同じ形式のPractice TESTを解く
となります。
その他,パートの合間に「コラム」と称する息抜き的な読み物が挿入されていることがあり,わずかなページ数ではあるものの,本書でしか語られない方法論が大変に刺激的でした。
具体的には,リスニングセクションのおすすめ練習法であったり,リーディングセクションで難解とされる文挿入問題(Part6)の特殊な解き方や,Part7の位置選択問題含む超発展的な解答手順などが載っていました↓
マークの練習もできるようにとマークシートもついており,模擬試験用のものはもちろん,TrainingやPractice TEST用のものまで計3枚あります。
トレーニング内容
Part1
TOEICのPart1を苦手と言う人は990点を目指す人の中にはいないと思いますが,「1問たりとも落とさない!」という意気込みが必要です。
全問正解を目指すためのポイントとして,本書では上級者でも間違えてしまうポイントを2点ほど挙げ,それらについてのみ対策を行っていきます。
ポイント解説には例題も含まれていて,HUMMER氏の語るポイントを具体的にイメージしやすい内容になっているのですが,その真意を理解していないと,私のようにいきなり例題1から間違えてしまうかもしれません。
ポイントと解き方を解説するページには「超上級の技術」というコーナーが設けられており,上級者も興味を持って読める議論が交わされていました↓
ちなみに,メインコンテンツとも言える「Training」にはPart1で出題され得る難問が51題も用意されていて,選択肢が一切見当たらないわけです。
これはどうしたことかと指示文を読んでみると,解くわけではありませんでした。
なんと,聴いた内容をディクテーションするトレーニングだったわけです↓
例えば,1番の問題では「Some baskets are mounted on a bicycle.」と書き取ることになります。
CDですが,1つのトラックに5つの文が収録されており,全英文を聴き取れるまでリピート再生しましょう。
全部で5回は聞き直しましたが,それでも難しいものは回数を重ねたとしても間違えてしまったものです。
馴染みのない言い回しだったのがミスの主な原因でしたが,できなかったものにはチェックをつけておき,後日そこだけを再度やり直すことにしました。
欲を言えば,各トラックに1文だけ収録されていれば,できない問題だけでプレイリストが作れるので助かりますが,それだとトラック数が99個を超えてしまい,CDに収録できなくなってしまうのでやむを得ないと言えるでしょう。
何にせよ,TOEIC満点への道は非常に険しいものです。
1通りやるだけでも,5つの英文を書き取るのに10分かかり,結果的に,解答の確認まで終えた段階で計2時間位が経過していました。
続く「Practice TEST」ですが,全部で6問あります。
全文と訳の他,話者の国籍までもが記載されているので訛り対策もばっちりです↓
Part2
お次はPart2のレビューです。
ここでは濵﨑氏が「変化球に対する瞬発力」と呼ぶ力を,2つのポイントに分けて身につけていきます。
例題を解いてみるもまたも1問不正解があり,実に難しい参考書です!
itやourの聴き取り一つで,大きく結果が変わってくるところが恐ろしいと思いました。
Part2の「超上級の技術」には,最初の発言内容自体を忘れにくくするための技術が書かれていて,ハードルは高いですが,このレベルを目指せばよいのかと大変参考になります。
氏の著作でおなじみの記述も散見され,ファンの方はニヤリとすること間違いなしです↓
Part2のTrainingは55題のディクテーションでした。
できないものには,概して鍵となる表現が含まれがちですが,そういった知らない表現を少しずつ書き留めていって,最終的にオリジナルの単語帳を作ってしまうという勉強法は,900点以上のスコアホルダーが実践されている方法のようで,私も真似してやってみようと思います。
Part1のときに比べ1問あたりの英文が長いので,一つこなすのに3分ほど消費しました。
1日では終わらず,合わせて3時間弱はかかったでしょうか。
練習を終えたら,Practice TEST(予想問題)で練習します。
Part1のときと同様,Part2も実際のテストと同じ25問です。
Part3&4
先述したように,TOEIC L&Rテスト990点攻略では,Part3と4が一つの章にまとめられています。
その理由は,この2つのパートの攻略法が同じだからです。
なお,990点を目指すレベルの学習者は,トークの内容をほぼ全て聞き取れることが前提となっているのでご注意ください。
ポイントの2つ目に,正解の根拠が1ヶ所にしか登場しない問題の解き方が出てきましたが,こちらについては私も本番で大変苦しめられるので,本書を使って何とかできるようになりたいと思います。
攻略法としてよく耳にする「先読み」についての記述もありますが,ただ「先まで読んで待ち構えましょう!」程度の浅い解説ではありません↓
例題数は3問と少な目でしたが,それに続くTrainingとPractice TESTは十分な量が用意されていました。
行うことになるトレーニング内容は,
- 会話(4はトーク)のポイントを予測する
- 解答する
- リーズニング(解答の根拠を示す作業)とディクテーション
の3部仕立てになっていて,時間はそれほどかからずとも,論理力をしっかり磨ける内容に仕上げられています↓
Part3と4のトレーニングは4スキットで,それぞれ3問付いているので計12問です。
時間にして1つのスキットに15~20分かかりました。
なお,Practice TESTは5スキット×3問の計15題から成ります。
単純計算でも全部で6時間かかるほどの膨大な量でしたが,その頑張りに見合うだけの達成感はありました。
これが結果に反映されることを切望します。
Part5
990点の障壁となるものの1つが,Part5における語彙・語法問題です。
「形だけでは決められないので全部読むべきだ」という主張については他の本と同じですが,知らなかった語については一つ一つ意味や用法について調べなければいけないところが本書ならではの特徴と言えます。
当たり前ですが,リスニングよりも難しいリーディングセクションで495点満点を取らなければ990点は達成できないわけです。
「凄まじいことに挑もうとしているのだなぁ」とここで再認識しました。
Trainingに用意されているのは文脈型タイプの難問が30問で,解説合わせて30分弱でできましたが,出来は8割でした。
なんとなく合っていたものも,「単語の意味まではっきり説明できるか」と言い寄られれば怪しいものです↓
そして,ぴらっとめくった次のページでは「Review of Training」という見慣れないタイトルが目に留まります。
「え,同じ問題をまたやるの?」と戸惑いながらもよくよく確認してみると,1回目にやったものと選択肢で問われている箇所が異なっているではありませんか↓
こんな仕掛けを用意しているとは,まさに大胆不敵な本書です。
Practice Testは30問もあるため,計90題を1時間30分弱で解くことになりました。
全部が語彙・語法問題で,それも難問だらけです。
解説は親切丁寧に書かれていますが,全部読む羽目になるので,短時間の割に疲れてしまいました↓
余談ですが,このようにパートをまたぐときは,右ページにあるようなセリフに励まされます。
Part6
本書ではPart6の例題解説が非常に丁寧なのが特徴的で,問題を読む流れが番号で示されていました↓
満点狙いですと,Delayed Clue(遅れて登場する手がかり)を強く意識しなければなりません。
なお,この技術は次のPart7でも重用します。
ちなみに,本パートには例外的にTrainingがありません。
Practice Testを4つ(つまり計16問)解いて終わりです。
大体どれも5~7分程度で解説まで読み終わるので,一通りやって1時間半強でした。
Part7
ようやく最後のPart7のところまで来ました。
990点獲得のポイントとして,本書では早く正確に読む方法を学びますが,技を使っていることを変に意識することなく,まるでルーチンワークのように決められた手順を淡々とこなしていく態度も重要と言えます。
質問内容はリテンションして簡単な言葉に言い換え,先に質問文に目を通すのが本書の方針です。
6題あるTrainingやPractice Test(5題)を通して,答えに到った根拠づけをしっかりできるようにすることで読みの正確度を高めます。
どちらもしっかりとした解説がありますが,特にTrainingでは,ルーチンワークの手順が事細かく書かれているので,大変に真似しやすくありがたかったです↓
本書を読んで,indicateやsuggestといった質問文の答えは,キーワードを発見してすぐに選択肢を見ることが正解でないことがわかってきました。
また,正解が見つかったとしても一応残りの選択肢にも目を通しておくといった,満点取得者ならではのルーチンワークが確認できて良かったです。
本書でしか聞けない重要な情報は随所に登場してきます。
全部で1.5時間弱(大体1つ10分弱)で,長文の正しい解き方の手順を学ぶことができました。
とはいえ,216ページのコラムにもあるように,Part7の解答手順は人それぞれのやり方があることを本書は認めており,自分のレベルに応じて「超上級解答手順」にもいつかは挑戦してみたいところです。
別冊
別冊にはフルサイズの模試(1回分200問)が収録されています↓
これまでの解説部分と同じくらいのページ数がある別冊ですが,解答・解説ももちろんあって,予想スコアも計算できました。
ちょっと正答率が低いかなぁと思ったのですが,どうやらこのFinal Testは,実際の公開テストより難しめになっているようです↓
それを知っておかないと,解きながら不要に焦ってしまうので注意してください。
かといって正解できなくていいわけでもありません。
心して挑みましょう!
まとめ
以上,市販本されている指南書としては貴重なTOEIC L&Rテスト990点攻略のレビューでした。
本書をやるのにかかった時間をまとめると,
- Part1:2時間
- Part2:3時間
- Part3&4:6時間
- Part5:1.5時間
- Part6:1.5時間
- Part7:1.5時間
- 模試:3時間
のようになります。
勉強時間をすべて足すと計18.5時間になりますが,私は毎日取り組んで2週間程度かかりました。
もっとも,これは1通りやるのにかかった時間にすぎず,復習や単語まとめの時間は含めずにこれだけのボリュームになるということです。
本書では,TOEICの各パートで特に難問に分類される数問に焦点を当てて,その攻略法について紙面を多く割いては真面目に対策するタイプの参考書でした。
演習量は同じ厚さの本とは比較にならないほど多く,リスニングではとにかくディクテーション,さらに余裕が出たらスラッシュリーディングややまと言葉落としといった,通訳者がよくやるトレーニング技法も載っていました。
このように書いてしまうと,本書がテクニック重視の本であると誤解されるかもしれませんが,書いてある内容はそう奇をてらったものではありません。
むしろ,990点の到達への答えが,意外とTOEIC当初の学習から言われ続けてきた方法論であることを再認識して,「これこそ,TOEIC学習者が最後に到達する結論なのかもしれない」と妙に腑に落ちている自分がいたほどです。
当たり前の大切さに気づけたことが,私的には大きな収穫でした。
全てやり終わったので,あとは濵﨑氏の指示通り,付属CDを使って3ヶ月間毎日シャドーイングしていこうと思います。
990点を目指す方は,是非本書で学んでみてください↓
ちなみに,本書の続編として文法・語彙問題1000や単語・フレーズが出ています。
最後までお読みいただきありがとうございました。