今回は,16年以上にわたってTOEICを毎回受験してきた中村澄子氏による「リスニング徹底攻略と模試」をレビューしてみたいと思います。
リスニングセクションのスコアが伸び悩んでいる方に向けて書かれた本書ですが,どのような攻略テクニックを学び取ることが可能なのでしょうか。
購入してみないことにはわからないレイアウトや解説内容についても,パートごとに詳しく見ていきたいと思います。
もくじ
リスニング徹底攻略と模試の特徴

基本情報
名称:TOEIC®L&Rテスト リスニング 徹底攻略と模試
著者:中村澄子
出版:ダイヤモンド社
価格:2200円
ページ数:296ページ
音声:CD(ダウンロードも可)
2016年の5月にTOEICテストが新形式に変わってから,リスニングセクションが全体的に難しくなったわけですが,本書は特に難易度が高まったPart2の攻略テクニックに注力したと言います。
そういえば,以前にレビューした「直前の技術」という総合対策本の中でも,
Part2の攻略こそが,リスニングセクションの点数を上げるために最重要項目だ。
と書かれていましたが,本書では著者の教室で好評なメソッドの一部を用いて,Part1~4の攻略テクニックを解説しているところが特徴的です。
以下は目次になりますが,パートごとに複数のテクニックが紹介されていることがわかるでしょう↓

本書の構成と使い方の説明を読んですぐ,写真描写問題の解き方から学ぶことになります。
なお,各パートの解説を終えた後には予想模試が1回分用意されていました。
もっとも,リスニング問題だけからなる構成(45分間で100問を解く)なので,リーディングの問題を解くことはできませんが,この1冊でリスニングセクションを総合的に学べることは確かです↓

写真やイラストがあったりなかったりで情報量の多さは異なりますが,以下のページ数をかけて学んでいくことになります↓
- Part1は約34ページ
- Part2は約44ページ
- Part3は約38ページ
- Part4は約26ページ
とはいえ,重点が置かれているのはPart2とPart3で,扱う攻略テクニックの数が多めになっていました。
次章から,各パートの中身についてレビューしていきますが,どのパートも基本的には,攻略テクニックについて解説した後,必要とあらば練習問題を解くという流れです。
ちなみに,付属の音声は公開テストの時と同様,4ヶ国語(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア英語)の発音が混ざった状態で収録されているので安心できます。
本書に載っているURLからMP3形式の音声ファイルのダウンロードができる他,abceedのアプリからも音声が聴けるため,CDを使わずに学習することも容易です。
Part1の教材内容

Part1で語られる攻略テクニックですが,「人・物・風景」に注目したり,時制や言いかえに気を付けるなど,多くの参考書で語られている内容なので,別の参考書ですでに学んだことがある方にとって,目新しい情報は少ないかもしれません。
もちろん,これまでにリスニング関連の参考書を読んだことがない方であれば,どれも知っておくだけで得点力が上がるものなので十分役立つでしょう。
全部で4つの攻略テクニックを扱いますが,それぞれの解説後に大体1問の練習問題が用意されており,習ったテクニックを身に付けることができます↓

上で学んだのは,写真に人が1人の場合の解き方でしたが,動作と位置関係に注目することを再確認できる他,読み上げられる単語はTOEICに頻出のもので,例えばstackはTOEIC用の単語帳でしか習わないような単語ですし,私が前に受けた公開テストでbeneathが出てきました(Part5でしたが)。
なお,各パートの最後では頻出の英単語が音声とともに確認できるので,これもまた便利に使わせてもらいましょう↓

Part2の教材内容

先ほど,Part2の攻略テクニックが本書のウリだと述べましたが,設問と選択肢の両方ともを聞き取れたにもかかわらず,正解が選べないという状況に陥らないための工夫が紹介されています。
新形式で問題数は30問から25問に減ったのですが,難易度は上がっていて,3つ全ての選択肢を聞いても答えが1つに決まらないことが少なくありません。
もっとも,そのような時の答えは,質問に直接答えていない「間接的な内容」であることが多いわけで,本書においてはまず,意表を突く返答に慣れるところから始まります↓

まったく英語がないのが面白いところで,日本語で15問くらいの会話例だけが載っているわけです。
間接度合いの程度によって問題パターンを分類しているのは,類書にない特徴だと思います↓

一見すると変な会話だと思うかもしれませんが,これが英語になると,意外と本番で目にするものです。
その他,
- 似た音を使った選択肢は間違い
- 5W1Hの問題の解き方
- Yes・Noクエスチョンで平叙文が答えになっている例
などの攻略テクニックが全部で10個あり,内容はひっかけ問題ばかりで,高スコアを目指す上で参考になると思います。
Part3の教材内容

TOEICのPart3では先読みの重要性を解説していますが,これは他書からでも学べる内容でしょう。
とはいえ,新形式になってから問題数が39問に増加したパートなだけに,先読みのリズムを崩さないよう,それ用の問題をできるだけ多く解いておきたいものです。
また,本書で語られる攻略テクニックは,瞬時に判断して実行できるものでなければなりません。
そのためにも,以下のような質問にすぐ答えられるようになってください↓
- 会話の流れと質問にどういった関係があるか
- よく出る質問のタイプを知っているか
- 3人の会話では何に注目すべきか
- 電話問題の時,どこで目的が述べられるか
本書が扱うPart3攻略のテクニックは全部で12個ありますが,以下のものを私は本書を通して初めて学び,公開テストで大活躍しました↓

こういった,知るだけでスコアアップできる知識も本書には含まれています。
Part4の教材内容

Part4も先読みが重要で,攻略テクニック的にはPart3と同様かその発展形であることが多いです。
なので,Part3の知識をそのまま採用でき,テクニック数は比較的少なくなっているのでしょう。
とはいえ,大変難しい意図問題があったりするPart4だけに,
- 目標スコアによっては潔く諦める
などのテクニックも出てきます。
個人的には,よくある質問やストーリーについての解説が詳しかったところが高評価で,読んでおくと本番で混乱することが少なくなるでしょう↓

TOEICのリスニングセクションは,精神的に焦燥してしまうと立て続けに失点してしまうことがすくなくありません。
その意味で,精神面の準備を整えておくことは重要な攻略法の1つと言えるでしょう。
なお,本パートには章末の単語まとめがありませんでした。
予想模試について
そして最後に予想模試を解きますが,リスニングセクションの問題が100問収録されており,解説は充実しています↓

さすが,本のタイトルにも「模試」と入っているだけありますが,23ページの問題に対して,115ページにわたる解説が用意され,全訳や正解へのたどり着き方に加えて語注まであり,付属の音声を使えばシャドーイング練習を行うことも可能です。
まとめ

著者の中村澄子氏は,以前実施されたプレジデント社の読者アンケートで,最も信頼できる講師No.1に輝いたことがある方で,今回のリスニング徹底攻略と模試で語られている内容も,大変理に適ったものでした。
Part1から4までまんべんなく対策ができますが,特にPart2は独自のメソッドが際立っていて,難しい問題(ひねくれた会話内容のもの)を多く解くことにより,そこでの得点率を高めたい上級者にも役立つ1冊だったように思います。
集中して一気にやれば数時間で終わってしまうボリュームですが,シャドーイングまで行って復習すれば,2週間~1ヶ月の学習に耐えうる参考書です。
値段に見合う価値はあるように思いましたし,これからTOEICのリスニング対策を始めようと考えている方には特におすすめできます。
リスニングとリーディングセクションを比べると,高スコア取得者はとにかく前者で点数を稼げるだけ稼ぐ傾向にありますし,スコアアップにかかる時間は比較的短く済むため,是非本書でリスニング満点を目指してみてはいかがでしょうか↓
最後までお読みいただきありがとうございました。