今回は変わったアプローチでもってPart5対策ができる「名言英文法」という文法書を紹介しましょう。
実際にTOEICの問題を解くことはありませんが,TOEICに出てくる英文を理解するために必要な知識を網羅的に学ぶことができます。
普通,文法書に載っている英文は明確な目的を持って書かれていることがほとんどで,無駄がない反面,どこか機械的でつまらないものです。
その点,本書に収録された例文は各分野の有名人によるもので,血が通った生きた英語となっています。
もちろんそれはそれで網羅性ができなかったり無駄が多くなったりもしますが,大学の入試問題などと異なり,TOEICの例文は構造がさほど複雑ではありませんし,もしPart5で重箱の隅をつつくような出題に出会ったところで,900点以上取れる受験者も間違えるであろう問題でしょう。
ならば,本書で基本的な文法力を身に付け,あとは得点力を高めるために伸ばしやすい範囲の対策に移っていくのが正解だと思います。
まずは特徴からみていきましょう!
目次
名言英文法の特徴
名言英文法は中学と高校で学ぶ内容を広く収録しています。
初版が販売されたのは2021年3月,Z会による書籍です。
文法学習は英語4技能すべてに影響するので,全体的な実力の底上げに必要で,TOEICの英文法の学び方!教材選びと例文暗記が重要で述べたように,とりわけTOEIC初心者,現保有スコアが500点未満の方は真っ先に取り組むべき分野になります。
確かにすべてをカバーできていませんが,TOEICではそこまで難解な文法は出てきませんし,本書には解説のコーナーもあり,そこで補足も行われるので,試験に臨むための基礎体力は他に単語帳をやれば十分でしょう。
収録されている例文の数は317個ですが,本書には参考文献が載っていて,偉人の名言がまとめられたサイトや古典に収録された名文のURLが紹介されているので,さらなる発展学習も可能でしょう。
こうしたサイトの存在すら知らなかった私ですから,この時点ですでに購入した甲斐があったというものです。
まずは基本事項の学習から
それでは具体的な中身の方をみていきましょう!
本書は2部構成になっていて,まずは今後の文法学習を理解するために必要な知識を得るところから始めることになります。
ここで学べることは
- 品詞
- 文型
- 文の種類
- 基本時制
の4つです。
これらはすべて重要で,例えば品詞について知らないと,他の参考書で「これは形容詞ではなく名詞なので目的語にはなりません」と書かれていたところで,解説内容を理解することはできないでしょう。
文型も同様で,SVCが第2文型であることを覚えることに意味はありませんが,S=Cであることや,動詞をbe動詞にしても意味が大きく変わらないこと,C≠Oだと知ることは重要です。
基本時制の中では現在形が特に難しく,単に今の状態を述べるだけではない(現在進行形を使うタイミングを知る)ことを通して,学力が1段階アップしますが,これは中学で一番最初に英語を学ぶときには気が付けないことです。
解説を読みつつ,再度名言に戻ってその解釈を学び直すことをしますが,無味乾燥な例文ではなく,実際に努力している人が発した言葉だからこそ,それ相応の重みがあり,ないがしろにせずに済むように感じました↓
なお,上のページでは自動詞と他動詞の違いを説明していますが,決して簡単ではない名言に対して,解説はやさしく書かれており,例えばdesignのところでは,
もし目的語がなければ「私はをデザインする」となり,不完全な文になってしまう(p.17より引用)
といった丁寧な書き方になっています。
一方,英語では 動作動詞と状態動詞は別の物が使われている(日本語では語尾を変えるだけで済む)ことや,前者には時間の幅を示す動詞がある(「〇時に寝る」と「〇時間寝る」とでは使う動詞が異なる)など,TOEICの中上級でもためになる知識を得ることも可能です。
いずれにせよ,ある程度英語学習が進んだからこそ本書で学ぶ意味があり,英文法の学び直しはどこかのタイミングで必要だということを強く認識させられました。
学べる文法事項には前向きな名言ばかり
2部構成の後半の方が,量は当然ながら多いです。
本書で扱われる文法項目は,主に以下のようなものになります↓
名言英文法が扱うテーマ
完了形と進行形,動名詞,不定詞,分詞,比較,助動詞,受動態,代名詞,接続詞,関係詞,仮定法など
構成は一部の時とさほど変わりませんが,一つの文法事項に対して,複数の名言が立ち並び,そこに使われている文法についての解説も行われるので,解説は名言を述べた人の人生を踏まえたものとなっているのが他所にはない特徴です。
なお,例文の使い方には2種類があって,最初に出てくる名言(以下の画像で1と書かれたもの)はその文法項目をよく知らない状態で読むことになります↓
続いてKey pointというコーナーが始まり,そこで一般的な解説がなされますが,これは学校の授業で習うようないたって真面目な内容です。
そして,知識が付いた状態で,さらに名言がいくつか提示され(上記画像の2~4),これらは解説内容が理解できたか確認するために利用されます。
とさらに納得できることもあるでしょう。
解説を読む前に,自力で訳せるかどうか試してみるのは良い方法です。
なお,これらの名言は音声付きで聴くことができ,その発音も楽しめるかどうかで本書が向いているか否かを占うことができるように思います。
韻を踏んだ巧みな言い回しが多くて毎回感心しましたが,Z会の参考書は変なアプリを入れることなくウェブ上で聴けるところが良いですね↓
ストリーミング再生以外にデータをダウンロードすることもできます。
文法の解説が十分に理解でき,なおかつ内容も気に入った名言があれば,何度も音読して自然と口をついて出てくる状態にしてみてください。
例文はほぼ前向きな言葉で占められているので,次の名言を読むのが待ち遠しくなるかもしれません。
おすすめポイント
最後に私なりのおすすめポイントをいくつか述べてみようと思います。
TOEICにはL&R以外にS&Wのように自分の意見を述べるテストもありますが,その際に,
などと一つ引用できるだけでも,答案から受ける印象は大きく異なり,説得力を持たせられる他,自身の教養の幅を相手に示すことができるようになるわけです。
TOEIC学習では,基本的に難しい内容も理解しなければならず,それが精神的に結構くるものですが,そんなとき本書に収録されているような名文に元気をもらえると学習を継続できます。
以下のような名言は会話の中に出てくる類のものなので,英会話にも積極的に使ってみたいものです↓
Life is very interesting. In the end, some of your greatest pains become your greatest strength.
私は一日のはじまりにあえて本書に取り組むように工夫したことで,その日寝るまでの時間,活動のモチベーションを高く維持することができました。
なお,チャプター終わりのような切りが良いタイミングで著名人を取り上げたコラムが読めるので,良い気分転換になるとともに,彼らの人生について長文を通して知ることで人生のヒントを得ることも可能です↓
ちなみにコラムの内容は,偏りがないよう様々な分野から選ばれてきており,私自身,知らなかった方の著書を読むきっかけにもなりました。
参考までに,コラムに取り上げられているのは以下の著名人です↓
アルベルト・アインシュタイン,マーク・トウェイン,オプラ・ウィンフリー,ジム・ローン,エレノア・ルーズベルト,ネルソン・マンデラ,スティーブン・ホーキング,キャサリン・グラハム,バートランド・ラッセル,スティーブ・ジョブズ,ハンナ・アーレント,モハメド・アリ,アンディ・ウォーホル,マララ・ユスフザイ,エマ・ワトソン
文法解説に使用される名言には,上記人物以外のものも多数含まれます。
まとめ
以上,Z会の名言英文法のレビューでした。
ほぼすべての例文が偉人によるものという変わった切り口の本書は新鮮で,学習者のやる気を大きく高めてくれますし,TOEIC関連の参考書を読む際,本書で真っ先に学ぶことになった4つの基礎知識が,その学習効果を間接的に上昇させてくれるでしょう。
対象は初心者とありますが,解説はやさしい物言いも多く,それでいてTOEICの中上級者にも役立つ記述が結構な数,見られたように思います。
難解で分厚い文法書に挑戦するだけが唯一有効な文法学習手段ではありません。
文法書にあまり良いイメージがない方は,是非本書を検討してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。