TOEIC対策として単語を覚える方法はいくつもありますが,今回レビューする「名言英単語」は,努力を積み重ねて成功を手にした著名人のセリフを題材に学んでいきます。
よく「単語は英文の中で覚えよ」と言われますが,それは単語だけを切り離して学ぶことに価値がないとされているからです。
とはいえ,リアルな英文を扱う関係で,一つの単語を学ぶのにかかる時間は増えてしまうのですが,単語を効率的に教えたいがためにビジネスシーンに限定した内容の例文を作為的に用意するようでは,途端に学習がつまらないものになってしまうでしょう。
もうご存じかもしれませんが,TOEICに対するやる気を高いレベルで維持し続けるのは大変なことです。
しかし,そんなときに名言を使って学ぶとどうなるでしょうか。
成功者の言葉なだけに内容は示唆に富んでおり,多くは前向きな内容です。
生きた英語ということで実際の会話にも使いやすく,声に出してみると,響きやアクセントまでよく考えられていることに気付けるかもしれません。
学生時代の詰め込み教育によって勉強は苦しいもので,我慢を要するものだと刷り込まれてしまった方に声を大にして伝えたいのですが,大人になってまで同じような辛い思いをする必要はありません。
本書を使って楽しく学んでいきましょう!
目次
名言英単語の特徴は
帯にも書かれているように,名言英単語は396個の名言を使って単語を学んでいく参考書となります。
なので,通常であれば出る順とか難易度順またはアルファベット順に並べられているはずの単語は,努力・成功や文化・芸術といった名言の内容別にまとめられているのが特徴です。
本書を通して習得できる単語数は約1300語(正確には見出し語が1304語とその派生語を400語収録)で,TOEICで言うと初心者から700点を目標とする方まで幅広く使うことができます。
前回,姉妹書である名言英文法のレビューを行いましたが,文法力と並んで語彙力というのは英語の基礎学力を構成する重要な要素の1つです。
こちらはその8ヶ月後に発売されたこともあって,デザインやまとめ方などが改良されているように感じる他,品詞や文構造の説明などもあって親切・丁寧な作りになっていますし,先の本で学んだ英文法の知識も生きてくるでしょう。
ところで,単語を習得する際,よく目でみて学ぶだけの人がいますが,それだとリスニングやスピーキングのスコアが高められません。
これはどういうことかと言うと,TOEIC本番で英語の音声を聴いたときに,まず行うことになるのは脳内で文字へと変換することですが,その次段階として,その単語が表す意味を思い浮かべることになります。
つまり,音と単語が結びついて初めて,リスニングした内容を理解できるようになるわけです。
スピーキングも相手の話をリスニングすることなしには始まりません。
なので,単語学習では音声を聴くことも読むのと同じくらい重要と言え,その際も名言を使って学ぶことが生きてきます。
実際に人が発した言葉だけに,音要素も取り入れて学びたいと自然と思えるものだからです。
ちなみに,幅広い分野の著名人について深く取り上げたコラムが本書においても確認できました。
本書でピックアップされていたのは以下の10名です↓
アルフレッド・ノーベル,テンプル・グランディン,グレース・ホッパー,サンダー・ピチャイ,ウォルト・ディズニー,ナタリー・ポートマン,緒方貞子,パブロ・ピカソ,アストリッド・リンドグレーン,ワンガリ・マータイ
名言で単語を学ぶ強み
そもそも,なぜ名言は名言と呼ばれているのでしょうか。
それは,過去に実際その言葉が多くの人の心を打ったからに他なりません。
とはいえ,他の誰かがその名言を同じように発してみたところで上手くはいかないでしょう。
名言となるためには,誰が発した言葉であるかも重要なのです。
その人物がどのような人生を送ってきたのか,またはどのような言葉選びや言い方をしたのかも相まって,ようやくそれは名言と呼ばれる存在にまで昇格します。
他の単語帳に載っている例文であれば,一体誰が発した言葉かまではわからないでしょう。
発言者の顔を頭に浮かべながら名言を読み上げることで,単に音読する以上の経験ができます。
読み上げることになる英文自体も,多くはこれまでに見たことがないと感じられるものとなっているはずです。
例えば以下の見開きページでは,オイディプス王で知られる古代ギリシアの三大悲劇詩人の1人であるソポクレスが「幸運は何もしない人を助けることはできない」という名言を残し,ジョブスの後にAppleのCEOに就任したティム・クックが「道のりの中に喜びがあるようにしなさい」と述べています↓
彼らのことを思い浮かべながら味わうように発音していくことで,内容はより理解しやすく,単語はより覚えやすくなります。
なお,本書の音源は特別なURLにアクセスすることで,音声データを一括ダウンロードまたはストリーミング再生することが可能です↓
他のアプリをスマホに入れるなどせずに済むので助かりました。
名言英単語の学び方
本書の学び方ですが,名言を中心に隅から隅まで読んでいくのが基本です。
名言のところではまず最初に音源を聴き,意外だった発音や,とりわけ強調している箇所があることに気づいた場合などは積極的に書きこみをして残すようにしましょう。
名言を深く味わうことができると,自分が音読する際に感情がこもるようになって理解度も増加します。
内容は前向きな気持ちになれるものばかりですので,やる気面についてのケアもばっちりです。
10個のテーマ別に分類されるので,約130個の見出し語・30個強の例文がひとまとまりになっています。
章終わりに登場するコラムは長文になっていて音源も収録されているので,最初に学ぶ時は和訳や語注も利用して精読するようにしましょう(重要語句のまとめは次ページで行われます)↓
2周目以降は付属の赤下敷きを使用し,意味や単語を隠して答えてみてください。
最初の音源を聴く際にあえて名言を見ないようにすることで,リスニングの練習をすることも可能です。
先述したように,SVCOなどの記号を使って文構造が明示されている他,難しい箇所があれば適宜解説されています。
中には初心者向けとは思えない解説もありますが,すべて覚えようとするのではなく,
こういう訳し方をすることもあるんだな
程度に頭の片隅にでも置いておくようにすると,いつかまた別の機会に再会した際,「前にやったあれか」と納得しやすくなるはずです。
コラムの長文も,2周目以降は本文を見ずにリスニングだけして内容が理解できるかどうかに挑戦してみてください。
啓蒙本を普段から読むのが好きな方や,長時間の勉強習慣がない方は,ひとまず名言だけを読んで学んでいくでも構いません。
全体像を把握してしまうと力配分もできるようになり,負担が下がります。
TOEICの試験もそうですが,一度体験しておくと,2回目は1回目ほど大変ではなくなるからです。
ところで,今もまだ存在しているのかわかりませんが,昔は単語帳否定派の指導者も多く,決まって
英単語は文を読むことによってのみ学ぶべきだ
と主張していました。
彼らは洋書を多読するのも苦に感じないタイプの人間だったので,そのような学び方ができたのでしょう。
私は英語がそれほど好きではなかったので,仕方なく勉強していました。
そんな人間からしてみれば,洋書を読んで単語を学ぶなど,時間も気力も足りないので到底できません。
しかし,このZ会の名言英単語は良い折衷案として機能し,それこそ上で述べたように,名言だけを読んでいきながら自然と語彙力を増やしていくことも可能なわけです。
参考文献のところで紹介されているサイトを訪れることで,多くの名言に触れることもできるでしょう。
詳細は省略しますが,13個の英語サイトが紹介されていました。
まとめ
以上,Z会による,名言を題材に英単語を学べる変わった単語帳のレビューでした。
学び方は自由ですので,各自が気に入るものを採用することが重要です。
正直,名言を使うと収録語数が少なくなってしまったり内容が偏ってしまったりするのではないかと危惧していたのですが,実際に学び進めてみると決してそのようなことはなく,単語量は十分ですし,名言の解説も相まって,かなり深い知識まで得ることができました。
本書を使用する際は,名言が例文になっているという最大の魅力を生かすことを強く意識し,音源を必ず用いるようにしては,情緒たっぷりに発音してみてください。
そういった意味では,出先で学ぶだけでなく,自宅での学習も重要だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。