今回の記事ですが,Z会がTOEIC用に出している単語帳から「速読速聴・英単語GLOBAL900」をレビューしていきたいと思います。
大きな特徴は英文を通して単語を学べるところで,TOEIC L&Rで800点以上を目標とする方向けであること,そして,ミニサイズ模試がL&R用のものだけでなく,S&W用のものまで用意されていることも特筆すべきでしょう。
もっとも,S&Wは本書が登場してから形式が多少変わっているので情報が古いところがありますが,あくまで単語帳と割り切って使うことは今でも可能ですし,スコアアップも期待できるでしょう。
これからみていく通り,本書の構成は中々凝ったものになっていますので,当記事を読んで,是非検討してみてください。
もくじ
速読速聴・英単語GLOBAL900とは
単語を覚える際,1単語につき1つの意味だけを覚えるようにして,例文は不要とする単語帳が効果なしだとは言いませんが,速読速聴・英単語GLOBAL900が採用したのは,多くの英文を読んで語彙力を高める方法です。
単語は文脈があるからこそ意味が1つに決まりますし,同じ意味のものであっても違う文章で出会うと記憶に残りやすいですし,恣意的に対象語を多く含む文章になっているのでタイパに優れるところも忘れてはいけません。
このことをZ会は「文脈主義」と呼んでいますが,本単語帳を含む速読速聴・英単語シリーズに共通するコンセプトになっています↓
以下に,発売されている書名をまとめておきましょう↓
書名 | 目標スコア | 発売日 |
Basic 2400 | 500点台 | 2023年3月 |
Daily 1500 | 500~700点台 | 2024年7月 |
Core 1900 | 600~800点台 | 2025年3月 |
Opinion 1100 | 600~800点台 | 2017年3月 |
Business 1200 | 700~900点台 | 2021年4月 |
Advanced 1100 | 900点台 | 2020年3月 |
STANDARD 1800 | 500~700点台 | 2019年3月 |
GLOBAL 900 | 800点以上 | 2019年3月 |
書名に含まれている数字は,どれだけの語句を学べるかを示していて,今回のものはGLOBAL「900」ということで,単語700個と熟語200個の合わせて900個が収録されているわけです。
選ぶ際は目標スコアを参考にしますが,それだけだと候補が複数に及ぶので,数字の前の言葉にも注目してみましょう。
その言葉は本のコンセプトまたは大きな特徴を意味しており,本書の場合,「グローバルで活躍するために必要な語句を収録している」ことがわかります。

なお,上の表の一番下に示した2冊はTOEICテストに特化していて,書名をよく見ると「TOEIC TEST」の文字が入っています。
逆に,他の6冊は英検やTOEFLも視野に入れていて,英文のTOEIC色は多少弱まることに注意してください。
TOEIC700点くらいの実力がない方は,本書を使う前に,目標スコアがより低いSTANDARD1800またはCore1900を先にやることを検討しましょう。

GLOBAL900に含まれる難しめの単語を学ぶ前に身に付けるべきとされる単語は,その倍以上あるわけなので,それらを優先的に学ぶべきです。
とはいえ,本書に出てくる単語の中にはSTANDARD1800で学んだものもありますし(後述),先の900語に派生語や関連語を加えると,本書1冊を通して学べる単語は2041語にも達します。
逆に,本書と目標スコアが近いBusiness1200やAdvanced1100はコンセプトが異なる関係で,同時に利用することが推奨されていることも覚えておきましょう。
それらからは背景知識や時事英語を学べますが,本書に収録された英文の難易度は両者の中間となっています。
本書と同じ単語を上の3冊すべてで学ぶことがありますが,異なる文脈で出会うことになるので理解はより深まり,効率が落ちることにはなりません。
GLOBAL900の特徴ですが,グローバル化された際に英語を使う場面が想定されていて,具体的には以下の8つのテーマがそうです↓
本書で扱うテーマ
オフィスの日常業務,受発注,出張,会議・プレゼン,商談・契約,顧客対応,求人・就職,経営学の基礎
なお,1つのテーマに対して平均10個以上の英文があるので,目次を確認してみてください↓
第8章では会議の案内から事業所間のメモまで10個の英文が収録されていました。
内容的にも,会話やスピーチのような話し言葉と,Eメールや契約書などの書き言葉がバランス良く収録されていますが,使い方については次章でみていくことにしましょう。
テーマ別英文の構成と使い方
前半の約300ページ(本書の8割)はテーマ別英文を使った学習となり,1つのテーマにつき100~200語程度の英文が全部で94個用意されていますが,英文以外に和訳や語注,単語一覧や豆知識も付いてきて,全体として2ページまたは4ページの構成です。
以下は4ページの例になりますが,まず最初の2ページは以下のようなレイアウトになります↓
基本的な学び方として,英文を読んでその意味がわかるか確認しますが,場合によって赤い下敷きで日本語訳を隠すことが可能です。
最初に読むときは,時間をかけずにサッと目を通し,要点を掴む練習をしましょう。
和訳内容にこだわらず,英語は前から訳すようにし,イメージしながら読んでいけると上達します。
ちなみに,英文にも音源が用意されていて,音だけから意味を理解する練習も可能です。

話者についてもカナダ・イギリス・アメリカなどと複数人が用意されていて,上の文ではオーストラリア訛りの英語を聴くことができました。
収録語の難易度も上級者に相応しいもので,今回のものだと,solicit・equitable・placement・ineligible・waiveは難しい部類に入る単語ですし,右下の豆知識のところでも中途採用や試用期間に相当する英語を学ぶことができました↓
なお,見出し語の先頭にある四角マスが赤色のもの(または日本語訳が赤字になっているもの)は音源が利用でき,逆に黒字のものはSTANDARD1800ですでに学んでいることに注意してください。
実は先に紹介した英文をよく見ると,これらは既習語として黒い太字になっていることがわかります。
列挙すると,pharmaceutical,in order to,intention,requirementがそうでした。
これ以外に「コラム」と称して,より紙面を割いて知識が補完されることもあり,こういうところにZ会らしい真面目さを感じられるかもしれません↓
英文や単語は声に出すようにして,気に入った表現があればノートにまとめるようにすると最高です。
Z会の学習方針が気に入った方はAdaptie(L&R対策)やAsteria(ビジネス英語全般)のようなオンライン教材を使ってみるのも良いでしょう。
両者とも,王道を行く学習カリキュラムが魅力です。
ミニテストの様子
後半の50ページはミニ模試で,L&Rは通常200問ありますが,
- Part1=2問
- Part2=3問
- Part3=3問
- Part4=3問
- Part5=3問
- Part6=4問
- Part7=3問
の計21問を解くことができます(約10分の1スケールとなります)。
一方,S&Wはミニ模試の場合,
- 音読=1問
- 写真描写=1問
- 応答問題=3問
- 指示された情報に基づく応答問題=3問
- 解決策を提案する問題=1問
- 意見を述べる問題=1問
- 写真描写=2問
- Eメール作成問題=1問
- 意見記述問題=1問
の問題数です。
制限時間も含めて本番よりもミニサイズになっていますが,あらゆる種類の問題を1問以上は解くことになるので,全体像を掴むことはできます。
もっとも,L&Rでは複数文書が登場する問題が登場してきませんし,物凄く多い量を読むことになって大変に思うような経験もできません。
S&Wに至っては,収録数は多いものの,問題形式が現行のものと異なることに注意してください(本書は,2020年1月時点の情報に基づいて作成されています)。
とはいえ,以前の形式で得点できていた人が新形式に対応できないことはないので,問題が無価値ということではありません。
ただし,本書で学んだ後は,現行の内容に対応した模試を購入してきて練習を積むようにしましょう。
まとめ
以上,Z会のTOEIC TEST速読速聴・英単語GLOBAL900ver.2のレビューでした。
以下に,今回紹介し切れなかった基本情報を載せておきましょう↓
GLOBAL900の基本情報
対象レベル:B2
ISBN:978-4-86290-275-7
監修:松本茂
ページ数:390ページ
音源:mp3形式でダウンロード可能
定価:1980円
要点を振り返ると,TOEICで800点以上のスコアを目指すにあたって学習すべき難しめの語句を900語収録し,派生語なども含めると全部で2041語となり,中々の収録数でした。
英文を通して単語の意味を学ぶということで,文脈の助けを借りて意味を推測する練習ができますし,単語とその意味が見開きで確認できるページもあり,通常の単語帳のように学ぶこともできました。
コラムで補完される内容も多く,Z会らしさが感じられる構成です。
ミニ模試はあくまで全体像を掴む練習に留まり,本書以外に模試を使って練習する必要がありますが,S&Wでは結構な量が収録されていたように思います。
音源の内容も話者の国籍が異なり,試験対策に十分使えるものです。
速読速聴・英単語シリーズは複数種類が売られているので,同じように学んでいけるところも魅力でしょう。
興味を持たれた方は是非使ってみてください↓
最後までお読みいただきありがとうございました。