今回はアルク社の「AFN最強の生英語リスニング」をレビューしてみたいと思います。
この本は,私が購入してから15年以上経った今でもたまに開くようにしていて,1日10分程度のリスニングで約1ヶ月で終わる分量が程よく感じられて気軽に聞けるので,勉強タイムの最初の教材として用いて気分を上げることが多いです。
それだけ使っていてもまだ聴き取れないところが見られ,今後も定期的にリスニング力健診のように使っていけたらと思っています。
収録されているシーンはクイズ番組からスポーツの実況のようなものまで多岐にわたり,基の素材がラジオCM由来なので簡潔かつ面白く仕上げられている他,英語ネイティブ向けの放送というだけあって,一切の妥協を許さない速度の英語を聴けるという,まさに最強のリスニング教材です。
以下では,本書の魅力や使い方を中心にみていきましょう!
もくじ
AFN最強の生英語リスニングの特徴

基本情報
書名:AFN最強の生英語リスニング
出版:アルク
初版:2007年1月21日
ページ数:241ページ
価格:1650円
音源:CD1枚付属(boocoでDLも可)
AFN(American Forces Network)とは,海外に駐留する米軍人とその家族が,できるだけ快適な生活を送ることを支援するためのラジオ(またはテレビ)放送です。
本家の詳しい使い方は海外ニュースでTOEIC対策!リスニングできるサイトはで述べましたが,AFN Tokyoの広告枠で流れた放送をいくつか収録したのが本書で,ラジオでは確認できない原稿の他,全訳や語注までをも確認できてしまうところが大きな魅力と言えるでしょう。
なお,今の時代はCDよりもスマホで音楽を聴くことが普通になっており,同じアルク社が出しているboocoというアプリを使えば,本書に収録されている音源をスマホで再生でき,料金は無料かつ,スピードを0.5倍速にまで落とせるとあって,特に最初の頃は重宝するはずです。
本書を買おうか悩んでいる方も,試しに聞いてみてください。
音源を聴いてみるとすぐにわかりますが,完全にネイティブ向けの放送なので,話される英語は生の英語そのものです。
口語表現にスラング,そして難しい単語や聞きなれない言い回しがバンバン登場してくるため,英語学習者にとって,リスニング学習の終着点が示されると言っても過言ではないでしょう。
例えば,以下は本書に登場するスラングのまとめです↓

洋楽でよく耳にするain'tやouttaといったお馴染みのものから,一体何を指しているのか最初は想像もつかなかったcrotch rocketやhot airのようなものまで色々収録されています。
アルク社によると,AFN最強の生英語リスニングの対象レベルは英検2級(TOEIC600点)以上となっていますが,TOEIC900点を持っている今の私でも,半分くらいしか理解できません。
そのくらい,しっかり難しいのです。
とはいえ,何度も繰り返し聞いていると徐々に聴き取れるようになってくることは確かで,アプリで速度を落として聴くこともできるわけですから,発売から年数は経っていても,現代のハイテクの恩恵を今なお享受できる先進的な教材となっています。
内容が古めかしいとは感じませんし,今でも新品が手に入ることに驚きました↓
実際,本書は第3弾に当たるものなのですが,これまでの2冊はすでに廃刊となっていて,中古はプレミア価格で取引されています。
音源は全80トラックに及び,内容が8つに分かれているので退屈しません。
音楽やニュース,スポーツ番組が流れてくると特にアメリカらしさを感じ取ることができ,日本にいながらいつでもどこでもその雰囲気を味わえるところが大変に魅力的です↓

タイトルを眺めてみるだけでも,面白そうな雰囲気が伝わってきたのではないでしょうか。
休日に本書の音源をスピーカーで再生しながら,ホットドッグやポップコーンにコーラを飲み食いするようにすれば,ちょっとした異文化体験ができます。
もちろん,本格的な学習に用いることもでき,基になっているCMは30秒から1分程度の長さに収まっているので,集中してリスニングしやすいです。
実際の使い方については,本書の最初のところにいくつかの方法が提示されていて,TOEIC対策にも役立てられることは意外と知られていないように思われますが,こちらについてはひとまず保留とし,次章では本書の内容を詳細にみていくことにしましょう!
AFN最強の生英語リスニングの内容

本書の基本的なレイアウトですが,上の画像のようなものになります。
左ページ上部にはジャンル(Safety)やトラック番号(03)の他,タイトル(ひいおじいちゃんの腕時計)が記載されており,右ページの上部にはスピード(速い)や語彙(寮生活・防犯),放送の特徴(若者の口語)といった簡単なメモを確認することができました。
「I mean…」と書かれているところは,各回の放送内容から日常的に使えるフレーズをピックアップしたコーナーで,その他に,英文や語注,そして全訳を確認できるでしょう。
該当する音源を再生してみると,出だしから全く聴き取れないと思われます↓

というのも,場面を認識する手掛かりとなる言葉がdormであり,これがdormitoryの口語表現であることを知らなければなりませんし,2行目に登場するwanna(want toの口語表現)についても,きっと馴染みがないはずだからです。
唯一の救いとなるのは,後ろで流れている音楽が何やら不穏な空気を伝えてくれているところでしょう。
とはいえ,figureが「思う」という動詞の意味で使われたり,the last one(もっとも~しなそうな人)を使った比較表現がリスニングで出てきたりすると,すぐに意味を把握することが難しいとわかってしまうはずです。
次に語注を見てみましょう。
dayroom(談話室)やsnuck in(普通はsneaked in)など,学校で習わない単語が含まれています。
a whole lotta~という表現はどこかで目にした記憶があったのですが,そういえば,レッド・ツェッペリンの楽曲に「Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)」というタイトルのものがありました。
結構な頻度で言い間違いや言い淀みが起こるので,普段のリスニング練習で,聞き慣れない単語が登場したり,英文の意味がわからなくなった瞬間に焦ってしまい,以降を聴き取れなくなってしまったりする方にとって,きっと良い教材になってくれるでしょう。
ちなみに,CMの最後はアナウンサーのカッコいい言葉で締められることが多く,本書の大部分も教訓めいたもので終わっています。
このように,完全に聞き取ることが難しい本書ですが,語り口や英語の音は心地良く,自分で声に出してみると大変楽しく感じられるものです。
スマホでゲームをしていても,簡単にクリアできるものが一番楽しいとは限りません。
実際,私自身,所持しているリスニング音源の中でAFN最高の生英語リスニングを一番よく聞いています(朝の散歩時間に流すのがお気に入りです)。
次章では,本書を用いた勉強法について紹介しましょう!
AFN最強の生英語リスニングを用いたTOEIC勉強法

AFN最強の生英語リスニングの使い方については,本書の10ページ目で解説されています。
全部で4つのコースが提示され,TOEICのリスニング対策にぴったりの方法もありますが,復習することを踏まえると,適宜組み合わせてやってみるのが良いでしょう。
音源を聴く
まずは音源を聴きます。
その際は途中で止めることなく,一度に最後まで通して聴きますが,これはTOEIC本番と同じ状況を作るための工夫です。
このとき,闇雲に聴くのではなく,常に5W1H を念頭に入れてリスニングするようにしてください。
できれば,それぞれにおいて何らかの答えを書き留めるようにすると,次のステップで自分の今の実力を把握しやすくなります。
TOEICで長めの内容を聴くことになるのはPart3とPart4ですが,その際も,誰が登場し,場面設定がどこであるかを捉えた上で,話題に集中することが重要です。
テキストで英文を確認する
聴き終えたら答え合わせをしますが,いわゆる5W1Hのうち,上で述べたwho・where・whatに特に注意しながら原稿を読んでみましょう!
その上で,自分が最初に聴き取ったときの理解と比べてみるようにします。
どれくらい正しく聴き取れていたでしょうか。
復習する
まだ答え合わせをしただけに過ぎないので,別に復習を行わなければなりません。
ディクテーションやシャドーイングは準備が大変ですが有効なトレーニング方法とされますが,先に紹介したboocoを使うことで,簡単に実践できてしまうわけです↓

速度変更や一時停止ができるのはもちろん,最短で2秒前に戻すことができますし,同じ範囲だけを何度もリスニングでき,ディクテーションでは数語ごと,シャドーイングでは1センテンスごとに止めるようにすれば,聴き取った内容を書き写したり口で言い直したりすることは容易でしょう。
すぐに英文を見て答え合わせをし,できるようになるまで何度かやってみてください。
出来が悪かったところには線を引くなどしておき,時間が経ってから再度挑戦してみますが,シャドーイング練習では口調にも注意を払うことが重要です。
巻末部分では,素材ごとにディクテーションやシャドーイングに適しているなどの分類がなされているので,このまとめを参考にどちらか一つに絞って練習するのもありだと思います↓

ここまでやって初めて実力が付くので,折角学ぶのですからとことん頑張るようにしましょう!
確かに,英語の実力が付いてきたように感じている人ほどできなくて凹むのが本書ですが,ある程度の期間,これで学んでからAFNのラジオ放送を聴いてみると,似た内容のCMが流れた際,だいぶ親しみを持って聴けるようになったと感じられるはずです。
まとめ

以上,AFN最強の生英語リスニングのレビューでした。
発売されたのは2007年と古いものですが,後に「名著」と呼ばれるものは発売された時点で完成されているわけで,その価値は後世においても不変であることが多いです。
そして,本書は十分にその資格を有しているように思えてなりません。
私にとっては,音源の長さが約60分であるところが使いやすく,1年間で200周くらいした年もあるほどです。
そこまでやると,あらゆる英語の資格・検定試験の音源が本書よりも聴き取りやすくなり,少なくとも,会話のスピードが速くて驚かされることはなくなりました。
本書のマイナス点を挙げるとすれば,実際の会話でスラングを使うことがないことと,軍の施設(スーパーマーケットや福利厚生的な制度)などに詳しくなったところであまり役立つ場面がないところでしょうか。
それでも,こういった「普通と違う英語」を聴く価値はあるように感じています。
最後のところで,TOEIC対策の勉強法を紹介しましたが,少なくとも最初の1冊に選ばれる本ではありません。
ですが,本書を単なるリスニング素材としてではなく,広義の英語教材として捉えれば,いつか必ず到達したい目標を提示し,本来の英語学習はこうあるべきだということを教えてくれる良書だと思うわけです。
是非,このAFN最強の生英語リスニングをご自宅の本棚に加えてみては,末永く自分の英語学習を見守る1冊にしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。